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  • 食べログ 多言語版がリリース8ヵ月で300万DLに到達! インバウンド市場で選ばれるサービス設計

訪日旅行者の増加に伴い、日本国内のサービスを海外ユーザー向けに展開する企業が増えています。その際、多くの企業が直面するのが既存のウェブサービスを軸に展開するのか、それとも専用アプリを開発するのかという課題です。

株式会社カカクコムが運営するレストラン検索・予約サービス「食べログ」は、英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語に対応したウェブ版を展開しています。一方で、専用アプリ『食べログ 多言語版』もリリース*¹ 。わずか8ヵ月で300万ダウンロードを達成したほか、台湾・香港・韓国・米国において「訪日旅行者向けグルメ検索アプリ ダウンロード数」で1位を獲得しました*² 。

なぜ専用アプリをリリースしたのか、ウェブ版で得た知見をどう専用アプリへ活かしたのか。海外ユーザーの獲得戦略や各国向けのローカライズなどについて、同社の香西利彦氏に伺いました。

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*¹ アプリの中国語は繁体字のみ対応f
*² 2025年11月/AppTweak調べ。調査対象エリア(台湾・香港・韓国・米国)のApp StoreおよびGoogle Playにおける「フード&ドリンク(レストラン&カフェ)」および「トラベル&ナビゲーション(トリッププランナー)」カテゴリのダウンロード数を合算。「日本のグルメ検索アプリ」として比較

今回お話を伺った方

株式会社カカクコム 食べログプロダクト本部
インバウンド事業部 部長 /
プリンシパルプロダクトマネージャー
香西 利彦氏

広告制作会社、デジタルエージェンシーを経て2017年カカクコムに参画。価格.com、食べログにおいてプロダクト戦略の立案から実行までをリードし、多数のKPIを非連続にグロースハック。プロダクト、マーケティングの知見を活かし、スタートアップを中心としたUX/UI顧問など活動の幅を広げる。

▼『食べログ 多言語版』アプリとは?
訪日旅行者向けの『食べログ』アプリ。国内版と同様にレストランの検索・予約ができるほか、店舗情報や口コミを英語・中国語(繁体字)・韓国語へ自動翻訳。全国7万店以上のオンライン即時予約に対応し(2026年8月時点)、飲食店探しから予約までをアプリ内で完結できる。

公式サイト:https://tabelog.com/en/

アプリリリースの背景――ウェブ版の存在と課題

『食べログ 多言語版』アプリの画像

出典:Tabelog

政府は2030年までに訪日旅行者を6,000万人、うち4,000万人をリピーターとする目標を掲げています。市場のさらなる拡大が見込まれる中、「食べログ」も訪日旅行者向けサービスの強化について模索していました。

「食べログ」「価格.com」でのSEO対策で成果を残してきた株式会社カカクコムは当初、「海外旅行のためだけにアプリを入れる人は少ない」という読みから、多言語版「食べログ」もウェブを軸に広げる想定でした。
しかし以下の2点を理由に、アプリを主体とした方針に変えたといいます。

①アプリ版を求める声
『X』や『Reddit』では「英語版の『食べログ』アプリはないのか」という投稿が繰り返し上がっており、海外のストアにない日本語版アプリを入れる裏技までシェアされていました。
このような状況から、隠れていて見えにくいが非常に強いニーズが存在していると判断したそうです。

②訪日リピーター層の存在
データを分析すると、日本を何度も訪れる観光客が一定数いることがわかりました。
政府の目標にもあるように、今後リピーター層を軸に市場が広がるなら、継続利用を前提としたアプリには十分な意義があると考えたのです。
また、「トリップアドバイザー」や「Airbnb」など、訪日旅行に関連する海外の主要サービスの多くがアプリを軸にユーザーを獲得している状況も、判断の後押しになったといいます。

このようなユーザーや市場の状況に加え、アプリ化の方針を補強したのが、ウェブ版で見えていた「1人あたりの予約回数」が1回前後から伸びないという壁でした。

香西氏

ウェブ版の利用が伸びないのは、多くの訪日旅行者が予約のたびにGoogle検索を繰り返し、「食べログ」を継続利用していなかったことが理由です。アプリがあれば、旅行中の飲食店検索や予約で「食べログ」を常に使ってもらえるのではないかと考えました。

『食べログ 多言語版』アプリのリリースの結果、App StoreやGoogle Playでアプリを探すユーザーのニーズに応えられるようになり、多くのオーガニックインストールが生まれました。「ついに出た」とSNSなどで話題になったほか、台湾では『Gemini』や『ChatGPT』を上回り、無料アプリランキングで1位を獲得しました*³。

*³ App Store 台湾における「無料App」総合ランキング(2025年11月22日時点)

認知拡大とストア評価の向上でリリース後の成長を後押し

アプリをリリースしても、ダウンロード数を着実に伸ばしていくことは容易ではありません。元々ニーズのあった『食べログ 多言語版』アプリでは、認知拡大とストア評価の向上を通じて、継続的な成長を実現しています。

インフルエンサーで認知を拡大

リリース後の初動が良好でも、アプリダウンロード数を継続的に伸ばしていくには、まだアプリを認知していない方にアプリが提供できるすばらしい体験を知らせ続ける必要があります。

このための施策の中で効果的だったものとして香西氏が挙げるのが、数百人規模のインフルエンサーの起用です。メガ/マクロインフルエンサーは認知拡大、マイクロ/ナノインフルエンサーは認知したユーザーの獲得と役割を分けて立体的に組み上げています。

これにより、App StoreやGoogle Playでの指名検索が増加し、ダウンロード構成比はストア経由のオーガニックが約7割、ウェブ版「食べログ」経由が約2割、広告経由が約1割へと変化。累計ダウンロード数は先日ついに300万を突破しました。

レビュー分析とタイミング設計でストア評価を向上

ユーザーにアプリをダウンロードしてもらうためにはASOが重要で、アプリストアでの評価はそのための指標のひとつです。
『食べログ 多言語版』アプリは4.8を超える高いストア評価を獲得(2026年7月29日時点)。
その裏には、香西氏が語る高評価の条件があります。

香西氏

最も重要なことは、良いプロダクトを作ることです。ストアレビューやSNSに寄せられるコメントに私自身がすべて目を通しています。ユーザーがどこに不満を感じているのかが全部わかるので、それをそのまま改善施策に反映できるんです。
そのうえで、サービスが正しく高く評価される状態を作ることがポイントになります。そのためには、ユーザーが最もポジティブな心理状態にあるタイミングでレビューを依頼することが重要です。『食べログ』にとってそのタイミングは予約完了時にあたり、この時点でレビュー依頼が表示されるよう設定されています。

アプリの成長は、単発の施策だけで決まるものではありません。ユーザーがアプリを知るきっかけから、使い続けたいと思う体験、そして評価につながる導線まで、一連の体験を設計することが重要だといえるでしょう。

国ごとのユーザー特性に合わせた調整

『食べログ 多言語版』の検索画面の画像

出典:Tabelog

訪日旅行者と一口にいっても、国によって店の探し方も異なります。それでも根底で貫かれているのが、「Eat Where Locals Eat」――地元に愛される店で本当の日本を体験したい、という訪日旅行者共通のニーズです。このため、多言語対応の際は各国への最適化も欠かせません。

最も大きな差につながったのは、店名の表記の仕方だといいます。英語圏はアルファベット表記が自然な一方、韓国はハングルで店名を探す人が多く、アルファベットとの併用バランスが重要です。台湾や香港では日本の漢字がある程度読めるため、アルファベットに置き換えるより漢字のままのほうが伝わります。

香西氏

これらのチューニングを支えているのが翻訳です。当初は機械翻訳サービスを使っていましたが、精度に課題があり自社開発に切り替えました。LLMをベースに、各言語のネイティブメンバーが教師データと辞書を整備し続けています。

このような状況を踏まえて表記や検索ロジックを国ごとに調整したところ、CTRは明確に向上しました。
日本人向けと外国人向けという単純な区分けではなく、国・言語レベルで最適化させていくことが、ユーザーの満足を高めるうえで不可欠だといえるでしょう。

飲食店とユーザー双方の安心が結果的にサービス全体を拡大

訪日旅行者向けの飲食店予約サービスは、ユーザーにとって使いやすいだけでは不十分です。予約できる店が増えなければ、訪日旅行者がどれだけ使いやすいアプリを手にしても意味がありません。

そこで『食べログ 多言語版』では、「安心」して予約を受けられる状態を作ることを軸に、飲食店向けのサービスも強化しました。

まず、翻訳を含むインバウンド対応を、飲食店が初期費用なしで開始できる体制を整備。あわせて、ノーショー(無断キャンセル)対策として予約時のクレジットカード登録を必須とし、キャンセルポリシーに抵触した場合はユーザーにキャンセル料を請求できる仕組みも整えています。

ただ、支払いのたびにクレジットカードを取り出すことを、手間や治安面の懸念から避けたいと感じるユーザーもいます。こうした感覚は、訪日中も引き継がれがちです。
そこで導入したのがApple PayとGoogle Payです。ただ、主流の決済手段は国によって異なります。英語圏や繁体字圏ではApple Payの利用率が7〜8割に達する一方、韓国では2〜3割にとどまっており、今後は現地で主流となっている決済手段との連携なども視野に入れ、利便性の向上を図っていくそうです。

香西氏

クレジットカード登録を必須にすると、入力項目が増える分、EFOの観点ではCVRは下がります。それでも、飲食店が安心して予約を受けられれば参画店舗が増えます。プロダクト全体で見れば、こちらのほうがユーザーの満足度は上がるという考えです。

飲食店からは、「日本語がわからない客からの予約を受けられるうえ、トラブル発生リスクも抑えられているので、安心してインバウンド対応ができるようになった」という声をもらえているそうです。

今後のインバウンド戦略の拡大――飲食店予約から食文化体験へ

インタビューに答える香西氏

『食べログ 多言語版』はさらなる成長を目指しています。その方向性について尋ねました。

まず重視しているのは、対応言語の拡大です。今後はより多くの国や地域のユーザーに利用してもらえるよう、対応言語を順次追加していくことになっています。

さらに重要なのは、サービス領域そのものを広げることです。
現在の『食べログ 多言語版』が提供しているのは、レストランを予約して食事をする体験にとどまりますが、訪日旅行者は、より深い日本の食文化体験を求めていると、「食べログ」は考えています。例えば、寿司を食べるだけでなく職人から寿司の握り方を教わったり、ガイドと街を歩きながら食文化を学ぶといったようなことです。
今後は、そういった食に関する体験の提供も検討していくといいます。

香西氏

ViatorやKlookなど体験予約サービスは存在するものの、「食」に特化して大規模に展開しているプレイヤーはまだいません。「食べログ」のユーザー基盤を活かしてこの市場を広げることで、訪日旅行者の日本への理解や満足度をさらに高められると考えています。

成長著しい『食べログ 多言語版』ですが、目標にはまだ遠く及ばないと香西氏はいいます。年間約4,000万人が日本を訪れ、ネット予約の利用が1組平均2.5人と仮定すると、予約を行う「幹事」は単年で約1,600万人いる計算です。現在の『食べログ 多言語版』ユーザーはそのうちのごく一部に過ぎず、さらに多くの方に「食べログ」を通して日本を楽しんでもらう余地が大いにあるといえます。

香西氏

最終的には、すべての訪日旅行者が「食べログ」を通して、より日本を楽しめる状態を作りたいです。来日するほぼすべての方が食事をします。旅行中の飲食店探しや予約といえば『食べログ 多言語版』が利用される――そんな状態が理想ですね。

『食べログ 多言語版』の成長は、インバウンド向けサービスにおいて多言語対応だけでなく、利用者と事業者の双方を含めた体験全体を設計することの重要性を示しています。
訪日市場の拡大が続く中、この考え方は今後さらに多くのサービスで求められていくでしょう。

こうしたプロダクトがどのような試行錯誤の末に形になっているかは、「食べログ」の開発者が執筆する技術ブログ「Tabelog Tech Blog」で発信されています。AI活用からインフラ、組織づくりまで、成功談だけでなく失敗や回り道もそのまま書かれているのが特徴です。

開発の裏側に関心のある方は、ぜひご覧ください。

Tabelog Tech Blog:https://tech-blog.tabelog.com/

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