• TOP
  • 特集記事一覧
  • 【レポート】カラオケまねきねこの来店を促すアプリ戦略 1,700万会員基盤を活かした施策とは (MOBILE STARS)

Adjust、Braze、Moloco、Moonplateが運営するモバイルアプリマーケター向けコミュニティ「MOBILE STARS」による第6回目となるイベント「MOBILE STARS Christmas 2025」が、2025年12月12日に開催されました。

本記事では、adjust株式会社の高橋氏をモデレーターに、株式会社コシダカデジタルの田口氏が登壇。「カラオケまねきねこ」のアプリを中心としたプロダクト戦略、店舗DXの具体的事例、そして今後のデータ活用について語られたセッションの模様をお届けします。

株式会社コシダカデジタル
事業開発部 プロダクト課 課長
田口 吉洋 氏

adjust株式会社
Sales Lead Japan
高橋 将平氏

創業はラーメン店だった「カラオケまねきねこ」

1993年、群馬県前橋で1号店が誕生した「カラオケまねきねこ」。運営を手掛ける株式会社コシダカホールディングスは、エンターテインメント事業を展開する東証プライム上場企業です。社名は創業者である腰髙氏の名前から来ており、前身は1967年創業のラーメン店だったのだとか。

飲食物の持ち込み自由や「朝うた」「ZEROカラ」などの独自サービスを展開し、若年層からの圧倒的な支持を獲得。店舗数はカラオケ店舗最大手の700店超、年間来店者数は約5,000万人を誇り、直近ではJOYSOUND直営店をグループ化するほか、海外展開も加速させるなど拡大を続けています。

アプリを中心としたプロダクト戦略

・集客(オフライン・オンライン):看板などオフラインを主軸に、デジタルマーケティング強化にも取組中
・顧客インフラ(アプリ):アプリを会員証およびCRM基盤として位置づけ、顧客接点をデジタル化
・おもてなし・サービス:アプリを通じた注文や予約、接客の品質向上
・次世代エンタメ:自社開発のカラオケ機種「E-bo(イーボ)」でカラオケだけでなく映像コンテンツ(WOWOWなど)やゲーム(「桃太郎電鉄」など)を提供

田口氏によると、カラオケ業界は伝統的に「看板」による集客がメインであり、デジタル活用で秀でている企業はまだ少ないといいます。そこで同社は、店舗というオフラインの場とデジタルを融合。

「公式サイト(集客・予約)」「アプリ(会員基盤・店舗DX)」「E-bo(次世代体験)」の3軸を連携させ、顧客体験の最大化に注力しています。

プロダクト開発の二大目的

  • 目的1:店舗利用体験の向上とLTVの最大化
  • 目的2:700店舗というアセットを活用した新たな価値創造へのチャレンジ

「プロダクトの運営には、大きく2つの目的がある」と田口氏は続けます。どのような流れで実行しているのかを具体的に解説しました。

集客戦略のデジタル化で幅広い顧客層をカバー

先述のように、カラオケ業界の集客は「駅前の看板」などオフライン広告が主流でした。しかし、看板は24時間同じ場所にあり続けるため、閑散期やアイドルタイムに合わせた柔軟な集客は困難です。

反面、デジタルであれば予算投下によって集客の強弱がつけられるため、Web予約やアプリを活用したデジタルマーケティングへシフトすることで、オフラインではカバーできない層へのアプローチ強化を試みています。

「ハマる仕組み」と「店舗品質強化」で集客後のLTVを向上

ハマる仕組み

  • コンテンツ:カラオケ機種「E-bo」での本人音源配信やゲーム機能など、新しいルーム体験の提供
  • アプリ:クーポン配信、お得なサブスクリプション、店舗と連動したゲーム機能などにより、来店動機とリピート性を向上

店舗品質強化

  • アンケート分析:アプリを通じて収集した顧客アンケートを本社で集約・分析
  • PDCA:舗ごとや全店共通の課題(例:特定の清掃不備や機器トラブルなど)を抽出・改善し、不満要素を取り除くことで「居心地の良い空間」を実現)

ポジティブ要素を伸ばす「ハマる仕組み」と、ネガティブ要素を解消する「店舗品質強化」。これらが単独でなく両輪として動くことで、あらゆる角度から顧客満足度を最大化させる戦略の実行が可能となりました。

DX推進による成果とこれからの課題

▲株式会社コシダカデジタル 田口 吉洋氏

▲株式会社コシダカデジタル 田口 吉洋氏

では、アプリ導入とDX推進は、現場にどのような変化をもたらしたのでしょうか。田口氏はその成果事例について、課題や今後の可能性も含め、以下のように紹介しました。

現場サービスや分析の劇的変化

業務効率化(省人化)と付加価値の提供

会員証のデジタル化やアプリからの注文により、スタッフの対応工数が大幅削減。これにより、スタッフはより付加価値の高い接客業務に時間を割くことが可能に。

物理的なリスクとコストの低減

アプリがリモコン(デンモク)の役割を果たすことで、専用端末の設置数削減に寄与。「酔客による機器損壊」というカラオケ店特有のリスクやメンテナンスコスト増も回避。

データドリブンなサービス改善の基盤構築

誰が/いつ/何を歌い/何を注文したかという、オフライン時代には取得困難だった詳細な行動データが蓄積され、精度の高い分析とマーケティングが実現。

依然として残る集客の課題

オフライン(看板)依存脱却とSEO・MEO強化

デジタルのなかで唯一、高い成果が出ているのが「能動的な検索」へのMEOや公式サイトのSEOの対応。しかし相変わらず看板も集客のメインとなっている点は要検討。

デジタルマーケティング(ペイド施策)の苦戦

飲み会後など突発的なニーズの高いカラオケは、ニーズが発生する「その瞬間」に広告を当てるのが非常に困難。また、飲食業などに比べ客単価が低いため、一般的なデジタル広告の獲得単価では採算が合いにくい。

リターゲティングの可能性

・誘う人(積極層):すでにアプリを持っており、自ら検索して来店する層
・誘われる人(消極層):「誰かに連れられて来る」だけで、自らアプリを入れたり検索したりしない層

田口氏は、カラオケ利用者を「誘う人(積極層・アプリ保有)」と「誘われる人(消極層・アプリ未保有)」に分類。

前者はすでにアプリを持っているため、そこに対し広告費を使うべきか疑問もあるといいます。一方、「アプリを持たない同行者層」にどうアプローチできるかについては、引き続き検討したいとの考えを示しました。

モバイルアプリ活用事例

続いて、現在実施中の施策が3点紹介されました。いずれも一定の効果が確認されている事例となっています。

事例1:マイナンバーカード連携による新規会員登録の効率化

・概要: マイナンバーカードのICチップ読み取りによる本人確認・会員登録機能を実装
・効果:従来、スタッフが対面で行っていた年齢確認や身分証確認の手間を3分→0分に短縮。いつでもどこでも登録可能になったほか、なりすまし入会の防止や、正確な顧客データの取得にも寄与。

事例2:店舗運営シミュレーションゲーム「ポケまね」

・概要:2025年11月末にリリースした、アプリ内で遊べる放置系の店舗運営ゲーム。自分の理想の「まねきねこ」店舗を作れる
・狙い:カラオケ利用時以外にもアプリを起動してもらうこと。
・特徴:実際の店舗利用とゲームの進行が連動。自社の数百万MAUというアセットを活用し、広告費を使わず、ゲームを起点とした実店舗への送客を視野にいれて運用中。

事例3:早期囲い込みと継続を促すサブスク「ずっトク!」

・概要:月額880円で室料がずっと無料になるサブスクリプションサービス(大阪、兵庫、京都、奈良で実験展開)
・特徴:入会資格を25歳以下に限定。一度退会すると、25歳を超えていた場合は再入会できない不可逆性を持たせることで、強力な継続インセンティブを設計。
・離脱対策:利用がなかった月は会費同等分のポイントを還元することで、「使わないから解約する」という心理的ハードルを極力排除。

今後について

田口氏は今後の展望として、データの統合と活用に言及。POS(実店舗の会計データ)・アプリ(会員データ)・E-bo(自社開発カラオケ機器による歌唱データ)を掛け合わせることができるのは、他社にはないコシダカホールディングスのみの強みで、これにより例えば「ビールをよく飲む層はどのアーティストを好んで歌うのか」といった、詳細な相関分析が可能になると話しました。

このような独自のデータ分析に基づき、単なるカラオケ店運営にとどまらず、新しいビジネスチャンスや他社とのアライアンスを積極的に模索していく姿勢を示しました。全国700店舗超のリアルな場と1,700万人のデジタル会員基盤を持つコシダカホールディングスの挑戦は、今後も加速していきそうです。

アプリマーケターが集うコミュニティ“MOBILE STARS”

モバイルアプリマーケターのためのコミュニティイベント「MOBILE STARS」は、今回で6回目の開催となりました。本イベントは、Moonplate, Inc.を中心に、Adjust、Braze、Molocoといった運営企業が連携して運営しています。

MOBILE STARSでは、今後もマーケターにとって、学びとつながりが得られる場を継続的に提供していく予定です。今回のクリスマス特別企画は、Adjust、Braze、Moloco、Moonplate, Inc.の運営に加え、スポンサーであるRevenueCatとLiberteenz、そしてメディアパートナーであるアプリブの協力のもと開催されました。

アプリ業界の発展を願う多くの有志・関係者のご支援により、本イベントが実現していることに、この場を借りて深く感謝申し上げます。

次回のMobile Starsは2026年4月21日(火)に開催予定です。
アプリマーケティングに従事するみなさんの成長に貢献できるコミュニティとして、今後も継続的にこうした場をつくってまいります。

カラオケまねきねこ

株式会社コシダカ

iPhone
Android
もっと詳しく見る