世界で億単位のユーザーがいる有名なメッセージアプリといえば『Facebook Messenger』『LINE』『Skype』『WatsApp』ですが、実は『WeChat(微信)』もその一つ。10億人以上のユーザー数を持つ巨大メッセージアプリです。
「WeChatの特徴」「LINEとの違い」「なぜ10億ものユーザーが使っているのか」「日本では使えない機能」など『WeChat』の気になるポイントを、国際的な接点が多く世界の主要メッセージアプリをすべて均等に使い続けている筆者が、画像付きでわかりやすくご紹介します。
WeChat(微信)とは 使い勝手やLINEとの違いをヘビーユーザーが解説
WeChatとは
『WeChat(ウィーチャット)』は10億以上のユーザー数を持ち、主に中国・マレーシア・インド・インドネシア・オーストラリアなど、中国を中心とした海外ではポピュラーなメッセージアプリです。
日本では『LINE』が主流で『WeChat』の知名度は高くないが、近年街角で「WeChat Pay」を見て知った方も増えているようです。
『WeChat』は腾讯公司(Tencent ※以下テンセント社)が開発したメッセージアプリ『微信』(ウェイシン)の世界向けパッケージ。テンセント社は世界時価総額が4750億ドルにものぼる、Microsoftなどのトップアメリカ企業に続くランキング8位の中国大手IT企業です。
ちなみに海外向けの『WeChat』と中国版『微信』では使える機能が異なります。詳しくは後に機能別にご紹介します。
安全面は? 国際認証を取得
WeChat(微信)の安全面ですが、国際的に力を持つ認証をいくつか取得しています。
「TRUSTe(アメリカ発の個人情報保護第三者認証プログラム)」や最も厳しい国際規格である「ISO/IEC 27001(情報セキュリティ管理システム)」および「ISO/IEC 27018(パブリッククラウドにおける個人情報保護)」の認証も取得しており、認証機関であるBSI(英国規格協会)の公式HPからも確認ができます。
WeChatの特徴・LINEとの違い
LINEと同じように機能は大きく分けて3つ。チャット・モーメンツ(タイムライン)・WeChat Payです。細かい部分では「近くの人を探す」・「ミニプログラム」・「Red Packt」はLINEにはありません。
ほかに既読がつかない、タイムラインの表示、チャット内翻訳などの違いもあるので、さっそく見ていきましょう。
既読がつかない
WeChat(微信)は既読機能自体ありません。LINEのように既読スルーに一喜一憂することなく、気楽にメッセージが送れるのがうれしいです。
モーメンツ(タイムライン)の表示
LINEは設定によりタイムラインに友達以外の「いいね」も表示される場合があります。WeChat(微信)では「いいね」も「コメント」も共通の友達からのものしか表示されません。
また、友達に表示する自身の投稿件数や期間を「設定」で変更もできます。
近くにいる人が探せる
「近くにいる人」はLINEにはない機能。位置情報を許可すると、近くにいるユーザーが一覧で表示されます。選んだユーザーにあいさつを送ったり、メッセージのやりとりも開始できます。
チャット内で好きな言語に翻訳
LINEで翻訳する場合は翻訳アカウントを含めたグループトークを作る必要がありますが、WeChat(微信)ではメッセージを選択して右クリックで「翻訳」をパパッとしてくれます。
選べる言語数も多くどの言語に翻訳するかは全般の設定から変更もできるので、語学学習にもつながります。
ステッカーはこんな感じ
WeChatのステッカーはLINEでいうスタンプにあたります。
LINEでは無料スタンプをいろいろ使おうと思うと、商用アカウントの友だち追加でたくさん宣伝メッセージが来るように。WeChat(微信)は商用アカウントの友達追加なしで利用できる無料ステッカーが多いです。
また好きなときに任意で作者に報酬を送金できるところも変わっていて面白いですね。
注目のミニプログラム(小程序)
中国進出の日本企業が注目する「ミニプログラム(小程序)」。ミニプログラムとは『WeChat(微信)』内の小さなアプリのようなものです。ユーザーは微信内で外部の買い物・音楽・ゲーム・ニュースなどが気軽に楽しめます。
例えばWeChat(微信)を使っている最中に、「ユニクロ」を別ブラウザーで立ち上げたりアプリを別途DLする必要がありません。微信上のミニアプリ内でそのまま購入・決済までできるのが特徴です。
ユニクロ(中国版)のミニプログラム
WeChat PayとRed Packet(紅包) ※中国版のみ
残念ながら世界版『WeChat』にはウォレット(お財布)機能はなく、ウォレットがないと「WeChat Pay(微信支付)」の利用ができません。
ウォレットの「微信钱包(WeChat Wallet)」を開設するには、中国版『微信』に中国の銀行口座・身分証明書・電話番号の3点を紐付ける必要があります。
近年ニュースで取り上げられるほど、中国は『微信』のおかげでキャッシュレスが進んでいます。旅行者は「クレジットカードや現金を持参したが何も買えず困った」と言うぐらい、現地では微信支付(WeChat Pay)がすでに財布代わりとなっています。
Wallet(ウォレット)を開通すると具体的に以下2機能が使えるようになります。中国国内の事情を少しご紹介。
1.WeChat Pay(送金機能)
いわゆるQRコード決済。コンビニなどお店での支払いだけでなく、友だち追加の要領でQRコードを作って読むことで送金および金銭の受け取りが可能に。幹事が大勢から集金する際や、ちょっとしたお金の貸し借りでも非常に便利。
日本でも中国人観光客向けに、Wechat Pay支払いを導入するお店が増加しています。
2.Red Packet(紅包)
世界中のメッセージアプリでも『微信』にしかないのが「Red Packet(紅包)」。お年玉やご祝儀のようなイメージですが、堅苦しいものではなく「春節(旧正月)」や普段の「おめでとう」「ありがとう」といった場面で送り合うもの。
さまざまなシーンで使われるRed Packet(紅包)が実は面白いです。
【来店のお礼としてQRを設置するお店】
QRコードを読み取ったお客さん全員にRed Packet(紅包)をあげることができます。店ごとに違う「○○ポイント」ではなく、銀行に紐付いた「現金」がもらえるので足しげく通いたいですね。
【グループチャット内で送る】
グループ内のメンバーに対し、配布数量と金額を指定して「同じ金額」か「ランダムな金額」を送ることができます。ランダムの場合、送る側にも誰がいくら受け取れるかわかりません。開封後に、全員入手金額が公開されてひと笑いします。
【音沙汰のない恋人(?)に送る】
音信不通になりかけている人にRed Packet(紅包)を出すと、十中八九飛びつきます。微信(WeChat)には既読機能がないため、相手をおびき出すのに使う人もいるとか。お金でヨリが戻せるといいですね。
WeChatをいつ使うか
日本人の多くは「中国を相手にビジネス」「中国人の友人・親族との連絡」「出張や旅行」といったシチュエーションで、『微信(WeChat)』を使うことになります。
ビジネス上中国とのやり取りで
中国を相手にビジネスをするなら必須のアプリ。中国ではよほど重要な契約または企業秘密の情報でない限りは、ビジネスにおいても連絡手段は『微信』です。
中国人の友達・親族連絡に
日本文部科学省が2008年に策定した「留学生30万人計画」が今年達成されました。グローバル化を目指す政策の影響で、外国人が目に見えて増えています。
中国人との交流を持ったことをきっかけに、WeChat(微信)を使い始めた方も多くいるようです。
出張や旅行の時に
特に長期滞在の場合、『微信(WeChat)』なしには何もできません。中国人との連絡は微信、支払いも確実に微信です。現地の銀行口座を開設できれば日本人でも「微信钱包(WeChat Wallet)」は開設可能です。
また中国国内で『微信』を使う際には、中国政府が持つ「グレート・ファイアウォール」(検閲機関)を正しく理解しておくとよいでしょう。
「グレート・ファイアウォール」について
中国政府はグレート・ファイアウォールと呼ばれる検閲機関を持っています。中国国内にいる人は、違法情報・ポルノ・反対勢力・海外の一部サイトやサービス(LINE・Facebookなど)にアクセスできません。
また中国政府は「敏感ワード」というフィルターを設けており、問題視されるワードを複数回入力した『微信』のアカウントは一時的にロック・削除されることがあります。中国国内にいて『微信』で発信をする際には、注意が必要です。
なぜ中国で主要アプリに?
『微信(WeChat)』のユーザー数は主に中国を中心に伸び、現在10億人以上。驚くことに55歳以上のアクティブユーザーは6300万人にものぼります(Tencent 2018年次レポートより)。ここまでユーザー数が伸びた要因はいくつかあります。
「LINE」「Twitter」などが選べない
上述のとおり、中国にいる人は「グレート・ファイアウォール」の影響で国外の一部サイト・サービスへのアクセスがブロックされています。
ただし「グレート・ファイアウォールがある=微信(WeChat)を選ぶ」ということでもありません。
テンセント社「QQ」ユーザー6億人が支持
開発者であるテンセント社は1999年に「QQ」(注釈1)をリリースし、ユーザー数は今や6億以上。その巨大なユーザーに支持されたことが、「QQをSNS等活動空間」+「Wechat(微信)を連絡&決済手段」として利用する現状につながっています。
※注釈1:「QQ」とはメッセージチャット・SNS・映画・音楽・ゲームまでもが包括的に楽しめる総合プラットフォーム・サービス。
20以上の言語版を持つ
WeChat(微信)では日本語を含む20以上の言語版があり、受信したメッセージも右クリックで「翻訳」をできます。世界中にいる友人親族と簡単につながれるのも支持される要因の一つでしょう。
わたしがWeChatを使う理由
中国人と連絡を取る必要がある以外の理由で、私自身なぜ『WeChat(微信)』を使い続けているのか考察してみました。
中国の生活が見えるから
現在ライター以外に日本語教師も生業にしています。中国人の教え子も多いため、現地の生活が見えるのは良い刺激になります。
既読がつかずストレスフリー
LINEだと「メッセージ読んだよね?!」「なんで読んでないの?」などといったいざこざは少なからずあります。既読機能がないのは本当に良い点だと思います。
無料ステッカーの使いやすさ
WeChat(微信)は商用アカウントの友だち追加なしに使えるステッカー(スタンプ)がたくさんあります。宣伝メッセージが増えてごちゃごちゃすることがなく、チャット一覧画面はかなりスッキリしています。
新機能・動向に目が離せない
筆者は世界の主要メッセージアプリはすべて均一に使用しています。当初はボイスメッセージ・ビデオ通話などの機能リリースがLINEより早く、日本国内でも家族とのビデオ通話やボイスメッセージが便利でした。
最近では24時間で消えるストーリーのような動画投稿「タイムカプセル」機能もリリース。
また先述の「ミニプログラム(小程序)」は中国ではiOSアプリやAndroidアプリに代わる可能性も指摘されており、今後の動きに目が離せません。
【最後に】情報を守るのは自分
世間ではFacebookの個人情報漏洩(朝日新聞)や米個人情報収集(日経新聞)など多種多様な問題があります。どんな国もサービスも結局は「人」が運営しています。Apple StoreやGoogle Play内にあるアプリでも、危険なアプリは潜んでいます。
筆者は「自分の情報を守れるのは自分だけ」だと肝に命じた上で、各社サービスを利用しています。情報化社会で情報の受発信が手軽になった一方、各社「情報漏洩」のリスクと常に隣り合わせであることを、ユーザーは理解した上で各種サービスを利用することが大切でしょう。
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