2022年のアジア競技大会では正式種目に採用されることが決定し、オリンピックの正式種目としても検討されている「eスポーツ」。聞いたことはあるけど、実際にどんなスポーツなのかは知らない人が多いのではないでしょうか。
本記事では「eスポーツ」の概要や歴史、賞金制の大会が開かれているゲームタイトルを紹介。全国にプロゲーマーを育てる高校や専門学校、最高のゲーミングデバイスを取り揃えたカフェが開業されるなど、日本でも少しずつ「eスポーツ」に注力しています。
話題の「eスポーツ」とは? 人気のゲームは何? 優勝賞金3億円超の競技種目も
eスポーツとは
eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」の略称。PS4・Nitendo SwitchなどのコンシューマーゲームやPCゲーム、スマホゲームで競技することを指します。
代表的なタイトルは「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)」や「Dota 2」で、世界大会の視聴者数は1千万人をゆうに超えます。
最近では「フォートナイト(Fortnite)」が賞金総額30億円を超える世界大会を開催し、16歳の少年が優勝賞金300万ドル(約3億2600万円)を獲得したことで、さらに注目を集めました。
世界の競技人口は1億人以上
「eスポーツ」の競技人口は1億3,000万人、視聴者は3億人を超えると言われており、野球やサッカーを観戦するようにeスポーツを観戦する人が増えています。「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会では視聴者数9,960万人を達し、同時視聴者数4,400万人を記録しました。
「eスポーツ」はアメリカや韓国、中国をはじめ世界では年々盛り上がりを見せており、ゲーム業界の動向を分析している世界大手の調査会社Newzooによると、2022年には「eスポーツ」の市場規模がおよそ18億米ドル(約2,000億円)に達すると予想されています。
参照:Newzoo: Global Esports Economy Will Top $1 Billion for the First Time in 2019
eスポーツの歴史
最初のゲーム大会は日本で開催されたと言われている
もっとも古くに開催された全国規模のゲーム大会は、1974年に日本で行われた「セガTVゲーム機全国コンテスト東京決勝大会」と言われています。
またゲームで賞金を獲得する「eスポーツ」の原点とされる大会は、1997年にアメリカで設立した「サイバーアスリート・プロフェッショナル・リーグ(以下:CPL)」といわれており、この大会で採用されたゲームは「Quake」というフル3DのFPSでした。
ゲームジャンルの幅が広がり、2000年代から盛り上がりを見せる
2000年代に入ってからFPSやTPSの他に、RTSやスポーツなど様々なジャンルで世界大会が開催されるようになったことで、プレイヤーと観戦者が急増。またスポンサーとして協賛する企業も増え、世界的に「プロゲーマー」が認められる存在になりはじめました。
世界各国で高額賞金のeスポーツ大会が開催
2000年に韓国で開催された「The World Cyber Game Challenge」では、賞金総額20万米ドルを用意。世界を大表するeスポーツ大会として注目を集めました。
年々、賞金総額は増え続け、2005年に開催された「CPL」では150万米ドルに到達。その他にも、ヨーロッパやアジアなど世界各国で「Electronic Sports World Cup」や「World e-Sports Games」、「Major League Gaming」など高額賞金のeスポーツ大会が開催されはじめました。
世界を代表するeスポーツ大会
・Cyberathlete Professional League(CPL)
・Electronic Sports League(ESL)
・The World Cyber Games Challenge
・eSports World Convention(ESWC)
・World Series of Video Games
・Evolution Championship Series(EVO)
・Major League Gaming(MLG)
日本で認知され始めたのは2010年頃
2010年にウメハラさん(本名:梅原大吾)が米国企業とプロ契約を締結して、「日本人初のプロ格闘ゲーマー」としてメディアに取り上げられたことをキッカケに、日本でも「eスポーツ」や「プロゲーマー」が認知され始めました。
そして2018年に「日本eスポーツ連合(JeSU)」が設立。翌年の2019年には新たなeスポーツ団体「日本esports促進協会(JEF)」が設立され、日本でも「eスポーツ」の普及促進に力を入れ始めました。
日本のeスポーツ市場はまだまだ小さい。法律の問題が壁に
KADOKAWA Game Linkageの発表によると、2019年の日本eスポーツ市場規模は前年比127%の61.2億円にまで拡大。またeスポーツを観戦する人も前年比126%の483万に増えたとのこと。
参照:KADOKAWA Game Linkage
日本のeスポーツ市場規模は順調に拡大していますが、世界のeスポーツ市場規模には遠く及びません。というのも、これまで日本はeスポーツ大会の賞金は景品表示法に当たるとし、ゲームの価格の20倍または10万円までしか賞金を出すことはできませんでした。
そのため少額のeスポーツ大会しか開催できない日本に協賛する企業は少なく、高額賞金の大会を開催している世界各国に比べて、大きく遅れをとっています。
困難を乗り越え、日本でも盛り上がりの兆しが
しかし最近では「賞金」ではなく「仕事の報酬」として支払うことで、景品表示法違反をうまく回避。日本でも「RAGE」のような何千、何億の高額賞金のeスポーツ大会が開催されるようになり、スポンサー企業も増えています。
また2019年10月には茨城で国体初のeスポーツ大会「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」を開催。引き続き2020年の9・10月に鹿児島で開催することが決定しており、国内でも徐々に盛り上がりを見せています。
日本国内で開催されている代表的なeスポーツ大会
日本国内ではスマホゲームのeスポーツ大会が盛り上がっており、「モンスターストライク」と「Shadowverse(シャドウバース)」は賞金総額1億円を超えるeスポーツ大会を開催しています。
そのほか、「荒野行動」や「IdentityV(第五人格)」なども高額賞金のeスポーツ大会を開催し、多くのユーザーから人気を集めています。
モンストグランプリ2019 アジアチャンピオンシップ
「モンスターストライク」は2019年に賞金総額1億円の「モンストグランプリ2019 アジアチャンピオンシップ」を開催。グーグル合同会社の「Google Play」やトヨタ自動車株式会社「COROLLA SPORT」など、数多くの企業がスポンサーについており、eスポーツ大会への注目度の高さがうかがえます。
2019年11月9日より始まった賞金総額1億円の「モンスト プロツアー」。2020年2月29日にツアーファイナルが開催され、優勝チームが決定します。
Shadowverse World Grand Prix 2019
「シャドウバース」は2018年に続いて2019年にも優勝賞金1,1億円の世界大会「Shadowverse World Grand Prix 2019」を開催。
2020年も優勝賞金は変わらず1,1億円の世界大会、「Shadowverse World Grand Prix 2020」が開催されると公式より発表されています。
荒野王者決定戦 -東西対決! 一触即発!-
『荒野行動』は2019年8月12日に東京で賞金総額2,500万円の大会を開催。YouTube Liveの同時視聴者数は最大で6万5,000人を超え、現地でも多くの『荒野行動』ファンが来場し、盛り上がりを見せていました。
その他にも学生限定の大会や2019年12月から3ヶ月間、毎月150万円の賞金制大会を開催するなど、eスポーツイベントに注力しています。
Identity V Championship Japan 2019
『Identity V(第五人格)』は2019年10月26日に賞金総額500万円の決勝大会を開催。2020年5月には賞金総額200万元(約3,000万円)の世界大会が中国で開催される予定です。
まだまだある! eスポーツで人気のスマホゲームたち
「モンスターストライク」「シャドウバース」ほど規模は大きくありませんが、賞金制のeスポーツ大会を開催したことのあるスマホゲームは、パズドラ、PUBG、クラロワ、ブロスタなど、まだまだたくさんあります。
eスポーツでプレイされているゲームジャンル
FPS
FPSはファーストパーソン・シューター(First Person Shooter)の略であり、主人公と同じ視点で操作するスタイルの3Dアクションシューティングの総称。基本的に画面に表示されるのは主人公の体の一部(腕など)か武器のみ。主人公と視界を共有する一体感、没入感が魅力のゲームジャンルです。
eスポーツ大会での見どころ
世界大会に進出するチームは連携力が凄まじく、お互いに牽制していたかと思えば、あっという間に決着がつくことも。コンマ1秒の判断で勝敗が決まる、緊張感のある戦闘は観ている側も興奮します。
eスポーツで遊ばれている有名なFPS
・Overwatch(オーバーウォッチ)
・Rainbow Six(レインボーシックス)シリーズ
・Counter-Strike(カウンターストライク)シリーズ
・Call of Duty(コールオブデューティー)シリーズ
TPS
TPSは「サードパーソン・シューティングゲーム(Third Person Shooter)」の略称で、三人称視点で操作するシューティングゲーム。FPSと違ってキャラクターの全身が見えるので、状況を把握しやすい、画面酔いしにくいなどの利点があります。
eスポーツ大会での見どころ
TPSは「フォートナイト」や「Apex Legends」のようなバトルロイヤル形式が多く、チームの連携力より個々の技術力に注目。一人ひとりのパフォーマンスが高く、目を疑うような戦闘光景には圧巻です。
eスポーツで遊ばれている有名なTPS
・PLAYERUKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)
・Fortnite(フォートナイト)
・Apex Legends
・Splatoon(スプラトゥーン)
・荒野行動
RTS
リアルタイムに進行する時間に対応しつつ、俯瞰視点で全体の戦況を把握。即座に戦略を立てながら、敵と戦うシミュレーションゲームです。
eスポーツ大会での見どころ
運に左右されることのない、しっかりとした戦略性のあるバトルが楽しめます。序盤から終盤まで気の抜けない攻防が繰り広げられ、観ている側もピリピリとした緊張感が伝わってきます。
eスポーツで遊ばれている有名なRTS
・Age of Empires(エイジ オブ エンパイア)シリーズ
・StarCraft II
・WarCraft III
・クラッシュ・ロワイヤル(クラロワ)
MOBA
MOBAはRTS(リアルタイムストラテジー)から派生したゲームジャンル。5vs5、3vs3などのチームに分かれ、互いの拠点を取り合うというものです。個人のプレイヤースキルも大切ですが、チームの連携力がより需要です。
eスポーツ大会での見どころ
キャラのレベルが上がり、装備が整いだす中盤戦がもっとも熱いです。序盤は負けていても、中盤以降に形勢逆転することも多く、会場を沸かせる戦闘シーンが勃発。最後まで緊迫した試合が繰り広げられます。
eスポーツで遊ばれている有名なMOVA
・League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)
・Dota 2(ドータ2)
格闘ゲーム
プレイヤー同士がキャラクターを操作し、主に1対1の格闘技で戦う対戦型ゲーム。相手の攻撃を回避したりコンボをつなげたり、プレイヤースキルが勝敗を大きく左右します。
eスポーツ大会での見どころ
相手の行動を読み、コンボ技を繋げてK.O.したときが一番盛り上がります。とくに体力ミリから逆転したときは、間違いなく興奮します。
eスポーツで遊ばれている有名な格闘ゲーム
・ストリートファイターシリーズ
・ザ・キング・オブ・ファイターズシリーズ
・DEAD OR ALIVEシリーズ
・マーベル VS. カプコンシリーズ
・大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ
・鉄拳シリーズ
・ソウルキャリバーシリーズ
スポーツゲーム
野球やサッカー、バスケなどのスポーツを題材にしたゲーム。選手を操作して、相手よりも多くの得点をあげると勝利です。
eスポーツ大会での見どころ
実際のスポーツとは違って点の取り合いになることが多く、観ていて楽しいゲーム展開になりやすいです。たとえばサッカーゲーム「FIFA」のeスポーツ大会では、5-4や6-1など実際のサッカーではほぼ見かけることのない試合がいくつもあります。
eスポーツで遊ばれている有名なスポーツゲーム
・FIFAシリーズ
・ウイニングイレブンシリーズ
・NBAシリーズ
レーシングゲーム
乗り物を操縦し、他プレイヤーとタイムや順位を競うゲーム。eスポーツで有名なレーシングゲームはスポーツカーを操縦するものが多いです。
eスポーツ大会での見どころ
実際にF1の試合を見ているかのような臨場感を味わいながら観戦できます。タイヤの摩擦消費なども設定されており、どのタイヤを使って何周走るのか、選手は運転技術以外にも注目です。
eスポーツで遊ばれている有名なレーシングゲーム
・グランツーリスモSPORT
・WRCシリーズ
・F1シリーズ
・rFactorシリーズ
パズルゲーム
次々に落ちてくるパズルを組み合わせ、積み上げられたパズルが画面いっぱいになる前に消していく落ち物パズルゲーム。相手よりも素早くパズルを消し続けられるかが勝敗を決します。
eスポーツ大会での見どころ
普通の人では脳の処理が追いつかないほどのスピードで、パズルを組み立てていく様は観ていて楽しいです。また何十コンボも繋がり、一気にパズルが消えていくのは爽快です。
eスポーツで遊ばれている有名なパズルゲーム
・ぷよぷよシリーズ
・TETRiSシリーズ
トレーディングカードゲーム
対戦形式の2人プレイのデジタルカードゲーム。さまざまなクラスから好みのデッキを作成し、相手と対戦。対戦相手との駆け引きを楽しみつつ、勝敗を競います。
eスポーツ大会での見どころ
「相手は反撃できるカードを持っているから、今出すのは悪手」など、観ている側は両者の手札を知った上で、お互いの駆け引きが観られる面白さがあります。
eスポーツで遊ばれている有名なカードゲーム
・Hearthstone(ハースストーン)
・Shadowverse(シャドウバース)
数多くの日本人プレイヤーが世界で活躍することを期待
少しずつですが世界大会で活躍する日本人プレイヤーが増えています。今後、日本でeスポーツが普及して環境が整っていけば、いろんなゲームタイトルで優勝を狙えるレベルにまで達するのではないでしょうか。
また優勝する日本人プレイヤーが増えることで、自然と「eスポーツ」の認知度が上がっていくことでしょう。
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