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  • 【レポート】MOBILE STARSが読み解く、「2025年アプリマーケの現在地とこれから」オープニングセッション

Adjust、Braze、Moloco、Moonplateが運営するモバイルアプリマーケター向けコミュニティ「MOBILE STARS」による第6回目となるイベント「MOBILE STARS Christmas 2025」が、2025年12月12日に開催されました。

今回はクリスマス特別企画として多数のセッションとネットワーキングが組み合わされ、会場には多くのアプリマーケターが集まり、大盛況のうちにスタート。

運営企業を代表し、Adjustの高橋将平氏、Brazeの佐藤洋介氏、Molocoの山本篤史氏が登壇した「Year in Review 2025 〜アプリマーケの今とこれから〜」の模様をレポートでお届けします。

Moloco:アプリは「購買行動の起点」へ、新規獲得から継続率最大化にシフトしていく

山本 篤史 氏
Moloco Growth Manager

Moloco Growth Managerの山本篤史氏は、自社が実施した「スマホアプリ利用動向に関する調査レポート」の最新結果を共有し、「2025年は、デジタル行動の中心がウェブからアプリへ本格的にシフトした年だった」と指摘しました。

ユーザーのデジタル行動は、ウェブよりもアプリが中心となっており、アプリの利用時間はウェブの約135%に達しています。特に購買行動の変化が顕著で、ユーザーの25%以上が、インターネット検索エンジンではなく、すでにダウンロードしているショッピングアプリを経由して検索を開始していることが明らかになりました。

山本氏が示したユーザーの検索行動とは、具体的な購入商品が決まっているケースに限らず、「何を買うか」を考えるための情報探索の段階も含まれます。つまり、これまで検索エンジンが担ってきた「探索の入口」が、アプリ側に移りつつあるという示唆です。

また、ユーザーのアプリ利用は量だけでなく質の面でも変化しています。直近3年間で、約51%のユーザーがアプリの利用頻度が増えたと回答し、約23%がアプリ経由での支出額が増えたと回答しています。

その背景として、ユーザーが「ログインのしやすさ」「スムーズな操作」「アプリ限定特典」といった利便性やメリットを求め、ウェブからアプリへと利用をシフトしている実態があると分析しました。

さらに、広告接点においても、アプリ内広告の重要性は増しています。Molocoの調査では、約3人に1人(29%)がアプリ内広告をきっかけに新たなアプリをインストールしており、ウェブサイト上の広告(25%)やSNS広告(24%)と比較して、最も高い数値となりました。

特に、月7,500円以上をアプリ経由で消費する高課金ユーザーでは、44%がアプリ内広告を契機にインストールした経験があると回答しており、アプリ内広告が行動喚起に有効であることがうかがえます。

▲山本 篤史 氏(Moloco Growth Manager)_MOBILE STARS 2025 Christmas 2025

▲山本 篤史 氏(Moloco Growth Manager)_MOBILE STARS 2025 Christmas 2025

山本氏は、2026年以降の見通しとして、「アプリへの対応の巧拙が、そのまま成果の差につながる」と強調しました。

重要なのは、単なる集客ではなく、「良いアプリ体験・プロダクト設計」と「既存ユーザーの継続率向上」であるとし、既存顧客、とりわけ高課金ユーザーの継続率を最大化することが、新規獲得と比べてコストリスクが低く、最も効率的に売上を伸ばす手段であると説明しました。

実際にMolocoでも、既存ユーザーを再活性化するリエンゲージメント配信に関する相談が近年増加しており、これを通じてサービス成長につなげている事例が多く見られることから、2026年以降も同領域のニーズ拡大が続くとまとめました。

Adjust:SKAN本格化とアプリ価値の二極化。セキュリティとサードパーティストアに注目

高橋 将平 氏
Adjust Sales Lead

Adjust Sales Leadの高橋将平氏は、自身が多くのクライアントとの対話やイベント登壇を通じて「肌で感じてきた」2025年の変化を中心に振り返り、2026年を見据えたアプリマーケティングの論点を共有しました。

まず、2025年は「Web to App」という言葉がアプリマーケティング界隈で急速に広まったと指摘。マーケターにとってSKAN(SkAdNetwork)やAAK(AdAttributionKit)といった計測手法は一般化しつつあるものの、その難解さを攻略することは依然として至難の業です。

これはマーケターだけでなく媒体社にとっても共通の悩みでしたが、そこに一石を投じるような動きがWebサービス向けのキャンペーンを活用したアプリグロースの動きであると語ります。

また、高橋氏はプレイヤー層の広がりについても言及。アプリ計測にこれまで本格的に取り組んでこなかった新しい広告代理店からの問い合わせが直近で増えていることも紹介。

アプリ業界主力のゲームやマンガというジャンル以外のお客様も広告出稿に興味を示しており、「少額からでもアプリマーケティングに挑戦してみよう」という新しいプレイヤーが増えている肌感を共有しました。

Adjust社としての戦略面では、2025年はお客様のニーズに合わせて一部機能だけの提供など、様々な提供方法を模索してみた1年でしたが、原点に戻り「効果測定」のニーズをきちんと捉えていくことが重要であると再確認できたと振り返ります。

最近では、顧客からの問い合わせで「生成AIを活用して調べたが、この理解で正しいか?」といった相談も増えており、顧客側の前提レベルが上がったことで、より深い議論がしやすくなっているとの様子も語られました。

▲高橋 将平 氏(Adjust Sales Lead)_MOBILE STARS 2025 Christmas 2025

▲高橋 将平 氏(Adjust Sales Lead)_MOBILE STARS 2025 Christmas 2025

2026年以降の見通しについては、「アプリをどこまで優先するか」で企業間の二極化が進むと予測します。「アプリは大事だが、まだ優先順位を上げきれていない企業」と、「アプリを最重要領域として成長をかける企業」との差が開いていくという見立てです。

加えて、高橋氏はMAU Vegasなどの海外カンファレンスへの参加を通じ感じたトレンドとして、リワード広告やオファーウォールの存在感の高まりを挙げました。元々リワードは日本がリードしてきた領域で世界を牽引してきましたが、ここにきてゲームやマンガといった主力ジャンル以外への導入も進み始めており、今後の応用が極めて面白いテーマだと言います。

今後のアプリの価値については、「セキュリティ」と「サードパーティストア」の2つの文脈で重要性が増すと指摘しました。

近年フィッシングサイトや、なりすましサイト経由でのアカウント被害が増える中、ディープリンクを活用してアプリ経由で安全な画面に遷移させる設計は、すでに金融機関などで取り組みが進んでいます。メールのリンクから不正ページに誘導されるリスクと比較して、「正しいアプリを立ち上げる」という体験の価値が、さらに強く打ち出されていく可能性があります。

一方で、サードパーティストアの解禁・拡大が進むことで、これまで公式ストアではリジェクトされてきた「エッジの効いたアプリ」が登場しやすくなり、それらも計測対象に入ってくることで、抑え込まれていたアイデアが解放され、新しいプレイヤーとの出会いが増えることへの期待も語られました。

最後に高橋氏は、アプリ業界におけるリターゲティングが、ウェブと比べるとまだ十分に進化していない点を課題として挙げました。現在のリタゲは、ゲームやマンガアプリを基準とした「非アクティブ期間(休眠期間)」の概念がすべてのアプリに適用される形で残り続けてしまっていることが問題だと指摘。

今後は、媒体と計測パートナーが連携し、この前提自体を見直しながら、「いつもアプリを開いているが、あと一歩で購入に至っていないユーザー」を追いかけるための新たなリターゲティングの形を作っていくべきだと提言し、セッションを締めくくりました。

Braze:生成AIが購買導線を変える。ユーザー獲得後も「AIによるコンバージョン最大化」が話題に

佐藤 洋介 氏
Braze Strategic Business Consultant

Braze Strategic Business Consultantの佐藤洋介氏は、主に生成AIがユーザーの行動と、マーケティング施策に与えるインパクトをテーマに、佐藤氏個人の視点として、現状認識と今後の論点を語りました。

まず、生成AIによってユーザーのアプリ内行動が変わり始めている点を指摘。具体例として、米国の大手小売 Walmartのアプリ内には、ホームタブにSparkyと呼ばれるAIアシスタントが実装されており、ユーザーが「こういう商品が欲しい」とチャットで伝えるだけで、商品がレコメンドされ、買い物が完結する体験が実現し始めていると紹介しました。

この変化が示唆するのは、従来型の計測・データ取得の在り方が揺らぎつつあるという点です。検索やフィルタリングを繰り返す遷移や「カテゴリーページ→商品詳細→カート→決済」といった遷移を前提にユーザー行動をトラッキングしていたモデルが、AIとの対話主導のUXに置き換わった時、そのままでは同じ解像度でユーザーの行動を追い続けることは難しく、顧客理解の難易度も高まります。

また、ある調査会社からは、Google検索経由のサイト訪問が3割ほど減少しているといった報告がなされたことにも触れ、「生成AIがユーザー行動へ着実に影響を及ぼしていることを理解すること、そして、Webが減少しているからアプリ強化が必要といった単純な構図で考えるのではなく、生成AI経由での接点を含めたサービス全体の顧客接点それぞれにどのような役割を持たせ、どう最適化していくべきか、といった全体設計そのものの見直しが求められているのではないか」と述べました。

▲佐藤 洋介 氏(Braze Strategic Business Consultant)_MOBILE STARS 2025 Christmas 2025

▲佐藤 洋介 氏(Braze Strategic Business Consultant)_MOBILE STARS 2025 Christmas 2025

続いて、企業側のAI活用については、業務の生産性改善・効率化と、コンバージョン最大化という二つの方向性で進むと整理しました。

生産性改善の観点では、多くのSaaSプロダクトに生成AI機能が組み込まれ、画面上での設定や分析作業をアシストすることで、日々の業務スピードを高める流れが加速していると説明。マーケター自身がこうした機能を積極的に使い倒すことが当たり前になるだろうと語りました。

一方、コンバージョン最大化の観点では、CRMの領域において、AIエージェントがシナリオ設計やメッセージ最適化を担う潮流が進んでいると紹介。

従来はマーケターが手作業で行なっていた配信シナリオ作成・最適化業務はAIエージェントへ置き換わり、顧客データ(1st Partyデータ)にもとづき自動で、1人ひとりにパーソナライズされたコミュニケーションを展開する時代に移行しつつある、と説明しました。

特に海外では、AIエージェントを活用したパーソナライゼーションの導入によって高いリフトが確認されており、「1億円投資すれば5億円の売上増が見込める」といった、直接的なROIを意識してAIソリューションをCRM領域に組み込む企業も増えています。

これは、かつてGoogleやMetaが広告運用の正解をAIに委ねたように、CRM領域もまた、AIエージェントによる自律的なコンバージョン最大化の時代へと突入しつつあることを示唆します。

佐藤氏は、こうした流れが日本のCRM領域にも波及し、「優れたAIを自社サービスにどう組み込むか」でユーザー獲得後のコンバージョンボリュームが大きく変わるという概念が、来年以降より活発に議論されていくだろうとまとめました。

2026年、アプリマーケターが取り組むべき戦略とは

セッションで示されたように、ユーザーは「より良い体験」を求め、その結果、アプリを購買や探索の起点として優先するようになってきています。

また、SKAdNetworkなどプライバシー前提の計測環境や、セキュリティ・サードパーティストアといった文脈で、アプリの戦略的重要性はも高まり続けています。

そして、生成AIの普及により、これまで前提としていた「購買導線」や「計測の当たり前」が変わりつつあり、CRMを含むマーケティング全体の設計をアップデートする必要があると語られました。

2025年の自社のマーケティング活動を振り返りながら、こうした視点もヒントにしつつ、2026年のマーケティング戦略や優先順位の再構築に役立てていただければ幸いです。

アプリマーケターが集うコミュニティ“MOBILE STARS”

モバイルアプリマーケターのためのコミュニティイベント「MOBILE STARS」は、今回で6回目の開催となりました。本イベントは、Moonplate, Inc.を中心に、Adjust、Braze、Molocoといった運営企業が連携して運営しています。

Moonplate, Inc.の大西氏は、コミュニティの目的について、「自分自身も普段マーケターとしてさまざまな課題や悩みを抱えていますが、社外のマーケターと交流することで、すでにその課題を乗り越えた方々の知見に触れることができます。

こうした場を通じて、マーケターのみなさんの成長に貢献できる機会を今後もつくっていきたいと考えています。」と語りました。

MOBILE STARSでは、今後もマーケターにとって、学びとつながりが得られる場を継続的に提供していく予定です。今回のクリスマス特別企画は、Adjust、Braze、Moloco、Moonplate, Inc.の運営に加え、スポンサーであるRevenueCatとLiberteenz、そしてメディアパートナーであるアプリブの協力のもと開催されました。

アプリ業界の発展を願う多くの有志・関係者のご支援により、本イベントが実現していることに、この場を借りて深く感謝申し上げます。

次回のMobile Starsは2026年4月21日(火)に開催予定です。
アプリマーケティングに従事するみなさんの成長に貢献できるコミュニティとして、今後も継続的にこうした場をつくってまいります。