1話1〜3分で完結する作品をスマートフォンで手軽に楽しめる縦型ショートドラマアプリが急増する中、「作品を見てもらえない」「継続視聴されない」と悩む企業は少なくありません。
どのようにすれば、ユーザーに作品を見続けてもらえるのか。高い視聴継続率で急成長を遂げ、「アプリブ Best App Award 2025」Repro賞にも輝いた『テラードラマ』の各分野の担当者に、ショートドラマ特有の離脱ポイントを乗り越える工夫やユーザーを惹きつけ続けるための仕組みなどを、Repro株式会社の中野竜太郎氏がインタビューしました。
視聴の「速さ」×「深さ」がリテンションのカギ! テラードラマが明かすショートドラマのグロース戦略
今回お話を伺った方々
インタビュアー
▼『テラードラマ』とは?
2025年3月にローンチされた、縦型ショートドラマ配信サービス。1話1~3分で完結し、恋愛・サスペンス・復讐系など、さまざまなジャンルの作品をラインナップ。日本制作のオリジナルドラマのほか、中国・韓国の作品まで、広く取りそろえている。
公式サイト:https://teller.jp/short-drama/
想定以上に見られていた『テラードラマ』
サービス開始から約1年が経過した『テラードラマ』。リリース後のユーザーの動向や反響について、担当者に話を伺いました。
――実際にアプリをリリースしてみて、ローンチ前の想定と異なるユーザーの動きはありましたか?
長沼:いい意味で、自分の肌感覚と合わないところがありました。というのは、一般的にアプリ起動後、再生ボタンを押すなどの最初のアクションをユーザーに起こしてもらうためのハードルは高く、さらに、1話、2話と進むにつれてユーザーは段階的に離脱していきますが、『テラードラマ』では、これらが非常に低く抑えられていたんです。
コミュニティSNSやライブ配信のアプリと比較して、ユーザーの利用時間や利用頻度が多い印象でしたね。
――離脱がもっと多いと予想されていたということでしょうか?
長沼:そうですね。プライベートで動画視聴サービスを使うときは少し見ただけですぐにやめてしまうことが多いので、『テラードラマ』のユーザーも同じだろうと、離脱率を多めに見積もっていました。でも実際は、知らない作品であってもユーザーは視聴を開始し、なおかつ継続していました。
「最初の1話」を早く届ける
――たしかに、ショートドラマアプリは起動直後に会員登録が求められたり、次の操作がわかりにくかったりすることで、ユーザーの離脱を引き起こしているケースが少なくありません。
その点、『テラードラマ』は起動してから再生までの時間が非常に早い印象です。
長沼:ショートドラマアプリでは、起動後の離脱を抑え、ユーザーをスムーズに視聴へ引き込む必要があります。『テラードラマ』では、最初の動画再生までの時間を極限まで短縮し、無意識のストレスを徹底的に排除したUX設計にすることを徹底しました。
タップやスワイプ後の動画再生や次のエピソードへの切り替わりなど、表示速度の改善にコンマ数秒レベルでこだわっています。
中村:ドラマにハマってもらわなければ、アプリの存在意義がありません。そしてハマってもらうには、最短でおもしろさに到達させることが何よりも重要です。そのため、まず作品を見せることを最優先に設計しました。
――ローディング時間も驚くほど少ないですね。
東海:読み込みの待ち時間(ローディング)でユーザーがストレスを感じて離脱してしまうのは、プロダクトとして最も避けなければなりません。次に再生する動画をあらかじめ読み込むようなチューニングを行うなど、速度面にこだわって実装しています。
長沼:オフィス内の通信環境下だけで開発すると、実利用の場面で思った以上の遅延が起こる可能性があります。
ユーザーは、電車内などの電波の悪いところで視聴することが少なくありません。どのような環境でも快適に視聴できるよう、あえて通信が不安定な場所で検証をするなどしています。
1話目の視聴の深さがリテンションと収益につながる
ユーザーがドラマの視聴を開始しても、継続視聴してもらえなければ利益が出ず、アプリの運営もできません。
ここで重要になってくるのが、ユーザーを作品に引き込む仕組みとマネタイズ設計です。
広く見ることより深くハマることを重視
――一般的にアプリを運営している企業は、グロースドライバーとなる指標をそれぞれ持っています。『テラードラマ』では、どのような指標に注目しているのでしょうか。
中村:リテンションを最も重視しています。では、どのようなユーザーのリテンションが高いのか調べてみたところ、複数作品を広く視聴しているユーザーと1つの作品にハマっているユーザーでは、1つの作品を深く視聴しているユーザーのほうが翌日もアプリを利用する傾向が高くなっていました。
「続きが気になって仕方がない」というユーザーの状態が、そのままリテンションに直結したと考えられます。
作品数を増やしたうえで次に何を見せるか
――先ほどリリース後の数字が予想以上に良かったとおっしゃっていましたが、改善が必要だと感じた点はあったのでしょうか。
中村:作品数を増やすペースを上げるという点は、比較的早期に認識しました。もちろん、リリース時点で一定数は用意はしていたものの、数十タイトルしかないと、ユーザーが好みに合わせて絞り込んだ場合、見たい作品がすぐに尽き離脱してしまいます。
長沼:ユーザーが全話数を視聴後、引き続きアプリを利用してもらうには次に没頭する作品を見つけてもらうことも重要です。
作品数を十分に担保したうえで、最初の1作目だけでなく、2作目、3作目、4作目と、ユーザーにとって満足度の高い作品を提案し続けることが、継続的なアプリ利用につながります。
幅広いユーザーが楽しめるマネタイズ設計
▲週、月、年単位などでのコイン購入が可能
――企業として利益を追求するのは大前提とはいえ、一部の課金ユーザーだけが楽しめるアプリにすると、ビジネスが頭打ちになってしまいます。
課金とユーザー体験のバランスは、どのようにとっているのでしょうか。
長沼:飛行機の座席クラス分類のようなイメージのもと、裾野を広げつつ利用頻度を高めていけるようなプラン設計にしました。
ファーストクラスのように、課金をしてでも快適な体験をしたい方には有料プランを使ってもらい、サービス的にはやや不便だとしてもリーズナブルに利用したい方は広告などを使って無料で見られるようにしています。
複数のユーザー層がそれぞれのスタンスで楽しめる構造を作ったうえで、収益性とリテンションの維持のためにデータを見ながら両者のバランスを改善していくことを念頭に置いていますね。
「キャラ立ち×展開の速さ」で日本向けに最適化
▲日本人好みのショートドラマとなるよう作品を厳選
ショートドラマ市場は中国が先行しており、そのフォーマットが日本市場へ流入しています。
そのような中にあって『テラードラマ』の強みは、日本のユーザー特性に合わせた独自のコンテンツです。
アニメ・漫画文化とショートドラマの「いいとこ取り」
――日本と中国では、ショートドラマの作風などが大きく異なると感じます。日本人向けのショートドラマを作るうえで、意識していることはあるのでしょうか。
長沼:中国と日本のショートドラマの違いは、各国の文化が反映されたものです。
日本のユーザーの多くは、子供のころから多様なコンテンツに触れています。特に漫画やアニメに慣れ親しんでおり、キャラクターがしっかりと描かれていること、いわゆる「キャラ立ち」を重視する方が多い印象です。
一方で、中国で発達したショートドラマは、勢いのあるストーリー展開が強みです。
日本のユーザーが好む「魅力的なキャラクター描写」と、ショートドラマ本来の「怒涛の展開」という2つの強みをうまく組み合わせる。これが日本市場におけるローカライズの核心ですね。
資産である『テラーノベル』を活かした原作選び
▲『テラーノベル』には、ショートドラマ化の可能性のある作品が多数掲載されている
――貴社が運営する小説共有プラットフォーム『テラーノベル』には1,000万件を超える小説が掲載されており、この中には『テラードラマ』で実写化された作品も多数あります。
作品選びはアプリの成否を大きく左右すると思いますが、膨大な小説群から原作をどのように選んでいるのでしょうか。
長沼:人気作品や『テラーノベル』内で実施したコンテストの受賞作品は、優先的に検討します。
それ以外の点では、例えばファンタジー系の作品の場合、実写であるショートドラマでは再現ができず制作がそもそもできません。また、細かい心理描写のあるゆったりとしたロマンス作品などは、ショートドラマのスピーディな展開に合わず、脚色の手間が必要です。
このように、コストや工数など複数の点も加味して決めています。
作る工程と売る工程を分けないアプリ成長戦略
――これまで多くの取り組みや施策をされてきたと思いますが、失敗や「この施策は必要なかった」というものはありますか。
長沼:不要な施策はないですね。失敗はあるものの、それらは成功と失敗のギャップを捉えるための大切なプロセスなので、同じ失敗を繰り返さないために工夫を続けることが重要だと考えています。
我々にとって、ショートドラマは未知の領域です。うまくいくこともそうでないこともありますが、振り返りをひたすらやっていこうと思います。
――アプリのマーケティングやグロースには、どのように向き合っていくのがいいのでしょうか。
中村:アプリを伸ばしていくには、マーケティングとアプリの機能に関する試行錯誤の両方が重要です。技術面に関しては弊社の場合、開発用フレームワークとして「React Native」を使って、iOS、Android、ウェブの全プラットフォームをスピーディに改良しています。
長沼:プロダクトマネージャーとしては、作る工程と売る工程を切り離すことは避けるべきだと思います。そこを分けてしまうと、いいプロダクトを作れないし、うまく売ることもできません。お互いの工程を理解せずに、「とりあえずお金をかけて売ればいい」というのは悪手です。
東海:開発視点で答えると、高速で開発し、ユーザーからフィードバック得るというループが重要です。このスパンが今後どんどん短くなっていくことは、開発者から見て、技術面でも分析面でもメリットだと思います。できることをしっかり試して、実際に数字が伸びていくとうれしいですね。
日本のノベル作品をショートドラマで世界へ
――最後に、『テラードラマ』で成し遂げていきたいことを教えてください。
中村:小説である『テラーノベル』には、世界的な拡散力の点で課題がありました。ショートドラマはこの課題を解決し、小説の持つポテンシャルを解放する出口として、完璧にフィットしたといえます。
『テラーノベル』が持つコンテンツ資産とその出口としての『テラードラマ』。この2つの掛け合わせにより、日本国内だけでなく、グローバル市場でのサービス拡大につなげたいです。
まずは5年、10年というスパンで日本のショートドラマ文化の国内での地位を確固たるものにしていきます。そして、そこからアジア、さらには世界へ日本のコンテンツを届けていきたいです。