キーボードを手に入れて、ピアノを独学で始めたい。調べてみると、教本を1冊決める、片手ずつゆっくり練習する、毎日少しでも鍵盤に触る、といったコツが見つかります。
ただ、こうしたコツを実践していても、「今の音で合っているのかな」と迷うことがあります。独学では、その場で確かめてくれる人がいません。楽譜を見ながら弾いているつもりでも、隣の鍵盤を押したまま気づかず、そのまま指が覚えてしまうこともあります。
そんなとき、答え合わせを手伝ってくれるのがスマホアプリです。鍵盤の音を聞き取り、合っているかをその場で知らせてくれるアプリを使えば、ひとりで練習していても、違う音に気づいてすぐに弾き直すことができますよ。
この記事では、独学の進め方を4つのステップで整理し、弾いた音をアプリで確かめる方法を2つ紹介します。
ピアノの独学は何から始める?|弾いた音が合っているか、スマホに聞いてもらう練習法
独学の基本は4ステップ。難しいのは答え合わせ
独学では、最初に入門用の教材を1つ決めて、鍵盤の位置と楽譜の基本を押さえてから、短い範囲を確実に弾けるようにしていくと進めやすくなります。基本の流れは次の4ステップです。
- 入門用の教本やアプリの初級コースを1つ決め、鍵盤の「ド」の位置と、楽譜の音と鍵盤の対応を覚える
- 弾く範囲を、数小節ずつの短いまとまりに区切る
- 右手と左手を片手ずつ、ゆっくり弾いて音を確かめる
- 両手で合わせ、少しずつ元の速さに近づける
この中で、独学だと難しいのが3つ目の「音を確かめる」ところです。楽譜を読むことに慣れないうちは、鍵盤を1つずれて押していても、自分の耳だけでは気づきにくいもの。教室なら先生に確かめてもらえますが、独学ではその役がいないからです。
ここで紹介するアプリが受け持つのは、この3つ目の答え合わせです。ただし、確かめてくれるのは「弾いた音が合っているか」のみ。指使いや手の形、姿勢は判定の対象ではないため、記事の後半で紹介する方法で補います。
音の確かめ方は2つ。自分のペースで弾くか、テンポに合わせて弾くか
2つのアプリは、どちらも弾いた音を聞き取って合っているかを知らせてくれますが、音の確かめ方と練習の進め方が違います。
| アプリ | 音を確かめる仕組み | 練習の進め方 | 無料で使える範囲 |
|---|---|---|---|
| flowkey | 弾くべき鍵盤をお手本の手元動画でオレンジに示し、正しい音を弾くまで曲が待つ* | お手本の手元動画と楽譜を見ながら弾く。初心者向けのコースを飛ばして、曲から始めることもできる | いくつかの曲とコースのレッスン |
| Simply Piano | 弾いた音の正誤を色で知らせ、正しい鍵盤を画面下にヒントとして出す | 楽譜の読み方などの基礎から、コースに沿って順に進める。フレーズごとにクリアしないと先へ進めない | 最初のコース「ピアノ 基本」と「タッチで練習」 |
*待機モード利用時
どちらも、判定を使えるのはアプリに収録された曲やレッスンです。手持ちの楽譜を取り込んで判定してもらう機能ではないため、練習したい曲がある場合は、収録曲と難易度を先に確かめておきましょう。
また、スマホは鍵盤の音を聞いて判定します。練習するときは、鍵盤の近くにスマホを置ける場所を用意しておくと安心です。
自分のペースで待ってもらう【flowkey】
お手本の動画に合わせて演奏すると、音が合っているかを確かめながら弾きたくても、曲だけが先へ進んでしまうというパターンがよくありますよね。『flowkey』の待機モードなら、正しい音を弾くまで曲が止まって待ってくれます。
画面には、お手本の演奏とあわせて、手元を映した動画と楽譜が表示されます。楽譜を読むことに慣れていなくても、動画を見れば、どの鍵盤を押さえればよいかがわかりますよ。
flowkey GmbH
鍵盤の近くにスマホを置き、無料の曲を選ぶ
▲無料の曲が複数用意されている。画面は「白鳥のテーマ」を選んだ例
アプリを入れてアカウントを作ったら、無料で弾ける曲やコースのレッスンから1つ選びます。曲には「初心者」「中級者」「上級者」の難易度がありますが、無料で弾ける難易度は曲ごとに決まっています。初めてなら、「初心者」で弾ける無料の曲から選ぶと始めやすいでしょう。
初心者向けのコースには、姿勢や指の位置から学ぶレッスンもありますが、飛ばして曲から練習を始めることもできます。
スマホは、鍵盤の音を拾いやすい譜面台などに置きます。
待機モードで音を確かめ、違っていたら弾き直す
▲待機モードと、練習モードの選び方
待機モードをオンにすると、スマホが演奏を聞き取り、正しい音を弾くまで先へ進みません。弾くべき鍵盤は、お手本の手元動画にオレンジで表示されます。進め方は次のとおりです。
- 曲を開き、鍵盤の上にあるオレンジのマーク(スピードメーターマーク)をタップ
- 待機モードを選択後、練習したいモード(右手のみ/左手のみ/両手)を選択
- 再生ボタンを押し、表示された音符を見ながら、自分のペースで弾く
- 先へ進まないときは、手元の動画でオレンジになっている鍵盤と、自分が押した鍵盤を見比べる
- 違う鍵盤を押していたら、オレンジの鍵盤を弾き直して進める
▲譜面どおりの音を弾けると、緑のチェックマークが出現する
先へ進まないのは、違う鍵盤を押したときだけではありません。次の音をまだ弾いていないときも、曲は待ちます。また、編集部がAndroid版で無料の「白鳥のテーマ」を弾いてみたところ、和音は一部の音が合っているだけでは進まず、すべての音がそろうまで止まったままでした。
正しく弾いていても、音をうまく聞き取ってくれていない場合も曲は止まります。押した鍵盤が合っているのに進まないときは、後半の「判定がうまくいかないと感じたら」の確かめ方を試しましょう。
待機モードは、お手本の再生より先に次の音を弾いても、それが正しい音ならそのまま進みます。音を確かめるためのモードと割り切り、テンポを合わせる練習は、次の「聴きながら演奏」で行いましょう。
音を確かめたら、速さを合わせて通して弾く
テンポの練習には、同じメニューの「聴きながら演奏」を使います。「50% スロー再生」「75% スロー再生」「元のテンポ」から速さを選ぶと、お手本の演奏がその速さで進むので、合わせて弾きながら少しずつ元の速さに近づけていけます。
ただし、こちらでは弾いた音の判定はなく、音を間違えても曲は止まりません。音が合っているかは待機モードで、速さはスロー再生で、と分けて練習しましょう。
▲Androidの例。「ジャストプレイをオンにする」と表示されているときは、現在オフの状態。タップしてオンにする
曲を通して弾けるようになったら、設定(歯車マーク)内にある「ジャストプレイ」も使えます。お手本に合わせるのではなく、自分の弾く速さに合わせて楽譜が進むモードで、多少音を外しても止まらずについてきてくれます。答え合わせ用ではありませんが、最初から最後まで通して弾く練習に向いています。
無料版でも待機モードは使える。弾きたい曲の収録は先に確認を
『flowkey』は、アカウントを作ると、いくつかの曲とコースのレッスンが無料・無期限で使えます。待機モードを含む学習機能は、無料の範囲でもすべて使えます。
そのほかの曲は、有料プランの対象です。編集部が確認したiPhone版のアプリ内では「クラシック」「プレミアム」「ファミリー」の3つが選べ、ポップスや映画音楽なども弾けるのは「プレミアム」と「ファミリー」でした。Android版のアプリ内で選べたのは「プレミアム」のみで、年払いを選ぶと1週間無料で試せます。
収録曲は入れ替わることもあるため、弾きたい曲を目当てに有料プランを選ぶなら、その曲が収録されているかを先に確かめておくと安心です。
flowkey GmbH
間違えた鍵盤を画面で見比べる【Simply Piano】
違う音を弾いたことはわかっても、どの鍵盤を押してしまったのかがわからないと、同じ間違いを繰り返しやすいですよね。『Simply Piano』は、弾いた音が合っているかを色で知らせ、必要なときは画面下の鍵盤にヒントを表示してくれるピアノ練習アプリです。
Simply Ltd
無料の最初のコースで、楽譜の読み方から始める
最初のコース「ピアノ 基本」は無料です。楽譜の読み方などの基礎から順に教えてくれるので、楽譜を読んだことがない人にも向いています。コースは順番に進む形で、途中を飛ばして曲から始めることはできません。
実際のピアノやキーボードの音をアプリが聞き取る前提のコースですが、鍵盤が手元にないときのために、画面の鍵盤をタップして弾く無料コース「タッチで練習」も用意されています。
色の表示と画面下の鍵盤で、違う音に気づく
判定された音符の色は、次の意味を示します。
| 色 | 意味 |
|---|---|
| 青 | ヒントなしで正しく弾けた |
| 黄 | 画面下の鍵盤にヒントが出てから、正しく弾けた |
| 赤 | 違う音を弾いた(曲が進んでいくステージのみ) |
▲違う音を弾くと、アプリが聞き取った音の位置に青い丸が表示される。なかなか正解しないと、真ん中の図のようにヒントとして弾くべき鍵盤が黄色くなる
違う音を弾いたときは、正しい鍵盤が黄色で表示されることがあります。表示が出たら、次の順で確かめましょう。
- 黄色(正しい鍵盤)の位置を確認する
- 押そうとした鍵盤と正しい鍵盤のずれを確かめ、指の置き場所を直す
- 正しい音を弾き直す
黄色音符は、ヒントが出たあとに正しく弾けたという表示で、間違いではありません。ヒントを見ながらなら弾ける段階なので、同じレッスンをもう一度弾き、ヒントなしで弾けるかを確かめると、次へ進む目安になります。
編集部がAndroid版で、「ピアノ 基本」の無料コースを試したところ、練習のステージでは、音符が来る位置に合わせて正しい鍵盤を弾かないと反応しませんでした。
曲を通して弾くステージでは、違う音を弾いたり、音を出せなかったりすると赤で表示されたまま曲が進みます。数小節ごとにクリアの区切りがあり、そこをクリアできないと先へ進めません。
▲「練習モード」への案内(画面は「タッチで練習」の例)
鍵盤を使う「ピアノ 基本」でも、画面をタップする「タッチで練習」でも、うまく弾けない状態が続くと、メトロノームに合わせて練習する「練習モード」に案内されました。
無料で試せるのは最初のコース。無料体験は年額プランのみ
無料で使えるのは「ピアノ 基本」と「タッチで練習」です。その先のコースや曲のライブラリは、有料のサブスクリプションの対象です。有料プランには、使う人数に応じて「個人」「デュオ」「ファミリー」があります。
7日間の無料体験は年額プランだけが対象で、月額プランを選ぶと表示されません。無料体験から始める場合は、更新日までに続けるかどうかを決めておくと安心です。
Simply Ltd
判定がうまくいかないと感じたら
正しく弾いたはずなのに先へ進まない、違う音の表示が多すぎる。そう感じたときは、弾き方より先に、アプリが音をきちんと聞き取れているかを確かめます。
周りの音とスマホの置き場所を見直す
テレビの音や話し声が近くにあると、鍵盤の音を聞き取りにくくなることがあります。静かな場所で、スマホを鍵盤の近くに置き、キーボードの音量を少し上げて試しましょう。
編集部が『flowkey』の待機モードで試したところ、鍵盤を弾かずに、同じ高さの音を声で歌っても、正しい音として先へ進みました。アプリは音の高さを聞き取って判定しているため、弾きながら口ずさんだ声や周りの音を、正しい音として拾ってしまう可能性があります。答え合わせをするときは、歌声などが重ならない状態で弾くと安心です。
『Simply Piano』では、鍵盤を押しているあいだ、アプリが聞き取った音が画面下の鍵盤に灰色で表示されます。自分が押した鍵盤と灰色の位置が一致しない場合は、音をうまく聞き取れていない可能性があります。
電子ピアノなら、MIDIでスマホとつなぐ
スマホのマイクでは弾いた音をうまく聞き取れない場合は、楽器とスマホを直接つなぐと判定が安定しやすくなります。MIDIに対応した電子ピアノなら、USBケーブルなどでつなぐ方法があります。Bluetooth MIDIで無線でつなげるかどうかは、アプリとOSによって異なります。例えば『Simply Piano』のBluetooth MIDIは、iPhone・iPadのみの対応です。
必要なケーブルや変換アダプターは、スマホと楽器の端子によって変わります。つなぐ前に、楽器がMIDIに対応しているかと、端子の種類を確かめておきましょう。
指使いや姿勢は、アプリ以外の方法で補う
アプリが判定するのは、弾いた音が合っているかです。指使いや手の形、姿勢のような体の使い方は、別の方法で確かめます。『flowkey』の初心者向けコースのように、姿勢や指の位置を動画で学べるレッスンもありますが、自分の手元が合っているかまでは判定されません。
教本の写真やお手本の手元の動画と、自分の手元を見比べるのが手軽な方法です。スマホで自分の手元を撮影して見返すと、気づきやすくなります。
それでも直し方がわからないときは、体験レッスンなどで一度だけ先生に見てもらうのも手です。日々の音の確認はアプリに任せ、体の使い方だけを人に見てもらうと、独学のペースを保ちながら弱いところを補えます。
まずは、無料の曲やレッスンで音を確かめてみよう
独学では、弾いた音が合っているかを、自分だけでは判断しにくい場面があります。音を確かめる手段があれば、教材も練習のペースも自分で決められる独学のよさを活かしながら、練習を進めやすくなります。
自分のペースで1音ずつ確かめたいなら『flowkey』の待機モード。リズムに合わせて弾くところまで、基礎から順に進めたいなら『Simply Piano』。どちらも無料の範囲で始められるので、両方を少し弾いてみて、続けやすいほうを選ぶのがおすすめです。
最初の目標は、無料の曲やレッスンの数小節を片手で弾き、違う音に気づいたら弾き直すこと。「何から始めるか」に迷ったら、まずは短いフレーズで、アプリの表示を見ながら音を確かめるところから始めてみましょう。