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  • 「400万ダウンロードは通過点」――ACRYが転写シート・Android・海外に踏み出した理由

推し活グッズのオンデマンド制作アプリ『ACRY(アクリー)』が、サービス開始から約3年半で累計400万ダウンロード、100万注文を突破。アプリのUXと製造を一体設計することで、「1プレートに詰め放題」という独自の価格モデルと神戸の自社工場による垂直統合体制で急成長を遂げたAMBI株式会社が、今まさに第2フェーズを動かしています。

転写シート型の新サービス「ACRY PRINT」の投入、Android版の提供開始、そして韓国市場への参入。なぜこのタイミングでアクリル以外の領域に踏み出すのか。その意思決定の背景とプロダクト拡張の論理を取材しました。

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お話を伺った方

AMBI株式会社 マーケティング部
岡村 ゆき乃氏

広告運用を中心に、マーケティングおよび広報業務に従事。プロモーション全体の設計・運用や効果分析に携わるほか、記事制作などの情報発信も担当。

▼『ACRY(アクリー)』とは?
AMBI株式会社が運営するアクリルグッズ制作アプリ。スマートフォンで撮影した写真やオリジナルデザインをアクリルプレートに印刷でき、「1プレートに詰め放題」の価格設計と、神戸の自社工場による一貫したオンデマンド生産体制で、推し活ユーザーを中心に支持を集めている。

公式サイト https://www.acry.co.jp/

「詰め放題」が同時に解く3つの設計課題――オペレーション・ブランディング・内製化

ACRYグッズ例

▲1つのプレートに入る分なら、複数のデザインでも一度に注文できる
出典:ACRY公式サイト

『ACRY』の400万ダウンロードを支えた競争優位の核心は、「1プレートに詰め放題」というプロダクト設計にあります。これは単なるお得な価格設定ではなく、ユーザーの行動を通じてオーガニックな認知を生み出す仕組みです。

「アプリのコンセプトとして『アクリルプレートから広がる世界』を掲げており、開発当初から詰め放題の設計でした。元々はS・M・Lの3サイズ展開でしたが、その後さまざまな素材や形状へと拡充していきました」(岡村氏)

この「1プレートに詰め放題」という設計には、3つの戦略的意図が埋め込まれています。

製造・発送の効率化と内製化
1枚のプレートにまとめることで工程管理を簡素化。これを実現するためにオペレーションを垂直統合(内製化)し、リードタイム短縮とクオリティの安定を両立。

廃棄ロスの最小化
受注生産(オンデマンド方式)の中で、1枚に集約することで余剰在庫を生まない構造。

視覚的なブランディング
アクリルプレートを軸に商品展開を行い、「ひと目で『ACRY』で注文したとわかる状態」 を保つことで、「ACRY=アクリルプレートのブランド」という印象と届いた瞬間の体験価値を高めて口コミを誘発。

推し活グッズのようなオリジナルデザイン品は、ユーザーが思い描いたデザインが手元に届くまでの体験全体が価値になります。
価格の自由度を支える「内製化された工場」があり、その工場があるから「詰め放題」が成立する――このオペレーションと価格設計の相互依存関係こそが、他社が簡単に真似できない『ACRY』の真の競争優位性です。

アクリルから転写シートへ。ACRY PRINTが狙う隣接市場とターゲット設計

ACRY PRINTサービスページ

出典:プリントサービス|AMBI株式会社

『ACRY』はサービス面でも新たな材料を投入しています。転写シートのオンデマンド制作サービス「ACRY PRINT」はUVプリント(硬化インクを使った印刷)のインク層だけを転写シート状に加工したもので、プラスチックやセラミック、ステンレスといった素材に平面・曲面を問わず貼り付けることができる商品です。スマートフォンケースやノート、水筒など日用品に自分だけのデザインを加えられることから、日常生活に溶け込む幅広い用途が見込まれます。

アクリル業からプリント業へのカテゴリー拡張は、創業当初から構想の中にあったといいます。
「アクリル商品からスタートしてはいますが、本質的なコンセプトは『ユーザーの方々の創作や表現の可能性を広げること』です。そこで、プリント領域でも表現できる対象や用途がさらに広がることを期待し、ACRY PRINTサービスを立ち上げました」(岡村氏)

注目すべきはターゲット設計です。「ACRY PRINT」のコンセプトは「ユーザーカスタマイズ」。カスタムをより身近で便利なものとして日常的に利用してもらいつつ、アクリルとは違う楽しみの提供を目指し、ターゲットは既存ACRYユーザー(20代後半~30代後半のママ層)への追加訴求ではなく、10代から30代の女性という新規顧客層の獲得を主軸に据えました

プロダクト拡張における隣接市場参入の判断基準として、この事例から読み取れるのは「既存インフラの活用度」と「ターゲット設計の意図的な分離」です。アクリルグッズを愛用する推し活ユーザーと、日常のアイテムをカスタマイズしたい若年女性層では、購買動機もシーンも異なります。
しかし「自分だけのデザインを形にする」という根本的な体験価値は共通のもの。既存アプリのまま商材範囲を広げることができるうえ、転写シートはUVプリント技術・小ロット対応・データ処理という観点でアクリル製造と重なる部分が多く、これまでに培った製造インフラをそのまま転用できます。同時に、新規顧客層を明確に定めることで、既存サービスのブランドイメージを保ちながら新たな市場に入ることができたのです。

韓国への進出とAndroid展開――最初の海外市場に韓国を選んだ理由

ACRY韓国版App Store画像

▲リリースから1年経過した現在、評価は4.5と高い
出典:App Store

プロダクトの海外展開において、最初の市場選択は立ち上がりの速度に直結します。市場規模だけでなく、「なぜそのサービスが使われるか」という根本的な動機が現地の価値観と重なっているかどうかがカギとなる中、2025年、『ACRY』は最初の市場として韓国を選択しました。
韓国は推し活・ファン文化が日本と類似しており、かつ流行や文化を生み出すトレンド発信力を持っています。「より早く情報をキャッチして、ACRYとしての活用やニーズを他国へも拡張したい」(岡村氏)という言葉が示すように、韓国をトレンドの起点として捉え、そこから得た知見をほかにも波及させる設計です。

韓国ではiOS版のみですが、日本市場では2026年6月から『ACRY』Android版の提供も開始し、すでに10万ダウンロードを突破しました。「デバッグの観点で課題もある」としつつも、想定通りの伸びを見せておりリリース後の手応えも上々。これまでiOSのみだったユーザー層の間口を広げ、『ACRY』の認知を高めるこのチャンスを活かし、さらなる加速を目指していくとのことです。

BtoB展開が拓く、『ACRY』カスタマイズ製造の未来

消費者向けのグッズ制作アプリとして成長してきた『ACRY』。現在はBtoBサービスの拡充にも動いています。「ACRY PRO*¹」「ACRY ticket*²」といったBtoB向けサービスには、大手企業・中小企業を問わず多数の問い合わせが寄せられており、その用途は販促イベントや物販・ノベルティ活用が中心です。『ACRY』が持つオンデマンド製造の強みは、小ロット・多品種という法人需要にも有効に働きます。

BtoCの顧客基盤があってこそBtoBが成立するという関係性も、『ACRY』のビジネスモデルの特徴です。累計400万ダウンロードのユーザーベースと製造実績は、法人顧客に対して品質と信頼の証明になり、また、個人ユーザー向けに磨かれたアプリの設計は、法人担当者にとってもデザイン作業のハードルを下げる効果があります。

BtoCで積み上げたプロダクト品質と実績がBtoB展開の基盤として機能する――このパターンは、消費者向けアプリからBtoB拡張を検討している事業者の参考になります。岡村氏も「今後は、toCのお客様以外にも『ACRY』のサービスをより身近に活用いただけるよう、アプリ開発に注力していく」と語り、製造オペレーションと自社工場のキャパシティをBtoBの受注増に対応できる形でスケールさせる方針を示しました。

400万ダウンロードを誇るBtoCアプリと神戸の自社工場で積み上げた製造体制を土台に、隣接市場・新プラットフォーム・海外・法人という複数の方向へ同時に広げていく。その数字は到達点ではなく、次の打ち手を動かす基盤となっているのです。

*¹ ACRYアプリと連携した、事業者向けの商用アクリルグッズ制作サービス
*² ACRYアプリでアクリルプレートを制作できる「チケットコード」を、ノベルティやキャンペーン特典として配布できるサービス
ACRY(アクリー)アクスタ/アクキー

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