大手フリマアプリは、多くの人のスマホにインストールされているにもかかわらず、日常的に出品しているユーザーは一部に限られる――その背景には、価格設定や発送対応など、出品にまつわる多くの手間が存在します。
このギャップに事業機会を見いだしたのが、AI即金アプリ『Chalyn(チャリン)』。運営は、AIによる真贋鑑定サービス「FAKEBUSTERS(フェイクバスターズ)」でも知られるIVA株式会社です。写真を撮るだけでAIが自動査定し、即時現金化を実現するリセールアプリとして、サービス開始からわずか7ヵ月で取り扱いカテゴリーを25種に拡大。2026年4月には、外貨の取り扱いも開始しました。
衣服やバッグの買取アプリが、なぜ外貨まで扱うのか。同社代表取締役CEOの相原嘉夫氏に、カテゴリー拡大の判断軸と買取事業に対する信念を聞きました。
服を撮る、外貨を送るだけで即現金化。AI即金アプリ『Chalyn(チャリン)』が7ヵ月で25カテゴリーに拡大できた理由
今回お話を伺った方
▼『Chalyn(チャリン)』とは?
AIがアイテムを自動査定し、即時現金化を実現する手数料無料の買取アプリ。不用な衣服、ゲーム機、ブランドバッグなどを撮影すると査定額が提示され、無料集荷サービス*で自宅から発送できる。出品作業も値下げ交渉も不要で、手放したいタイミングでまとめて換金できるのが特徴。
*査定金額によって集荷の条件が異なります
公式サイト:https://chalyn.com/
GMVの約9割は上位10%に集中。フリマアプリに残る「出品の手間」
フリマアプリ市場が成熟した現在、「大手フリマアプリはほとんどの人がスマホにインストールしている状態」だとIVA株式会社代表取締役の相原嘉夫氏は語ります。同時に、多くのフリマアプリには大きなペインが潜んでいるとも指摘しました。
「日常的にフリマアプリで物を売っている人って私の周りにはあまりいないんですよ。なぜやらないのかと聞くと、『面倒くさい』という答えが返ってきて……。また、大手フリマアプリのGMV(流通総額)の約9割は、全ユーザーのトップ10%が占めているともいわれていることからも、残りの90%はアカウントを持ちながらもほとんど使わないライトユーザーだということが見えてきます」
フリマアプリをインストールはする。だけど面倒くさいから利用はしない。相原氏はその状況を生み出しているユーザーのペインに大きな事業機会を見いだしました。
「フリマアプリにまつわる『面倒くさい』は多岐にわたります。商品説明を書く、価格を考える、値下げ交渉に対応する、梱包して発送する。これらのステップを経てようやく換金に至ります。出品後も売れるまでのタイムラグがあり、その間は部屋の片隅に物が置きっぱなしになることも決して珍しくありません」
一方、リアル店舗である買取店にも別の問題があります。ユーザーがわざわざ店舗へアイテムを持ち込んでも、店側は在庫にかかるコスト増大を懸念するため、買取価格が低く抑えられがちです。「ユーザーは、店に持ってきてしまった以上、持って帰るのも面倒だからという消極的な理由で売っているんです。この構造は本質的にハッピーではありません」と相原氏は指摘します。そして、ユーザーが各リセールサービスに抱く「面倒くさい」というペインを解消するために誕生したのが『Chalyn』でした。
出典:PR TIMES
『Chalyn』はアイテムの写真を撮るだけでAIが査定額を提示し、売りたい場合は無料で集荷に来てもらえます。細かな出品作業や値下げ交渉、発送作業も不要です。手放したいタイミングで、すべてを一度に手放せる。この「わずらわしさの解消」が『Chalyn』の新たな価値提案です。
カテゴリー選定の判断軸は「出口があるか」だけ
7ヵ月で取り扱い25カテゴリーへと拡大を実現した『Chalyn』ですが、カテゴリーの選定基準はシンプルです。「売れるものは何でもやっていこうというのが前提で、意思決定の9割を占めるのは『自分たちが買い取ったモノがちゃんと売れるか』です」と相原氏は言います。
大手フリマアプリのようなプラットフォームはカテゴリーを開放すれば取引が自然に生まれますが、『Chalyn』は自社がすべて一度買い取るビジネスモデルです。そのため、売却先(出口)が必須となる結果、社会で価値のないものは買い取らず、適正な価格で売れないものも取り扱わないことになります。このビジネスモデル上の制約は、社会で求められていない不用品の掲載抑制にもつながるというメリットも生まれました。
また現在、アプリ界隈で話題になっているのは、『Chalyn』が外貨を取り扱い始めたことです。「売れるものは売る」という判断基準に則れば自然な選択ともいえますが、異質なカテゴリーだともいえるでしょう。しかし、相原氏にはそこに抵抗のようなものを感じなかったそうです。
「僕らにとっては服を買い取るのと同じ感覚で、外貨もモノとして扱っています。家に着なくなった洋服があるように、海外旅行先で使わなかった外貨の小銭も多くの家にありますよね」
本来であれば銀行窓口で外貨を円に換金しようとすると手数料だけでなく、銀行へ向かう手間が生じます。しかし、『Chalyn』であれば手持ちの外貨を一般書留で送付するだけで、後日に相応の円が振り込まれるため手間がかかりません。仮に銀行窓口よりも相場が低くなったとしても、ユーザーにとっては「面倒くさい」が省かれる価値の方が大きいという判断です。また、フックとなる商材が多いほど、ほかの商品との「ついで利用」につながる点も、外貨がカテゴリーに加わった背景となっています。
AI査定+人間の目と判断力がアプリの基盤を支える
▲アイテムにカメラをかざすだけでAIが査定してくれる
買取サービスを展開する上では、査定額と収益性のバランスを見極める必要もあります。査定額を高く設定すれば収益性が下がり、低く設定すればユーザーが離れるというトレードオフは、買取事業の根幹に関わる重要なテーマです。『Chalyn』はこのトレードオフをどう捉えているのでしょうか。
「現段階では、足元の収益を最大化するよりも、ユーザーの獲得と満足度向上を優先しています。結果的に99%以上の取引で収益が確保できていますが、ただ収益の最大化に重きを置いているわけではありません」と相原氏は言い切ります。
満足度向上の具体的な仕組みとして同社が設けているのが「最終査定」です。アプリ上でのAI査定(一次査定)は、ユーザーが商品の状態や付属品の有無を選択することで価格が変動する仕組みになっています。しかし実際に商品を確認すると、申告内容と実物が異なるケースは少なくありません。その場合は減額することもありますが、ひどい減額は避け、ユーザーが納得できる選択を1取引ごとに模索しているそうです。
「現段階では取引量がスケールしきっていないからこそ、1取引ずつ人の目と判断力で商品と向き合うことができます。これが今の『Chalyn』の強みです。また、外貨の査定は、AIではなくリアルタイムの為替レートを利用し、換金時の出口を見据えた上で一定のバッファを乗せて提示する仕組みになっています。株式や債券のような変動性はなく、レートに準じた透明性の高い価格提示が可能です」
7ヵ月で25カテゴリーを実現したのは泥臭い持続力
これだけのスピードでカテゴリーを拡大できた背景には、相原氏の意思決定と現場チームの実行力の組み合わせがありました。
「社内にはカテゴリー拡大を急ぐべきではないという意見もありました。でも私の判断でDay1からずっとやると決めていた。実際に手を動かしてくれたのは、事業開発(BizDev)チームのメンバーです」と相原氏は振り返ります。
「特に複雑だったカテゴリーはブランドバッグやジュエリーですね。これらはブランド名、モデル、状態、付属品の有無、さらに同じバッグでも色によって価格が変わる。そうした変数を洗い出し、査定ロジックを設計するのは簡単な作業ではありません。リサーチし、設計し、新たな考慮事項が出てくるたびに調べ直す。このサイクルを2週間に1カテゴリーのペースで回し続けたのが、前半3~4ヵ月の実態でした」
AIへの過度な期待を戒めながら、相原氏はAIをこう総括します。「今、AIは魔法のように語られることが多いですが、私は単に、ビジネスを効率化・加速する手段、それだけだと考えています。武器を持ったとしても泥臭くやっていくことは変わらないですし、それができる会社、できる人が強いのだと思います」
プロダクト品質を高めた後、本格的な広告展開へ
『Chalyn』は現在、カテゴリー拡大のフェーズから、プロダクト品質の向上フェーズへと軸足を移しつつあります。この品質優先の姿勢は広告への向き合い方にも色濃く反映。プロダクトがより高品質になるまで広告投資は控えるという判断のもと、同社はサービス開始から7ヵ月間、運用型広告に1円も投下せず、プレスリリースとX(旧Twitter)の運用、メディアタイアップのみで広報を展開してきました。
「広告展開はいつか必要だとわかっています。ただ、今はまだアプリを触るたび、直すべきところが次々と出てくる。ユーザー満足度を高めるためにも、まだそれらを解消していく段階です」
また相原氏は、今後の成長フェーズを見据え、マーケティング体制の強化に向けた採用を検討しているとも話します。「プロダクトの完成度をさらに高めた後は、相当な予算を投下して広告運用をしていく予定です。toCプロダクトに興味があり、大胆な挑戦に惹かれる方は、ぜひ『Chalyn』のマーケターとしてジョインしてもらいたいですね」
ユーザーの「面倒くさい」を丁寧に取り除きながら、プロダクトの品質を磨き続ける『Chalyn』のグロースは、地に足のついた積み上げの上に成り立っています。AIの能力をフルに引き出したアプリであるものの、事業を支えているのは昔ながらの泥臭い持続力。「面倒くさい」で終わらせず「面倒そのものをなくす」。そのスマートなアプローチの根底には人間の熱い情熱が流れ続けています。