ChatGPTの活用事例は?導入している日本企業の具体的な例を紹介

ChatGPTの活用事例は?導入している日本企業の具体的な例を紹介

最終更新日:2024年07月10日

ChatGPTとは、OpenAIが開発した大規模言語モデルを利用した対話型AIです。人間と会話するように文章を投げかけるだけで、文脈を読み取って適切な答えを返してくれるのが特徴です。ChatGPTの高度な文章生成能力は、ビジネスシーンでも有効活用できるため、注目を集めています。

今回は、ChatGPTをビジネスで活用する利点や注意点と併せて、ChatGPTを導入している日本企業の活用事例をご紹介します。

ChatGPTを業務で活用するには?

ChatGPTは、ビジネスシーンでの業務を多岐にわたってサポートしてくれます。ChatGPTは、メール文章の作成や情報収集などの簡単な業務だけでなく、カスタマーサポートやマーケティング、プログラミングなど、さまざまな分野での活用が可能です。

では、ChatGPTを業務で活用することには、どのような利点があるのでしょうか。注意点と併せてご紹介します。

ChatGPTを業務で活用する利点

ChatGPTを導入することで、業務の効率化やコストの削減が叶います。ChatGPTを業務で活用する具体的な利点は、以下のとおりです。

  • 業務の効率を向上させることができる

ChatGPTを使って、毎日のルーティンワークを自動化することで業務の効率化が図れます。例えば、カスタマーサポート宛の質問に対する自動応答をChatGPTに任せることで、チームの作業負担を大幅に削減できます。

  • 瞬時に情報を収集できる

ChatGPTは、膨大な情報を瞬時に処理し、必要な情報を迅速に提案する能力があります。インターネット上の情報を人の手で一つひとつ収集するのは大変ですが、ChatGPTを活用することで、短時間で複数のサイトから情報収集を行うことが可能です。もちろんGoogle検索のような使い方もできますが、誤った情報が生成される可能性があるため、情報が正しいか確認するようにしましょう。

  • 人件費などのコストを削減できる

日々のルーティンワークをChatGPTに任せることで、人件費などのコストを削減することができます。例えば、ChatGPTのAPIを用いて24時間対応のチャットボットを導入することで、顧客対応のための人員を配置する必要がなくなり、コストの削減につながります。

ChatGPTを業務で活用する際の注意点

ChatGPTは、業務効率化やコスト削減に貢献してくれますが、次のような大きなリスクもあります。活用する際は注意点をしっかりと理解した上で、対策を講じることが重要です。

  • 機密情報が漏れるおそれがある

ChatGPTをビジネスシーンで使用する際には、機密情報が第三者に漏洩するリスクがあることを理解しましょう。ビジネスで活用した場合に起こりうる情報漏洩のリスクは以下のとおりです。

<ChatGPTを業務活用した際に起こりうる情報漏洩の例>

  • ChatGPTのバグによる漏洩

  • 学習データが反映されたことによる漏洩

  • アカウント情報流出による漏洩

ChatGPTでの情報漏洩の詳細については下記をご覧ください。

ChatGPTで情報漏洩を防ぐには?リスクと対策方法を解説

  • 不正確な情報を発信するおそれがある

2024年6月現在、最新バージョンのChatGPT-4oは2023年10月までの情報や出来事を学習しています。2023年4月以降に起きた情報について質問しても誤った答えを生成する可能性があります。誤った情報を発信してしまった場合、企業の評判にも悪影響を及ぼしかねません。必ず発信する前に情報が正しいかを確認してください。

ChatGPTを導入した企業の活用事例

さまざまなビジネスシーンでの活用が期待されるChatGPTですが、活用方法は企業によって異なります。ここでは各企業の活用事例を通じて、どのように業務効率化やコスト削減が実現されているかをみていきましょう。

ライオン:ChatGPTを活用して資料作成のサポートや専門用語を翻訳

ライオンは、ChatGPTを資料作成のサポートや専門用語の翻訳に活用しています。これまで膨大な研究データから情報検索を行うのに、多くの時間を費やしていました。この課題を受けて、同社はChatGPTなどをもとに構築した「LION AI Chat Powered by ChatGPT API(以下、LION AI Chat)」を開発しました。「LION AI Chat」は、利用者が自然な文章で質問を投げかけると、即時にデータベースからの回答を生成してくれるAIで、活用することでさまざまなシーンでの業務効率化が期待されています。

■ライオン「LION AI Chat」の事例

概要 企画資料の作成サポートや専門用語を翻訳
ChatGPTの活用目的 これまでに蓄積された技術的知見や実験データを整理し、有効活用する
活用する人 国内従業員5,000人
効果 従来の情報検索時間と比較して約5分の1に短縮

サントリー食品インターナショナル:ChatGPTを活用したウェブCMを公開

サントリー食品インターナショナルは、マーケティング活動の一環として、ChatGPTを活用したウェブCMを公開しました。本企画に際して、ChatGPTに「理想の部長」として振る舞うことを指示。新CM案やおすすめキャスティング案を尋ねると、ChatGPTは声優の白井悠介さんの起用を激推ししたそうです。AI部長はほかにも奇抜なアイディアを生成したため、同社はそれに沿ったCMを制作。斬新なCMだと話題になりました。

■サントリー食品インターナショナル「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」の事例

概要 ChatGPTを活用しウェブCMを作成
ChatGPTの活用目的 「やさしい麦茶」の新ウェブCMの演出プランを考案してもらう
ChatGPTの活用経緯 CM担当者がChatGPTを触ってみたらAIが部長としてCM案を考えてくれたため
効果 人間ではなかなか思いつかない奇抜なCMプランが完成し、話題を呼ぶ

伊藤忠商事:専門組織を立ち上げChatGPTを活用

伊藤忠商事は、専門組織「生成AI研究ラボ」を立ち上げて、情報漏洩のリスクに備えつつ生成AIの活用を推進しています。具体的には、情報漏洩を防ぐためのIT環境の整備を行い、現場社員が生成AIを活用しやすいインターフェースや社内サポート体制を構築し、生成AIの実用化を目指すとしています。

■伊藤忠商事「生成AI研究ラボ」の事例

概要 ChatGPT等を活用した企業の業務変革や新規ビジネス開発の支援
ChatGPTの活用目的 日常業務の生産性を向上させる
活用する人 従業員4,200人
将来のビジョン 新規事業開発や伊藤忠グループの事業における生成AIの活用、生活消費分野における顧客属性に合わせた最適な商品やサービスのレコメンデーション機能の提供、サービス内容の自動照会

三菱UFJフィナンシャル・グループ:稟議書の作成アシストや金融レポートの要約にChatGPTを活用

三菱UFJフィナンシャル・グループはMUFG版「ChatGPT」を活用し、社内の業務効率化に取り組んでいます。具体的には、稟議書の作成アシストや金融レポートの要約、行内手続き照会など、2023年6月27日時点で110以上の活用事例が報告されています。

なお、MUFG版ChatGPTの導入により、従業員の労働時間が月22万時間分削減される見込みです。

■三菱UFJフィナンシャル・グループ「MUFG版ChatGPT」の事例

概要 業務効率化に活用
ChatGPTの活用目的 業務を効率化し、顧客との対話にあてられる時間を増やす
活用する人 従業員およそ40,000人
効果 労働時間が月22万時間以上削減される見込み

LIFULL:物件探しができるChatGPT向けプラグインを提供

LIFULLは不動産ポータルサイト・LIFULL HOME'Sにおいて、ChatGPTの技術を活用し、LINEで住み替え相談ができるサービス「AIホームズくんBETA LINE版」を提供開始しました。

AIホームズくんBETA LINE版を「LINE友だち追加」し、LINEに希望する物件の条件を文章で送ると、ChatGPTが文章の意図を汲み取って条件に合う物件を提案してくれます。

■LIFULL「AIホームズくんBETA LINE版」の事例

概要 LINEで住み替え相談ができるプラグインの開発
ChatGPTの活用目的 物件を探すユーザーの意図を汲み取り、最適な物件を提案する
活用する人 物件を探すユーザー

【業務別】ChatGPTの活用事例

ここまでは日本を代表する企業のChatGPTの活用事例を紹介してきました。どの企業も一大プロジェクトとしてChatGPTを活用しています。しかし、大企業でなくてもChatGPTを業務に活用することは可能です。

ここからは、ChatGPTがどのような業務で活用できるのか、業務ごとの具体的な活用事例をご紹介します。

ChatGPTを営業業務で活用する方法

ChatGPTを営業業務に取り入れることで、営業活動に付随する事務作業や顧客対応などの作業の効率化が図れます。具体的には、以下のような業務でChatGPTを活用できます。

  • 営業資料の作成

提案資料やプレゼンテーション資料、FAQ資料など、営業活動を行う際に必要な資料を作成する際に、ChatGPTを活用できます。資料作成の際の企画案出しから、誤字脱字のチェックまでを対応してくれます。また、ChatGPTは文章生成に特化したAIのため、情報をうまくまとめられない際にも役立つでしょう。

ChatGPTをうまく活用することで、営業資料の作成を効率化することが可能です。

  • トークスクリプトの作成

ChatGPTを活用することで、インサイドセールスに必要不可欠なトークスクリプトを作成することもできます。ChatGPTに、ターゲットとなる業界や顧客像などを伝えると、どのような営業トークが効果的かを提案してくれます。

最終的に営業担当がトークスクリプトをブラッシュアップする必要がありますが、ChatGPTが提案したいくつかの案の中から、より効果的なスクリプトを仕上げることができるでしょう。

  • 議事録の要約

ChatGPTは会議などの議事録を要約することも可能です。会議の際にとりあえず会話の内容をまとめて、会議後に中身を整理する人もいるでしょう。しかし、ChatGPTに会議の内容を読み込ませれば、簡単に要約した議事録を提示してくれます。会議の内容を簡潔にまとめたい場合などにおすすめの活用方法です。

ChatGPTをマーケティング業務で活用する方法

多くのデータを扱うマーケティング業務では、市場調査や顧客ニーズの分析にChatGPTを活用できます。ChatGPTを活用して効率化が図れる業務内容は以下のとおりです。

  • 市場調査

ChatGPTを使えば、業界や消費者の最新トレンドを簡単に収集することができます。例えば、「最近のメンズ美容のトレンドは?」と入力するだけで、最新の市場動向を把握するヒントが生成されます。ファクトチェックは必要になりますが、これまで市場調査にかかっていた時間を大幅に削減できるでしょう。

  • 顧客ニーズの分析

ChatGPTを活用することで、顧客ニーズを把握し分析することができます。顧客ニーズとは、顧客が抱えている欲求や需要のことです。例えば、ChatGPTに「あなたはプロのマーケターです。Apple社の発売するMacBook Proの顕在ニーズと潜在ニーズを教えてください」と質問するだけで、ChatGPTが顕在ニーズと潜在ニーズについて答えてくれます。

  • マーケティング施策の作成

ChatGPTはコンテンツマーケティングを行う際にも活用できます。ChatGPTを使えば、キーワード選定や記事コンテンツの構成案の企画、文章の作成も可能です。コンテンツ制作に向けて事前の情報収集は必要ですが、すべてを自身で行うよりは時間短縮が図れます。

ChatGPTを開発業務で活用する場合

ChatGPTは開発の各フェーズでも活用可能です。ここでは、開発のフェーズごとの活用方法をご紹介します。

  • システム設計

ChatGPTを使用して、要件定義や設計といった開発の土台となる作業を生成することが可能です。

ChatGPTに、「社内の勤怠管理システムを作ります。○○(他社アプリ名)のような仕組みより、もっと簡易的なものでいいので、自分たちで作ろうと思っています。まず、勤怠管理システムをつくるのであれば、どんな機能が必要になると思いますか?」と質問を投げかけると、必要となる機能を回答してくれます。

その回答をもとに、それぞれの機能を深堀りし、質問を重ねていきます。どのような要素を配置していく必要があるかなどの質問を繰り返していくと、各画面の要件定義まで作成してくれるのです。

  • コーディング

ChatGPTは、コーディングの自動化やサポートにおいても利用されています。具体的な活用例は、プログラムコードの生成やデバッグの補助などです。

例えば、ChatGPTに「テトリスをPythonで作ってください」と指示を出すだけで、瞬時にバグのないテトリスのプログラムを生成できます。プロンプトだけでゲームを作ることができるほど進化しているため、開発者はChatGPTのプログラミング生成技術により、効率的に作業を進めることができるでしょう。

ChatGPTをカスタマーサポート業務で活用する方法

顧客からの問い合わせなどに対応するカスタマーサポートには、ChatGPTによって自動化できる業務がたくさんあります。ChatGPTを活用して効率化が図れる業務は以下のとおりです。

  • チャットボットによる窓口対応

カスタマーサポートにおいて、ChatGPTを活用したチャットボットが非常に役立ちます。過去の問い合わせ履歴やFAQのデータを学習させることで、24時間対応の自動応答システムとして運用できます。これにより、顧客対応がいつでも可能になるでしょう。

また、ChatGPTはユーザーからのメールの問い合わせに対しても返答を生成することが可能です。これも対応履歴やFAQなどを学習させることで、より精度の高い問い合わせ対応ができるようになります。

  • 顧客の意見の分析

ChatGPTは、顧客からの意見の抽出や分析にも活用できます。自社データを学習されたChatGPTに、顧客からのフィードバックを分析させることで、顧客のニーズや不満点を把握し、サービス改善に役立てることができます。

  • FAQの作成

よくある質問(FAQ)の作成にChatGPTを活用することで、問い合わせ対応の効率化が図れます。ChatGPTに過去の質問内容などを学習させておけば、大量のデータの中から適切な回答を自動生成してくれます。

ChatGPTをデータ分析業務で活用する方法

ChatGPTは、データを分析する場面でも役立ちます。ここでは、ChatGPTをデータ分析の業務で活用する方法をご紹介します。

  • 分析のための関数の生成

ChatGPTに分析したいことを入力すれば、適切な関数を生成してくれます。例えば、「Excelの関数で便利なものを3つ教えてください」と入力すると、「VLOOKUP関数」「SUMIF関数」「IF関数」の3つの関数を紹介した上で、それぞれの解説をしてくれます。ChatGPTに質問することで、分析に必要な関数が即座にわかり、作業時間の削減が実現するでしょう。

  • 分析データの可視化

分析結果を可視化するためのツールとしてもChatGPTは有効です。分析結果のグラフやチャートの作成をChatGPTに任せることで、レポート作成などの業務を簡単に行えるようになります。

  • 顧客データなどの分析

ChatGPTは、顧客データの分析も可能です。ChatGPTに学習させた購買行動のパターンやトレンドを把握することで、マーケティング戦略の立案に役立ちます。ただし、顧客データは個人情報にあたるため、APIを通じて利用するなどの工夫が必要です。

なお、ChatGPTを用いてデータ分析を行える機能「Advanced Data Analysis」を活用することで、より高度なデータ分析が叶います。

「Advanced Data Analysis」の詳細については下記をご覧ください。

Advanced data analysysとは?ChatGPTでデータ分析する方法を解説

ChatGPTを業務で活用する際に気をつけること

ChatGPTのビジネス活用が広がる中で、利便性とともにいくつかの注意点も理解しておく必要があります。ここでは、ChatGPTを業務で活用する際に気をつけるべきポイントについて解説します。

情報が正確か確認する

ChatGPTは膨大なデータを元に回答を生成しますが、その情報が常に正確であるとは限りません。特にビジネスにおいては、提供する情報の正確性が重要です。金融業界や医療業界などでは、情報が正確でなければ人の人生を左右する可能性があります。

したがって、生成された内容をそのまま使用するのではなく、専門家や信頼できる情報元を確認することが大切です。

著作権を侵害していないか確認する

ChatGPTが生成するテキストには、既存の著作物からの情報が含まれている可能性があります。そのため、生成されたコンテンツが著作権を侵害していないか確認することが必要です。ChatGPTに「前回の回答に対する参考文献を教えてください」と質問することで、出典元を確認することもできます。

なお、著作権を含むプロンプトを流用した場合も、著作権侵害と見なされることがあります。ChatGPTをビジネスで使う際は、制作物が著作権を侵害していないか、しっかりと確認しましょう。

情報漏洩に注意する

ChatGPTを使用する際には、機密情報や個人情報の入力を避けることが基本です。ChatGPTは、ユーザーが入力した情報の一部や、インターネット上の情報の中から回答を生成しています。そのため、ユーザーが機密情報や個人情報を入力してしまった場合、そのデータがほかのユーザーの出力に反映されるリスクがあるのです。

また、アカウント情報の流出によっても情報漏洩が起こる可能性があるため、業務での使用には注意が必要です。

ChatGPTの活用事例を踏まえて自社ビジネスに活かそう

商社から金融機関、事業会社まで、さまざまな企業がChatGPTを活用して成果を出しています。

ChatGPTは事業規模を問わずに活用できることが多いため、今後も利用の拡大が見込まれます。現在は活用できていない方も、今回紹介した事例やプロンプトを参考に、ChatGPTを自社ビジネスに活用してみてはいかがでしょうか。

ナイル株式会社が提供する「生成AIコンサルティング」では、ChatGPTを始めとする生成AIの活用方法の洗い出しや、それによる売上向上やコスト削減効果の可視化についてもご相談いただけます。また、生成AIの知見のあるエンジニアによるマイクロアプリケーションの開発も相談でき、生成AIを使った業務効率化が図れるでしょう。

ChatGPTの導入を検討しているけれど、自社に合った活用方法がわからないという方は、まずはお気軽に無料相談にお申し込みください。

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