歩きスマホやながらスマホは自分が加害者にも被害者にもなる大変危険な行為で、「自分は大丈夫だろう」という慢心が大きな事故につながってしまいます。
この記事では法律事務所で勤務していた経験をもつ筆者が様々な条例や法律の観点から、ながらスマホの定義や危険性、罰則について解説します。
歩きスマホ・ながら運転で起こる事故と危険性 法律や禁止条例、罰金・罰則
ながらスマホの危険性
ながらスマホは画面を見ることに集中してしまい、身の回りの事に対して注意力が散漫になってしまいます。
実際にどのくらい注意力が無くなってしまうのか、2011年に愛知工科大学とクローズアップ現代が共同で歩行中・自転車走行中の視線計測の調査を行いました。
視野が1/20狭まる
ながらスマホをしている間は画面に視線が集中しており、視界が20分の1になることが調査により判明しました。
また、歩きスマホをしている場合、普段の歩きよりも約30%速度が遅くなり、人が1.5mまで近づかなければ認識できない(スマホを中心として30cm程度の視界)という結果となりました。
歩きスマホによる事故の多くは道路、交通施設
東京消防庁の調べによると、平成27年から令和元年までの過去5年間で歩きスマホ等による事故で211人が救急搬送されています。
多くの原因は歩きスマホをしながら人やモノに「ぶつかる」「落ちる」といったケースです。
事故が起こる場所は道路や歩道、駅などの交通機関が約8割を占めています。
時速60kmなら2秒で30m以上進む
運転中にスマホを見る行為も大変危険です。車を時速60kmで走行しているときに、たった2秒スマホを見ているだけで約30mも進みます。
もしこれが信号や横断歩道の側であれば、大きな事故に結びつきかねません。
これはスマホに限らずカーナビにも当てはまります。これらの画面を「見る」・「操作する」場合は必ず車を停止してからにしましょう。
数秒のよそ見で加害者になってしまう可能性があるので、本当に注意してください。
事故件数は年々増加している
令和元年で年間2,645人がスマホを操作しながらの「ながら操作」を原因とする事故に遭い、そのうちの42人が命を失っています。
また、携帯電話を使用していることによる交通事故の死亡率は使用していない場合と比べて約2倍の数となっています。
ながらスマホの基準
「この行動がながらスマホに該当する」という明確な取り決めはありません。
しかし、「道路交通法70条」や「同法71条5の5」では、自動車等が停止しているときを除いて、スマホなどの携帯電話やカーナビなどの画面、通話をしてはいけないと定められています。
ながらスマホに該当するのかいくつかの例を挙げてご紹介します。
自分の行動がもしかしたらながらスマホに当てはまっているかもしれませんので確認しましょう。
ながらスマホに該当する可能性があるもの
●歩きながらスマホを操作する
●歩きながら音楽を聴く
●自転車に乗りながらスマホを操作する
●自転車に乗りながら傘をさす
●自転車に乗りながら音楽を聞く
●自動車を運転しながらスマホで通話する
●自動車を運転しながらスマホ画面を注視する
●自動車を運転しながらカーナビ画面を注視する
ハンズフリーやBluetooth等で手に持っていなければ、定義上道路交通法には違反しません。
しかし、その場合でも外部の音が聞こえないほどの音楽で聴いている場合は危険行為にあたります。
歩きスマホに関する条例
大和市では全国で初めて歩きスマホに関する条例を制定しました。
それに伴い、全国でいくつかの県・都市でも歩きスマホや道路の歩行に関する交通安全条例を定めています。
各自治体の条例は道路などの公共の場所を歩行する場合において歩きスマホを行わないようにしなければならないと歩きスマホを規制しています。
スマホを操作するときは、通行の妨げにならない場所に立ち止まってから行うよう注意喚起をしています。
ながらスマホに関する法律と罰則
車や自転車に乗ってながらスマホをした場合は様々な罰金や罰則があります。持っているだけでも罰せられることもあるので注意してください。
自動車のながら運転
自動車のながら運転は事故の増加に伴い、令和元年12月1日より厳罰化されました。
スマホを持っているだけで罰せられ、使用等により事故を起こした場合はさらに重い罪に罰せられます。
スマホの保持(手に持っているなど)
罰則 | 6月以下の懲役または10万円以下の罰金 |
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罰金 | 大型車:2万5千円
普通車:1万8千円
二輪車:1万5千円
原 付:1万2千円
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違反点数 | 3点 |
スマホの使用により事故を起こした場合
罰則 | 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
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罰金 | 刑罰による罰金が適用※ |
違反点数 | 6点(免許停止) |
自転車のながら運転
自転車の場合は「道路交通法」を基準として、各都道府県の条例によって罰金が定められています。
例えば神奈川県道路交通法や東京都道路交通法では自転車の運転中にながらスマホを行った場合、5万円以下の罰金に科せられます。
自転車講習を命じられることもある
自転車での違反を3年以内に2回以上行った場合は、都道府県公安委員会が違反者に対して「自転車運転者講習受講命令書」を交付します。
その場合、3ヶ月以内に自転車運転者講習を受講しなければなりません。
自転車運転者講習は3時間の講習で6,000円かかり、従わなかった場合は5万円以下の罰金に科せられます。
ながらスマホで実際に起きた事例
ながらスマホによって起きた実際の事故をご紹介します。
これらは交通違反などではなく、ながらスマホをしていたことにより起こってしまった事故や損害賠償です。
スマホを少し見ていただけて大事件に発展してしまうことを理解しましょう。
事例1:自転車でながらスマホで損害賠償5,000万円
スマホではなく、当時の携帯電話ですが、2002年に女子高生が携帯電話を見ながら自転車を走行し、57歳の看護師と接触した事件です。
女子高生は無灯火で自転車を運転しており、背後から接触して怪我をした看護師は手足がしびれるなどの重い後遺症を負いました。
それが原因で職を失ってしまったため、女子高生に対して5.000万円の損害賠償請求が命じられました。
この事件は当然ながらスマホによっても起こりうる話です。
事例2:車の運転中にスマホゲームで衝突事故、小学生が死亡
2016年10月に車の運転をしていた男性がながらスマホにより小学生をはねて死亡させた事件です。
当時トラックの運転手をしていた36歳の男性は、位置情報サービスを使用したスマホゲームをしており、男子小学生が横断歩道を渡っていることに気づかずそのまま接触してしまいました。
男性はながらスマホによる前方不注意として「自動車運転死傷行為処罰法違反」の罪に問われました。
この罪は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に科せられます。
事例3:歩きスマホで駅のホームから転落し電車にひかれて死亡
2016年5月にりんかい線天王洲アイル駅で女子大学生が歩きスマホをしながらホームを歩いてそのまま線路に落ちてしまい、走行中の電車にはねられた事故です。
耳にはイヤホンをしており、スマホの画面を見ながら歩いていたため、ホームの危険線に気づかず転落してしまいました。
人身事故は列車の運行に大きな影響を与えます。数十万人が利用する首都圏の場合、損害賠償額は数千万円になることもあるります。
駅のホームでの事故は近年多発しており、落下や他の通行人と接触しトラブルが起こってしまう例もあります。
ながらスマホをやめる方法
ながらスマホは普段の行動を少し気を付けるだけで改善することができます。ついつい見てしまう癖を持っている人はこれからご紹介する方法を参考にしてください。
スマホを操作するときは足を止める
まず移動中は基本的にスマホに触れないようにすることを心がけましょう。
スマホを操作する場合は、運転中は路肩に車を止め、歩いているときも立ち止まる癖を付けるようにしてください。
待ち合わせで目的地が分からず、歩きながら地図アプリを見てしまうことがあると思います。
その場合もまずは立ち止まり、大まかな道なりを覚えるようにして歩きながらスマホを見ることは控えてください。
また、スマホゲームやSNSをしながら歩くのは、周りを意識することができないためやめましょう。
スマホ依存解消アプリを使う
歩いているときにスマホを見る必要がついないのに見てしまう、何か理由がなくても気が付いたらスマホを見ているという人は「スマホ依存」の可能性があります。
その場合はスマホ依存解消アプリなどを使ってみましょう。例えば「スマホをやめれば魚が育つ」はスマホを見ていない間に魚が成長し、様々な魚と出会えるゲームです。
他にも、自分がどのくらいスマホ画面を見ているのか一度見つめなおすのもおすすめです。
iponeであれば「設定」→「スクリーンタイム」を確認することで自分がどのくらいスマホを使っているのか分かります。
ながらスマホは少し意識をするだけで改善できる行動です。
上に述べた改善方法を参考にし、もし自分が普段からそういった行動をしているのであれば、明日から気を付けて行動してみてください。
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