2024年のスマホアプリ市場は、生成AIの成長が加速にともないスマホアプリ市場にとって引き続き激動の1年となりました。本レポートでは、App Store、Google Play、App Ape、Sensor Tower APAC Awards 2024、そしてアプリブが選出した2024年のベストアプリを分析し、市場トレンドや2025年の展望を考察します。

2024年アプリ市場考察レポート アプリストア・分析企業の動向から読み解く2025年の市場トレンド
2024年はどんなアプリが評価された? 主要アワード&主な受賞アプリまとめ
2024年のアプリ市場では、アプリ内でのユーザー体験(UX)をいかに高めるかが重視される傾向がありました。
生成AIの活用が一般化し、当たり前の存在として生活に浸透したことで、便利なものを、より快適かつ直感的に使えるアプリが求められたと考えられます。
こうした流れのなか、各プラットフォームや分析機関が開催したアワードでは、それぞれの評価軸に基づいて、2024年を象徴するアプリが選出されました。ここからは、アワードごとの特徴を整理しつつ、受賞アプリの傾向から見える2024年の市場動向を読み解いていきます。
2024年の主要アプリアワード一覧
2024年は以下のプラットフォームや分析企業が独自の視点でアワードを開催し、注目アプリを表彰しました。
企業・サービス名 | 選定基準 |
---|---|
Google Play ベスト オブ 2024 | 日常生活に役立つアプリや、デバイスを問わず楽しめるゲームを中心に選定。ユーザーフレンドリーで高品質な体験が重視される傾向がある。 |
Apple | App Store Awards ユーザーの創造性や達成感、家族や友人とのつながりを促すアプリを評価。人々の生活に寄り添う視点が特徴。 トップアプリランキング ダウンロード数やユーザーエンゲージメント、アプリの品質、デザイン、有用性などを総合的に評価。ユーザーの利用実態が反映されたランキング。 |
App Ape Award 2024 | MAUやアクティブ率、ストアレビューといった定量的な指標をもとに選定。ユーザーに実際に支持されているアプリが評価されやすい傾向がある。 |
Sensor Tower APAC Awards | ダウンロード数と収益に基づき、各ジャンルで優れたアプリを選出。特にアジア太平洋地域での人気や収益性を重視。 |
アプリブ Best App Award 2024 | 革新性と独自性を軸に、各カテゴリで優れたユーザー体験を提供するアプリを選出。新しさや驚きのある体験が評価ポイント。 |
各アワードの視点はさまざまですが、どれも「ユーザーにとって価値のある体験とは何か」を問い直す中で、その年ならではの注目アプリを選んでいる点は共通しているといえるでしょう。
2024年に各アワードで受賞した主なアプリ一覧
各アワードは異なる基準でアプリを評価していますが、その中でも複数の賞を受賞したアプリは、多面的に高く評価されたアプリとえるでしょう。ここでは、それらのアプリと選出理由を一覧で紹介します。
アプリ名 | アワード名 | 選定理由 |
---|---|---|
![]() 学園アイドルマスター | ●Google Play ベスト オブ 2024 ●Sensor Tower APAC Awards ●アプリブ Best App Award 2024 | 多彩なキャラクターと戦略性のあるゲームシステムが高く評価。デバイスを問わず楽しめる没入感や、継続的なアップデートによる改善も支持された要因。 |
![]() キノコ伝説(Legend of Mushroom) | ●Sensor Tower APAC Awards ●アプリブ Best App Award 2024 | 独特な世界観と手軽さが特徴。放置系RPGの中でも設計の完成度が高く、幅広いユーザー層に支持された。 |
![]() Pokémon Trading Card Game Pocket | ●App Ape Award 2024 ●Sensor Tower APAC Awards | 人気IP「ポケモン」を活かしつつ、スマホで気軽に楽しめるTCGとして定着。新規層の取り込みにも成功している。 |
![]() 鳴潮(Wuthering Waves) | ●Google Play ベスト オブ 2024 ●Sensor Tower APAC Awards | ハイクオリティなグラフィックと世界観が注目を集め、日本を含むアジア市場での人気と話題性が評価された。 |
![]() Duolingo | ●App Ape Award 2024 ●Sensor Tower APAC Awards 2024 ●アプリブ Best App Award 2024 | ゲーム要素を取り入れた学習設計が支持され、言語学習アプリとしての地位を確立。多言語対応やUIの改善も継続的に行われている。 |
![]() U-NEXT | ●Google Play ベスト オブ 2024 ●Sensor Tower APAC Awards | 豊富なコンテンツラインナップと高品質な視聴体験が評価。アジア太平洋地域におけるユーザー基盤の拡大も注目された。 |
![]() マンガワン | Google Play ベスト オブ 2024 | - |
![]() 家族アルバム みてね | Google Play ベスト オブ 2024 | - |
![]() CLIP STUDIO PAINT | Google Play ベスト オブ 2024 | - |
![]() Adobe Lightroom | App Store Awards | - |
これらのアプリに共通するのは、機能性やデザインの優秀さだけでなく、ユーザーと丁寧に向き合いながら体験価値を高めてきた点です。ツールやゲームなどのジャンルは異なりますが、いずれの場合も「ユーザーの期待を超える体験をどう提供するか」という視点は、評価の鍵になるでしょう。
なぜこのアプリが選ばれた? 受賞アプリ深掘り
2024年のアワードで注目を集めたアプリのなかでも、複数の賞を受賞したものや、話題性の高かったタイトルには、各社の評価軸を超えて支持された理由が存在します。
ここからは、そうしたアプリが「なぜ選ばれたのか」を個別に掘り下げながら、機能性・デザイン・世界観・ユーザー体験といった観点から、その魅力を詳しく見ていきましょう。
アイドル育成ゲームの代表作! 3アワードを受賞の『学園アイドルマスター』

出典:App Store
受賞アワード
- Google Play ベスト オブ 2024
- Sensor Tower APAC Awards 2024
- アプリブ Best App Award 2024
アイドルプロデュースゲーム「アイドルマスター」シリーズの6年ぶりの新作『学園アイドルマスター』。2024年5月のリリースからわずか5ヵ月で累計ダウンロード数200万を突破し、2024年を代表するスマホゲームとして評価されました。
リリース日が発表されたのはわずか1週間前だったにもかかわらず、これだけ話題を呼んだのは、2025年には20周年を迎える長寿タイトルとして、シリーズを長年支えてきたプロデューサー(ファン)の支えがあったことは間違いありません。
しかし、本作が注目を集めた最大の理由は、シナリオの完成度の高さといえるでしょう。
本作では、さまざまな悩みを抱える多感な時期の学生たちに本気で向き合い、成長を支えるプロデューサーとアイドルの関係性を丁寧に描いています。ファンとアイドルではなく、プロデューサーとアイドルという関係だからこそ、「ともに成長していくストーリー性」が、多くのプレイヤーの心をつかみました。
加えて、「アイドル撮影」(プロデューサー視点で撮影できる機能)や、「カスタム名刺」(他プレイヤーと交換する名刺機能)といった、没入感を高める新機能が次々と追加されたことも、ユーザーの関心を引き続けた要因です。2025年も引き続き、さまざまな改修を重ねながら、ユーザーのプロデュース業を支えていくことでしょう。
独特なコンセプトと中毒性が魅力『キノコ伝説(Legend of Mushroom )』

出典:App Store
受賞アワード
- Sensor Tower APAC Awards 2024
- アプリブ Best App Award 2024
『キノコ伝説』は、広告戦略と中毒性のあるゲーム性で話題を集めたアプリです。
広告戦略では、リリース直後からYouTubeやTikTokでの大規模な広告展開を実施。耳に残るテーマソングを使ったものや、インフルエンサーを起用したものなど、一度見たら忘れられない印象的な動画で、幅広いユーザー層へのリーチに成功しました。
ゲーム性も、RPG要素を備えたやりこみ型の放置系で、多くのプレイヤーを魅了。サクサクとガチャを回せる手軽さに加え、イベント参加で「加速券」を獲得してガチャをさらに早く回せる仕組みも相乗効果を発揮しました。これにより、放置系ながらも高いアクティブ率を維持しており、2024年2〜6月の日本市場における月間平均使用時間は330分以上を記録しています(Sensor Tower調べ)。
また、同期間の収益は1億ドルを達成し、日本国内では『モンスターストライク』に次ぐ第2位という快挙を成し遂げました。
プレイを続けるほどにキャラクターが強化され、さらにガチャを回すことで新たな強化要素が解放されるため、「次の強化が楽しみで、ついつい続けてしまう」というユーザー心理を巧みに引き出しています。この手軽さと中毒性が、ハイパーカジュアルゲームを好むユーザー層からの強い支持につながっているのでしょう。
バトルもコレクションも楽しめるカードゲーム『Pokémon Trading Card Game Pocket』

出典:App Store
受賞アワード
- App Ape Award 2024
- Sensor Tower APAC Awards
通称『ポケポケ』は、2024年10月30日にリリースされたポケモンTCG(トレーディングカードゲーム)アプリです。リリースから1ヵ月も経たないうちに、ゲームアワードの最高峰である「The Game Awards 2024」の「Best Mobile Game」にノミネートされるなど、瞬く間に話題を集めました。
本アプリでは、従来のポケモンTCGの基本ルールを踏襲しつつ、デッキ枚数の削減やオートバトル機能(AIによる自動対戦)、オートデッキ構築機能(所持カードに基づく自動デッキ作成)といった利便性の高い機能を搭載。従来のポケモンTCGの複雑さに戸惑っていたプレイヤーでも楽しめる敷居の低さを実現しました。
もちろん、戦略的要素はそのまま維持しているため、TCG経験者でも十分に楽しめる奥深さも備えています。
また、毎日2回無料でブースターパックを開封でき、無課金プレイヤーでも継続して楽しめるコレクション要素としても人気です。なかには、3D視覚効果やアニメーションが施された「イマーシブカード」が用意されており、物理的なカードでは味わえない没入感も。
加えて、ブースターパックを開封する際のエフェクトやサウンドにも細部までこだわり、開封の高揚感を高める設計が高く評価されました。
美麗なグラフィックとアクションが評価された『鳴潮』

出典:App Store
受賞アワード
- Google Play ベスト オブ 2024
- Sensor Tower APAC Awards
美麗なグラフィックと多彩なアクション要素が評価された『鳴潮』。中国のデベロッパーが開発したオープンワールドのアクションRPGといえば『原神』が有名ですが、本作も『原神』に似たゲームシステムを採用しています。そのため、リリース直後から操作方法に戸惑うユーザーは少なく、スムーズにプレイを開始できたという点も人気を集めた要因でしょう。
『鳴潮』では3人1パーティでキャラクターを入れ替えながら戦う戦略的なバトルシステムを採用しており、高度な操作技術がなくても十分に戦えるバランス設計が、多くのプレイヤーに親しまれました。さらに、滑空や音骸システム(敵を倒して能力を吸収するスキル)など、多彩なアクション要素も魅力です。
また、定期的に追加される新キャラや新シナリオも、プレイヤーの心を掴み続けている大きな要因のひとつ。キャラクター一人ひとりの背景や物語を深く掘り下げることで、物語への没入感をさらに高めている点も、ユーザーの満足度を引き上げています。
しかしながら、リリース当初は相次ぐバグで酷評を受けました。アップデートを重ねることで徐々に安定してきているものの、スマホで快適にプレイするには、まだ少し厳しい部分が残っているのが現状です。
ゲーム感覚で学べる楽しさが魅力の『Duolingo』

出典:App Store
受賞アワード
- App Ape Award 2024
- Sensor Tower APAC Awards 2024
- アプリブ Best App Award 2024
語学学習アプリの代表格『Duolingo』は、多彩な機能を追加し、「楽しく学べる体験」の幅を広げた一年となりました。
2024年9月には、生成AIを搭載したサブスクリプションプラン「Duolingo Max」を国内展開。同時に、インタラクティブなAI英会話機能「リリーとビデオ通話」をローンチし、本格的かつリアルな英会話学習を提供しました。さらに、数学・音楽コースの国内展開も開始し、語学だけでなくマルチジャンルの学習アプリへと進化を遂げています。
こうした進化を後押ししたのが、独自のSNSマーケティング手法です。
X(旧Twitter)では、愛らしさと狂気が紙一重のキャラクターで話題をさらい、TikTokでもフォロワーを急増。「アプリを開いていない時間でも、Duolingoを意識させる」という独自のマーケティング戦略によって、学びに対する心理的ハードルを下げることに成功しました。
こうした機能拡充とSNSマーケティングの相乗効果により、2024年には日本国内で最もダウンロードされた教育アプリ(Sensor Tower調べ)となり、楽しく続けられる学習アプリとしての認知を拡大させました。
スポーツファンの心を掴んだ『U-NEXT』

出典:App Store
受賞アワード
- Google Play ベスト オブ 2024
- Sensor Tower APAC Awards
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2024年のトレンドから読み取る2025年の傾向
2024年のアプリ市場は、ユーザーの行動変化とテクノロジーの進化が交錯しました。
こうした変化は、2025年も続いていくのでしょうか。2024年のトレンドを振り返りながら、2025年の傾向を探っていきましょう。
AIエージェントの進化と普及

2025年もAI技術の進化は続き、ユーザー体験のパーソナライズがさらに高度化すると見込まれます。ユーザーの行動や好みを深く理解することで、レコメンデーションの精度向上や、個別最適化されたコンテンツの提供が強化されていくはず。
その中でも特に注目されるのが、AIエージェントの進化です。
例えば、AIエージェントがスケジュールを把握してリマインダーを設定したり、タスクの優先順位を自動調整したりするだけでなく、趣味嗜好に合わせたエンタメコンテンツの推薦や、食事・旅行プランの最適化まで行うことが想定されています。
さらに、生成AIの進化により、ユーザーとの会話の自然さも格段に向上すれば、より人間らしいコミュニケーションも図れるようになるはず。技術が進歩すれば、AIエージェントはユーザーに寄り添う“パーソナルコンシェルジュ”としての役割を担うようになるでしょう。
中国発ゲームのマーケティング戦略に注目

中国発のゲームは、グラフィックのクオリティ、斬新なゲームシステム、そして積極的なマーケティング戦略により、世界中で大きな成功を収めています。『鳴潮』や『キノコ伝説』など2024年に話題となったタイトルも、中国発ゲームのマーケティング力とゲーム性の高さが評価された好例です。
また、中国発ゲームは日本市場に向けた丁寧な翻訳・音声収録、キャラクターの世界観や文化に合わせた調整など、ローカライズの質を徹底することで、日本のユーザーに違和感なく受け入れられているのも特徴。YouTubeやTikTokなどのプラットフォームで日本のインフルエンサーを起用し、ターゲティング広告を効果的に展開している点も、日本市場での定着を後押ししています。
一方で、日本のゲーム開発企業は、独自のIP(知的財産)や長年の開発ノウハウを活かして差別化を図っていますが、グローバル市場で中国発のゲームに大きく後れを取っている状況も否めません。2025年以降も、中国発ゲームの影響力はさらに拡大すると予測されており、日本のゲーム企業がどのように対抗していくかが、今後の市場競争の大きな焦点となるでしょう。
ゲームトレンドは「ハイパーカジュアルゲーム」

シンプルなルールと直感的な操作性で気軽に楽しめる「ハイパーカジュアルゲーム(ハイカジゲーム)」が、ここ数年で急成長しています。
このジャンルが爆発的に広まった要因のひとつは、広告収入モデルとの親和性の高さです。SNS広告やリワード広告(動画広告視聴で報酬を得る仕組み)をきっかけに、ついインストールしてしまうユーザーが多く、プレイ時間が短くても安定した収益を見込めるビジネスモデルが確立されています。
事実、2024年の世界的なカジュアルゲーム市場規模は堅調に推移しており、今後も拡大が続くと予測されています。
しかし、短時間で満足感を得られる反面、長期的なユーザー定着率は低いという課題もあります。『キノコ伝説』のように、ガチャ要素や成長システムなど、ゲーム性に明確な特徴がなければ、安定した収益を維持するのは難しいでしょう。
ショートドラマ市場は今後も拡大傾向

▲左:BUMP 右:ShortMax
短時間で気軽に楽しめるショートドラマ配信サービスが、2025年にかけてさらに注目を集めると予測されています。
数分で完結するストーリーは、忙しい現代人のライフスタイルにマッチしているだけでなく、TikTokやYouTubeショートなどの縦型動画コンテンツの視聴習慣が浸透したことで、ショートドラマも同様に受け入れられやすい環境が整ったことが背景にあるようです。
こうした流れを受け、最近では『BUMP』『ShortMax』『ReelShort』などのショートドラマアプリが次々とリリースされ、韓国のショートドラマも多数配信されています。今後は作品数の増加に伴い、今後はパーソナライズの精度向上が進み、さらに多様な層の視聴者を取り込んでいくことが期待されます。
SNSアプリの利用率の低下

ここ数年、X(旧Twitter)やInstagramといった主要なSNSに加え、TikTok、BeReal、Threads、BlueskyなどのSNSアプリが多様化しています。
複数のアカウントを作成しても、SNS管理ツールで一元管理できれば便利ですが、X(旧Twitter)のようにAPIの利用に制限をかけるアプリが増えたことで、外部ツールによる投稿管理が難しくなってきました。その影響で、複数のSNSを使い分けるよりも、特定のSNSだけに投稿するユーザーが増えていると考えられます。
さらに、2025年4月には誹謗中傷被害の防止を目的とした「情プラ法(情報信託プラットフォーム法)」が施行される影響で、「何気ない投稿のつもりが、受け取り方次第で誹謗中傷と見なされるのでは」と懸念するユーザーも増えているようです。昨今、SNSアプリの利用率は緩やかに減少傾向にあるといわれていますが、こうした法律の施行が、SNS離れを加速させる要因になるかもしれません。
2025年も、ユーザーの満足度を高められるコンテンツ設定が成功の鍵
2024年に複数のアワードで高く評価されたアプリに共通するのは、単なる機能やデザインの優秀さではなく、ユーザーの行動や心理に寄り添い、長期的に愛される体験価値を提供している点です。
ゲームでは没入感のあるストーリーと成長要素がユーザーを引き込み、ツール系アプリではユーザー目線に立ったUI/UXの改善が継続的な利用につながりました。またエンタメ分野では、短時間でも満足度を得られるコンテンツ設計が忙しい現代人のライフスタイルにフィットし、高評価を得ています。
2025年以降のアプリ開発では、これらの成功要因を取り入れることで、ユーザーの期待を超える体験を提供するサービスがさらに増えていくはず。変化するユーザーニーズに柔軟に対応するアプリの登場に、今後も大いに期待したいところです。
(文:かがわまなみ)
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