2025年4月、LINEヤフー株式会社はコミュニケーションアプリ『LINE』内で、生成AIを活用した新サービス「LINE AI」と「LINE AIトークサジェスト」の提供を開始しました。
これまでもLINEでは、「LINE AIアシスタント」や「AIメッセージ変換」など、生成AIを使った機能を提供してきましたが、今回のアップデートでは“より身近で、より気軽に使えるAI”へと大きく進化。情報収集から画像生成、メッセージの提案やスタンプのサジェストまで、AIがLINE上でのやりとりを自然にサポートしてくれます。
本記事では、それぞれの機能の特徴や使い方、「LINE AIアシスタント」との違いなどを詳しく解説します。

LINEに無料で使えるAI機能が追加! 「LINE AI」で何でも質問&画像作成、「トークサジェスト」で返信サポート
新機能①「LINE AI」情報収集・画像生成が無料で使える
「LINE AI」は、『LINE』アプリ内からすぐにアクセスできる生成AIです。日常会話のように質問を投げかけたり、気になる画像を送ったりすることで、AIがリアルタイムに回答や情報を提供してくれる「AIテキスト」と、テキストで指定した条件に応じて画像を自動生成する「AIキャンバス」の機能があります。
ここからは、「LINE AI」の始め方や使い方を詳しく解説します。
まずはここから! LINE AIの始め方
始め方は簡単です。アプリを起動し、ホーム画面に表示される「LINE AI」をタップするだけ。もし、「LINE AI」が見つからない場合は、下のボタンからアプリストアを開き、『LINE』アプリを最新バージョンにアップデートしてみましょう。
「LINE AI」でできること① AIと気軽に会話・質問
LINE AIの基本機能のひとつが、テキストでの質問に応えてくれる「AIテキスト」です。
使い方は非常にシンプル。LINE AIを起動したら、画面上部が「AIテキスト」になっていることを確認し、そのまま質問を入力して送信するだけです。例えば、「おすすめの観光スポットは?」「簡単に作れる夜ご飯のレシピを教えて」といった日常的な質問にも、親しげに回答してくれます。
実際に「母親に贈る、5,000円台のプレゼントを提案して」と聞いてみたところ、実用品、食品、雑貨などのジャンルに分けて複数のアイデアを提示してくれました。返信はわずか数秒で届くため、待ち時間を感じることなく自然に読み進められます。
回答の内容は必ずしも正確とは限りませんが、「いまこの場でちょっと誰かに聞きたい」ような軽い質問にはぴったり。検索よりも手軽で、答えが返ってくるまでのスピード感にも驚かされました。
「LINE AI」でできること② 送った画像をAIが分析
LINE AIの「AIテキスト」では、文章だけでなく画像の解析も可能です。使い方は簡単で、メッセージ入力欄の左側にある「+」ボタンから写真を選んで送信するだけ。送信された画像をAIが分析し、関連する情報を返してくれます。
今回は、自宅にあった調味料の写真を送ってみました。すると、ラベルに記載された商品名をもとに、「●●醤油は、料理にコクを加える濃口タイプ。おすすめの使い方は煮物や焼き物です」と使い方のアドバイスまでくれました。まるで料理本のワンポイントアドバイスのようで、思わず「なるほど」と唸ってしまいますね。
ただし、画像が暗かったり文字が小さすぎたりすると正しく解析できないこともありました。使う際は、明るくはっきりと写った画像を送ったほうがよいでしょう。
「LINE AI」でできること③ 言葉で画像を生成
LINE AIの中でも、個人的にもっとも遊びごたえを感じたのが画像生成機能「AIキャンバス」です。画面上部のタブを「AIキャンバス」に切り替えると、テキストで入力したイメージに基づいて、オリジナルの画像を自動生成してくれます。
例えば、「写実的な三毛猫を描いて」と入力すると、数秒後にはリアルな毛並みや表情まで再現された三毛猫のイラストが生成されました。ふんわりしたタッチや構図も自然で、違和感はありません。生成された画像はスマホに保存できるほか、LINEトークでそのまま送ったり、SNSでシェアしたりも可能。
ただし、新しい画像を生成すると過去の画像は上書きされて消えてしまうため、気に入ったものは早めに保存しておきましょう。
なお、近年は生成AIに「ジブリ風イラストを描いて」といった“◯◯風”の画像を作らせる使い方が流行していますが、「LINE AI」に搭載されているモデルでは、特定の絵柄に寄せた画像生成には対応していません。また、過去に生成した画像の編集や修正もできないため、まずは趣味の範囲で気軽に楽しむのがちょうど良さそうです。
利用上の注意点
「LINE AI」は気軽に使える便利なサービスですが、利用にあたっては回数制限や生成コンテンツの扱いに関するルールがあります。特に画像生成や著作権まわりについては注意が必要です。
利用回数の制限について
テキストチャットには、OpenAIの言語モデル「ChatGPT-4o」が使用されており、LINE公式には明確な利用回数は記載されていませんが、OpenAI社の仕様に基づけば、1人あたり1分間に最大60回、1日あたり最大4,000回まで利用可能と考えられます。
なお、画像生成については利用回数の上限が公表されておらず、明確な制限があるかどうかはわかっていません。
知的財産権について
「LINE AI」でやりとりしたテキストや画像など、コンテンツの権利帰属は以下のとおりです。
- ユーザーが送信した質問文や画像などの権利はユーザーに帰属する
- AIが生成したコンテンツは、LINEヤフーやOpenAIなどの第三者が権利を保有していない限り、原則としてユーザーに帰属する
ただし、LINEの利用規約には商用利用に関する記述がありません。OpenAIが提供する「DALL-E 3」は、ChatGPT Plus経由での使用を除き商用利用が禁止されているため、「LINE AI」経由の画像も同様に商用利用は避けるのが無難です。
新機能② 「LINE AIトークサジェスト」面倒な返信・スタンプ選びをAIがお助け!
急いでいるときや、返信を考えるのがちょっと面倒なとき。「LINE AIトークサジェスト」は、そんな日常の“ちょっとした手間”を減らしてくれる機能です。返信文の提案、スタンプのサジェスト、口調の変換まで、『LINE』でのやりとりを自然にサポートしてくれます。
ここでは、設定方法から使い方までをわかりやすく紹介します。
設定は簡単! トークサジェストの始め方
この機能は、初期設定をしていないと使えません。
使い始めるには、『LINE』の設定画面から言語設定を「日本語」にしたうえで、「LINEラボ」機能をONにする必要があります。
これで準備完了です。
あとは友だちやグループのトーク画面を開くだけで、AIによる返信提案やスタンプサジェストが使えるようになります。
なお、本機能はトークルーム内の直近のトーク履歴をもとに最適な返信を提案する仕組みのため、利用には利用規約などへの同意が必要です。
トークサジェストでできること① トークの流れに合った返信を提案
メッセージの返し方に悩んだときや、ちょっと言い回しを工夫したいときに便利なのが返信の提案機能。直前のトーク内容をもとにAIが自然な文章を考えてくれます。
提案された返信は、そのまま使ってもOK。返信の長さ(短め・長め)を調整したり、あとで紹介する口調の変更機能でアレンジしたりするのもおすすめです。もちろん、自分で少し手を加えて送ることもできますよ。
なお、直前のやり取りがスタンプや画像だけといった場合は、「こんにちは」「お久しぶり」といった基本的なあいさつが提案されることが多いようです。
トークサジェストでできること② 最適なスタンプをサジェスト
トークの内容に応じて、ぴったりのLINEスタンプを提案してくれる機能。提案されるスタンプは、ユーザーがすでに持っているものだけでなく、人気のスタンプの中からおすすめされることもあるため、新しいお気に入りを見つけるきっかけにもなります。
なお、提案されたスタンプが少し違うと感じた場合は、画面を下までスクロールしてタグを変更してみましょう。例えば「やさしい」「テンション高め」といった気分に合ったタグを選べば、表示されるスタンプも切り替わります。
トークサジェストでできること③ メッセージを好きな口調に変換
入力欄に書いたメッセージを、選んだ口調にあわせて自動で変換してくれる機能も便利です。選べるのは以下の5種類。
- フォーマル
- ため口
- 誤字修正
- ねこ語
- 侍言葉
「フォーマル」や「誤字修正」は、仕事関係や目上の相手へのメッセージで使えば失礼のない印象に。「ため口」は親しい友人とのやりとりにぴったりです。
ただし、「ねこ語」や「侍言葉」は、クセが強め。やりとりの空気をちょっと和ませたいときや、グループチャットで笑いを取りたいときに試してみると盛り上がるかもしれません。
▲上:ねこ語の返信例 下:侍言葉の返信例
利用上の注意点
「LINE AIトークサジェスト」には、利用回数や使用方法に制限があります。
利用回数に上限がある
1日の利用上限は300回まで、月あたりの上限は2,000回までです(「返信の提案」「スタンプのサジェスト」「口調の変換」の合計数でカウントされます)。
また、本サービスは試験的に提供されているため、利用人数にも制限があります。アクセスが集中している時間帯などには利用できない場合があるため、いつでも使えるとは限らない点にも注意が必要です。
個人情報や著作権・商標権に関する入力は禁止
返信は、直前のトーク内容や入力中のメッセージをもとに生成される仕組みのため、個人情報の書き込みはNG。また、著作権や商標権に関わる内容の入力も禁止されています。
例えば、アニメやゲーム、ドラマなど特定の著作物に関する話題を含む会話をAIに読ませることで、意図せず規約違反にあたる可能性も。共通の趣味で盛り上がりたいときは、使いどころに少し気を配ったほうがよさそうです。
【比較】「LINE AIアシスタント」と「LINE AI」との違い
どちらも『LINE』で使える生成AIサービスですが、「LINE AIアシスタント」と「LINE AI」では、利用目的や使い方、料金などに明確な違いがあります。どちらを使えばいいのか迷ったときは、下の比較表で特徴をチェックしてみましょう。
LINE AIアシスタント | LINE AI | |
---|---|---|
利用目的 | 情報収集、質疑応答、翻訳、要約、画像解析など | 質疑応答、画像解析、画像生成、トーク提案など |
利用方法 | LINE公式アカウントを友だち追加 | LINEアプリのホーム画面からアクセス |
トーク履歴 | 保存される | AIテキスト:保存される AIキャンバス:保存されない |
言語モデル | ChatGPT-4o | ChatGPT-4o |
音声入力 | 非対応 | 非対応 |
主な利用シーン | ビジネス、学習など | 日常会話、遊び目的 |
料金 | 無料:10回まで 有料:月額200円で無制限 | 無料 |
「LINE AIアシスタント」は、ビジネスや学習など、実用的な用途に向いたサービスです。回数制限はあるものの、月額200円で無制限に使える生成AIサービスは比較的珍しく、コストを抑えつつ実用性を重視したい人におすすめです。
一方の「LINE AI」は、画像生成や返信提案など、日常のやりとりを楽しくしてくれる機能が充実しています。現在は無料で提供されており、よほど頻繁に使わない限り、回数制限を意識する場面は少ないでしょう。
「どちらを選ぶべきか」は使い方次第。情報整理や業務効率化が目的なら「LINE AIアシスタント」、無料で気軽に楽しみたいなら「LINE AI」と考えると選びやすくなるでしょう。
AIが会話のパートナーに LINEが目指す次のステージ
『LINE』は日常的なやりとりをよりスムーズに楽しくするために、生成AIの導入を本格化させています。「LINE AI」や「LINE AIトークサジェスト」はその第一歩であり、ユーザーの生活に自然に溶け込む“AIエージェント”の実現を見据えた布石といえるでしょう。
今後は、トーク履歴やユーザーの行動履歴をより深く理解し、一人ひとりに合わせたサポートを行うパーソナルAIへと進化していく可能性があります。例えば、予定のリマインドや、関心に基づいた情報提供など、“ただ返すAI”ではなく、“先回りして提案するAI”への発展が期待されます。
『LINE』はこれまでも「友だちと話すように使えるUI」を大切にしてきました。今後のアップデートでも、その“LINEらしさ”を保ちながら、AIとの自然な会話がさらに広がっていく──そんな未来が、すでに始まりつつあるのかもしれません。
(文:かがわまなみ)
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