クロマキー合成は、背景の合成などの際に使われる技術です。CGなどを使った映像制作では、現実で不可能なシーンを自由自在に創り出せます。しかし、クロマキー合成を使いこなすには、その仕組みを理解し、適切なツールを選び、正しい手順を踏む必要があります。
この記事では、クロマキー合成の基本から、具体的な使用例、撮影のコツ、おすすめの動画編集ソフトまで、映像制作のプロフェッショナルが知っておくべき情報を詳しく解説。クロマキー合成をマスターして、クリエイティブの幅を広げましょう。
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クロマキー合成とは? やり方や使用例、おすすめ編集ソフト・アプリ6選
この記事をまとめると・・・
- クロマキー合成は、色付きのバックを透明にして映像を作る技術
- 光の反射や洋服の色合いに気をつけると、映像の質が上がる
- 『After Effect』などの動画編集ソフトでクロマキー合成をしよう
クロマキー合成とは
クロマキー合成は、映像制作における技術の1つです。特定の色(通常は緑または青)を透明にし、その部分に別の映像を重ねることで、一見すると現実では不可能なシーンを作り出す映像技法です。
具体的な仕組みは、映像の各ピクセルが持つ色情報(RGB値)を分析し、特定の色範囲に該当するピクセルを透明化。そして、その透明化した部分に別の映像を合成することで、まるでその場にいるかのようなリアルな映像を作り出すことができます。
専門的なクロマキー合成に挑戦するなら『Adobe After Effects』がおすすめ。Keylightというエフェクトを使用することで、より繊細な合成が可能です。スマホで手軽に合成を楽しみたい人は以下の記事を参考にしてくださいね。
グリーンバックやブルーバックが選ばれる理由
クロマキー合成でよく使われる色は、緑と青です。これらの色が選ばれる理由は、人間の肌色との対比と、デジタルカメラの色再現性にあります。
人間の肌色は赤みがかっているため、その補色である緑や青は肌色とのコントラストが強く、色の抽出が容易になります。また、デジタルカメラは緑色の再現性が高いため、グリーンバックがよく使われるようになりました。
しかし、被写体の色や照明条件によっては、ブルーバックやグリーンバック以外の色を使用することもあります。重要なのは、被写体と背景の色がはっきりと区別でき、色情報を正確に抽出できることです。
クロマキー合成の使用例
実際にクロマキー合成が使用されている場面は日常でも多いです。ここでは、実際の使用例を3つ紹介します。
テレビ番組の天気予報
テレビ番組の天気予報では、クロマキー合成が一般的に使用されます。予報士が立つ背景は、実際には一色(通常は緑色)のスクリーンです。そのスクリーンを透明化し、天気図や地図などの映像を合成することで、視覚的にわかりやすい天気予報を実現しています。
映画の撮影
映画の撮影でも、クロマキー合成は頻繁に利用されます。特に、現実では撮影が困難なシーンや、非現実的な世界を表現する際に重宝されます。
例えば、宇宙や深海、過去や未来、ファンタジーの世界など、現実のカメラでは捉えられないシーンの制作で使用されます。撮影の際に一面緑色の箱の中で行い、後からCGで背景を合成すれば、どんなシーンでも撮影可能です。
Web会議ツール
最近では、Web会議ツールでもクロマキー合成が活用されています。自宅やオフィスなど、プライベートな空間からビデオ通話をする際、背景を一色のスクリーンにすることで、任意の背景画像を合成することができます。
散らかった自宅を隠したい時や、プライバシーを守りたい時などに便利です。
クロマキー合成を成功させるコツ7つ
クロマキー合成を行う時は、しっかりコツを押さえて撮影することが重要です。コツを押さえることで、より自然で高品質な映像を作り出すことが可能となります。
ここでは、特に重視したい3つのコツを紹介。しっかりチェックしておきましょう。
背景色から遠い色の服やアクセサリーを選ぶ
クロマキー合成では、背景と同系色の服を着るのは避けるべきです。同系色の服を着てしまうと、背景から色を抜き出す(キーイング)作業の際に、背景と一緒に服も消えてしまう可能性があります。
したがって、背景色とは対照的な色の服やアクセサリーを選ぶことが重要です。注意しにくいですが、髪の色が奇抜な場合も注意してくださいね。
光の反射に気をつける
光の反射は、クロマキー合成の際に問題を引き起こす可能性があります。特に、被写体がメタリックなアクセサリーを身につけている場合や、撮影環境が光を反射しやすい素材で構成されている場合には注意が必要です。
光の反射を適切にコントロールすることで、クロマキー合成の品質を向上させることができます。
スクリーンに影ができないように照明をあてる
影はクロマキー合成の際に、背景の均一性を損なう要因となります。特に暗すぎると、背景の色が視認しにくく、編集時にうまく切り抜けない可能性が高いです。そのため、照明は被写体と背景を均等に照らすことが重要です。
具体的には、3つ以上のライトを使用して被写体と背景を別々に照らすことが推奨されています。
バックスクリーンをしっかり伸ばす
クロマキー合成を行う際によく使うグリーンバックやブルーバックのスクリーンは、シワがよらないようにしっかりと伸ばしてください。
バックスクリーンのシワは、合成する映像や画像の質が悪くなってしまいます。シワにより影ができる場合もあるので、必ず撮影前にしっかりと伸ばしておきましょう。
色ムラや汚れのないスクリーンを使用する
クロマキー合成では、グリーンバックやブルーバックなどの均一な色の背景を使用します。色ムラや汚れ、シワやたるみなどがあると、合成したときに陰影ができてしまい綺麗な合成ができないからです。
背景の素材は滑らか、かつ色が一定でであるほど、クロマキー合成した後の仕上がりはより正確で綺麗なものになります。そのため背景を設置する際は、一人で作業するのではなく複数名で作業するとよいでしょう。
解像度の高い映像を撮影する
クロマキー合成を行う際は、高解像度でフォーカスが合った映像を使用することが重要です。解像度が低い映像や、ピントのぼやけた映像では対象物の一部の色調が変わり色かぶりが発生しやすくなります。
合成したい素材を撮影する段階から、適切なフォーカスと高解像度の映像を撮影することで、クロマキーの精度を高めることができます。
アプリやソフトで色調補正をする
クロマキー合成の素材を撮影したら、アプリやソフトを使用して色調補正を行います。色調補正とは、色相・彩度・明るさなどのパラメータを微調整すること。適切な色補正を行うことで、クロマキー合成時に発生した色かぶりや変色を修正し、クロマキーの効果を最適化できます。
被写体と背景の色を統一することで、合成した映像をより自然な仕上がりにすることも可能。色調補正は、クロマキー合成において重要な工程の一つです。
クロマキー合成ができるおすすめ動画編集ソフト6選
今回は、このクロマキー合成が可能なおすすめの動画編集ソフトを6つ紹介します。
Adobe After Effects
利用者 | 上級者向け |
---|---|
料金 | 月額2,728円 |
体験版 | あり |
主な機能 | 映像合成、アニメーション作成、エフェクト追加 |
対応OS | Windows、Mac |
このソフトのおすすめポイント
● プロフェッショナル向けの高機能ソフト
● 高度なエフェクトとアニメーションが可能
● Adobe製品との連携がスムーズ
『Adobe After Effects』は、映像制作業界で広く使用されている動画編集ソフト1つです。その中でも、クロマキー合成機能は特に優れています。Keylightというエフェクトを使用することで、繊細なクロマキー合成が可能。
また、Advanced Spill Suppressorという機能を使うと、合成後のグリーンスクリーンの色を抑制してクオリティを上げられます。豊富な機能とクオリティの高さはとても優秀ですが、複雑さを伴うため、初心者には難易度が高いかもしれません。
Adobe Premiere Pro
利用者 | 中級者~上級者向け |
---|---|
料金 | 月額2,728円 |
体験版 | あり |
主な機能 | 映像編集、エフェクト追加、カラーグレーディング |
対応OS | Windows、Mac |
このソフトのおすすめポイント
● 映像編集のスタンダードとも言えるソフト
● 直感的な操作性が魅力
● After EffectsやPhotoshopとの連携がスムーズ
『Adobe Premiere Pro』は、『After Effects』と同じくAdobe製品で、映像編集のスタンダードとも言えるソフトです。Ultraキーエフェクトを使用することで高品質なクロマキー合成ができます。
多機能ながらも直感的な操作性が魅力。After Effectsとの連携もスムーズで、より高度な編集を求める方におすすめです。
PowerDirector
利用者 | 初心者~中級者向け |
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料金 | 基本無料 (有料プランあり) |
体験版 | あり |
主な機能 | 映像編集、エフェクト追加、クロマキー合成 |
対応OS | Windows、Mac、Android、iOS |
このソフトのおすすめポイント
● 初心者でも使いやすいインターフェース
● モバイル版も利用可能
● 豊富なエフェクトとテンプレート
『PowerDirector』は、使いやすさと高機能さを兼ね備えた動画編集ソフト・アプリです。クロマキー合成機能も備えており、初心者でも簡単に背景の変更ができます。
また、多彩なエフェクトやテンプレートが用意されているため、クリエイティブな映像制作を楽しむことができます。
BeeCut
利用者 | 初心者~中級者向け |
---|---|
料金 | フリーミアム(無料版と有料版が存在) |
体験版 | あり(機能制限あり) |
主な機能 | 映像編集、エフェクト追加、クロマキー合成 |
対応OS | Windows、Mac |
このソフトのおすすめポイント
● シンプルなインターフェースで初心者でも使いやすい
● クロマキー合成機能を含む基本的な編集機能を提供
● プロ版ではより高度な編集が可能
『BeeCut』は、初心者向けの動画編集ソフトで、シンプルなインターフェースが特徴です。基本版は無料で利用でき、クロマキー合成を含む基本的な編集機能を提供しています。さらに、有料のプロ版ではより高度な編集が可能です。
WindowsとMacに加え、ブラウザでの簡単な編集にも対応しているため、さまざまな環境で利用できます。初めて動画編集を行う方や、手軽にクロマキー合成を試したい方におすすめです。
AviUtl
利用者 | 初心者~上級者向け |
---|---|
料金 | 無料 |
体験版 | - |
主な機能 | 映像編集、エフェクト追加、クロマキー合成 |
対応OS | Windows |
このソフトのおすすめポイント
● プラグインにより機能を追加でき、自分のニーズに合わせてカスタマイズ可能
● クロマキー合成を含む高度な編集機能を提供
● 日本語に対応しており、日本国内のユーザーにとって使いやすい
『AviUtl』は、初心者から上級者まで幅広いユーザーに対応した動画編集ソフトです。無料で全機能を利用でき、プラグインを追加することで機能を拡張できます。そのため、自分のニーズに合わせてカスタマイズが可能です。
また、クロマキー合成を含む高度な編集機能を提供しており、プロフェッショナルな映像制作にも対応しています。さらに、日本語に対応しているため、日本国内のユーザーにとって使いやすいのが特徴です。
iMovie
利用者 | 初心者向け |
---|---|
料金 | 無料 |
体験版 | - |
主な機能 | 映像編集、エフェクト追加、クロマキー合成 |
対応OS | Mac、iOS |
このソフトのおすすめポイント
● Apple製品ユーザーにとって使いやすいインターフェース
● プレビュー機能でリアルタイムに結果を確認できる
『iMovie』は、無料で利用できるため、初めて動画編集を始める方におすすめです。直感的な操作性が特徴で、初心者でも簡単にクロマキー合成を行うことができます。さらに、プレビュー機能を利用すれば、作業中にリアルタイムで結果を確認することが可能。
ただしこれまで紹介してきたソフトやアプリに比べると、編集機能が全体的に物足りなさを感じるかもしれません。
スマホアプリでもクロマキー合成はできる
スクリーンが用意できない人や高価な動画編集ソフトに手を出せない人は、『CapCut』など動画編集アプリを使ってクロマキー合成をしてみましょう。やり方は以下の通りです。
-
STEP1
「背景用の動画を追加」→「オーバーレイ」→「はめ込み合成を追加」
-
STEP2
「クロマキー合成したい映像を選択」→「カットアウト」→「背景を削除」
-
STEP3
「✓」→自動合成が完了するのを待つ
このように、背景削除機能のある動画編集アプリを使えば、誰でも簡単にクロマキー合成ができます。グリーンスクリーンやブルースクリーンを持っていない人は動画編集アプリを使う方法でクロマキー合成に挑戦してみてはいかがでしょうか。
クロマキー合成のためにスタジオを借りるのもあり
クロマキー合成専用スタジオでは、床面や壁面が均一にペイントされており、色ムラや汚れの心配がありません。映像編集時の背景に関する問題を回避でき、より綺麗な合成が可能になります。また、準備の手間が削減できるので背景設置にかかる時間を大幅に削減できます。
このようなスタジオでは、立体的な映像の制作が可能です。例えば『バーチャルプロダクションスタジオ』であれば壁一面がグリーンの箱のような形状をしており、奥行きのある立体的な映像の制作も簡単です。よりリアルで没入感のある映像を制作する際に利用を検討してみましょう。
クロマキー合成がうまくいかない時の対処法
クロマキー合成がうまくいかない場合、以下の可能性が考えられます。ここからは主な対処法を紹介します。
肌色から遠い色の部屋に移動する
ビデオ会議ツールなどでグリーンバックを使用せずに背景を合成する場合、肌色に近い壁紙や家具が近くにあると、肌と背景の差が認識しにくくなります。このような場合は、部屋を移動するか、カメラや体から離して撮影しましょう。
また、照明はオレンジ系ではなく白色や昼光色の電球を使用し、「人」と「背景」を区別しやすくすることが重要です。
部屋の光量を一定にする
部屋の光量が一定でないと、濃淡や明度が変化し、影や反射が発生する可能性があります。クロマキー合成を行う際は、部屋の中の光量や光の当たり方を一定に保つことが必要です。適切な光量を確保することで、色かぶりなどの失敗リスクを最小限に抑えることができます。
手足や身体の動きをゆっくりにする
ソフトが被写体と背景の色を認識するまでにはタイムラグがあります。被写体が早い速度で動くと背景の色が残り、被写体の一部消えてしまう原因になることも。
処理能力の高い高価な動画編集ソフトを使えばそのタイムラグは多少解消できますが、できるだけ手足や体の動きはゆっくりするなど、不用意に動き回ることを避けるのが無難です。
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