ChatGPTを商用利用するには?著作権問題やリスクを解説
最終更新日:2024年07月10日
ChatGPTは、OpenAIが開発した大規模言語モデルを利用した対話型AIです。高度な文章生成能力を持ち、ビジネスシーンでも有効活用できるため、話題となっています。
しかし、ChatGPTを商用利用する際には、事前に知っておいたほうが良い注意点が多くあります。「気づかないうちに著作権を侵害していた」ということにならないためにも、きちんとリスクを理解した上で活用することが大切です。
今回は、ChatGPTの商用利用における注意点や期待できる効果、著作権問題について解説します。
ChatGPTは商用利用しても大丈夫?
ChatGPTは、利用規約を遵守する限り、出力されたコンテンツをあらゆる目的で利用できると説明しています。つまり、ルールを守れば、販売や出版などの商業目的での使用も可能です。
ただし、商用利用する際は、必ずOpenAIの「利用規約」を確認し、禁止事項を守る必要があります。
ChatGPTの利用規約で禁止されている事項
ChatGPTの利用規約を理解することは、商用利用する上では必要不可欠です。そこで、規約上禁止されている事項について、一部抜粋してご紹介します。
<ChatGPTの利用規約で禁止されていること>
他者の権利を侵害、悪用、または侵害する方法で本サービスを使用すること
OpenAIの本サービスを変更、コピー、リース、販売、又は配布すること
OpenAIのモデル、アルゴリズム、またはシステムを含む、本サービスのソースコードまたは基礎となるコンポーネントの発見、リバースエンジニアリング、逆コンパイルについて試みたり、他者を支援したりすること(当該制限が適用法令で禁止されている場合を除く)
データまたはアウトプットを、自動またはプログラムにより引き出すこと(以下に定義)
人が作り出したものではない場合に、アウトプットを人が作り出したものと表示すること
レート制限や規制を回避したり、OpenAIが本サービスに実装させている保護措置や安全管理上の緩和対策を迂回したりするなど、本サービスを妨害または中断させること
アウトプットを使用して、OpenAIと競合するモデルを開発すること
※出典:OpenAI公式サイト「利用規約」
ChatGPTを商用利用するメリット
ChatGPTを商用利用することで、業務の効率化が図れます。例えば、今までルーティンワークとして行っていた問い合わせ対応やメールの作成などをChatGPTに任せることで、業務時間を圧倒的に短縮できるでしょう。また、ChatGPTを利用することで業務を自動化できるため、人件費の削減にも期待できます。
さらに、ChatGPTに業務を任せることで、誤字脱字などのケアレスミスも防げます。人間に比べ、ミスが少なく正確性が高いため、作業効率のアップにもつながるのです。
ChatGPTの著作権問題について
ChatGPTで生成されたコンテンツの著作権は、基本的には利用者に帰属します。しかし、既存のコンテンツに酷似している場合には、著作権侵害となる可能性があるため注意が必要です。
2023年6月に文化庁が発表した「AIと著作権」では、既存の著作物との類似性および依拠性が認められる場合、「権利者から利用許諾を得ている」もしくは「許諾が不要な権利制限規定が適用される」のいずれかに該当しない限り、著作権侵害になるとしています。また、コンテンツ内に差別的な内容や名誉毀損に当たる内容が含まれている場合にも、訴えを起こされるリスクがあるので注意してください。
著作権侵害の訴えを起こすには、コンテンツの生成過程で自身の著作物が利用されているか、生成されたコンテンツが自身の著作物と似ているかの2点を、著作者が立証する必要があります。違反したからといって必ず訴えられるわけではありませんが、ChatGPTによる著作権侵害が多発すると、ビジネス利用が厳しく規制される可能性もあるため、避けることが望ましいでしょう。
ChatGPTで著作権侵害を疑われるケース例
では、具体的にどのような場合に著作権侵害と疑われてしまうのでしょうか。
ChatGPTによって生成された文章が、既存の書籍やサイトの内容と酷似していた場合、著作権侵害を疑われます。画像や音声も同様です。また、ChatGPTに著作権が含まれるプロンプトを流用した場合も、違反の対象になる可能性があります。
著作権侵害を避けるためには、商用利用する前にChatGPTで生成されたコンテンツが、既存の著作物と似ていないかを十分に確認することが大切です。疑わしい場合は、専門家に相談するなどして、慎重に判断しましょう。
ChatGPTを商用利用する際に気をつけること
ChatGPTを商用利用する際には、気をつけるべきポイントがあります。ここでは、著作権侵害や情報の不確実性、情報漏洩などのリスクと対策について解説します。
著作権を侵害していないか確認する
基本的にはChatGPTで生成したコンテンツの著作権は利用者のものです。しかし、既存のコンテンツに酷似する場合や、コンテンツ内に差別的な内容、名誉毀損に当たる内容が含まれている場合に、著作権の侵害を疑われる可能性があります。
さらに、著作権が含まれるプロンプトを流用することも著作権侵害とみなされる場合があります。また、著作権が含まれるプロンプトを無許可で要約・改変した場合も、著作権侵害の訴えを起こされるリスクがあるので注意しましょう。
このようなリスクを回避するためにも、商用利用する際には生成されたコンテンツが既存の著作物と似ていないかを、十分に確認することが大切です。
情報が不明確でないか確認する
ChatGPTは膨大なデータを学習した上で回答を生成していますが、あくまで「それらしいもの」を生成するAIです。そのため、回答内容が最新の情報でなかったり、誤った情報だったりする場合があります。
そのため、生成されたコンテンツをそのまま使用するのではなく、必ず内容の正確性を確認することが必要です。信頼できる情報源と照らし合わせて、ファクトチェックを行いましょう。もし情報の誤りや古さが見つかった場合は、適宜修正が必要です。
情報漏洩に注意する
ChatGPTには学習機能があるため、個人情報や機密情報などを読み込むと情報漏洩する可能性があります。
情報漏洩のリスクを避けるためには、ChatGPTに入力する情報の厳選が大切です。機密情報や個人情報などの秘匿性の高いデータは、学習対象から除外しましょう。
ChatGPTを利用したことを記載する
利用規約において、AIを利用した生成物である旨を明示することが求められています。商用利用の際は、必ずコンテンツのどこかに「AIを使って生成した」という旨を表記しましょう。
これは、AIによる生成物であることを利用者に知らせるための配慮です。AIの特性上、情報の誤りや偏りがある可能性があるため、その点を利用者に理解してもらう必要があるからです。また、著作権侵害の疑いを避けるためにも、AIを利用したと明示することが重要といえます。
利用規約を定期的にチェックする
ChatGPTの利用規約は定期的に改訂されるため、常に最新版をチェックし、遵守する必要があります。生成AIを巡る情勢は日夜変化しており、法律なども適宜変わっていくおそれがあるからです。
過去の規約上は問題なかった場合も、最新の規約ではルール違反になる可能性もあります。定期的に利用規約を確認し、適切に活用することを心掛けましょう。
認知バイアスに注意する
ChatGPTは大量のテキストデータから学習しているため、そのデータ自体が人間の認知バイアスを含んでいる場合、回答にも影響する可能性があります。例えば、「看護師は女性、医者は男性」というようなステレオタイプの回答をすることがあるのです。
そのため、使い方によっては性差による差別や人種による偏見が再生産されるおそれがあります。生成されたコンテンツに、差別的な記載がないかどうか、念入りにチェックすることが重要です。
ChatGPTを商用利用することで期待できること
ChatGPTを商用利用すれば、情報収集やデータ分析、文章作成など、さまざまな業務の効率化が期待できます。ここでは、ChatGPTを活用することで得られる具体的なメリットをみていきましょう。
情報収集やデータ分析
ChatGPTは学習した膨大な情報の中から必要な情報を抽出し、質問に対する回答を作成します。そのため、普段はあまりふれない分野について調査したい時や、データ分析を行う際に役立ちます。
例えば、新しい事業を立ち上げる際の市場調査を行う際に、ChatGPTを活用して競合他社の情報を収集したり、市場のトレンドを分析したりすることが可能です。また、社内に蓄積されたデータを解析する際にも、ChatGPTに質問することで素早く必要な情報を引き出せるでしょう。
つまり、情報収集やデータ分析にChatGPTを活用すると、業務の効率化と意思決定の迅速化が実現できるのです。ただし、ChatGPTの情報は完璧ではないため、最終的な判断は人間が行う必要がある点には注意しましょう。
文章の作成や要約、翻訳
ChatGPTは過去の文章生成ツールに比べ、はるかに自然な文章を作成できます。トピックやキーワードに対して文章を生成するため、SEO記事やメールの作成にも活用できるでしょう。
また、既存の文章を要約することも得意です。長い会議の議事録やレポートを要約する際に、ChatGPTを使えば作業時間を大幅に短縮できます。
さらに、ChatGPTは英語・日本語以外にもさまざまな言語に対応しており、言語間の翻訳も可能です。海外とのビジネスにおいて、ChatGPTを活用すれば、コミュニケーションの円滑化が期待できます。
表計算やグラフの作成
ChatGPTを使えば、データ分析を自動化できます。会話文で指示するだけで簡単にグラフを生成し、平均・相関などの統計量の計算、さらには回帰分析や予測モデルの構築も可能です。
データ分析が苦手な人でも、資料に掲載するための美しいグラフが作れたり、売上や注文履歴などのデータから傾向を分析できたりします。
アイディアの壁打ち
新しいアイディアを考える際、ChatGPTを活用して壁打ちを行うことができます。自分の知識だけでは思いつかないようなアイディアを、ChatGPTが提案してくれる可能性があるのです。
例えば、新商品の開発や販促企画を考える際に、ChatGPTに「◯◯というテーマでアイディアを出してください」と質問すれば、膨大なデータからアイディアを出してくれます。このようなChatGPTとのやりとりを通じて、発想の幅を広げることができるでしょう。
コードの作成
ChatGPTは、プロンプトで指定した要件にもとづいて、短いコードスニペットやまとまったコードを生成できます。使用するプログラミング言語に関しても、PythonやJavaScriptといったメジャーなプログラミング言語から、アプリ向けのSwift、Kotlinなどにも対応可能です。
例えば、「Pythonでデータを読み込んで、グラフを描画するコードを作成してください」といった指示を与えれば、要件に沿ったコードを生成してくれます。ただし、生成されたコードの品質は完璧ではないため、必ず人間が確認し、必要に応じて修正を行いましょう。
ユーザーからの問い合わせ対応
ChatGPTを活用すれば、ユーザーからの問い合わせ対応を自動化できます。顧客データなどを読み込ませたり、細かく対応方針を定義したりすることで、顧客ごとの細やかな対応も可能になるでしょう。
例えば、よくある質問への回答をChatGPTに学習させておけば、問い合わせが来た際に自動で適切な答えを回答できます。また、過去の購買履歴などの顧客データを活用すると、個々の顧客にパーソナライズされた対応も実現できるのです。
このようにChatGPTを活用した問い合わせ対応の自動化は、顧客満足度の向上と業務の効率化を両立できる可能性を秘めています。
ChatGPTを商用利用するためには、著作権問題に注意が必要
ChatGPTを商用利用することで、情報収集やデータ分析、文章作成、コード生成など、さまざまな業務の効率化が期待できます。ただし、ChatGPTは業務効率化に役立つ強力なツールですが、万能ではありません。
商用利用する際は、利用規約の遵守や著作権侵害への注意、情報の精度確認、機密情報の取り扱いなど、いくつかの注意点があることを理解する必要があります。現時点で商用利用を考えている場合は、ChatGPTの特性をよく理解し、適材適所で活用することが重要です。
ChatGPTの活用は、これからのビジネスに欠かせないものになっていくと考えられています。注意点を踏まえつつ、うまく活用し業務効率化とビジネスの成長につなげていきましょう。
ChatGPTの導入を検討している方は「ナイルの生成AIコンサルティング」に相談を
ChatGPTを商用利用したいけれど、具体的な使い方がわからない、うまく運用できるか不安という方も多いのではないでしょうか。そんな方におすすめなのが、「ナイルの生成AIコンサルティング」です。
ナイル株式会社が提供する「生成AIコンサルティング」では、ChatGPTを始めとする生成AIの導入セミナーを始め、ChatGPTを業務でどのように使うかの洗い出しや、それによる売上向上やコスト削減効果の可視化についてもご相談いただけます。
ChatGPTを業務に取り入れて、効率化を実現するために、ぜひナイルの生成AIコンサルティングをご活用ください。