マッチングアプリは現在出会いの主流な手段となっていますが、その一方で、マッチングアプリに関連したロマンス詐欺のニュースも多く目にするようになりました。

この記事では、マッチングアプリにおけるロマンス詐欺の実態や手口を解説。さらに、安全に利用するための対策も紹介します。

当記事は、ロマンス被害相談を多く扱う弁護士・藤井鉄平氏への取材をもとに制作しました。

※18歳未満の方はマッチングアプリを利用できません。
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今回取材した専門家

藤井鉄平(ふじい・てっぺい)弁護士

ロマンス詐欺や投資詐欺などの詐欺事件、債権回収等に強みを持ち、回収実績も複数あり。一般民事、刑事弁護、企業法務まで幅広く対応し、中国語を生かして中国人からの相談や中国との取引にも対応。確実で丁寧な姿勢で依頼者から厚い信頼を集めている。2008年弁護士登録、2016年独立。藤井鉄平法律事務所代表。

被害額は年間397億円! ロマンス詐欺は増え続けている

ロマンス詐欺とは、マッチングアプリなどで知り合った相手に恋愛感情や親近感を抱かせたうえで金銭をだまし取る詐欺です。

警察庁の発表によると、昨年度のロマンス詐欺被害は全国で3,784件、被害総額は397億円に上り、前年度と比べて約2倍に。また、被害者の中には高齢者だけでなく、若年層も含まれており、幅広い年代で被害が拡大しています。

直近でおきた被害の実例として、以下のようなものがあります。

①前橋市の64歳男性、マッチングアプリで知り合った女性に約1億円だまし取られる

2025年2月25日、群馬県警前橋署は、64歳の無職男性がマッチングアプリで知り合った「グラフィックデザイナーの40代女性」を名乗る人物からネットショップ経営を持ちかけられ、仕入れ代や手数料の名目で約9,780万円をだまし取られた事件が発生したことを発表。

https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/619500

②西宮市の41歳女性、マッチングアプリで知り合った男性に3,100万円だまし取られる

2025年3月7日、兵庫県警西宮署は、41歳の会社員女性がマッチングアプリで知り合った「カナダ人」と名乗る人物から暗号資産への投資を勧められ、約3,100万円をだまし取られた事件が発生したことを発表。

https://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/202503/0018726671.shtml

③福岡市の50代男性、マッチングアプリで知り合った女性に2,800万円だまし取られる

2025年3月10日、福岡県城南警察署は、50代の男性がマッチングアプリで知り合った人物からFXや暗号資産への投資を勧められ、約2,800万円をだまし取られた事件が発生したことを発表。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d2ba390f53e0c5ea5fa38174765e9e00777c4e4d

弁護士・藤井先生

被害に遭う方の年代は幅広いですが、私が受ける相談では、特に40~50代の方が目立ちます

この年代は経済的にある程度の余裕がある上、高齢者とは異なり、インターネットバンキングや仮想通貨の取引等も自身の判断でできてしまうため、結果として詐欺のターゲットとして狙われやすくなっているのでしょう。

マッチングアプリでのロマンス詐欺の流れ

「ロマンス詐欺」は、さまざまな手口で行われますが、大まかな流れとして共通するパターンがあります。ここでは、その流れを見てみましょう。

1. マッチングアプリで知り合う

ロマンス詐欺の場合でも、アプリ上で「いいね」やマッチング機能を通じて相手とつながり、メッセージのやり取りを重ねる点は通常の出会いと変わりありません。

この初期段階では、相手が詐欺師かどうかを見極めるのが難しく、多くの人が自然なやり取りとして受け止めてしまいます。

弁護士・藤井先生

見極めるのは難しいですが、流れの中で不自然なアプローチが見られることはあります。

例えば、「やたらと美男・美女の外国人が突然「いいね」してくる」「年齢や収入などの条件が明らかに合わないのに、積極的にメッセージが届く」というようなものです。
また、知り合ってから間もないタイミングで、投資やお金の話をしてくる場合も、注意が必要です。

こうした小さな違和感に気づけるかどうかが、詐欺被害を防ぐポイントになります。

最初の時点で“おかしい”と気づければ被害を防げる可能性は高いのですが、幻想的な出会いに期待しすぎてしまう方も少なくありません。

2. 外部のチャットツールに誘導する

マッチングアプリで知り合った後、多くの場合、数回メッセージを交わした段階で、相手から外部のチャットツールへの移行を提案されます。

例えば、次のような誘い文句が典型的です。

  • 「もっとプライベートな話がしたいから、LINEに移動しよう」
  • 「WhatsApp(またはWeChat)で話したほうが話しやすい」

弁護士・藤井先生

詐欺師が外部のチャットツールへの移行を持ちかけるのは、マッチングアプリの通報機能や監視を避け、アカウント凍結を防ぐためです。これにより、詐欺行為を自由に進めやすくなります。

外部ツールに移行すると、相手の特定が難しくなり、被害者が詐欺に気づいたときには連絡が取れなくなるケースが多発しています。

「アプリをあまり使わない」「もっと親しくなりたい」などの理由で移行を急かす場合は警戒が必要です。

3. 仲を深めて投資・ビジネス話にうまく誘導する

外部ツールで親密なメッセージのやりとりを重ねながら、自然な流れで儲かる投資や簡単に稼げるビジネスの話を持ちかけてきます。

具体的には、次のような誘い文句が代表的です。

  • 「私がやっている投資は、初心者でも簡単に利益を出せるから、あなたもやってみない?」
  • 「ネットショップの共同経営をしない? 先に仕入れ代を立て替えてくれれば、すぐに利益を分配できるよ」

また、最初は恋愛や将来の話をする中で、「一緒に経済的に成功したい」「将来に向けてお金を増やそう」といった形で、2人の関係を利用して金銭の話を持ち出すこともあります。

弁護士・藤井先生

以前のロマンス詐欺では、 「恋人や家族の急な医療費が必要」 「結婚資金を工面してほしい」といった同情を誘う手口が主流でした。

しかし最近では、投資詐欺と組み合わせたハイブリッド型の手口が増加しており、

・最初は恋愛ムードを演出して信用させる
・最終的には投資話に誘導し、資金を振り込ませる

という流れに変化してきています。

こういった変化の理由には、資金振り込みまでのスピードを早められることがあります。また、怪しまれた場合に恋愛感情で繋ぎ止めやすい側面はマッチングアプリならではといえるでしょう。

4. “見せかけの利益”でさらに信頼させる

詐欺師は、投資やビジネスの話に少しでも関心を示した相手に対し、慎重に信頼を築きながら段階的に大きな金額を振り込ませるよう誘導します。

基本的に「少額を最初に出金できるように見せる」など、被害者の警戒心を解くために、一時的な報酬や利益を“疑似体験”させることが多くあります。

例としては、以下のような流れが挙げられます。

  • 最初に資金として10万円ほど振り込ませる
  • そのうち儲けとして5万円を振り込み、実際に出金させる
  • 「ほら、本当に出金できたでしょ?」とターゲットを信頼させる
  • 安心させたうえで、さらに大きな金額を振り込ませる

このようにして 被害者の不安を取り除き、「もっと投資すればさらに儲かる」という期待を持たせます。

5. 金額を釣り上げて振り込ませる

詐欺師は、被害者が「本当に儲かる」と信じ込んだ段階で、より大きな金額を振り込ませるよう誘導します。

  • 「さらに大きな投資をすれば、もっと利益が出る」
  • 「期間限定のボーナスがあるから、今がチャンス」
  • 「VIP会員になれば特別な取引ができる」
  • 「二人の将来のために、この投資でお金を貯めよう」

こうした言葉で煽り、金額を吊り上げていくのです。最終的には高額の振り込みをさせた後、アカウントを削除して連絡が取れなくなります。

弁護士・藤井先生

近年は、暗号資産(仮想通貨)などを使った投資が一般的に認知され始め、値動きが大きい分、短期で儲かったように見せやすいという特徴があります。

このため、詐欺師にとっては恋愛感情をそこまで強固にしなくても、投資に興味がある人であれば、アプローチしやすくなっています。

マッチングアプリ運営側はどんな対策を講じている?

ロマンス詐欺を未然に防ぐために、アプリの運営会社は危険なユーザーから利用者を守るため、以下のような対策を講じています。

  • 24時間365日の監視体制
  • 違反したユーザーに対する強制退会措置
  • 通報・ブロック機能の設置
  • 通話機能の設置
  • 年齢確認・本人確認制度の設置

それでも詐欺が完全になくならないのはなぜ?

各マッチングアプリが対策を講じているにもかかわらず、ロマンス詐欺被害は依然として増え続けています。

その理由としては以下のような点が挙げられます。

1. 外部の連絡手段に移行しやすいから

マッチングアプリの対策が進んでもロマンス詐欺がなくならないのは、外部の連絡手段へ誘導しやすいことが大きな要因だといえます。

詐欺師は「もっと気軽にやりとりできるようにしたい」「アプリだと制限があるからLINEで話そう」といった理由を挙げ、被害者を外部ツールへ誘導します。

これによって、アプリ側の監視の目が届かない環境で詐欺行為が行われやすくなります。

2.「自分が騙されることはない」と思う人が多いから

テレビやSNSなどで詐欺被害の警鐘が鳴らされても、「自分が騙されることはない」と思い込む人が後を絶ちません。

これは、詐欺加害者が次々と巧妙な新しい手口を編み出し、被害者の心理的なスキを的確に突いてくるからです。注意喚起があっても、手口が変われば防ぐのは難しくなります。

3. “恋愛感情”と“儲け話”の巧妙な合わせ技で信頼を築くから

現在のロマンス詐欺は、恋愛感情と投資話を組み合わせた複合型が主流です。

詐欺師は、最初に小さな成功体験を与えることで「実際に儲かるかもしれない」「短期間で稼げそう」と思わせ、相手と信頼を築きます。これが巧妙な罠となっています。

また、相手が不審に思った場合でも、「私を信じて」「2人の未来のために」などと感情に訴えかけることで疑いを振り払い、結果的に被害を回避しづらい状況に追い込みます。

専門家が教える!自分でできるロマンス詐欺回避策

ここまで解説してきたように、ロマンス詐欺を防ぐためには、アプリ運営側の対策だけでは不十分なのが現実。

ユーザー自身がリスクを意識し、自衛のための回避策をしっかりと身に付ける必要があります。以下では、弁護士・藤井氏の意見をもとに注意したいポイントや具体的な対策をまとめました。

「逆ナン」的な誘いは疑う

自分には不釣り合いと思えるほどの好条件な相手が接近してきた場合は、注意が必要です。

詐欺師は、「まさか自分が選ばれるはずがない」という心理的なスキを突き、一気に親密さを演出します。舞い上がらず冷静に対応することが重要です。

プロフィール写真や肩書きだけで安易に信じない

オンライン上の写真や自己紹介は簡単に偽装できるため、写真が1枚だけだったり、会話や情報に不自然さがあったりする場合は要警戒です。

また、頻繁に電話やビデオ通話を避ける場合も疑いを持ちましょう。

顔をしっかり確認でき、実際に話せる相手と出会うようにするだけで、詐欺に遭うリスクは減らせます。

アプリ外への誘導には慎重になる

マッチングアプリの監視や通報機能を避けるため、外部の連絡手段へ移行したがる相手は注意が必要です。

アプリ内のやり取りを早々に終わらせ、LINEやWhatsAppへ誘導してきたら警戒しましょう。

外部ツールを使う場合でも、電話番号など個人情報を簡単に教えないようにしてください。

投資やお金の話が出たらまず疑う

恋愛目的の場で、突然「投資」や「ビジネス」の話が出るのは赤信号です。

詐欺師はわずかな儲けを体験させて信用を得る手口を使い、追加で資金を引き出そうとします。たとえ少額でも、相手が勧める投資に軽々しくお金を出すのは危険です。

周囲に相談し、慎重に判断しましょう。

実際に会えない相手は危険度が高い

相手が「多忙」「海外在住」「親の介護」など理由をつけて会おうとしない場合、詐欺の可能性が高まります。

オンラインだけで関係を深めようとするのが典型的なパターンです。もし会えたとしても、すぐに大金を動かすのは避け、相手の職場や友人関係などを慎重に確認する姿勢が重要です。

少しでも怪しいと思ったら身近な人や専門家に相談する

詐欺師は「秘密にしてほしい」と言い、被害者を孤立させますが、一人で抱え込むほど冷静さを失いやすくなります。

家族や友人に「こんな話をされている」と伝えるだけで客観的なアドバイスが得られるでしょう。金銭的な問題が絡むなら、消費生活センターや弁護士など専門家に早めに相談することをおすすめします。

>>藤井鉄平先生の法律事務所公式サイトはこちら

ロマンス詐欺対策を知ってマッチングアプリを安全に使おう

マッチングアプリは、多くの人と手軽に知り合い、新たな出会いを広げるための便利なツールです。

しかし同時に、その匿名性と簡便さを悪用したロマンス詐欺も横行しています。

こうした被害を防ぐには、相手を過信せず「ほんの少し疑ってみる」という習慣が大切です。また、相手とのやり取りの中で少しでも違和感を覚えたら、早めに連絡を絶つなど自己防衛の意識を持つことが重要です。

ネガティブなニュースが目立ちますが、実際には多くの利用者がマッチングアプリで誠実なパートナーを見つけ、素敵な出会いを実現しています。

正しい知識と警戒心を持って活用すれば、マッチングアプリはよい相手と出会える非常に有益な手段となります。

自分自身の身を守りながら、安心・安全に新しい縁を見つけてみてくださいね。

(取材・福原瑶子)

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