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  • 【イベントレポート】TimeTree新保氏登壇! 広告を軸としたプロダクト成長とマネタイズ戦略

2025年6月12日、『アプリグロースの最前線』をテーマに、アプリマーケティングを支援するReproとAdjustが共催した「App Marketers' Festa 2025」。スペシャルゲストとして、株式会社TimeTreeの新保周氏が登壇しました。

エンジニア出身でありながら同社の広告事業の立ち上げから参画し、現在はビジネス全般を統括する立場として『TimeTree』のマネタイズと成長の舞台裏を赤裸々に語った、アプリデベロッパーにとって示唆に富んだイベントの内容をかいつまんでお届けします。

新保 周(しんぼ・しゅう)氏

株式会社TimeTree 執行役員 マーケティングソリューション本部長

2009年にヤフー(現LINEヤフー)にエンジニアとして新卒入社し、さまざまな新規事業の立ち上げを経験。
TimeTreeでは創業初期の2015年に入社し、2017年には広告事業の立ち上げに関わる。広告事業のプロダクトリード、事業責任者を経て、2024年9月より現職。

TimeTreeの事業概要と成長の歩み

TimeTree紹介

出典:TimeTree(タイムツリー)

家族や友人など身近な方と予定を共有できるカレンダーアプリ『TimeTree』。共有カレンダーにはチャット機能もあり、予定の調整等のコミュニケーションを円滑にする役割を担っています。GoogleカレンダーやOutlookなどのビジネス用途とは異なり、プライベート領域での予定共有を主軸とする点や、モバイルでも使いやすいよう機能を装備している点が特徴です。

2015年のリリース後ほどなく、Appleの「App Store Best of 2015」やApp Storeおすすめ枠に選ばれたことなどが重なり、広告に頼ることなくユーザーは拡大。2016年には100万、2018年には1,000万ユーザー達成しました。創業10周年を迎えた2025年時点の登録ユーザーは世界で6,500万人、日本国内では2,900万人となり、主に20~40代の子育て世帯に利用されています。

ユーザーファーストなマネタイズを目指す

TimeTreeがマネタイズとして広告事業を本格的に開始したのは、2017年末から。創業から3年間は意図的に収益化を行わなかったのは、LINEやFacebookのようなプラットフォームを目指すうえで、まず一定規模のユーザーを確保する必要があるという経営判断によるものだったといいます。

なぜ「広告」を採用したのか

アプリのマネタイズといえば広告かサブスクです。サブスクは、対価を払ってくれるユーザーに対して付加価値を提供します。しかし、裾野を広げてユーザーを増やしたいというこれまでの方針もあり、広告という手法が採用されました。
ソーシャルギフト機能など、ほかにも試行した手法はありますが、「カレンダーでのマネタイズ」としては難しく、現時点では広告事業が収益の柱となっています(現在は広告を非表示にしたいというユーザーの声に応える形で、広告非表示と追加機能が利用できるサブスクリプションプラン「TimeTree プレミアム」も提供中)。

一方で、広告ビジネスの立ち上げには相応の困難も出現。広告主への提案、社内外の理解醸成など、あらゆる側面で地道な構築が求められました。

ユーザーとの信頼関係が第一!

「TimeTreeへの広告導入について」ユーザーへのメッセージ

▲ユーザーへ配信した広告導入のお知らせ

TimeTreeが広告事業において最も重視してきたのは、ユーザーとの信頼関係を損なわないこと。UI/UXに強いこだわりを持つ同社にとって、広告の導入はサービス価値を左右する重要な意思決定でした。
広告配信開始時には、アプリ内で方針と目的を明示し、ユーザーに対する丁寧な説明を徹底。その結果、SNS上では肯定的な反応も多く寄せられ、大きな反発を受けることなく移行することができたそうです。

ここに注目!

  • ユーザーへの丁寧なコミュニケーションは、プロダクトに対する「応援」へと転換できる!

この考え方が、TimeTreeの広告事業全体を支える前提となっています。

ユーザーと企業の双方に有益な広告を

デジタル広告において全画面表示や過剰な広告が一時的に収益を生む一方で、ユーザー体験は大きく毀損され、結果的に広告効果の低下やimp単価の下落を招くリスクがあります。

そのためTimeTreeでは、ユーザーにとって自然でストレスのない広告設計を心がけています。少しでも「見たい」と思ってもらえる広告であれば、企業からの出稿も安定継続されると考えています。

広告スキームは段階的に進化

広告によるマネタイズを開始して以降、TimeTreeは「ユーザー体験を損なわずに収益を生み出す仕組み」を模索してきました。
配信面の選定からターゲティング精度の向上、広告フォーマットの設計に至るまで、段階的な改善と撤退を繰り返しながら、自社に最適な広告モデルの構築を進めています。

フェーズ1:予約型広告の立ち上げ

TimeTree Adsは当初、Facebookのタイムラインのような「フィード面」に予約型広告を配信する形でスタートしました。
TimeTreeならではの、ユーザーごとの「予定データ」に基づくターゲティングを活かし、年代や性別以外の特定の生活シーン、例えば育児関連で「お迎え」の予定があるなどに合わせて広告を配信。一見よさそうに見えたものの、当時はユーザー数が今より少なかったことや配信ボリュームの不足などから、案件獲得に苦悩した2年だったといいます。

フェーズ2:運用型広告への展開

次に導入したのはデジタル広告の本丸、運用型広告です。広告主が自ら入稿・管理を行えるようにシステムもアップデート。予定データによるターゲティングも、「引っ越し予定がある方なら家具の買い換えがある→家具の広告を出そう」「旅行の予定がある方は航空券のチケットが必要→航空券の広告を配信」など、TimeTreeだけが持つファーストパーティデータを活用し、行動のタイミングに合わせた配信を試みました。

同時に、広告出稿場所をフィード面だけではなく、2番目にトラフィックのあるデイリー面にも展開。しかし、ユーザーの予定と予定の間に広告を差し込んでみたところ、圧倒的に不評の声が! これは一瞬で取り止めとなったのだとか。その後、デイリー面はさまざまな広告枠のサイズや配置を試し、現在は収益の1つの柱となっています。

このようにチャレンジを繰り返しつつも、TimeTreeとしてはより売上を上げていく新たな打ち手が必要でした。そこでさらに「TimeTreeだからできる広告ソリューション」という軸は維持しつつ、「認知目的」「予約型」での広告商品の開発を進めていきました。

フェーズ3:日付認知広告による差別化

日付指定型広告の事例その1
日付指定型広告の事例その2

▲日付認知広告「ターゲットデイ」の例

運用型広告を展開しつつも、再び予約型広告での認知向けの商品の開発を進めます。さまざまな広告メニューを継続的にリリースする中、転機となったのが、「日付」と紐付けるTimeTree独自の世界初日付指定型広告「ターゲットデイ」でした。

「3月10日からセール開始」といったキャンペーン情報を、ユーザーが見るカレンダー上の該当日に表示する「日付認知広告」として実装したものですが、企画当初、社内では「カレンダーはユーザーの持ち物。そこに広告を置くなんてあり得ない」との意見も出たのだとか。

しかし、デザインや置く場所、置き方の仮説検証を繰り返し、10秒程度の控えめなアニメーションを自然に目に入るように置くことで着地。結果、ユーザーからのネガティブな声が上がらないどころか、「広告の入れ方がむしろ上手」との意見まで届いたそうです。

ここに注目!

  • ユーザーファーストの姿勢と強みである日付訴求の両立にとことん向き合うことで、広告を“情報として歓迎される存在”に変える

そして現在、この広告形式は、ECや外食、動画配信といった業種で繰り返し出稿されており、同社の主力商品となっています。

広告運用を通じて得られた「学び」

TimeTreeが広告事業の中で得た主な学びとして、新保氏は以下のようにまとめました。

自社広告商品で運用型で勝つにはそれなりのトラフィックと競合との差別化が必要。まずは予約型から

TimeTreeでは、広告収益を自社で構築するにあたり、予約型と運用型、獲得目的と認知目的とさまざまな広告商品の形を模索しました。

その結果として、「運用型をメインに据えるのであれば、MAUが一定以上であることや媒体独自の差別化が前提になる」と新保氏は語っており、運用型は競合がGoogleやMetaといった巨大プラットフォームになるため、立ち上げ段階や一定のトラフィックが作れるまでは予約型のほうが現実的であるという見解を示しました。

広告枠の追加はしっかり議論した上で大胆に。ダメなら戻す

広告枠を追加する際には、ユーザー体験への影響を十分に議論した上で進めることが重要だとしつつも、実際のユーザー反応は「出してみてはじめてわかる」というのがTimeTreeの実感だといいます。
慎重に検討を重ねたにもかかわらず期待通りの効果が得られないケースもあれば、逆に、ある程度踏み込んだ施策が思わぬ成果につながる場合もあるとのこと。そのため同社では、「議論を尽くした上で大胆に試し、適さなければ速やかに戻す」という柔軟な姿勢を大切にしています。

コンセプトよりソリューションのほうが大事。コンセプトがよくてもそれだけでは売れない

広告メニューを構築する際、魅力的なコンセプトがあるだけでは十分ではなく、それをどのように実現するかという「ソリューションの設計」がより重要だとしています。例えば、日付に紐づけた広告や予定データを活用した広告といったアイディアは、初期段階から存在していました。しかし、それだけでは売上に結びつかず、表現方法や配信設計の改善を繰り返すことで、ようやく収益化できる商品へと育ったといいます。

この経験から、TimeTreeでは「良いアイデアをどう届けるか」という視点に重きを置いて広告事業を展開しています。

今後の戦略と展望

TimeTree新保氏登壇風景

最後に、TimeTreeで今後展開予定の機能について、説明がありました。

  • ステッカー(スタンプ)機能の企業向け展開
  • 日付認知広告のプレミアムバージョンの開発
  • 「予定データ」と、外部の位置情報や決済データ掛け合わせによる、より高精度な行動インサイトの取得

生活者の行動を深く理解し、ユーザーと企業の双方に価値を届ける広告基盤となりゆくTimeTree。今後もさらなる発展と進化が期待されます。

アプリグロースの最前線を支えるAdjustとReproの最新動向

本イベントではスペシャルゲストのTimeTree新保周氏によるセッションに加え、共催企業であるAdjustとReproからも、アプリマーケティングを支える注目の新サービスや取り組みが紹介されました。

Adjustが提案する、成長支援の新戦略。7月開催のカンファレンスも注目

Adjustからは、日本No.1シェアのアプリ向け効果測定SDK「Adjust」の紹介とあわせて、今年5月にリリースされた「Adjust Growth Copilot β版」の解説や、2025年7月23日(水)に大々的に開催されるアプリマーケターのためのカンファレンス「Adjust Ignite Tokyo 2025」の案内が行われました。

adjust株式会社 佐々 直紀氏

▲adjust株式会社 佐々 直紀氏(General Manager, Japan)

関連リンク

Reproが仕掛ける、学びと相談のマーケティングサポート施策

Reproからは、新たに公開したYouTubeチャンネル「アプリマーケch【Repro公式】」の紹介がありました。アプリマーケティングの基礎から応用までをカバーするチャンネルを目指し、続々と動画を公開予定とのことです。
また、Reproではアプリマーケティングに関するお悩みを随時募集中。何か行き詰まった際に相談してみてはいかがでしょうか。

Repro株式会社 中野竜太郎氏

▲Repro株式会社 中野 竜太郎氏(Sales & Marketing Division Marketing Team)

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TimeTreeからのご案内──広告出稿をご検討の方へ

TimeTree Ads では、今回本文で登場した「日付認知広告」や未来の行動予定に合わせて広告配信できる「未来行動ターゲティング」 といった広告ソリューションを展開しております。
是非お気軽に下記までお問い合わせください。

【お問い合わせ】
ads-sales@timetreeapp.com

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アプリマーケターのためのイベント「App Marketers' Festa」

全国のアプリマーケターが集い、現場のリアルな知見が交わされた本イベント。最前線のアプリマーケティングに触れられる貴重な機会として、大きな熱気に包まれました。

イベント参加者による記念撮影

▲最後に参加者と登壇者で記念撮影