タクシーアプリは個人向けのサービス。そういったイメージを持つ方も多いでしょう。しかしタクシーアプリ『GO』を展開するGO株式会社では、法人向けサービスとして『GO BUSINESS』を展開しており、すでに15,000社以上へ導入を広げています。法人顧客にとって、事業成長を進めるためにに欠かせない足、いわばインフラとして成長している同サービスについて、執行役員である中西佑樹氏に、『GO BUSINESS』の設計思想と意思決定の軸を聞きました。
法人向けタクシー手配・管理サービス『GO BUSINESS』は、なぜ15,000社に「手放せない」といわれるまで拡大したのか?
今回お話を伺った方
▼『GO BUSINESS』とは?
『GO BUSINESS』は社員のタクシー利用の一元管理を実現する法人向けサービス。利用状況の可視化のほか、請求書払いによる経費精算の効率化、PCブラウザからのタクシー注文など、ビジネス利用に特化したサービスを提供。2021年10月の法人向けサービス提供開始以来、全国15,000社以上(2026年4月末時点)で導入。不動産業界においては、顧客の送迎手段を社員の運転からタクシーに切り替え、従業員の事故削減および安心・安全の提供価値向上に活用するなど、さまざま取り組みがなされている。
公式サイト:https://go.goinc.jp/business/
『GO BUSINESS』は『GO』アプリの成長過程において必要不可欠なサービス
提供:GO株式会社
タクシーの請求書払いサービスなどを提供する『GO BUSINESS』は累計導入社数が15,000社を突破しました。この実績について同社執行役員の中西佑樹氏はこう振り返ります。
「『GO BUSINESS』は2021年からスタートしたサービスで、私が入社したタイミングではすでに伸び続けている状態でした。これは、提供している価値が法人の抱える課題に応えられており、お客様が求めているものを提供できたからこその成長だと考えています」
第三者から見れば、BtoCのタクシーアプリと法人利用向けサービスは異なる位置付けのようにも映りますが、『GO』アプリの成長を考えた時に、『GO BUSINESS』としてのサービス展開は必然だったそうです。
「タクシーという移動サービス自体はビジネスシーンでの利用が非常に多く、その規模は年間6,000億円にも上ります。当然、『GO』アプリを成長させる上でtoBユーザーを取り込むほうがアプリの利用規模も大きくなっていく。他競合アプリも現在はビジネス特化のサービス展開を行っていますが、我々はどこよりも先駆けて、2021年よりサービスを展開してきました。『GO』アプリの認知度や規模が広がるにつれ、『GO BUSINESS』の引き合いも増え、相乗効果が出ている実感があります」
結果として『GO BUSINESS』は、約15,000社以上もの企業に導入される、新たなインフラサービスへ成長を遂げています。
「欲しいものさえ作れば、営業しなくても売れる」――最初の一手に懸けた覚悟
法人向けプロダクトをゼロから作るにあたって、『GO BUSINESS』はどういった課題解決から着手していったのでしょうか。中西氏はまず、プロダクト開発における基本姿勢をこう語ります。
「まず、さまざまなものを一気に解決しようと目指すこと自体、プロダクト作りとしてはナンセンスだと思っています。1つの課題に対して1つのメリットから検証して進めていくほうが、遠いようで近道になるのではないでしょうか。
『GO BUSINESS』の課題の最初は、やはり請求書払いでした。タクシーを使う側の実感としても経費精算は本当に面倒くさい。特に、毎日のように社員がタクシーに乗る企業の場合、月に何千件以上の精算が必要となるわけです。その領収書の処理がすべてなくなるなら、企業にとっても最高に喜ばしいことではないか?ということが我々の考えるベースです。
都度精算をしなくて済み、領収書をもらう必要もなくなる。そこに焦点を当てて一番深いペインからプロダクトをブラッシュアップしていきました。それ以外の機能はいったん、後回しでしたね」
請求書払いによって精算の手間をなくすという価値に絞り込んだ後、『GO BUSINESS』は複数台配車機能やプラチナアカウントの特典提供など、段階的に機能を拡張していきました。その優先順位づけには、2つの軸があったといいます。
最初の軸は、マーケットの規模を見るマクロの視点。一口に顧客と言っても広告、不動産、コンサルなど業界によってマーケット規模もタクシーの使い方もまったく異なります。
そこに加わるもうひとつの軸が、個々のお客様からいただくフィードバックというミクロの視点で、それらを掛け合わせながら意思決定を繰り返していったそうです。
この意思決定を下支えしたのは、事業企画・PdM・開発が三位一体となった進行です。顧客の解像度を高くするため、時には顧客のもとへ足を運びインタビューを行うなど、徹底的な顧客志向を掲げ進めていくことによって、プロダクトの成長につながったといいます。
「顧客起点で物を作る。それを逆説的にいうと、顧客が欲しいものを作らないと売れないわけです。シンプルに、顧客が欲しいものさえ作れば営業を過剰に行わなくても売れる。お客様のN1の課題を拾った上で、その課題がマーケットとしてどれくらい大きいかを俯瞰して見る。それを踏まえて、開発を含めてリソースを投下していく。その流れでブラッシュアップしていきました」
『GO BUSINESS』の導入企業が1社、100社、1,000社と増える中でも考え方は大きく変わりません。顧客志向を徹底的に貫いてきたからこそ、タクシーの適正利用管理をサポートする『利用検知』機能のリリースにもつながりました。
監視ではなく、攻めのガバナンスを作りたい
提供:GO株式会社
『GO BUSINESS』がさまざまな機能を追加し、サービスとしての成長を行う中で、法人企業にとっての新たな導入メリットも生まれてきています。それは、法人企業が抱える経費精算の課題だけでなく、根本的な経営課題にも直結するガバナンス向上への寄与です。「タクシーが適正に利用されているかどうかわからない」という管理者側の課題に対して、『GO BUSINESS』は現在、タクシー利用上限の設定やルール外利用の自動検知など、ガバナンス強化の方向で機能拡張の開発を進めています。
こうした管理者の立場に立った機能の追加は、ときに利用者に「窮屈だ」と思われかねません。それでも機能追加に踏み切る判断基準を、中西氏は次のように説明します。
「事業企画とPdM、開発、営業がタッグを組んで特定の業界を深掘りすることで、その業界のお客様のタクシー利用における管理プロセスが見えてきました。現在、その管理プロセスをベースに、どう開発していくか順番を決めています。世間では、社員の小さな不正が次第に大きな不正に変わっていくような事件が起きている。割れ窓理論ともいわれていますが、小さな不正を防ぐ機能を提供することで顧客にとってのリスク低減に寄与できると考えています」
サービスを利用する各社の少し先の未来を見たときに優先すべき機能は何か。その思考プロセスの中で中西氏は、機能設計の思想として、印象的な言葉を口にしました。
「攻めのガバナンス、この観点がこれからは重要となるのではないでしょうか。タクシー利用が可視化されると、明確に利用側が正々堂々と使えるようになる側面もあります。今まではルールが曖昧だったため、『この場面でタクシーを本当に使っていいのか?』と迷っていたものも、すべて可視化されることで『この場面なら使っていいよね』と、攻めのガバナンス側にシフトしていく。私たちが作りたい世界は、ただ監視するガバナンスではなく、攻めのガバナンスです。会社とタクシー利用者双方がクリアに納得した上で乗車できる、そんな社会の土台作りを、サービスによって促進していきたいですね」
『GO BUSINESS』は、企業運営の中で曖昧模糊として存在する各人の迷いをクリアにした景色を、プロダクトを通して実現しているのかもしれません。
「深く刺されば、離脱しない」――約15,000社利用を支える明確な答え
▲『GO BUSINESS』は、『GO』アプリがあれば3ステップで利用が可能
出典:GO BUSINESS
BtoBやSaaSの多くが直面する課題には、契約の形骸化が挙げられます。『GO BUSINESS』は、これをどう防いでいるのでしょうか。中西氏は「使われ続ける状態」について次のように話しました。
「明確に深い課題を解決していれば継続してくれるし、使われ続ける状態になると思います。『GO BUSINESS』は経費精算に関してすでに各社のニーズに深く刺さっているため、基本的に離脱はありません。ほとんど解約がなく、ずっと積み上がっている状態です」
見ている指標はシンプルです。企業ごとのタクシー利用金額のうち、『GO BUSINESS』経由はどれくらいか。タクシーの利用金額は1企業で急速に上がることはなく、おおよそ上限が決まっているため、その上限の中でどれだけ『GO BUSINESS』を利用するシーンを増やすかが、カギを握ります。そのため、単一の課題解決にとどまらず、複層的に別の課題を見つけにいく姿勢も欠かせないと中西氏はいいます。
「オンボーディング設計についても、企業規模に応じた細かな工夫があります。『GO BUSINESS』のプロセスは最初に管理画面を開いてIDを発行し、IDをGOアプリに接続するくらいなのですが、その過程には緻密なフォロー体制が構築されています。」
一方で、導入寸前の企業が意外なところでつまづくなど、順風満帆に進まないケースももちろんあるそうです。そこから得た学びは、『GO BUSINESS』のプロダクトのさらなる成長につなげています。
法人の課題解決に伴走し、社会的インフラへ
競合もいる中で、圧倒的な規模を誇る同社は今後、『GO BUSINESS』をどう進化させていくのでしょうか。中西氏の答えは、意外にも「延長線上」というシンプルなものでした。
「『GO』のtoC側の利便性が上がれば上がるほど法人の利便性も上がるので、アプリの強化や、見据えている点を含めてさまざまなインフラに対してしっかり投資していくのが基本です。『GO BUSINESS』自体はまだ完成し切ったサービスではありません。そのため、まずは足元のサービスを引き続き磨き込んでいく段階にあります」
一方で、『GO BUSINESS』を「当たり前の法人インフラ」にする過程で、解決できていない課題も見えています。それはタクシー利用が比較的多い大企業ではなく、中小企業(SMB)層へのアプローチです。
「DXの浸透自体が課題です。現状の請求書払いサービスだけだと、SMBのように領収書の枚数が少ないケースではあまり利便性を感じてもらえません。そこをどう変えていくか検討中です」
もうひとつの方向性として中西氏が挙げたのが、タクシーを利用する際の体験向上です。アプリがタクシーの乗車や降車といった体験向上を行う中でも、さらなるニーズとして「このまま待っていてほしい」など、乗る側の細やかなニーズに今後も応えていくことが、これからの『GO BUSINESS』の進化に含まれるといいます。
「欲しいといわれるものを、ちゃんと作る」という強さ
本取材の最後、中西氏は読者に向けてこう呼びかけました。
「ビジネスでのタクシー利用を行う企業様には、ぜひ『GO BUSINESS』を活用いただきたいです。経費精算の効率化だけでなく、利用者側も『GO』のプラチナステータス相当でアプリ注文が利用できるため、車両が早く決まるなどの利便性が得られます。会社経営のDXの入り口としての活用はもちろんガバナンス強化にも寄与することができます。メンバー・管理者・経営者すべての方の移動体験と企業経営をサポートします」
15,000社以上導入という数字を支えているのは、「顧客が求めているものを誠実に作る」というシンプルな姿勢と顧客志向を突き詰めたチーム体制。「移動の利便性」というシンプルな軸を、法人という領域でも丁寧に磨き続けてきたことこそが、『GO BUSINESS』が証明した成功の軌跡だといえるでしょう。
GO Inc.