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  • 【レポート】App Growth Annual Tokyo 2026 Japan Track 後編|グローバル・収益・AI――問い直すチームだけが勝つ理由

App Growth Annual Tokyo 2026(RAGA)Japan Trackの後編では、グローバル進出、サブスク収益最大化、ヘルスケア・メンタルといった難度の高い領域に挑むプロたちのセッションをレポートします。
「日系スタートアップは世界で戦えるのか」という問いから始まり、LTV設計のハック、AIが変えた職種の常識まで――4セッションを通底するのは、「正しく問い直す習慣」を持つチームだけが次の一手をつかめる、という現場のリアルです。

セッション5|2026年、日系スタートアップはグローバルで戦えるのか?

本セッションでは、海外ユーザーを主戦場にプロダクトを展開するHomii Worldの洪英高氏と、英会話メタバース『fondi』を運営する株式会社fondiの野原樹斗氏が登壇。株式会社AlphaByte山崎大志氏のモデレーションのもと、「Japan to Global」という前提そのものを問い直しながら、実践ベースの戦い方を語りました。

登壇者プロフィール

野原 樹斗氏(株式会社fondi 代表取締役)

実践度・中毒性世界No.1の英会話メタバース「fondi」を運営する株式会社fondiの代表取締役。東南アジア・アフリカ中心に200万ユーザーを抱え、プロダクト設計、グロース戦略、グローバルコミュニティ構築を横断して推進。Forbes Japan 30 Under 30受賞。

洪 英高氏(Homii World CEO/Founder)

Homii World.Inc CEO / 株式会社ダイバーシーズ代表取締役。新しい街に来た人が、ホストが主催するディナーやイベントを通じて友達をつくれる、 IRL(実際に人と会うための)ソーシャルプラットフォーム「Homii World」 のFounder/CEO。Day 1からNYで本格展開中。
日本初のホームステイマッチングサービスを創業し7年間運営。自らも大阪の自宅に100人以上の外国人を泊め続けた。「部屋を貸す」だけでは届かなかった体験を一段深く実現するため、2025年末に米国法人として新たにHomii Worldを創業。ジェイソン・カラカニス氏(Uber等の初期投資家)が主催するFounder UniversityでTop10に選出され、Launch Festでは審査員全員から1位に採択。
X: @hidetaka_homii

山崎 大志氏(株式会社AlphaByte 代表取締役)

ソフトウェアエンジニア/起業家。元シリコンバレーCTO。Snapchatから出資を受け、C向けアプリのスタートアップを共同創業し、プロダクト開発からグロースまでを経験。現在は日本を拠点に、AIを活用した個人向け・開発者向けプロダクトを複数開発・運営している。設計・実装・マーケティング・収益化までを一気通貫で行う開発スタイルを強みとする。

グローバル進出を阻む「日本の常識」と勝つための初期設計

日本から世界向けのプロダクトをいかに作るか。セッションはこの根本的な問いから始まりました。

Homii World 洪氏

▲ Homii World 洪氏

日本で7年間起業してきた洪氏は、「Japan to Global」のアプローチに懐疑的です。日本市場でいったん成功すると、日本特有のUX設計やファイナンス慣行、マーケティング常識が「グラビティ(重力)」として働き、世界基準のプロダクトへの転換を阻みます。世界で通用するプロダクトは、最初から世界を前提に作る「Global to Japan」の思考が必要だと指摘し、多国籍の人々が自然に集まるニューヨークのような「無重力」の環境からスタートすることで、はじめてグローバルなプロダクトが生まれると語りました。

株式会社fondi 野原氏

▲株式会社fondi 野原氏

一方、ユーザーの99%が海外という『fondi』を運営する野原氏のスタンスは、より柔軟です。「スタートアップがアメリカに憧れすぎるのはどうか」と笑いを交えながら、プロダクトの性質によってアメリカから広がる戦い方が有利な場合も、日本発のほうが刺さる場合もあると指摘。Day 0からグローバルを想定しつつも、ファウンダー自身の強みに応じてカメレオンのように戦略を変える柔軟性こそが重要だと述べました。

現地での「肌感覚」が勝敗を分ける

では、海外市場での具体的な戦い方とは何か。山崎氏の問いに、二人はそれぞれ実践から得た知見を明かしました。

洪氏が強調するのは、ビジョンを信じ抜く精神と、UI/UXへのファウンダー自身のこだわり、そして「地道な地上戦」をいとわない姿勢です。北米でのマーケティングにおいては、広告費の大量投下より、話題を設計する知恵が問われるといい、著名エンジェル投資家のジェイソン・カラカニス氏(Uber等の初期投資家)が主催するFounder UniversityでTop10に選出され、Launch Festでは審査員全員から1位に採択されたのも、UI/UXへのこだわりと「ファンキーな要素」の両立 が評価されたからだと語りました。

野原氏が切り込んだのは、アジア市場の複雑さです。東南アジアや南アジアのユーザーは、広告テキストをほとんど読まない。直感的に楽しさが伝わる動画でなければ、そもそも届かないといいます。さらに鋭い指摘が、市場の細分化です。「インドネシアは3億人いるから良さそう」と単純化しがちな日本の投資家に対し、野原氏は「15億人のインドですら、1,000万人単位でメッシュを切らないと現地の解像度は上がらない」と断言。所得水準や都市・農村の違いを無視した市場把握は、実態とかけ離れたまま終わると実践的なノウハウを示しました。

AI時代に代替不可能な「つながり」の価値

「2026年、日系スタートアップはグローバルで戦えるのか?」登壇者

セッションの終盤、二人は今後のビジョンを語りました。野原氏が描くのは、英会話の学習体験を超えた「経済圏」の構築です。アプリ内にテーマ別コミュニティを設け、英語力は高くても安定した職に就けないインドやインドネシアの人々が、他のユーザーの学習を支援することで収入を得られる仕組みを構想。「稼ぐ体験」の提供が、結果として世界中の英語話者を増やすという逆張りの発想で、すでに応募者は4,000人に達しており、構想の現実味を裏付けています。

洪氏の原体験は、自宅に100人以上の外国人を受け入れた7年間のホームステイ事業にあります。単に泊める場所を提供するだけでなく、現地を案内し、文化を伝えてくれるホストとの出会い——その体験がプロダクトの核心にあります。AIが高度化しても、人と人のリアルな繋がりだけは代替できない。だからこそ、「すぐそこにいるのに出会えない」という摩擦をAIで取り除くことに意義があると語ります。世界中どこにいても最高の媒介者とつながれる体験を、10年かけてグローバルで実現する——その言葉でセッションは締めくくられました。

セッション6|広告視点で考えるサブスクハックネタお披露目会 〜1円でも多くの収益を上げる方法について調査、議論、考察しました〜

サブスクリプション収益の最大化において、CPIの抑制だけを追い続けることに限界はないか——。本セッションでは、Repro株式会社の中野竜太郎氏と株式会社Alethneの坂本翔也氏が、LTV/CACを軸に据えた実践的な「ハック」を次々と公開。アプリ計測ツール「Adjust」を提供するadjust株式会社の高橋将平氏がモデレーターを務め、オンボーディング設計から広告最適化、マイクロオファーの活用まで、「明日から試せる」レベルの具体論が、多数のスライドとともに披露されました。

登壇者プロフィール

中野 竜太郎氏(Repro株式会社 App Evangelist)

2017年楽天グループ株式会社に新卒入社、ECコンサルタントとして200社以上の事業者を伴走支援。個人事業主として、メディア運営、プロの占い師を経てノバセル株式会社でマーケティング責任者を務める。その後、ソーシャルECアプリのマーケティング/グロースを担当し、2023年11月にReproに参画。趣味はポケカ。

坂本 翔也氏(株式会社Alethne 代表取締役)

EC事業、広告代理事業を通算7年ほど経験後、2017年にアプリマーケティング支援会社に入社。
営業として従事しつつASO事業、広告運用事業を立ち上げ、累計1200以上のアプリを支援し、業界No.1の実績を上げる。
2020年にASO事業責任者に就任後、2024年取締役に就任。
2025年7月末に「本質を追い求め、未来に真の価値を届ける」ことを使命に、株式会社Alethneを創業。

高橋 将平氏(adjust株式会社 Sales Lead Japan)

株式会社アドウェイズに新卒で入社し、同社の主力アフィリエイト広告領域を担当。最速で新人王を獲得。その後、英・Performance Horizon Groupの日本支社立ち上げに参画し、外資系サラリーマン人生をスタート。アプリとウェブを横断したグローバルなアフィリエイトマーケティングに従事し、国内シェア拡大のために尽力。Adjustへは2020年に参画して以来、一貫して新規セールスに注力。現在はSales Leadとして、新規顧客を中心にAdjustの導入〜活用までを支援。

Day0の8割が離脱――それでもLTVを上げる設計とは

サブスク攻略のカギ

セッションは「AHA体験無くしてサブスク転換あらず バイブコーディングを駆使した分析手法」と題した中野氏の発表からスタートしました。中野氏は、CPI(顧客獲得単価)が高騰する中、安価な獲得よりもLTV/CAC(顧客生涯価値/顧客獲得単価)を見据えた投資が不可欠だと指摘。具体例として、ヘルスケアアプリの『Noom』が100ページ近い長尺の質問でパーソナライズを行い「あなた専用のプラン」を提示することで課金率を上げている事例や、『Duolingo』が課金画面で学習完了率の向上を明確に訴求している事例を紹介しました。

また、苦労して獲得したユーザーの約8割以上が初日(Day0)で離脱する現状に対し、アプリのコア体験(AHA体験)にたどり着く前に離脱させない工夫が必要だと中野氏は語ります。そのアプローチとして中野氏が提案したのが「Self In-App Gamification Rewards」という概念です。AHA体験にたどり着くまでは、共通ポイントなど外部インセンティブで「背中を押し」、継続の中でアプリ自体の面白さに気づかせるという、段階的な設計を推奨しました。

クリエイティブの「当たり」はAIで特定できる

バイブコーディング解説

続いて話題はクリエイティブと集客に移ります。中野氏は実践的な分析ダッシュボードの構築手法を公開。Googleドライブに保存した縦型動画広告を『Claude』などのAIに読み込ませ、自動でスクリーンショットと文字起こしを行い、CPIデータと掛け合わせて「短期的に強い訴求」をあぶり出すというもので、「まねをしても大丈夫ですよ」と笑いながら、その手順を惜しみなく解説しました。

CPIより先に変えるべきは「入口の質」だった

ユーザー体験の時系列で見るフルファネルハック

続いて坂本氏は、LTV最大化のためには「入口の質」を変える必要があると強調します。ASOの知見から、カスタムプロダクトページを活用して「TOEIC」で検索したユーザーには専用の訴求画面を見せて期待値のズレをなくす手法や、「No.1」などのバッジ表記で安心感を与えることの重要性を語りました。

LTV最大化プロセス

無料トライアルにおけるイベント最適化の重要性にも触れたところ、モデレーターの高橋氏が、単に「トライアル開始」を広告の最適化地点にするのではなく、「2時間以上滞在したか」をトリガーにする海外ブログの事例を紹介。中野氏もこれに同意し、期間中に「特定のアクションを何回したか」というマジックナンバーを最適化の発火地点にするほうが、圧倒的に成果が良いと力説します。

最強のサブスクハック

また、坂本氏は、目先のCPIが上がったとしても、継続率や転換率を上げる投資判断こそが正しいとし、獲得したユーザーの利益をその後に最大化する上で、プッシュ通知やリターゲティングの重要性を説きます。中野氏も「鉄は熱いうちに打て」という言葉を引き合いに出し、勝負は初日(Day 0)で決まると補足し、放置しておいても後から戻るとは思わないでほしいと話しました。

「クジラ」も「プランクトン」も逃さない マイクロオファーという選択肢

サブスクの谷の考察

最後にモデレーターの高橋氏から、RevenueCatのグローバルレポートから得た独自の考察が披露されました。ダウンロードからサブスク開始までの日数のグラフに「谷」があることに着目し、ユーザーがいきなり高額なサブスクに課金することをためらっている心理を読み解きます。
高橋氏は流行の「ショートドラマ」アプリを例に挙げ、ショット課金を繰り返すうちに、結果的に「初めからサブスクにしておけばよかった」と思わせる構造に言及。さらに、サブスクの料金設定におけるジレンマに触れ、「料金を低くしすぎると『クジラ(高額課金者)』の利益を取り逃がし、逆に高すぎると『プランクトン(微課金ユーザー)』を取り逃がす」と指摘しました。

いきなり高額なサブスクを促すのではなく、プランクトン層に対して少額のショット課金や「1時間使い放題」といったマイクロオファーを挟むことで心理的ハードルを下げ、最終的に1円でも多くの収益を上げられるのではないかという可能性の提示に対し、中野氏も「自分もマンガアプリで同じことをやっている重課金ユーザーとして、実感がある」と共感。ここで終了時間を迎えたセッションは、収益構造の再設計に向けた具体的な手がかりを参加者に提供しました。

セッション7|ツールを超えた真の「伴走者」へ 〜AwarefyとUbieが挑戦する人々に寄り添うアプリの育て方〜

汎用AIが台頭する今、特化型アプリの「独自の価値」はどこにあるのか。メンタルヘルスアプリ『Awarefy』の小田愛莉氏とヘルスケアAI『Ubie』の望月駿一氏が登壇し、アプリ計測ツール「Adjust」の高橋将平氏がモデレーターを務めたこのパネルディスカッションは、「伴走者としてのアプリ」という問いを軸に展開されました。

登壇者プロフィール

望月 駿一氏(Ubie 株式会社 統合マーケティング責任者)

株式会社リクルートにてデータサイエンティストとして従事した後、2018年にUbie株式会社へ3人目の社員として参画。機械学習エンジニアとして疾患予測アルゴリズムの開発に携わり、2021年よりPdM/マーケターに転身。toCグロースチームを立ち上げ、国内最大級の1,200万MAUを支援する医療AIプラットフォームへの成長を牽引。現在は全社マーケティングをリードしながら、AIエージェントを前提とした新しいグロース組織の実現に注力している。

小田 愛莉氏(株式会社Awarefy アウェアファイ事業部 事業責任者)

IT企業にて法人営業を担当後、2020年にプロダクトローンチ前のアウェアファイへ参画。プロダクトマネージャーとしてプロダクト開発を推進し、2025年7月よりアウェアファイ事業部の事業責任者を務める。AIメンタルパートナーアプリ「アウェアファイ」は、2026年1月に100万ダウンロードを突破。

高橋 将平氏(adjust株式会社 Sales Lead Japan)

株式会社アドウェイズに新卒で入社し、同社の主力アフィリエイト広告領域を担当。最速で新人王を獲得。その後、英・Performance Horizon Groupの日本支社立ち上げに参画し、外資系サラリーマン人生をスタート。アプリとウェブを横断したグローバルなアフィリエイトマーケティングに従事し、国内シェア拡大のために尽力。Adjustへは2020年に参画して以来、一貫して新規セールスに注力。現在はSales Leadとして、新規顧客を中心にAdjustの導入〜活用までを支援。

なぜ「難しい領域」にあえて挑むのか

セッションは各社の紹介と、この領域に取り組む理由から始まりました。小田氏が手掛ける『Awarefy』は、心理学とAIを掛け合わせたメンタルヘルスアプリ。精神科の初診が3ヵ月待ちになるなど、ニーズが高いにもかかわらずソリューションが未熟な領域において、最後までやり遂げたいという強い思いを持って挑んでいるといいます。

一方、望月氏の『Ubie』は、体調不良時にどこに相談すればいいかわからない「医療迷子」を救う医療AIプラットフォームです。この「医療迷子」には国民の約7割が陥っているとのことですが、そこに対し、医学的な適切性を担保しながら、使えば使うほど個別的なアドバイスをしてくれるプロダクトとして生活をサポートしています。
日本の医療費は約30兆円規模とされる巨大市場でありながら、医療機関や行政が絡むため非常に難易度が高いそうですが、そこに面白さを感じていると、望月氏は話しました。

「ツール」から「パートナー」へ――キャラクターの力

Awarefy紹介資料とファイさん

▲下:ファイさん

ユーザーに深く寄り添うための具体的な工夫として、両氏は「キャラクター」の重要性を挙げます。

小田氏は、AIを搭載しキャラクターの「ファイさん」を導入したことで、アプリが単なるツールから、過去の文脈を理解して言葉をくれる存在へと進化したと解説。深い悩みだけでなく、趣味の話や一日の振り返りなど「雑談」の相手として日常的に使われるようになったことで、信頼関係が築かれていると語りました。

ユビー紹介資料とユビーくん

▲下:ユビーくん

望月氏も同様だとうなずきます。病気と日常の境目は曖昧であるため、キャラクター「ユビーくん」を通じて、病気以外の些細な体調変化や生活の会話もできる「パートナー」を目指したと、設計の背景を明かしました。

気づいていない人にどう届けるか――ヘルスケアアプリ最大の難所

予防、否認、病識欠如の違い

最後に、自身が病気だと気づいていない層(病識欠如)へのアプローチが議論されました。
小田氏は「病気になる前に知りたかった」という声を受けて予防層にアプローチしたものの、なかなか難しかったと語ります。そこで、現在は再発予防や一度大切さを知った方を基本ターゲットとし、「メンタルヘルス」という言葉を使わないアプローチを模索。最終的にはAIだけで完結させず、適切なタイミングで病院につなぐ等、頼り先になるツールのひとつとしての役割をさせることが重要だと語りました。

Ubie 株式会社 望月氏

▲Ubie 株式会社 望月氏

望月氏は、いきなり「病院に行け」と指示しても行動には移りにくいため、望ましい行動につなげるべく、いろいろ計測はしていると話します。その間のステップをいかに設計し、行動の阻害要因を整理し、取り除くかがカギだとしました。

株式会社Awarefy 小田氏

▲株式会社Awarefy 小田氏

「個人は必要性を感じなければ行動を変えない」と小田氏も補足。健康に関心の高い法人や行政からのアプローチであれば、望ましい行動につながるのではとの仮説も提示されました。

ヘルスケアという「解決が難しい」領域だからこそ、プロダクトに求められるのは機能の精度だけではありません。ユーザーの日常に入り込み、信頼を積み重ねる「伴走者」としての設計思想——そのヒントが、両社の実践から浮かび上がったセッションでした。

セッション8|AIで業務はどう変わった? ―ゲーム・ECの最前線に学ぶAI活用の実践術

AIを単なる「効率化のツール」として導入するフェーズは終わり、AIを前提に組織や業務フローそのものを再定義する「AIネイティブ」な在り方が問われています。本セッションでは、ゲーム開発の最前線に立つルーデルの吉永辰哉氏と、EC・マーケティング領域で自らAIを駆使する株式会社Stractの野崎稜氏が登壇。モデレーターのadjust株式会社大杉健治氏とともに、AIが現場の景色をどう変え、どのような成果を生んでいるのか、その実践術が語られました。

登壇者プロフィール

吉永 辰哉氏(株式会社ルーデル 執行役員 CDAO データサイエンス部長)

株式会社ルーデルにてデータサイエンティストかつ執行役員としてデータ分析組織の組成とメンバー育成、データ分析基盤の構築、実務者としてゲーム事業でのデータ分析業務やレベルデザイン、ゲームの仕様改善を担当。
全社AI(LLM)推進の領域も管掌しており、組織全体の業務再設計やAI最適化の働き方の実現を目指している。

野崎 稜氏(株式会社Stract マーケティング/グロース責任者)

早稲田大学商学部主席卒業。株式会社Gunosyに新卒で入社し、アプリサービスのグロースを担当。プロモーション、プロダクト企画、コンテンツ開発/調達、アライアンス等に広く従事。その後タイミーのマーケティングを経て、現在はAIショッピングアプリ「PLUG」のマーケティング、グロースを担当。290万DLを突破する急成長に貢献。

大杉 健治氏(adjust株式会社 Head of Customer Success, Japan)

BtoB領域を中心に、広告・SaaS業界で一貫して営業/アカウントマネジメント/カスタマーサクセスに従事し、広告媒体社やBI系SaaSにおいて多くのクライアント支援を行ってきました。既存顧客の成果最大化と伴走型の関係構築を強みとし、データ活用を軸にLTV向上や組織的な運用改善を推進してきました。現在は Adjust にて Head of Customer Success を務め、日本市場のモバイルアプリマーケティング領域におけるグロース支援と、スケーラブルなカスタマーサクセス体制の構築に取り組んでいます。

エンジニアでなくても実装できる――AIが変えた職種の常識

セッションは各社の具体的なAI活用事例から始まりました。

ルーデルのAI活用状況

ゲーム事業を展開するルーデルの吉永氏は、会社として全社的にAI活用を推進していると語ります。『Gemini』や『Claude』に加え、『Cursor(カーソル)』などのツールを用いることで、非エンジニアのメンバーでも社内アプリ開発が可能になり、日常業務や制作の生産性を70〜90%向上させていると説明。また、ただ「AIを入れるだけ」ではなく、裏側で参照するデータの整備や、AIを入れる際に業務プロセスも見直すといったことがコツになると明かしました。

StractのAI活用状況

ショッピングアプリ『PLUG』を展開する野崎氏は、自社を「AIネイティブ組織」と定義し、「人間は意思決定するだけ」の組織作りを目指しているといいます。マーケティング責任者である野崎氏自身が、自然言語を用いてプロダクトを開発しており、直近でも「dポイントとの交換機能」の追加実装をAIを駆使して自ら完結させたという驚きの事例を紹介。モデレーターの大杉氏も、開発リソースがない中でも、マーケター自身である程度実装できると、スピード感を持ってPDCAが回せるだけでなく、スキルアップ、モチベーションアップにもつながりそうだと話しました。

AIが本当に変えたのは、業務ではなく「問い直す習慣」

ルーデルのAIによる変化

AI導入がもたらす本質的な変化について、吉永氏は「AIはきっかけにすぎない」と指摘します。AIを前提にすることで、「そもそもこの確認業務は必要なのか?」といった業務フローの根本的な見直しや断捨離が進み、結果的に社内のDX化が一気に加速したことが最大の収穫だったと語りました。

StractのAIによる変化

野崎氏も、工数削減に留まらない「主体性の醸成」を変化として挙げます。マーケターであっても実装まで自分でやり切れるようになったことで、開発側の意図への解像度が上がり、より精度の高い仮説が立てられるようになったと語りました。

それを受け大杉氏は、職種の境界が薄くなることで理解し合える反面、責任の所在が不明瞭になるのではとの懸念を示します。これに対し野崎氏は、「プロジェクト単位でアサインと責任を明確にする」ことで解決していると組織運営の工夫も明かしました。

AIは整備された道しか走れない――「人間側が寄せる」という発想

セッション終盤では、AI活用のコツと注意点が語られました。

StractのAI活用のコツ

野崎氏は「最終的に意思決定をするのは人間である」と強調し、学生インターンのような意思決定の経験が浅いメンバーがAIを使いこなすことの難しさと、管理側による適切なコントロールの必要性を説きました。

ルーデルのAI活用のコツ

吉永氏はAIの導入を「自動運転」に例えて解説します。「自動運転車は既存の複雑な道路を走るのは難しいが、整備された専用の道なら十分走れる。ホワイトカラーの業務も同じで、既存の業務に無理に当てはめるのではなく、AIが働きやすいように人間側が業務フローやデータを整備してあげることが重要だ」と語り、実践的な知見を示しました。

AIで業務はどう変わった? 登壇者

モデレーターの大杉氏は、各社が知見を共有し合い、AI活用をさらにドライブさせていくことが重要だと語り、本セッションは締めくくられました。

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