現在、ChatGPTをはじめとする生成AIに注目が集まるなか、画像生成AIと著作権に関する議論が進められています。今年5月30日、文化庁は「AIと著作権の関係等について」という資料を公表し、その見解を示しました。
参考:「AIと著作権の関係等について」(文化庁)
Applivでは、画像生成AIと著作権に関する意識調査を実施。イラストレーター(プロ・アマ含む)とそうでない人との間では、考え方にどのような違いがあるかに着目し、画像生成AIの利用経験や著作権、商用利用に対する意見とその理由について、結果を発表します。
生成AIによる画像の利用、イラストレーターの86.7%が「著作権意識する」、69.8%が商用利用に賛成(Appliv調べ)
画像生成AIに興味があると回答した人は全体の43.1%、利用したことがある割合は13.4%
10代~60代の男女6,592人に、画像生成AIへの興味・関心度を調べたところ、「頻繁に使っている」が4.3%、「興味があり試しに使ったことがある」が9.1%、使ったことがある割合は13.4%でした。
「興味があり調べたりしているが使ったことはない(17.7%)」「興味はあるが、知らなかった(12.0%)」を合わせると、画像生成AIに興味があると回答した人は全体の43.1%を占めています。
このように4割以上が画像生成AIに対する興味・関心を持っていますが、利用経験者は少ないことから、まだまだ普及しているとはいえず、今後に注目です。
画像生成AIを仕事で利用する割合、イラストレーターは54.1%、一般回答者の2.5倍以上
続いて、プロ・アマを含むイラストレーター331名と一般回答者328名に、画像生成AIを利用する目的を聞いてみました。
その結果、「仕事のため」と回答した割合は、イラストレーターが54.1%、一般回答者が21.3%でした。イラストレーターが仕事で画像生成AIを利用している割合は、一般回答者の2.5倍以上となっています。
また、一度も利用したことがない人はイラストレーターが5.4%、一般回答者では24.7%となっており、仕事に限定せず、画像生成AIの利用はイラストレーターの方が高い傾向にあるといえそうです。
イラストレーターの86.7%がAIによる画像利用時に「著作権意識」あり、一般回答者と10pt以上の差
AIによって生成された画像を利用する際に、著作権を意識するかどうか尋ねたところ、「常に意識する」と回答したのは、イラストレーターが46.8%、一般回答者が43.0%でした。
「たまに意識する」と回答した人も含めると、イラストレーターの86.7%が著作権を意識していることがわかりました。これは一般回答者(76.5%)より10pt以上高い結果となっています。
イラストレーターは、自分が描いた作品だけでなく、AIによって生成された画像を利用する際にも注意を払っている人が多いようです。
生成AIと著作権の問題は約9割が認識、イラストレーターの半数近くが「自分で調べた」と回答
AIが作成した画像をめぐる著作権の問題について知っているかどうかを聞いた結果、両者ともに約9割が「知っている」と回答しました。
そのうち、「自分で調べた」と回答した人の割合は、イラストレーターが44.7%に対し、一般回答者は25.3%と20ポイント近く差がありました。
多くの人がAIによる画像の著作権問題について認識しているようですが、積極的に情報を収集している割合は、イラストレーターの方が高いようです。
イラストレーターの69.8%が画像生成AIの商用利用に賛成、一般回答者を上回る
画像生成AIの商用利用に対して意見を聞いてみると、イラストレーターは「賛成」が30.5%、「やや賛成」が39.3%となっており、69.8%が賛成意見を示しました。
一般回答者においても、賛成意見が61.6%と全体の半数は超えています。しかし、「賛成」と回答した割合は17.4%と、イラストレーター(30.5%)を下回っています。
また、反対意見を示した割合を見てみると、イラストレーターが23.5%に対し、一般回答者は29.3%でした。
イラストレーターの方が画像生成AIの商用利用に賛成している割合が高いことから、イラストレーターは自身に対する影響を考慮し、画像生成AIに対し肯定的にとらえている人が多いのではないでしょうか。
画像生成AIの商用利用に賛成する理由、最多は「多様な表現を可能にするから」
賛成と回答した人の理由を調べた結果、最も回答が多かったのは「多様な表現を可能にし、芸術やデザインの新たな領域を開くと思う」でした。
2番目に多かったのは「新たなビジネスの可能性を広げ、経済的な利益をもたらすと思う」、続いて「生産性を高め、時間や人的リソースの節約につながると思う」となっています。
なお、TOP3は両者同じでしたが、生産性の向上に関しては、イラストレーターが12.6%に対し、一般回答者は26.2%と2倍以上でした。
画像生成AIが多様な表現を可能にすることに価値を感じているが、生産性の向上に関しては、一般回答者の方が重要視している傾向が高いと考えられます。
画像生成AIの商用利用に反対する理由、創作活動の影響と著作権侵害への懸念
反対と回答した人の理由を見てみると、イラストレーターの回答で最も多かったのは「創作者の仕事を奪い、経済的な悪影響を及ぼす可能性があると思う(34.6%)」でした。
続いて、「オリジナルの作品を軽視し、人間の創造性や技術を過小評価していると思う(33.3%)」、「著作権者の権利を侵害する可能性があると思う(20.5%)」となっています。
一般回答者では、「著作権者の権利を侵害する可能性があると思う(33.3%)」が最も多く、「オリジナルの作品を軽視し、人間の創造性や技術を過小評価していると思う(21.9%)」、「創作者の仕事を奪い、経済的な悪影響を及ぼす可能性があると思う(18.8%)」と続きます。
画像生成AIの商用利用に対して否定的な意見を持つ背景には、イラストレーターは創作活動への影響、一般回答者は著作権侵害を懸念している傾向があるようです。
しかし、「AI生成画像の品質や精度はまだ不確定で、商用利用には不適当だと思う」と回答した割合は両者ともに5%前後であることから、AI生成画像の品質や精度を疑う声は低いといえます。
調査概要
調査方法:インターネット調査
調査期間:2023年6月14日~2023年6月25日
調査対象:全国の10代~60代男女
サンプル数:6,592人(うち、イラストレーター331人、一般回答者328人を抽出)
◇性別
男性:3,291人
女性:3,301人
◇年齢
15~19歳:1,100人
20~29歳:1,101人
30~39歳:1,100人
40~49歳:1,100人
50~59歳:1,091人
60~69歳:1,100人
【本データの利用条件】
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