ここ数年、都内の高級店や個人店で、外国人観光客の姿を見かける機会が増えています。日本人でもなかなか行く機会がないようなお店を、彼らはどのようにして見つけているのでしょうか? 渋谷の人気店に並ぶ外国人観光客54人に、直接インタビューを行いました。
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【なぜこの店に行列が?】 外国人観光客が使うアプリ&検索ワード徹底解剖!
外国人観光客はどうやって日本の飲食店を見つけているのか?
渋谷・宮益坂にいつも外国人が行列をなすレストランが2軒あります。「牛かつもと村」と「牛門」です。この2軒に並ぶ54人の外国人観光客に、どうやってこのレストランを見つけたのか直撃取材しました。
滞在日数は平均12.2日! 良さそうな店なら遠くても行く
今回取材した外国人観光客の日本平均滞在日数は12.2日で、10日以上滞在する人が全体の7割を超えていることが明らかになりました。
訪日旅行者は日程に余裕を持って旅行を計画しており、その結果、東京だけでなく地方のグルメスポットを調べて積極的に足を運んでいるようです。中にはSNSで話題になっているメニューを求めて、特定の場所を訪れる層も存在することが取材で確認できました。
最も人気だったのは『Google Map』
続いて、レストラン探しに使うアプリを聞いたところ、主に『Google Map』『TikTok』『Instagram』が活用されていることが判明。ちなみに、インバウンド集客では『TripAdvisor』や『SAVOR』を使うという話も聞きますが、観光客達に聞いてみると「『Google Map』しか使わない」という回答が主でこの行列の中にはいませんでした。
概ね予想通りのアプリが使われていた一方、検索に使う単語やお店を決定するプロセスには、日本人とは異なる特徴が見られました。SNSでの行動がレストラン選びにどう影響しているのか、さらに詳しく見てみましょう。
外国人観光客が注目するのはインパクトと評価!
観光客のレストラン探しの行動をまとめると、以下の2パターンが主流でした。
①事前に『TikTok』や『Instagram』で見つけておいしそうだったら『Google Map』で調べ、行けそうな場所なら足を運ぶ
②当日『Google Map』で近場や行く予定のエリアの地名を入れて検索し、レビューが高評価なら行く
特に、「tokyo」「tukiji」などその土地の情報を検索していると、AI機能によるおすすめのレストランがいろいろ出てくるようになるので、画像や口コミを見て気になった店を調べるという回答も一定数ありました。このように、日頃から利用しているアプリのおすすめに従って次を決めていくという行動が多いようです。
実際に店を選んだ決め手は?
外国人観光客が使っていた検索ワード
- 地名 restaurant high rating
- 地名 hidden gems(穴場)
- food 地名
- 地名 must eat(必食のグルメ)
- 地名 best restaurant
- 地名 best food
- 地名 料理名
- japanese food in 地名
- must food in 地名
外国人観光客が使っていた具体的なハッシュタグ、キーワードを聞いてみたところ、上記のようなものが挙がってきました。地名と掛け合わせることで、その場所でしか食べられない最高のものを探していることがわかります。
ただし、日本人の味の好みと外国人の味の好みは異なります。そこで、次に彼らがグルメを選ぶポイントを確認したところ、その見た目のインパクトが重要視されていることがわかってきました。
手が止まるのはわかりやすく映える画像
実際に『TikTok』の画面を見せながら「どれが食べたい?」と質問してみたところ、「炎」「牛肉」「マグロ」などの赤系のメニューや、デカ盛り系のインパクトのあるメニュー写真は、多数の写真の中でも特に目を引きやすく、「食べてみたい!」「行ってみたい!」と思われる傾向がありました。
検索しているメニューはがっつり定番
外国人観光客が実際に使っていたキーワード
- ラーメン(Ramen)
- 焼き鳥(Yakitori)
- 寿司(Sushi)
- 天ぷら(Tempura)
- 焼肉(Yakiniku)
- 和牛ステーキ(Wagyu, Steak, Wagyu, Kobe Beef, Matsuzaka Beef)
- お好み焼き(Okonomiyaki)、鉄板焼(Teppanyaki)
- 抹茶(Matcha)
- 日本酒(Sake)
外国人観光客が日本を訪れる際の行動は、日本人がアメリカを訪れた際に「アメリカ料理」がよくわからず、ハンバーガーやステーキを注文してしまうのと似ています。そのため、日本にそこまで詳しくない観光客であればあるほど、「ラーメン」や「和牛」など、わかりやすくて有名な料理を優先して調べがちなようです。
外国人旅行客がSNSや『Google Map』で実際に探したキーワードをヒアリングしたところ、「ラーメン」「和牛」のほか「焼き鳥」「天ぷら」など知名度の高い日本食の名称が並びました。
例えばある旅行者は、「ステーキ」と検索して「牛かつもと村」を見つけたとのこと。カツとステーキではだいぶ印象が違う気がしますが、こちらの検索結果で、この旅行者はそれまで知らなかった「牛かつ」に興味を持ち、行列に並ぼうと思ったというのは、なかなか興味深い結果ですね。
『Google Map』のメニュー名も大きな決め手に
取材を通じて痛感したのは、「凝りすぎたメニューは伝わらない」ということです。例えば、「和牛の低温調理3時間ロースト」といった表現では、日本人でも具体的にどんな料理かイメージしにくいでしょう。ましてや、外国人観光客にはさらに伝わりにくくなります。そのため、正確ではなくても「Wagyu Beef」のようにシンプルな表現の投稿のほうが外国人観光客に見つかりやすい結果となり、行列ができるほどの集客につながっているようです。
元々『Google Map』の口コミでは、来客が投稿した画像が自動的に「メニュー」「動画」「料理、飲み物」などに分類されて投稿されます。
メニューの名前は後から「料理名を編集」を押すことで自由に編集できます。そのため、料理写真にわかりやすい名前が付いていると検索に引っかかりやすくなり、外国人観光客の目に留まりやすくなるというわけです。
おそらく、このような対応をいち早く実施している飲食店が、現在の行列状況を牽引しているのかもしれません。
行列のできている店「牛門」では、上の写真のように細かな英語の説明が用意されています。主要なキーワードの検索から呼び込んだ外国人にさらに詳細な情報を与えられるため、「メニューを見てリーズナブルかどうか判断する」という外国人観光客にとっては価格帯のイメージがつきやすくなり、訪問のハードルが低くなるようです。
「ハラル」「ヴィーガン」……特定の層に刺さるジャンルは強い
「牛かつもと村」と「牛門」の訪問者には、「ハラル(Halal)で探して見つけてきた」という方が54人中13人いました。特に『牛門』はハラル認証の牛肉を使用していることを売りにしており、東京観光の際にネット検索でハラル対応のお店を探すイスラム教徒の方々から人気を集めているようです。
店員が英語が話せなくても、翻訳アプリと画像メニューで解決
飲食店経営者に話を伺うと「日本語ができないお客さんが来ても対応できないから怖い」という声が聞かれます。
たしかに、取材を行った際、日本語を話せる人は0人でした。しかし多言語対応のメニューがない飲食店での注文方法を尋ねると、翻訳アプリを使用するか、メニューの写真を指差して注文しているとの回答がほとんどでした。
「牛かつもと村」の『Google Map』を見ると、店舗の説明が英語動画で視聴できます。メニューには写真が添えられ、英語・中国語・韓国語の表記も併記されているため、日本語がわからない外国人観光客でも安心して注文できる環境です。
また、Wi-Fiを整備しておけば『Google翻訳』や『Microsoft Translator』などの翻訳アプリの使用がしやすくなりますし、従業員が日本語しか話せない場合でも、写真付きの英語メニューとWi-Fi環境を用意しておけば、コミュニケーションがスムーズに取れるメリットが生まれ、外国人観光客も好んで立ち寄るという状況がさらに生まれるのかもしれません。
インタビューから見えた外国人観光客のレストラン選び
渋谷の行列店「牛かつもと村」と「牛門」に並ぶ外国人観光客に話を聞いたところ、私たち日本人とは少し違う方法でお店を選んでいることがわかりました。『Google Map』や『TikTok』を使う点は同じですが、検索KWに違う傾向があります。
「カフェ」や「レストラン」などカテゴリで検索する傾向がある日本人に対して、「tokyo must eat」や「hidden gems」といったキーワードで検索しながら、写真や口コミを参考に訪れるお店を決めるという特徴がありました。それらの傾向を踏まえて対策をしているお店の工夫が行列の理由となっているのでしょう。
また、料理の名前や写真がシンプルでわかりやすいものに惹かれる傾向が強く、「Wagyu Beef」のような表記やインパクトのある料理写真が決め手になることも多いとのこと。こうした行動は、口コミサイトや友人のおすすめを重視する日本人の感覚とは少し異なります。外国人観光客の目線で探してみると、新しい視点でおいしいお店の開拓ができるかもしれませんね。(取材・文)清 仁美
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