線画を取り込むと、AIが認識して自動で着色してくれる『PaintsChainer』というウェブサービスをご存知ですか? その『PaintsChainer』が、2017年5月24日にお絵かきコミュニケーションプラットフォーム『pixiv Sketch』に追加されました。
pixivの中の人に、自動着色AI『PaintsChainer』導入理由を聞いてみた。描き手の個性は失われない?
『pixiv Sketch』とは
線画を認識して塗るシステムは確かにすごいですが、様々な疑問が浮かび上がります。筆者も趣味で絵を描いているんですが「絵を描く人にとって、色は自分で塗って当たり前のものでは?」「全部一緒に見えそうなのに、誰が使うんだろう?」と思うことも。同じことを考えた方は多いのではないでしょうか。
その疑問を晴らすため、今回はpixivとPreferred Networksの開発者さん達に実際にインタビューしに行ってきました!
『PaintsChainer』と『pixiv Sketch』は、目指す方向性がマッチしていた
― 『PaintsChainer』を取り入れるに至ったきっかけを教えてください。
清水:『pixiv Sketch』はこれから絵を始めたい方や、落書きメインのユーザーさんが主なターゲットなんです。
絵を描くって、時間がかかって大変じゃないですか。なので、『pixiv Sketch』立ち上げ当初から「もっと手軽に絵が描けるようにならないかな」と思っていました。
そんな時に『PaintsChainer』を見て「これを使えば絵を描くことをよりカジュアルに、かつユーザーが今まで諦めてできなかったことができるようになるのでは?」と感じたのがきっかけですね。
― 色塗りをサポートするという機能に、どんな思惑が?
清水:絵の上手な人には自動着色を使って「自分の着色以外にも、こんな塗り方があるんだ」とインスピレーションを受けてほしいです。
逆にあまり絵が得意でない人には「色ってこんな風に塗ればいいんだ!」と思えるよう、学習の手助けになればと思っています。自動着色によって、色塗りの個性が失われるといった懸念はありませんでした。
綺麗に自動着色されたユーザーのイラスト
実際にPaintsChainerを使っている、日高こーよーさんにイラストを提供していただきました。
綺麗に着色できるコツを聞いて、実際に使ってみた。
実はインタビュー前、Appliv編集部で『PaintsChainer』をお試しに使ってみたんです。その時のイラストがこちら。
『PaintsChainer』をどう使えば綺麗な絵に仕上がるか、米辻さんにポイントを聞いてみました。
AIに綺麗に絵を認識させるポイント
1.人間のキャラクターで、アニメ・マンガっぽいタッチの絵を使う。
2.構図はバストアップ・上半身のみがおすすめ。正面向きが認識しやすい。
3.カラーヒントは線よりも点で入れる。
4.あらかじめ線画に影を描くと綺麗になる。
5.仕上げに自分でハイライトを入れると、よりクオリティアップ。
普通の線画でなく、影を付けた線画を用意
ハイライトを入れて完成
『PaintsChainer』で、絵の投稿がより気軽でカジュアルに
― 『pixiv Sketch』への『PaintsChainer』導入がリリースされて3週間ほどですが、使ってみた方からどんな反応がありましたか?
米辻:SNSを見ていると「すごい!」と言ってくれる方が多くて嬉しいです。自動着色? って最初は驚きや抵抗の声もあったんですが、使ってみた人が「ここまでできるんだ!」と反応してくれてよかったなぁと思います。
清水:「こういう塗りもありだな」とか「塗りの時間が削減できる」といった声もありましたね。「もう自分で塗らなくてもいいじゃん!」という声もありました(笑)。冗談だと思いますが。
― 『pixiv Sketch』アプリ版に、『PaintsChainer』を取り入れる予定は?
清水:開発は進めています。アプリなら紙に描いた落書きを撮って自動着色することがもっと簡単にスムーズにできるようになるはずです。
― 今後さらにより良いツールになるよう、ブラッシュアップしていく予定は?
清水:具体的なことは現段階では言えませんが、予定はあります。
米辻:こういった機能が生まれて、模索していく他の研究者もたくさん現れましたしね。
― 絵を描くのが不慣れな人でも、投稿しやすくなりそうですね。
清水:落書きを「人様に見せるようなものじゃない」と思って投稿しない人が多いと思います。でも自分で「好き、おもしろい」と思った落書きなら、共感してくれるユーザーはいるはずです。
「わざわざ投稿するものでも……」と思っている絵を自動着色に取り込むことで色がつき、「これなら投稿してもいいかも」と思えるきっかけになればと。投稿のハードルを下げられるんじゃないかという期待を持っています。
(文・さんばり)