アプリの認知拡大やユーザー獲得に悩むアプリ事業主にとって、テレビをはじめとするマスメディアへの露出は、広告費をかけずに多くのユーザーへリーチできる有効な手段のひとつです。しかし、「どうすればテレビに取り上げてもらえるのか」を体系的に理解している担当者は、まだ多くありません。
今回は、スマホアプリ専門メディア『アプリブ』編集部の伊藤隆史が、自身のテレビ出演経験とテレビ関係者との日常的なやり取りをもとに、メディア露出を引き寄せるための実践的なノウハウを解説します。
テレビに取り上げられるアプリの条件とは? メディア露出を左右する「No.1訴求」の力
放送翌日、インストール数が最大100倍に——テレビが持つ圧倒的な到達力
私はアプリブの編集として仕事をするなかで、日本テレビ『午前0時の森』、MBS/TBS系『サタプラ』、J-WAVE『STEP ONE』など、テレビ・ラジオ・新聞と、これまで数多くのメディアに出演する機会をいただいています。
Webメディアを運営しながら、テレビに出演するたびに、Webとはまったく異なる反響の大きさを肌で感じてきました。Webの場合、ユーザーは関心のあるテーマを自ら検索し、その結果として情報にたどり着きます。
一方テレビは、関心の有無に関わらず、一度に不特定多数の視聴者へ映像というわかりやすい形で情報を届けられます。
この違いが、反響の規模に直結しています。実際、放送後にアプリのインストール数が数十倍〜100倍近く跳ね上がり、ストアランキングでTOP10入りするケースも珍しくありません。広告費をかけず、一晩でこれだけの変化が起きるのは、Webの世界ではなかなかないことです。
また、テレビ局のディレクターや番組スタッフから「面白いアプリを教えてほしい」と相談を受ける機会も多く、今どのようなアプリが求められているのか、現場の感覚はそれなりに把握しているつもりです。
そうした経験をもとに、アプリの認知拡大やユーザー獲得を課題とするアプリ事業主の方に向けて、メディア露出を引き寄せるための実践的な視点をお伝えします。
テレビは、いまだ圧倒的な到達力を持つメディアです。SNS広告やASO対策とは異なり、「探していなかった人」に届く点が最大の強みです。アプリストアでわざわざ検索しないユーザー層にリーチできるのは、テレビをはじめとするマスメディアならではの特性といえます。
実際に紹介したアプリの反響を振り返ると、その影響の大きさは数字にも表れています。ある生活情報番組での紹介後、オンエア中に数千インストールを記録しました。また、別の番組では1日あたり数万インストールに達したケースもありました。
なかには放送から1週間以内に約10万インストールを突破したアプリも。さらに、インストール数だけでなく、公式サイトへのアクセスとDAU(デイリーアクティブユーザー数)がともに約10倍に跳ね上がった事例もあります。
さらに、テレビに取り上げられることは単なる露出以上の効果をもたらします。「あのテレビで紹介されたアプリ」という事実は、そのアプリへの信頼性の証明になります。ユーザーが「使ってみよう」と思うハードルが下がり、口コミやSNSでの二次拡散にもつながりやすくなります。
テレビはどんなアプリを取り上げたいのか?
メディアが求める情報の共通点
テレビ番組の関係者は、アプリの専門家ではありません。まず自分たちで企画の方向性を立て、ある程度の下調べをしたうえで、専門メディアや有識者に相談を持ち掛けてくるケースが多く見られます。
「流行りそうなアプリを紹介したいけれど、最新事情がわからない」「世間の関心事と紐づけて、今回は○○なアプリにスポットを当てたい」「紹介したいアプリがあるが、ほかに似たようなアプリはあるのか」——こうした相談は多くの場合、企画の精度を上げる段階で私のような専門メディアの担当者に届きます。
ここから見えてくるのは、テレビ関係者は「今の時代背景や視聴者の関心と結びついた、独自性のあるアプリ」を求めているいうことです。そしてそれを、自分たちだけで見つけるために、専門メディアや有識者の知見を借りる動きが自然と生まれています。
つまり、テレビに取り上げられるための入り口は、テレビ局への直接アプローチだけではありません。専門メディアや有識者に日頃から情報を届けておくことが、テレビへの露出につながる重要なルートになっています。
テレビ番組関係者から相談を受けたとき、私たちのような専門メディアの担当者が候補として挙げやすいのは、すでに「知っているアプリ」です。「そういえばあのアプリ、最近こんな機能が追加されたな」「今SNSで話題になっているな」——相談に答えるタイミングで頭に浮かぶのは、こうした接点がすでにあるアプリです。
逆に言えば、どれだけ優れたアプリでも、担当者が知らない状態ではそもそも候補として名前が挙がりません。
そのためプレスリリースは、配信して終わりでは不十分。取り上げてほしいメディアや担当者に対して、個別に届けるアクションがセットで必要です。
SNSで話題をつくることも有効ですが、狙ったメディアへの露出を目指すなら、「誰に届けるか」を意識した能動的なアプローチが、認知の起点をつくる確実な手段になります。
取り上げられやすいアプリの3つの特徴
こうした日々のやりとりを通じて感じてきたのは、どんなメディアからも共通して求められる条件があるということです。それは「ほかに似ているアプリが思い浮かばない独自性があること」。
この一点が、取り上げられるかどうかの大前提になっています。その独自性を具体的に分解すると、3つの特徴に整理できます。
① 一点突破の「尖り」がある
満遍なく80点を取れる万能なアプリより、メディアで紹介しやすいのは「これをやるならこのアプリしかない」と言い切れるアプリです。アプリ全体でなく、1機能でも構いません。
「これがあるからこのアプリを使う理由になる」と言えるものが一点でもあれば、紹介する理由として十分に成立します。どんなにニッチな機能であっても、ほかのアプリには真似できない何かがあれば、それがそのままメディアへの訴求材料になります。
② メリットがひと目でわかるシンプルさ
テレビの尺は限られています。どれだけ優れた機能でも、視聴者に伝えるまでに時間がかかるアプリは採用されにくくなります。
「インストールしてすぐにこれができる」という体験の明快さが重要で、やりたいことがすぐできること、メリットがすぐわかること——このシンプルさは、テレビという媒体の特性上、欠かせない条件といえます。
③ テレビ的な「絵」になる動きがある
テレビ関係者がよく口にするのは、「画面に動きが欲しい」という要望です。座ったままで画面が切り替わるだけでは絵として弱い、というのはテレビならではの感覚です。
スマホアプリはすべて画面の中で完結するものですが、その中でも「映える動き」があるかどうかが時に、採用の判断に影響します。
この点を踏まえ、まず自社アプリの機能を見直してみることをおすすめします。画面のタップやスワイプといった一般的な操作にとどまらず、何かしらの動きを伴う要素がないか。
そうした要素がある場合は、その動きが伝わる動画素材をあらかじめ用意しておくことが有効です。テレビ関係者にとって企画がイメージしやすくなるだけでなく、採用の判断を後押しする材料になります。
取り上げられなかったパターン
一方で、これらの条件を満たしているように見えても、採用に至らなかったケースがあります。実際に「惜しかった」事例を振り返ると、その理由には共通点がありました。
操作ステップが複雑で、テレビの尺で伝えきれない
「設定さえすれば自動化できます」という訴求でも、その設定に複数のステップが必要であれば、「インストールしてすぐ自動化される」とは言えません。
素晴らしい機能があっても、そこに至るまでの道が複雑だと、テレビの文脈では「嘘ではないが、伝わらない」になってしまいます。
メディアへの提案時には、最も伝えたい機能にたどり着くまでのステップを改めて数えてみてください。3ステップ以内で説明できない場合は、訴求ポイントそのものを見直す必要があるかもしれません。
多機能すぎて、訴求ポイントが定まらない
多機能であること自体は悪くありません。しかし「これが一番の強みです」と言い切れないと、紹介する側も困ってしまいます。
「何が一番いいの?」という問いに答えられないアプリは、紹介の優先度が下がります。自社アプリのすべての機能を並べてみて、「これだけはほかに負けない」と胸を張って言える一点を絞り込んでおくことが、メディア提案の前に必要な準備です。
対応デバイス・OSが限定的で、視聴者全体に届かない
テレビには「なるべく多くの視聴者に喜ばれる情報を届けたい」という前提があるため、特定のデバイスやOSにしか対応していないアプリは採用されにくくなります。
どんなに機能が優れていても、「これ、iPhoneだけですよね」という一言で難しくなってしまう場面は、実際に何度も経験してきました。
対応範囲がテレビへの採用に影響することを念頭に置きつつ、Android・iOS両対応であることを訴求時に明示しておくと、テレビ関係者の判断材料になります。
「わかりやすい訴求材料」が露出を左右する
自社アプリを「一言で説明できるか」が分岐点
ここまで、取り上げられやすいアプリの特徴と、採用されなかったパターンを見てきました。突き詰めると、メディア露出の可否を決めるのは「あなたのアプリを紹介する理由が、一言で説明できるかどうか」です。
メディアでアプリを紹介するとき、おすすめの切り口は2パターンしかありません。
パターン1:「どれか1つ使うならこれ」
万能型のアプリで、ユーザーが最も気にするポイント(たとえば「無料でどこまで使えるか」)をしっかりクリアしている場合に成立します。
パターン2:「これをやるならこのアプリしかない」
特定の目的・シーンに特化していて、ほかのアプリでは代替できない場合に成立します。
この2つのどちらでもないアプリは、残念ながら紹介のしようがありません。
どれだけ機能が充実していても、「なぜこのアプリでなければならないのか」が即座に説明できなければ、メディアは動けないのです。
No.1調査が「一言」を生む
では、その「一言」をどうやって見つけ、証明するのか。ここで力を発揮するのが、第三者調査による「No.1」という客観的な根拠です。
「自社が一番優れていると思います」という主観的な主張と、「第三者調査の結果、No.1という評価をいただいています」という客観的な事実では、説得力がまったく異なります。テレビのディレクターに提案する際、後者はそのままテロップや紹介文として使える「素材」になります。
紹介する側としても、「○○においてNo.1のアプリです」と言い切れることで、視聴者への訴求が格段にしやすくなります。
ただし、No.1であれば何でもよいわけではありません。よく「ダウンロード数No.1」を訴求材料として持ってくるケースがありますが、これはテレビにはあまり響きません。テレビが伝えたいのは「新しい情報」「視聴者がまだ知らない価値」だからです。
ダウンロード数が多いということは、多くの人がすでに知っているということでもあり、「みんながすでに使っているアプリ」はテレビが届けたい「役に立つ新情報」にはなりにくいのです。重要なのは、ダウンロード数の手前にある「なぜ選ばれているのか」の理由です。
満足度、機能数、使いやすさなど、そうした切り口でのNo.1こそが、「このアプリでなければならない理由」を証明する根拠になります。そこにNo.1の根拠があれば、ダウンロード数という結果の説明にもなり、メディアへの説得力も増します。
自社に都合のよい尺度で測った自社調査では、「そうなるのは当然では?」という疑念を拭えません。
外部機関による第三者調査の結果であることが、テレビを含むあらゆるメディアで通用する訴求の条件です。
自社の強みを客観的に証明できるNo.1の根拠を持つことこそが、メディア露出を引き寄せる最も確実な準備といえます。
導入事例紹介
ケース1|年賀状作成アプリ
テレビCMへの出稿を検討するなかで壁にぶつかりました。テレビCMを放映するには、第三者機関による考査を通過するためのエビデンスが必要です。しかし当時、自社の強みを客観的に証明するデータがありませんでした。
そこで取り組んだのが、「デザイン数No.1」の調査取得です。自社アプリが提供する年賀状デザインの数が、競合と比較して最も多いことを第三者調査として証明しました。
この結果、「デザイン数No.1だから、誰でもオリジナリティあふれる年賀状が簡単に完成する」という訴求軸が生まれ、タレントを起用したCMや広告クリエイティブに活用されました。
CM考査を通過するために取得したNo.1調査が、そのままテレビでも通用するブランドの中心的な訴求材料として機能した事例です。
ケース2|料理系アプリ
担当者が抱えていた悩みは、「マスメディアに紹介される機会はあるのに、自分たちの強みを一言で表現できるキャッチコピーがない」というものでした。
メディアから取り上げてもらう機会があっても、肝心の訴求軸が定まっていなければ、その露出を最大限に活かしきれません。
この課題を解決するために取得したのが、「レシピ動画数No.1」という調査結果です。競合と比較して最も多くの料理動画を提供していることを、客観的なデータとして示せるようになりました。
「料理動画No.1」という一言が生まれたことで、メディアへの提案がシンプルかつ明快になりました。結果として、民放各局のテレビ番組でも紹介されるようになり、タレントを起用したCMや広告クリエイティブへの活用にも広がっています。
さらに、代表へのメディア取材や採用広報の場でもこのキャッチコピーが定着し、プロダクトを紹介する際の共通言語として機能しています。
No.1調査が、メディア露出から社内外のコミュニケーションまで、訴求全体の基盤になった事例です。
ケース3|旅行系アプリ
プロモーション拡大を本格化させるタイミングで、「自分たちの強みを客観的に証明できるNo.1エビデンスが欲しい」という課題がありました。この時点ではメディア露出を直接の目的としていませんでしたが、No.1という根拠を持つことが、結果としてあらゆる訴求の土台になっています。
タレントを起用したCMや広告クリエイティブへの活用にとどまらず、「選ばれている理由」を客観的な数字で示せるようになったことで、メディアへの提案時にも説得力が増しています。
「なんとなく良さそう」という印象から、「だからこのアプリなのか」という納得感へ。No.1という根拠が、ユーザーにもメディアにも届く訴求力を生み出した事例です。
まとめ
テレビをはじめとするメディアに取り上げられるためには、「取り上げる理由」を事前に用意しておくことが大切です。どんなに優れたアプリであっても、その強みが言語化されていなければ、紹介する側は動けません。
この記事でお伝えしてきたことを整理すると、メディア露出を引き寄せるために押さえておきたいポイントは次の3点です。
メディア露出を引き寄せるために押さえておきたいポイント
- 「これをやるならこのアプリしかない」と言える一点突破の強みを持つこと
- その強みをひと言で、すぐに伝えられるシンプルさで表現すること
- 主観的な主張ではなく、第三者調査による客観的なNo.1根拠で裏付けること
特に3つ目のNo.1という根拠は、テレビのテロップにそのまま使えるレベルの「素材」になります。導入事例でご紹介した企業の多くも、もともとはメディア露出を直接の目的としてNo.1調査を取得したわけではありませんでした。
しかし、客観的な根拠を持ったことで、メディアへの提案がシンプルになり、結果として露出の機会が広がっています。
「自社のNo.1ポイントが思い当たらない」という方も、少なくありません。実際のところ、多くの場合、強みはすでに存在しています。それを適切な切り口で調査し、言語化できていないだけです。
何で一番になれるか、どんな切り口でNo.1を証明できるか。その整理から始めることが、メディア露出への最初の一歩になります。
「自社アプリをどうメディアに取り上げてもらうか」という段階から、ぜひ一度ご相談ください。