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  • LINEでできないことはなくなる―― 「ミニアプリタブ」が描くAIエージェント時代のアプリ体験

スマートフォンにアプリを取り込む入り口は、長らくApp StoreとGoogle Playという二大巨頭が担ってきました。
そのような中、大規模プラットフォーム内で利用できる「LINEミニアプリ」が存在感を高めています。「LINEミニアプリ」とは、アプリをダウンロードすることなく、ユーザーが店舗・企業の会員証やモバイルオーダー、予約受付などのサービスを利用できるウェブアプリのことです。

2026年3月、『LINE』は画面下部の「ウォレットタブ」を「ミニアプリタブ」に変更しました。同年7月2日に開催された「LINE 15th Anniversary Event -Connect the Next-」で、「LINEミニアプリ」やAIエージェントを軸とした今後の構想を発表。LINEヤフー株式会社は、新たなサービス利用の導線を『LINE』上に構築しようとしています。

なぜ今「ミニアプリタブ」を設けるのか、その先に見据えるアプリの役割やAIとの関係、そして『LINE』が目指す将来像について、同社の山崎 達嗣氏と谷口 友彦氏に伺いました。

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今回お話を伺った方々

LINEヤフー株式会社
コーポレートビジネスドメインビジネスPF
SBUミニアプリメディア&コンテンツユニットリード
山崎 達嗣氏

2011年に楽天へ入社し、バーティカルメディアのマーケティング・編成、広告企画・営業、大手企業のプロモーション企画などに従事。2017年にLINE株式会社(現LINEヤフー株式会社)へ入社後、O2O事業戦略や提携・アライアンス戦略を担当。現在は「ミニアプリタブ」を統括している。

LINEヤフー株式会社
コーポレートビジネスドメイン OA・MINIビジネスSBU
プロダクトマーケティング3ユニットリード
谷口 友彦氏

2008年株式会社リクルートに新卒入社。複数の新規事業企画・開発を経験後、2014年にLINE株式会社(現LINEヤフー)に入社。「LINE TAXI」のPdM、「Messaging API」や「LINEログイン」などのビジネスプラットフォーム系Productの立ち上げ、広告事業の事業戦略などを担当。現在は「LINEミニアプリ」の事業責任者。

▼「ミニアプリタブ」とは?
旧「ウォレットタブ」。店舗や企業が「LINE」上でサービスを提供するためのアプリプラットフォーム「LINEミニアプリ」にアクセスできる。「LINEミニアプリ」の利用履歴の表示のほか、注目ランキングやクーポン、キャンペーンなども掲載される予定。

「ミニアプリタブ」が生まれた背景

谷口氏と山崎氏の画像

▲左:谷口 友彦氏/右:山崎 達嗣氏

2026年3月、『LINE』の下部メニューに「ミニアプリタブ」が新設されました。アプリの探索・インストールの場所としてApp StoreとGoogle Playが二大巨頭として存在する中、『LINE』が新たな選択肢を提示したといえます。

――「ウォレットタブ」を「ミニアプリタブ」に刷新し、独立したタブとして設けた狙いを教えてください。

ミニアプリタブの画像

▲右端の「アプリ」で「ミニアプリタブ」のにアクセスできる

山崎:App StoreやGoogle Playとは異なる形のアプリストアだと思っています。タブ化に踏み切った背景は大きく2つあります。
1つ目は会社としての戦略転換です。以前存在した「ウォレットタブ」は、「LINE Pay」をはじめ、クーポン・チラシ・ポイントカードといったサービスを強化する位置づけでした。このような決済サービスが中心だったところから役割をさらに広げ、店舗での利用に限らずゲームやコンテンツなども含めた多様なサービスと出合える入口へ進化させようと考えたんです。
2つ目は、「LINEミニアプリ」自体の成長です。2020年の立ち上げから7年目を迎え、現在『LINE』利用者の3人に1人が「LINEミニアプリ」を利用しています。一方で、多くのユーザーは「LINEミニアプリ」を使っていても、それを「LINEミニアプリ」と認識しているわけではありません。
そこで、より多くのユーザーに存在を知ってもらい、利用を広げるため、「ミニアプリタブ」を設けることを『LINE』全体として決定しました。

――構想の決め手になったものはあったのでしょうか。

山崎:2025年11月から開始されたAppleの「Mini Apps Partner Program」が後押しになりました。これは「LINEミニアプリ」経由の決済額に対しての手数料をネイティブアプリ経由よりも低く設定する制度で、2026年10月以降、「LINEミニアプリ」の手数料率はこれまでの26〜31%から一律20%に変更されます。
ユーザーニーズと市場環境の両面を踏まえ、事業としても会社としてもこの領域に注力するのが合理的だと判断し、リリースまで一気に進めましたね。

谷口:これまでは、Appleのガイドラインなどを踏まえると、「ミニアプリタブ」のようなものは作れなかったんです。一方で、ユーザーや参画を検討する企業から「『LINEミニアプリ』には、なぜ入り口がないのか」という指摘を多くいただいていました。
それでも2020年の開始以降、「LINEミニアプリ」自体が増え続けたことに加え、「App Reviewガイドライン」のアップデートやゲーム領域などでの「LINEミニアプリ」の推進といった動きにより、「ミニアプリタブ」を実現できる環境が整ったんです。

「LINEミニアプリ」はネイティブアプリに代わる存在なのか

App StoreやGoogle Playという巨大なアプリストアが存在する中で、『LINE』が新たなアプリの入口を作ることは、既存のネイティブアプリとの競争にも見えます。「LINEミニアプリ」と既存アプリの関係を『LINE』はどのように捉えているのかを伺いました。

――「LINEミニアプリ」はユーザーの可処分時間をネイティブアプリと奪い合う関係になるのか、それとも役割を分けるような形で共存していくのか、位置づけをお聞かせください。

山崎:基本的には共存です。会員プログラムの例を考えると、わかりやすいと思います。

谷口:会員獲得は企業にとって大きなコストがかかるのに対し、「LINEミニアプリ」なら、LINEのIDを使ってユーザーは簡単に会員証を発行できます。
小売をはじめとしたさまざまな業界で実践しているのは、この仕組みを活かした段階的な会員プログラムです。まず「LINEミニアプリ」で会員証を発行したユーザーを仮会員、つまり見込み顧客と位置づけ、コミュニケーションを重ねることで本会員へと育てていきます。そして、ロイヤルティが高まり本会員になるようなユーザーの多くは、ネイティブアプリを利用するようになるでしょう。
このように役割を分けることで、「LINEミニアプリ」とネイティブアプリは十分に共存できます。

――具体的にはどのような使い分けを想定していますか。

谷口:ネイティブアプリが向いているのは、ゲームならミッドコア向けや容量の大きい本格タイトル、生活関連分野なら頻繁に利用するサービスや店舗ですね。一方、「LINEミニアプリ」は気軽に遊べるゲームや一時的に利用したいサービスに適していると考えています。
「LINEミニアプリ」はこれまでネイティブアプリでは取り込みにくかった利用シーンや、ネイティブアプリがなかった領域を埋める存在です。
また、企業が参画する目的の多くはライトユーザーの獲得にありますが、実際に運用してみると、「LINEミニアプリ」のユーザーのままヘビーユーザーとなる方が意外といて、明確に分かれるわけではありません
例えばスターバックス コーヒーでは、当初ライトユーザーの集客とロイヤルユーザーへの移行促進を目的に「LINEミニアプリ」を採用いただきましたが、実際にはその双方で成果を実感してもらうことができ、ロイヤル層にも支持されるもうひとつの体験チャネルとして定着しています。

――ネイティブアプリと比較して、「LINEミニアプリ」を使うことのメリットは何でしょうか。

山崎氏の画像

山崎:『LINE』の中にあることが圧倒的な差別化ポイントです。多くのユーザーは、すでに「LINE公式アカウント」を通じて店舗やサービスとつながっていますからね。実際、現状では「LINEミニアプリ」は「ミニアプリタブ」から利用するよりも、「LINE公式アカウント」経由で利用されるケースが圧倒的に多いです。すでに友だち追加をしている「LINE公式アカウント」から関心の高い情報が日常的に届き、それをきっかけに、『LINE』上でそのままゲームができたりサービスを利用できるため、利用までをスムーズにつなげられることも大きな特徴でしょう。
一方で、「一度使った『LINEミニアプリ』を後から見つけられない」というユーザーの声も多かったので、「ミニアプリタブ」では「お気に入り」や「履歴」といった機能の開発を進めています。

AI時代でも失われない「ミニアプリタブ」の存在価値

「LINE 15th Anniversary Event -Connect the Next-」で登壇する山崎氏の画像

▲「LINE 15th Anniversary Event -Connect the Next-」で登壇する山崎氏

「LINE 15th Anniversary Event -Connect the Next-」では、LINEヤフー株式会社のAIエージェントである「Agent i」が複数の「LINEミニアプリ」を横断してユーザーをサポートする構想が発表されました。AIエージェントがユーザーに代わってサービスを探し、操作まで行うようになれば、アプリ一覧や検索画面といった従来のUIは役割を終えるのでしょうか。AI時代における「ミニアプリタブ」の位置づけを聞きました。

――AIエージェントの機能が増えるとすると、「ミニアプリタブ」の役割はどうなるのでしょうか。

山崎:長期的には、AIエージェントの「Agent i」に頼めば何でもできるような世界が訪れる可能性があります。その場合、「ミニアプリタブ」はショートカットとして機能するような役割分担になるかもしれません。
ただ、「Agent i」はユーザーのニーズや利用シーンに合わせて段階的に広がっていくものなので、浸透するまでの時間が必要だと考えています。

谷口:多くの方がイメージしているようなAI中心の体験に近づいていくかなと。例えば、毎朝出勤時にカフェでコーヒーを注文する方が「ミニアプリタブ」やAIエージェントを開いた瞬間に「今日も注文しますか?」とAIが質問して、そのままワンタップで注文まで完了できるような状態ですね。
一方で、ユーザー自身がサービスを見比べたり、新しいサービスと出合ったりしたい場面もあります。だからこそ短期・中期的には、おすすめのサービスを伝えるメディアとしての役割が「ミニアプリタブ」に求められるのではないでしょうか。

山崎:当面はまず、先ほども述べた「ミニアプリタブ」の「お気に入り」や「履歴」の機能を充実させ、スマートフォンのホーム画面のように「LINEミニアプリ」を自由に並べられるようにしたいと考えています。
『LINE』は企業とユーザーをつなぐ立場でもあるため、ユーザーに新しいサービスとの出合いを提供する役割も重要です。当面は、「Agent i」に、従来の機械学習を活用したレコメンドを組み合わせながら、ユーザーに最適な提案ができるよう検証していきます。

――AIエージェントを介した体験を実現するうえでの課題をお聞かせください。

山崎:構想段階であるため細かく答えられませんが、AIエージェントで今後課題になるのは間違いなく、弊社のパートナーとなる企業や「LINEミニアプリ」参画各社のデータ整備です。横断的にデータを取得してユーザーにレスポンスを返すとき、LLMに学習させるデータソース自体が整っていないと、ユーザーに適した提案ができません。
「WWDC26」でAppleも、AIが複数アプリを横断して操作を行う構想を発表しましたが、「LINEミニアプリ」にもデータを活用しながらよりユーザーに寄り添った横断的なサービスを提供できる素地があると見ています。その際に強みになるのが、『LINE』がプラットフォームであることです。ネイティブアプリでは各社が個別にデータを管理しているのに対し、『LINE』上で共通の形式にデータ整備ができれば、それを活用して企業に価値を還元することが可能です。そこはぜひチャレンジしたいですね。

谷口:パーソナライズされた体験を実現するには、ユーザーやサービスに関するデータを今以上に整備しなければなりません。ユーザーから必要な同意や許諾を得たうえで、データを安全かつ適切に管理・活用することが大前提ですが、どのようにデータを収集・活用していくかは、現在検討を進めているところです。

「Agent i」に選ばれる「LINEミニアプリ」になるには

「LINEミニアプリ」は現在3万以上存在し、『LINE』はこれを約30万まで拡大する方針です。多数の「LINEミニアプリ」から「Agent i」がユーザーに代わってサービスを選ぶようになれば、「Agent i」に選ばれること自体が重要になります。そのために求められる要素について尋ねました。

――「Agent i」に選ばれる「LINEミニアプリ」になるために、事業者は何をすべきでしょうか。

山崎:明確な答えがあるわけではありませんが、ユーザーに支持されるサービスを作ることと、LLM最適化のようにその評価をAIが活用できるようデータを整備することの両方が必要です。店舗やサービスとユーザーとのつながりが強く、利用者から高く評価されていれば、「Agent i」からそうしたサービスをユーザーのニーズに合った最適な提案としてオススメする可能性も高まるのではないでしょうか。

谷口:私も、まずは「ユーザーが何を求めているか」を考えることが大切だと思います。
ホテルで例えるなら、宿泊予約だけでなく、マッサージやエステ、客室の日帰り利用など、ユーザーに便利だと感じてもらえる使い方ですね。業界ごとに、まだ満たされていないニーズはたくさんあるのではないでしょうか。そのうえで、優れたUXを実現しなければなりません
会員証として利用したいだけなのに多くの情報入力や複雑な手続きを求められると、ユーザーは利用をやめてしまうでしょう。ワンタップでスムーズに利用できるような体験を提供できれば、多くの支持が集まり、「Agent i」もサービスを提案するときに複数の情報源にもとづき、公平性・中立性に配慮して、ユーザーニーズに合った最適な選択肢をレコメンドすると考えています。

――アプリで提供するサービス・体験以外に重要なことはありますか。

山崎:実店舗を持つ事業者の場合、オフラインでのコミュニケーションが大きな役割を果たします。
「Tポイントカード(現Vポイントカード)はお持ちですか」という声かけ事例は、すごく優れたマーケティングでした。会計時のオペレーションに組み込まれていたからこそ、多くの方に浸透したといえます。
同様に、店舗スタッフの方が「クーポンがもらえますよ」「ノベルティがありますよ」と声をかけることで、「LINEミニアプリ」利用のきっかけを作ることが可能です。実際に利用が伸びている事業者を見ると、多くのケースで店舗でのコミュニケーションを丁寧に行っていますね。

谷口:新しい体験を浸透させるには、オフラインが適していることがあります。これまでも「LINEミニアプリ」で会員証や順番待ち受付などができることを店舗スタッフが案内すると、次回来店時に使用してもらえるケースが多くありました。AIエージェントも同様に、店舗スタッフが使い方を案内することで、よりスムーズに広がっていくと思います。

山崎:「LINEタッチ」のように、NFCを使って「LINE公式アカウント」や「LINEミニアプリ」へスムーズに誘導できる手段も重要です。
店舗での案内とこうした導線、さらに「LINE公式アカウント」での情報発信を組み合わせることで、日常的にユーザーとの関係を深められると考えています。事業者と一緒により良い「LINEミニアプリ」体験を作っていきたいですね。

次の成長領域――デジタルコンテンツへの拡大

店舗向けサービスで成長してきた「LINEミニアプリ」は本来、実店舗に限らずさまざまなサービスで活用が可能です。次の成長を見据え、『LINE』が今後の展開先として、どのような領域を想定しているのかを聞きました。

――「LINEミニアプリ」は今後、店舗以外の領域にも広がっていくのでしょうか。

インタビューに答える谷口氏の画像

谷口:まさにそこが、今後力を入れていきたい領域です。これまでは店舗領域を中心に取り組んできましたが、ゲームや漫画、動画などのエンターテインメント分野にも積極的に取り組んでいます。
背景にあるのは、アプリ市場の変化です。従来のネイティブアプリはダウンロード数や課金率の伸びが鈍化する一方で、「LINEミニアプリ」を通じたデジタルコンテンツの利用には大きな可能性を感じています
実際に『WeChat』の「ミニプログラム」は、ゲーム領域をきっかけに利用が大きく広がり、その流れが実店舗を持つサービスに浸透していきました。
『LINE』も同様に、ゲームを中心としたオンライン領域が広がることで、その利用拡大が店舗を含むオフライン領域の活性化にもつながるような補完関係を作りたいですね。


取材を通して印象的だったのは、AIエージェントの未来を語る一方で、山崎氏と谷口氏が店舗スタッフによる「声かけ」の必要性を挙げていたことです。AIが人間の代わりにサービス選びや操作を担う時代を見据えながらも、新しい体験を広げるためには人とのコミュニケーションが重要な役割を担うという考え方が語られていました。
AIが人に置き換わるのではなく、それぞれの強みを活かしながら新しいサービス体験を作っていく。それが『LINE』の描くAI時代の姿だといえるでしょう。

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