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  • 累計600万人超ユーザーの英語学習アプリ『abceed』が切り拓いた、BtoBという未開拓市場。AI技術とBtoCの資産が生んだ195%成長のヒントに迫る

個人向け英語学習アプリとして累計600万人を獲得した『abceed』が、学校(BtoB)市場で前年同月比195%の成長を記録。この驚異的な数値の裏には、教科書の採択という教育現場における長年の商習慣を「プランの設計」で超えていった同社の意思決定がありました。
なぜ今、学校市場なのか。BtoCで積み上げた資産のうち何が通用したのか。『abceed』を運営する株式会社Globee 代表取締役社長 幾嶋研三郎氏にお話を伺いました。

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今回お話を伺った方

株式会社Globee 代表取締役社長
幾嶋 研三郎氏

2015年慶應義塾大学卒業。その前年の2014年に株式会社Globeeを創業し、代表取締役に就任。AI英語学習アプリ『abceed』をゼロから育て、累計600万人超のユーザーを獲得。2023年6月、東証グロース市場に上場。2025年に『abceed』のAI英作文添削機能を学校向けにリリース。

▼『abceed』とは?
株式会社Globeeが展開するAI英語学習アプリ。累計600万人以上のユーザーが利用し、1,000冊超の英語教材を収録。オーガニック流入が90%以上を占め、広告費をほぼかけずに成長した点が際立つ。 2025年にリリースしたAI英作文添削・音読採点機能は、これまで人手に頼るしかなかった「書く・話す」指導をAIが肩代わりし、先生1人あたりの添削回数を飛躍的に引き上げた。個人向けで培ったUI/UX設計の知見をそのまま学校現場へと転用、独自の学校向けプランとして展開し、成長を続けている。

公式サイト:https://www.abceed.com/

予算も売り方も違う学校市場に踏み込んだ理由

株式会社Globee 代表取締役社長 幾嶋 研三郎氏

▲株式会社Globee 代表取締役社長 幾嶋 研三郎氏

幾嶋氏

学校単体が外注にかけられる予算は企業と比較すると10分の1程度で、個別ニーズへの対応も求められます。これまで英会話やライティング添削は人の手が必要で、コストが高く学校には浸透しにくかったのが実情です。

学校市場の難しさについて、幾嶋氏は率直にそう話しました。それでもGlobeeが学校市場への本格参入を決断したのは、2025年のAIの劇的な進化を目の当たりにしたからです。

「2025年というのは『AI YEAR』だったなと私自身は感じています。月に1回20分程度しか実践的な英会話のレッスンを提供できていなかった学校が、AIを使えば実践的な英会話学習の機会を与えられる。予算と品質という、これまで両立できなかった2つが、初めて折り合えるポイントが見えてきました

AIの劇的な進化は、公立や私立といった環境差、さらには年齢の別なくどんな学習者にも同品質の教育を提供できます。予算が限られた学校市場へ参入した背景、それはAIのポテンシャルに同社が確信をもっていたからでした。同社はBtoCで積み上げてきた経験値や技術力を学校市場に注いでいきます。

ユーザー600万人で築いた「資産」は、学校でどこまで使えたのか?

abceedの画面例

▲説明書不要のUI/UX。ゲーム感覚で活きた英語を学べる

GlobeeがBtoCで積み上げた資産の中で、学校に持ち込んで特に効果を発揮したのはUI/UXの知見だったと幾嶋氏は振り返ります。

幾嶋氏

これまで説明書不要で使い方がわかるアプリを作ってきた経験値が、学校という場所で刺さりました。toB向けのプロダクトは複雑で使いにくいものが多い中で、「『abceed』は洗練されている」と評価していただいたのです。

一方で、同社は想定外の難しさも経験しました。BtoCでは「サービスを届けて終わり」が商慣習の基本でしたが、学校ではカスタマーサクセスの比重が圧倒的に重くなります。

「学校の先生方の要望をどこまで汲むべきか。すべてに対応すればもちろん喜ばれますが、それでは採算が合わない。かといってtoCと同じ感覚で接してしまうと、冷たい対応と捉えられてしまいかねません」

このバランスの取り方の難度こそが、学校市場参入で最も悩んだ部分でした。学習アプリにはBtoC向けとschool向けでサービス自体を分けて展開する企業もいる中、『abceed』はあえてBtoC向けと同じサービスを学校にも提供する道を選んでいます。その理由はどこにあるのでしょうか。

「カスタマイズせずとも使えるUXとは何か? その問いを徹底的に考え抜きました。そこで出た答えが、極力、無駄を削ぎ落とすということ。『abceed』は非常に多機能なので、toC向けのホーム画面にはいろいろな要素が表示されます。一方、課題を配信することが多い学校向けにはそれらの要素をオンオフで切り替えられるようにしました」

school向けの『abceed』では、管理画面から教材・出題範囲・学習モードを選ぶだけで、教師が音読や単語テストなどの宿題を簡単に一括配信できる仕組みになっています。 学ぶ生徒と教える教師の双方が使いやすいシンプルなUX。それが他社との差別化につながったと幾嶋氏はいいます。

「家を売る」と「学校に売る」は、驚くほど似ていた

学校向けのサービスは、採択委員会を通したり、代理店を経由したりと、昔からの商慣習が固まっている市場でもあります。その中で、『abceed』は採択委員会によらずに全国の学校へオンラインで直接届けるという、異なるアプローチで拡大していきました。そこにはどんな理由があったのでしょうか。幾嶋氏の説明を聞くと、その過程はシンプルに見えてきます。

幾嶋氏

これまで『abceed』の学校プランは、特定の教科書や教材に紐づくものでした。つまりは、その教材を使っている学校にしかアプローチはできません。しかし2025年4月にリリースした「AI英作文添削プラン」は、教材の紐づきが不要です。そのため、全国のあらゆる学校が市場の対象となりました。

同社はAIを活用した英作文添削や音読採点、英会話などの新機能を備えたプランを次々と展開。指導負担が大きい添削業務や発音指導をAIで補える点が学校現場のニーズに合致し、会員数の大幅な増加に寄与しました。

灘中学校・高等学校で英語科教諭を務める三原伸剛先生の言葉を借りると、同社の「AI英作文添削プラン」は「文法・語法に加え、内容・構成や語彙・表現まで評価されるフィードバックの緻密さ・丁寧さは、他にはないレベル」だと評価されています。そこには、従来の教育現場にあった「書かされる生徒」と「添削に追われる教師」の姿はありません。『abceed』によって自由英作文は主体的な学習へと変わり、授業の在り方も大きく変わりました。

「『abceed』で英語の授業のインフラが変わったなど、教育現場からのさまざまな声を聞き、我々も学ぶことが多かったですし、強く印象に残っています。また、あらゆる学校が対象となったタイミングで、全国へのアウトバウンド営業を始めたことも、前年同月比195%成長の最大の要因です」

また、営業の現場では、ある面白い発見があったと幾嶋氏は振り返ります。曰く、学校への導入を動かす最大のカギは、決裁権を持つ校長先生でも、ICT担当者でもなかったそうです。

「アプリの導入を後押しする最後の決め手は、現場の英語の先生の判断、そして生徒の反応でした。不動産営業に例えると、お金を払う親(学校・校長)の意思決定を動かすのは、子供(生徒)の一言なんです。生徒が楽しそうに使っていると、先生も『これは良い』となる。この構造に気づいてから、営業の勝ちパターンが見えてきました」。

『abceed』を提案する際にはいち早く生徒にもアプリを試してもらい、彼らの声を導入判断の材料としてもらう。使う人と買う人が異なるBtoB市場の中でも、ユーザーの声は強力な後押しになることが学校市場の特徴だったといいます。

教師を添削地獄から救ったAI機能が、学校事業の成長を動かした

AI英作文添削が学校現場で歓迎された理由を、幾嶋氏は具体的に数字でも語ってくれました。

先生が1人の生徒の英作文をじっくり添削できる回数は、1年間で3〜4回程度が限度といえます。「それだけでも夜遅くまで残業することになるのが実情ではないでしょうか。しかし『abceed』を使うことによって、今は1人あたり月に10回以上のAI添削が可能となります。これは数字だけ見ても大きな変化といえるでしょう」

この機能を学校に届ける際、Globeeが徹底したのは「社内で品質の合格点が出るまでリリースしない」という姿勢でした。

幾嶋氏

2024年頃に競合他社がAI添削を発表した時、私も実際にそのツールを試してみましたが、まだクオリティを高められる余地があると感じました。そのため私たちは、『これは現場で確実に使える』と自信を持てるクオリティになるまで待つようにしたんです。

そのクオリティの見極めを可能にしたのが、社内でのAI活用文化でした。

同社は、2024年から全社でAIを使い始め、できること・できないことを常に追い続けていたそうです。作文添削が実用可能だと確信したのも、日々の業務でAIを使い倒していた経験値から生まれたものでした。『Claude』などのツールもチームプランに切り替え、全社的に仕事でAIを使っていくというAI活用推進が、プロダクトの意思決定スピードを支えていたのです。

継続率についても、幾嶋氏は「非常に高い水準で推移している」と語ります。他社のサービスがICT担当者や校長へのアプローチによるトップダウンで導入され、現場の教師には「知らないうちに増えた教材」として降ってくるのに対し、『abceed』は現場の教師と生徒が納得して選んだものだからこそ使われ続ける。 成長継続のカギは根気のいる現場主義にもあったようです。

『abceed』の次の野心。「AI × IP」が向かう未来

abceedのコンテンツ例

▲映画やドラマ、教材など豊富なコンテンツで英語に親しめるサービスを用意

学校市場での成功をもとに、Globeeの次の一手はどこへ向かうのでしょうか。幾嶋氏が掲げるのは「AI × IP」という構想です。社名のGlobeeには「Global Education and Entertainment Company」という意味が込められています。アニメの『ちびまる子ちゃん』の英語版(2026年6月〜)や、映画・ドラマコンテンツを有する合同会社DMM.comとの業務提携など、教育とエンターテインメントを掛け合わせる展開を同社はハイスピードで推進中です。

幾嶋氏

AIが多くのことを自動化していく時代に、価値として残るものはIPだと思っています。例えば『TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ』にどれだけ似せた単語帳を作っても売れません。しかし、金のフレーズは何が起ころうと売れる。一度ブランド化したコンテンツは、本物として長く市場に受け入れられていくからです。

学習行動データやAI技術、UX設計思想など、BtoCで積み上げてきた『abceed』のアセットをBtoBの学校現場で拡張させ、次なる一手はBtoC向けのAI添削プランへと変換させる。自社で磨いたアセットを相互に還流させながら事業を広げていく同社の成長には、柔軟な発想の転換がありました。

「学校用に開発したものが他にも生きていく。この相乗効果を常に意識して今後もサービス展開していきます」

『abceed』が証明した、設計という名の突破口

幾嶋氏

インタビューの最後、幾嶋氏はBtoCアプリ開発者へのメッセージとしてこんな言葉を残しました。

幾嶋氏

広告の出稿に多額を投じても、toCで勝てるとは限りません。ヒットプロダクトを生み出すのは宝くじを当てるくらい難しいことです。でも、お金では買えないグロースハックや、生活の中でどう知られ・試され・続けてもらうかという体験の設計をあきらめなければ、可能性はずっとあり続けます

学校現場での採択の壁は、プランの設計と機能性で乗り越えました。『abceed』が証明したのは、「正しいタイミングに、正しい設計を」という、シンプルですが深いモノづくりの姿勢です。

正しい設計を持つプロダクトは、必ず壁を越える。『abceed』はその答えを、利用拡大という事実で示し続けていくでしょう。

abceed: TOEIC®・英語学習・英検・英会話アプリ

Globee Inc.

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