マインドマップは、脳の仕組みに沿った図で思考を整理・視覚化するためのツール。イギリスのトニー・ブザンが考案した手法で、今や多くの人々に利用されています。
「聞いたことはあるけど、どんな目的や意味があるのかわからない」
「具体的な使い方が知りたい! どんな効果があるの?」
という方のために、マインドマップの考え方や書き方、マインドマップを作るためのツール・アプリもご紹介します。
マインドマップ活用の5ステップ 書き方やメリット、おすすめの使い方
マインドマップとは?
マインドマップの概要
マインドマップの原則は、まず思考したいテーマを紙の中心に置き、そこから関連するキーワードやイメージを放射状に広げていくというものです。「メモリーツリー」「アイデアマップ」など異なる呼び方もありますが、主旨は同じ。
この仕組みは人間の脳の記憶構造に合っており、理解・記憶しやすいと言われています。
学生が勉強内容をマインドマップに整理することで成績を伸ばしたり、逆に人にものを教えるときにマインドマップで説明することでわかりやすく伝えられます。
マインドマップを作る目的・意味
そもそもマインドマップを作ることにはどのような意義があるのでしょうか。いろいろな説がありますが、その中でも主なものは次の点です。
アイデアを閃きやすくするため
マインドマップはあるキーワードから別のキーワードへと、どんどん派生して物事を考え、書き留めていく仕組み。
頭の中だけで考えていると、こんがらがってきたり、少し前に考えていたことを忘れたりしませんか? これをマインドマップに書き出すことで、思考の全てを明瞭化できるのが特長です。
思考内容がスッキリまとまれば新しい発想も出やすくなるため、アイデアツールとしてよく利用されています。
記憶に定着させやすくするため
マインドマップを書くときはキーワードだけでなく、イメージ(絵・図・写真)を積極的に活用することも推奨されています。文字よりイメージのほうが認識・記憶しやすいからです。
物事と物事の関連性を明らかにしながら、記憶に留めやすくする効果があります。
物事の全体を俯瞰して考えるため
考えているテーマについて、全体像を見渡しながら考えられます。複雑なテーマでも、その概要を抜かりなく見渡せるのがメリット。
マインドマップのメリット4つ
マインドマップを作ることで、次のような効用が得られるとされています。
多くの物事をスムーズに覚えられる
マインドマップは脳の記憶構造に沿った図の表現方法なので、記憶に残りやすいと言われています。たとえば新しい英単語を覚えるとき、すでに知っている英単語と結びつけることで素早く暗記できた経験はありませんか?
このようにマインドマップで物事の関連性・結びつきを明確にすることで、暗記がはかどります。
視覚的にわかりやすく、複雑な情報が整理される
ブレインストーミングなどでアイデアを雑多に出したとき、そのままだとゴチャゴチャしていますよね。
その後マインドマップで分類・整理することで、どんな傾向のアイデアがどれくらい出たのか見える化し、有益なもの・そうでないものはどれか判断しやすくなります。
アイデアや連想が広がりやすい
マインドマップの枝をもっと広げようとしていく中で新しい案がないか自然と考えられるようになり、発想が広がりやすくなります。
枝があちこちに広がっていくマインドマップは作図そのものが楽しいので、考えることが苦手なタイプの人でも抵抗なく熟考できるかもしれません。
仕事でも勉強でも幅広く応用できる
マインドマップは暗記学習、アイデア出し、情報整理などいろいろな用途に役立つので、使いこなせるようになれば様々な場面で活躍します。
マインドマップのデメリット3つ
デメリットというよりは初心者向け注意点のような事柄ではありますが、次の点に注意しておくとよりマインドマップを効果的に使えるでしょう。
細かいルールに囚われて混乱しがち
マインドマップの書き方は人によって主張がバラバラです。本来のルールに沿って色鉛筆でちゃんと色分けしながら書くべきという人もいれば、パソコンのツールで適当にやっても構わないという人もいたり、何が正しいのかわからず迷ってしまいがちです。
しかし、最終的に大事なのは自分にとって何かしら良い影響をもたらすことですから、我流で使ってみて効果を感じるのであれば、それで良いのではないでしょうか。特に慣れないうちは形式にこだわりすぎると作図が大変なので、適当にやってみても良いと思います。
慣れないうちは図を描くこと自体に時間がかかる
特に手書きで作る場合は時間がかかりますし、紙のスペース配分を間違えて1から書き直しになったりと、作図そのものに時間と労力がかかってしまいます。まずは完璧主義にならず、自由に気軽に描いてみるのがおすすめ。
思考や情報を整理するのが目的なので、必ずしもきれいな図を完成させなくても大丈夫です。
描いただけで満足しても無意味
きれいなマインドマップが出来上がると達成感がありますが、それ自体はただ頭の中を整理しただけに過ぎません。マインドマップを書いたあとに、なにか行動を起こしたりアウトプットをしたりして初めて書いた甲斐が出てきます。
「このマインドマップを作ることによってどんな結果に繋げたいのか?」を考えて作図してみてください。
マインドマップの書き方
マインドマップ基本の5ステップ
マインドマップは、おおよそ次のような流れで作っていきます。
1. 中心となるメインテーマを設定する
1つのマインドマップで扱うのは1つのテーマのみ。テーマが変わるのであればマインドマップ自体も新しく作ります。
紙に書く場合はA4サイズ(一般的なプリント用紙)だとまずスペースが足りないので、より大きめの紙を用意してください。
2. ブランチ(枝)を伸ばし、大まかなアイデアを書き足す
中心からブランチと呼ばれる枝を伸ばし、その枝にアイデアを書いていきます。
最初は抽象的な概念や、大きなカテゴリを書いておくと、あとあと細分化しやすくきれいに整理されたマインドマップが作りやすいです。色鉛筆を使って枝ごとの色を分けたり、各枝に想像しやすいような絵・図を加えるのも効果的とされています。
3. さらに細かく具体的なアイデアを足し広げていく
枝が細分化していくにつれて、どんどん具体的で細かいアイデアを足していきます。
手書きの場合はイラストを気軽に描き込みやすいのがメリット。テキストよりもイラストのほうが記憶に定着しやすいと言われており、発祥者であるトニー・ブザンもイラストの描き込みを推奨しています。
一方デジタルツールの場合は修正・削除が簡単なので、描き直しになることを恐れず気軽に作図できるのがメリット。ツール側がブランチの幅などを自動調整してくれるので、作図のスピードもかなり短縮できます。
4. 全体を俯瞰する
ある程度描きあげたら、マインドマップ全体を見渡すことが大事。考えているテーマの全体像を把握しましょう。
マインドマップを作る目的によりますが、全体をこまめに眺めることで、勉強目的なら記憶に定着する、アイデア発案目的なら今まで気づかなかった着想を得るなどの効果が得られます。
5. マークや矢印などを活用して自由に補足する
大事だと思う項目や気になった項目をマークしたり、別々の場所にある項目を矢印で結びつけたり、自由な発想で書き足していきます。
項目を別の場所に移動させたり、時には削除したり、バランスよく位置を整えたりして、よりわかりやすいマインドマップに仕上げていきましょう。そうしていく過程で思考がまとまっていきます。
トニー・ブザンの「12のルール」
マインドマップを提唱したトニー・ブザンによると、マインドマップを作るうえでは以下の12のルールがあります。
マインドマップ12のルール
●無地の紙を使う
●用紙は横長で使う
●用紙の中心から描く
●テーマはイメージで描く
●1つのブランチには1ワードだけ
●ワードは単語で書く
●ブランチは曲線で
●強調する
●関連づける
●独自のスタイルで
●創造的に
●楽しむ!
とはいえ本当に大事なのは完璧な図を書くことではなく思考を整理したり情報を理解したりすることなので、必ずしも厳密に守る必要はないと思います。
マインドマップの作り方を解説した本はいろいろありますが、トニー・ブザンが書いた「ザ・マインドマップ」が特に有名な王道の1冊。どの本を買うか迷っている方はここから始めるのが無難でしょう。
マインドマップの活用シーン。得意とする4つの使い道
ブレインストーミング(アイデア出し)
ブレインストーミングとは、あるテーマに関して思いつくアイデアをとにかく片っ端から書き出すアイデア発想法。
1人でやっても複数人で一緒に考えてもよく、とにかくアイデアの良し悪しを気にせず数を出しまくることで、普通なら無意識に却下してしまいそうな些細なものも含め様々な発想を生み出せます。
ただアイデアを出すだけだと雑多なメモが散らばるだけなので、これを整理するためにマインドマップを活用。カテゴリごとに分類したり、重要度別に分類したりして、大量の案を見やすくまとめていきます。
タスク管理
様々なやるべきこと、やりたいことを抱えているとき、それらを整理するのにもマインドマップが有効。自分はどんなタスクをどれくらい抱えているのか明確にし、優先順位を考えたり取捨選択をしたりするのに役立ちます。
問題解決
何らかの難しい問題について、原因を深く探っていったり、その解決策のアイデアをリストアップしたりする際にも使えます。
まず大きな枝では考えられる原因・現状などを書いていき、より細い枝でそれぞれの解決策を書いていきます。
頭の中で考えているだけだと同じことを何度も悩んだり、考えがこんがらがってきたりしがち。思い浮かんだことをマインドマップに吐き出すことで、何が問題なのか、どうすべきか、賢い判断の手助けとなるでしょう。
学習内容の整理
たとえば歴史の勉強をするなら、大きな枝では世代や地域といったくくりで分類し、そこから具体的な事件・出来事、さらに関係する人物の名前を書いていくなどして、幅広い情報を整理できます。
マインドマップが向かない使い道
長文の記入
たとえば小説の構想を練ったりアイデアを出したりする段階ではマインドマップは役立ちますが、細かいセリフなどの文章を書き始めると図が煩雑になってきます。最初の段階で雑多な発想をまとめる分には良いですが、いざ下書きに入るときは別途執筆ツールなどを使ったほうが良いでしょう。
短期のスケジュール管理
マインドマップを活用してスケジュール管理や活動計画を立てることも可能です。「旅行計画」として行きたい場所、買いたいもの、持ち物をまとめたりするのには最適。
一方、今日1日のタスク管理など短期的なスケジュール管理なら、カレンダーやリマインダーを活用するのがおすすめ。頻繁に書き換えなくてはならないため紙に書くのでは割に合わず、ソフトを使うにしてももっと便利なタスク・スケジュール管理ツールがあるからです。
マインドマップの作成ツール・アプリおすすめ5つ
マインドマップはトニー・ブザンによれば紙に書くべきとされていますが、編集しやすいことからツールを使って書く人も大勢います。実際にいろいろなツールが出ているので、おすすめのものをご紹介します。
ここで紹介するものは全て日本語対応。公式Webサイトは英語のみのところもありますが、アプリを使ううえで特に問題はありません。
『MindNode』 手頃な買い切り価格で、シンプル&きれいに作図
iOS、macOSに対応。
十数種類のデザインテンプレートはどれも美しい色使いで、本記事でご紹介するマインドマップサービスの中でもデザイン性抜群です。
ショートカットキーも充実しており、キーボードから手を離すことなくブランチ間を移動したり、自由に新しいブランチを追加したりできます。
PC向けのマインドマップツールは1万円前後するものが多い中、記事執筆時点で4,900円と比較的リーズナブルな買い切り価格も長所。
図を組織図タイプに変えたり、複数人で共同編集したり、ワンランク上の凝った機能はありません。
しかし、1人でシンプルにマインドマップ作りをやるだけなら必要十分。2週間の無料お試し期間で使い勝手を試してみてください。
価格
Mac App Store版
4,900円
App Store(iOS)版
1,840円
いずれも2週間の無料お試し期間あり。
『Xmind』 機能を重視するヘビーユーザーに。プレゼンやブレストも補助
Windows、macOS、Linuxに対応したマインドマップアプリ。
上の『MindNode』に比べて1万円越えと高価ですが、数あるマインドマップツールの中でもかなり幅広い機能を備えたアプリです。
ただマインドマップを作るだけでなく、それに関連した3つのツールを搭載。
プレゼンテーションモード:
制作したマインドマップをそのままスライドにしてまとめ、プレゼンに使える。
ブレインストーミングモード:
マインドマップとは別に、アイデアを列挙するための専用スペースが出現。まずはひたすらキーワードを書き出して、後からマインドマップに落とし込める。
ガントチャートモード:
複数人によるプロジェクトの作業進捗を管理する「ガントチャート」の作成機能も搭載。
マインドマップを始めとしたツールを本格的に使いこなしたい人向けといえます。公式YouTubeにて使い方のイメージがよくわかる動画が載っているので見てみてください。英語の動画ですが、視覚だけで十分理解できます。
『XMind 8 Pro』と『XMind: ZEN』の違い
XMindの中には
●XMind 8
●XMind 8 Pro
●XMind: ZEN
と3種類のサービスがあります。
8と8 Proの違いはシンプルで、機能制限された無料版かフル機能を備えた有料版かというだけの違い(Proが有料)。
8 ProとZENの違いは以下の通りです。
XMind 8 Pro:
プレゼンテーションやガントチャートも行える、より高機能な製品。マインドマップのヘビーユーザー、よりプロフェッショナルな機能を求める人向け。
XMind: ZEN:
マインドマップの美しさや、わかりやすくスムーズな操作性を重視した製品。8 Proほど専門的な機能を必要とせず、単純にきれいなマインドマップを作りたい人向け。
参考:XMindサポート(英語)
価格
XMind 8(機能制限されたお試し版)
無料
XMind 8 Pro
13,036円
XMind ZEN
6,800円/年
4,500円/6ヶ月
※「XMind ZEN」はApp Store版・Google Play版もあり。料金はPC版もしくはスマホ版どちらか一方でのみ支払えばOK。
『MindMeister』 複数人での活動に最適なオンライン共同編集
スマホ・PCともに対応した、Webブラウザ上で使うマインドマップサービス。
指定した他のユーザーとリアルタイムに共同編集できるのが大きな特長です。また、洗い出した作業を各メンバーに割り振っていくタスク管理機能も。
企業やサークルなど、複数人で活動するときに最も活躍します。
編集機能の充実ぶりに加えて、編集履歴を細かく残せるのも特長。
1人でマインドマップを作るならまだしも、共同で編集していると自分の把握していないところでどんどん図が変わることがあります。削除された項目をチェックしたり、どんな流れで今のマインドマップに至ったのかを見たりしたくなることもあるでしょう。
履歴機能を使うと、特定の日時に戻ったり、どのように変更が加えられたのか順番に見ていくこともできます。
価格
ベーシック
無料
お試し版の位置付け。作れるマインドマップは3枚まで。
パーソナル
540円/月
1人で利用する人向け。共同編集などの機能がないバージョン。
プロ
915円/月(1ユーザーごと)
複数人での編集機能をフルに備えたバージョン。
ビジネス
1,410円/月
プロ版に加えて、優先的な電話サポートなどが手厚い特典が得られるバージョン。
『Mindly』 縦長マインドマップを快適に作成。スマホに最適
マインドマップは基本大きな用紙(画面)で描くのが推奨されますが、今どきスマホで作りたいというニーズも大きいでしょう。
要素を「円」にすることによって、スマホの小さな縦画面でも見やすくなったマインドマップアプリです。
操作はスマホ向けにかなり簡素化されており、ブランチ(このアプリでは円)にテキストを書き込んでいくシンプルな仕様。
ブランチの位置関係を手動でいじることはできませんが、等間隔に整理されたきれいな円の並びで全体を見渡せます。
価格
App Store版
860円
Google Play版
640円
Mac App Store版
3,680円
※App Store版、Google Play版はダウンロードは無料。作成できる要素(円)の数に制限あり。
『SimpleMind』 本格的マインドマップをスマホでも。王道機能を網羅
スマホでも本来のマインドマップをしっかり作り込みたいという場合はこのアプリがおすすめ。
スマホ・タブレットでもPC版のように細かい編集ができ、思い通りのマインドマップが作れます。
無料版では複数端末の同期や画像・PDFのエクスポートなどが使えないものの、マインドマップの作成自体は個数制限なく行え、使い勝手を試すうえでは十分。
マインドマップを使っていくうえで特にこだわりがなく、オーソドックスなものを求めるならこのアプリでも良いでしょう。
価格
SimpleMind+ / SimpleMind Free
無料
お試し版の位置付け。複数端末の同期やエクスポートなどで機能制限あり。
SimpleMind Pro+(App Store有料版)
980円
SimpleMind Pro(Google Play有料版)
850円
SimpleMind Pro(Mac App Store有料版)
3,680円
SimpleMind Pro(Windows有料版)
3,680円
可能性を広げるマインドマップ。自分なりの使い方を見出して有効活用を
マインドマップは著名人にも愛用している人は多く、うまく使えばとても有益なツールです。最初の頃は正しい使い方を気にしたり、できた図の見栄えに満足いかなかったりする部分もあると思いますが、ぜひ繰り返し活用して能力開発や作業の効率化につなげてください。
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