ChatGPT Enterpriseとは?従来のChatGPTとの違いを解説

ChatGPT Enterpriseとは?従来のChatGPTとの違いを解説

最終更新日:2024年04月22日

2022年11月に発表されて以降、急速に利用者を増やし、すっかり身近な存在となった「ChatGPT」ですが、最近では「ChatGPT Enterprise」という新たなサービスの名前も聞かれるようになりました。

<この記事を要約すると>

ChatGPT Enterpriseとは、一言でいうと、企業利用を想定したChatGPTの上位版サービス。2023年8月に発表されたもので、通常のChatGPTと比較して、さまざまな面で性能、機能が強化されているのに加え、データの安全性も大きく向上しています。

ChatGPTとは

そもそも、ChatGPTとは、文章で指示したことに対して、その意味や目的を理解し、適切な答えを返してくれるサービスのことです。「佐賀県の人口は何人?」、「京都市で人気のレストランはどこ?」といった質問に答えさせるだけでなく、目的に応じた新たな文章の作成、すでにある文章の要約や翻訳など、さまざまな用途で使うことが可能。

ChatGPTはインターネット上にある膨大な量のデータを参照し、“知識”として蓄積しています。これにより、幅広いジャンルの指示に対応できるのに加え、まるで人間と話しているかのような自然なやり取りができるのです。ChatGPTを開発したのは人工知能を研究している民間の団体・OpenAI。アカウントさえ作れば、誰でも無料で使えるという手軽さもあって、発表から3ヶ月でユーザー数が1億人を超えるという爆発的な普及をみせました。

ChatGPT Enterpriseとは?何が便利になったの?

 とはいえ、ChatGPTも万能ではありません。使っているうちに、指示の文章の長さに制限がある、答えが返ってくるまでに時間がかかるといった不満が出てくることも。そんなときに注目したいのがChatGPT Enterpriseです。

ChatGPT Enterpriseとは、一言でいうと“ChatGPTの最強バージョン”。

・返答が早くなる

・より多くのデータを扱えるようになる

・複数人で利用できる

・セキュリティが向上する

など、機能が大きく強化され、ビジネスの場面でも存分に活用できるようになっています。通常のChatGPTとは異なり、有料のサービスではありますが、利用を検討する価値は十二分にあるでしょう。利用料金は企業の規模や従業員数、必要な機能に応じて変動するとされていますが、具体的な金額は公開されていません。通常は、公式サイトの問い合わせフォームを通じて、OpenAIの営業担当者と個別に相談する必要がありますが、もしご面倒であれば、まずはナイル株式会社までご連絡ください。概算のお見積りをさせていただきます。

次の項では、ChatGPT Enterpriseの特徴と利用するメリットについて、具体的にみていきましょう。

<表>従来のChatGPTとの違い

ChatGPT ChatGPT Enterprise
用途 個人向け 企業向け
利用料金 無料 要問い合わせ
モデル GPT-3.5 GPT-4
回数制限 なし なし
機能 基本のチャット ・高度なデータ分析・ブラウジング機能・プラグイン・混雑時の優先接続・24時間サポート・ベータ版機能への早期アクセス・最大2倍の速さ・セキュリティ強化・最大トークン拡大・データのトレーニング使用なしなど
最大トークン数 4096 32,000
文字数(日本語の場合) 2,000文字程度まで 15,000文字程度まで

無制限の高速GPT-4へのアクセスが実現し長文対応が可能に

ChatGPT Enterpriseの特徴としてまず挙げられるのは、

・返答が早い

・より多くのデータを扱える

 の2点。これは使われている大規模言語モデルがGPT-3.5からGPT-4に強化されたことに由来します。

 「大規模言語モデル」とは“入力された単語の次に出力される単語予測を繰り返し、文章を作り出していく、生成AIの根幹をなす仕組み”のことを指すのですが、あまりピンとこない方も多いでしょう。ごく簡単にいうと、“パソコンに使われているCPUをより高性能のものと交換した”状況をイメージしていただければ間違いありません。要は、ChatGPTの“頭がよくなる”のです。

 頭がよくなったことで、通常のChatGPTでは指示文の長さが2,000文字程度までだったのが15,000文字程度まで対応できるようになり、返答も早くなりました。一回で複雑な指示ができるのに加え、返答を待つ間のストレスが軽減されるのは、ビジネスの現場において大きな利点といえるでしょう。さらに、「同様3時間ごとに50メッセージ」といった回数制限も設けられていないので、心おきなく活用することができます。

Code Interpreterで、さらに強力なデータ分析が可能

 ChatGPT Enterpriseでは、「Code Interpreter」という通常のChatGPTにはない追加機能を利用することもできます。

 Code Interpreterとは、簡単にいうと、“文章以外のデータも扱えるようになる”機能のことです。通常のChatGPTでは“教えて欲しいこと”、“して欲しいこと”といった指示を文章の形にまとめて入力する必要がありました。しかし、Code Interpreterが使えれば、文章以外のデータ(Excelファイル、Wordファイル、PDFファイルなど)をアップロードすれば、その内容も参照、解析され、返答へ反映されるようになるのです。

 また、ChatGPT Enterpriseからの返答も、文章だけでなく、グラフやダウウンロード可能なファイルなど、さまざまな形式を選べるようになります。

 これにより、例えば、

・Excelファイルをアップロードして、どのような要素が含まれているか、どのような活用が可能かといった解説、提案をさせる

・Excelファイル内の数値から、自動的にグラフを作成させる

・PDFファイル内の数値を読み込んで、Excelファイルに転記させる

・Wordファイルの内容を要約して、PowerPointファイルを作成させる

 といったより高度な使い方も可能になります。ちなみに、Code Interpreterの利用についても回数の制限はありません。

ChatGPT Enterprise向けのセキュリティとプライバシー対応

 ChatGPTのような生成AIのビジネス利用については、当初からセキュリティ面のリスクが懸念されていました。しかし、ChatGPT Enterpriseでは、その点についても抜かりなく対策されています

通常、生成AIはインターネット上のデータを参照、蓄積することで精度を高めていきますが、ChatGPT Enterpriseでは、ユーザーの入力した指示文やアップロードしたデータが蓄積されること、つまり、第三者に共有されることはありません。

また、すべてのデータ送信は暗号化されているため、データ機密性やプライバシーの保護レベルも万全です。こうしたChatGPT Enterpriseのセキュリティ対策は、米国の公認会計士協会(AICPA)が開発した高水準のセキュリティを維持するための国際的な基準「SOC 2」を満たしているといえば、その信頼性の高さがうかがえるでしょう。

大量のデータを長期間保持することが可能

ユーザーが入力した指示文、アップロードしたデータなどをより長い期間、より正確に保持しておけるのもChatGPT Enterpriseならではの特徴の一つです。

これまでのデータなどがすぐに消える心配がなく、履歴を参照したり、過去の依頼文などを読み返したりもできるため、複数人で利用した場合の行き違いや作業の重複を防ぐことができます。

複数人の利用でも管理のしやすい設計

通常のChatGPTが個人での利用を想定しているのに対し、ChatGPT Enterpriseは、企業などにおける複数人での利用を想定しており、そのための管理機能も豊富に備わっています。具体的には、

・マスターアカウントの提供

「マスターアカウント」とは、すべてのユーザーのアカウントを一括管理できるアカウントのこと。新たなアカウントを作成したり、不要になったアカウントを削除したりといった設定が簡単におこなえます。

・SSO(Single -Sign-On)

「SSO」とは、一度ログイン認証をおこなえば、複数のサービスを切れ間なく行き来できるようにする仕組み。ユーザーがサービスを切り替える度にログインしなければならない手間が省けるだけでなく、認証情報が共通となるため、管理業務の負担も軽減できます。

・ドメイン認証

特定のドメインからのみChatGPT Enterpriseへアクセスできるよう設定することによって、不正な利用を防ぎ、セキュリティを強化します。

・利用量管理ができるダッシュボード画面

ChatGPT Enterpriseでは、利用量の管理ができる「ダッシュボード画面」が提供されています。ユーザーごとの利用状況を追跡し、必要に応じて制限やリソースの再配分をおこなうことにより、使いすぎで想定外の費用が発生する事態も防げます。

 などが挙げられます。大企業を含む多くの企業でChatGPT Enterpriseの導入が進んでいる背景には、こうした管理機能の充実もあるのです。

ChatGPT Enterpriseと通常のChatGPTとの違いは?

続いて、ChatGPT Enterpriseと通常のChatGPTとではどのような違いがあるのか、いくつかの観点からみていきましょう。

安全性はChatGPT Enterpriseに軍配が上がる

通常のChatGPTに限らず、生成AIはユーザーが入力した指示文や、アップロードしたデータも知識として蓄積しているといわれます。つまり、秘匿性のある情報を入力すると、その生成AIのサービスを提供している会社や、ほかのユーザーにも、間接的とはいえ共有されてしまうリスクがあるのです。個人情報を扱う医療従事者や公務員、一般企業でも営業、契約、財務、技術開発などの担当者は特に注意が必要でしょう。

 また、著作権のある文章や写真、イラストなどを入力・アップロードすると、それがほかのユーザーへの返答に反映され、双方とも気がつかないうちに著作権の侵害が起きてしまう事態も考えられます。

 その点、すでにお伝えしたとおり、ChatGPT Enterpriseはユーザーの入力した指示文やアップロードしたデータが蓄積されることのない仕組みとなっています。ビジネスで利用するなら、ChatGPT Enterpriseを選んだほうが無難といえるでしょう。

利用開始の手軽さは通常のChatGPTがラク

 利用開始の手軽さという意味では、通常のChatGPTのほうが断然ラクであるといえるでしょう。

通常のChatGPTが、公式サイトからメールアドレス、パスワード、電話番号を登録し、アカウントを作成するだけで、すぐに無料で使い始められるのに対し、ChatGPT Enterpriseは、

・公式サイトの問い合わせフォームを通じて、サービスを使用したい旨を申し出る

・OpenAIの営業担当者に企業の規模や、想定している利用方法を伝え、利用料金の見積もりを取る

・利用契約を結び、利用料金を支払う

 といった複雑な手順を踏まなくてはなりません。場合によっては、社内での提案や稟議が必要なこともあるでしょう。こうした手順を面倒と感じるようであれば、ナイル株式会社のようにChatGPT Enterpriseの導入をサポートしている業者も存在するので、まずはそうした業者に相談してみるのもおすすめです。

処理のスピードはChatGPT Enterpriseのほうがずっと早い

より新しいモデルであるGPT-4を使っているChatGPT Enterprise は、GPT-3.5のChatGPTよりも返答までにかかる時間が短くなっているのはすでに解説したとおりです。GPT-4自体は、通常のChatGPTとChatGPT Enterpriseの中間的なサービスである「ChatGPT Plus」でも標準版の利用が可能ですが、ChatGPT Enterprise版のほうが応答の速度は速いといわれています。

具体的にどれくらいの違いがあるかは、使用環境や指示の複雑さ、サーバの負荷状況などによっても異なるため、一概に示すことはできませんが、ChatGPT Enterpriseのほうが早いことは間違いありません。

セキュリティはChatGPT Enterpriseが最強

 すでに解説したとおり、そもそもビジネスでの利用を念頭に置いているChatGPT Enterpriseには、通常のChatGPTとは比較にならないほどの充実したセキュリティ対策が施されています。セキュリティ面を重視するのであれは、ChatGPT Enterprise一択といえるでしょう。

カスタマイズ機能はChatGPT Enterpriseのみの特徴

複数人での共同作業を想定しているChatGPT Enterpriseは、すでに解説したように、データを長期間保持できるのに加え、チャットテンプレートの共有など、さまざまな便利機能が備わっています。また、業界やビジネスに特化した拡張カスタマイズも追加費用なしで可能。一方、通常のChatGPTには、こうしたカスタマイズ機能がほとんど備わっていません。

<まとめ>

 アカウントを作成するだけで、誰でも無料で使い始められるというハードルの低さから、爆発的な普及をみせた通常のChatGPTですが、ビジネスでの利用を考えると、安全性、セキュリティ面の不安や、処理にかかる時間の長さ、性能、機能の不足など、いくつかの難点を抱えているといわざるを得ません。

 一方、ビジネスでの利用、複数人での利用を想定して提供されているChatGPT Enterpriseは、通常版の不安な点が手厚くカバーされているばかりか、より高性能、多機能なのが特徴です。有料サービスではありますが、取り立てて高額というわけではありません。積極的、効果的に活用していけば、あなたのビジネスにとって、かかった費用以上に大きな力となるでしょう。

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