ここ数年で、通販アプリ市場は大きく変化しています。特に、アジア発のアプリTemuやSHEINの登場は、Amazonや楽天市場といった既存の大手プレイヤーにも影響を及ぼしています。
アプリ専門サイト「アプリブ」でも、通販アプリは重点的に取り上げているカテゴリーのひとつです。
ここでは、通販アプリの現状と今後の展望についてまとめました。

Amazon・楽天に迫る越境通販アプリの勢い。2025年の通販アプリ市場をリポート
揺るがないAmazonと楽天の2強体制
現在、通販市場にはかなり多くのアプリが存在します。
その中でもここ10年ほどは『Amazon』と『楽天市場』が圧倒的な存在感を誇り、後を追う『Yahoo!ショッピング』が一定のシェアを獲得してはいるものの、2強体制は依然として揺るぎません。
改めて現状の通販アプリ市場を整理してみたところ、以下のように大きく3つに分類することができました。
まずは、先程紹介した『Amazon』や『楽天市場』のようにジャンルを問わず様々な商品を扱う総合通販アプリ。そして、ファッション系の『ZOZOTOWN』や食品の『ポケットマルシェ』、工具や事務用品を扱う『モノタロウ』のようなジャンル特化型の通販アプリ、さらに『Zara』や『ニトリ』『kagomi』のようにブランドが独自に展開する通販アプリに分けられました。
一見すると、これらのアプリは消費者を奪い合っているように見えますが、総合通販アプリは「豊富な商品の中から比較して選びたい消費者向け」、ジャンル特化型の通販アプリは「総合通販アプリでは取り扱いのないブランドなどから探したい消費者向け」、ブランド独自の通販アプリは「特定のブランドのファンが指名買いをするためのプラットフォーム」というように実際には異なるターゲットを持ち、異なる役割を果たしています。
また、消費者もそれぞれのアプリのセール時期やポイント還元の違いを考慮し、最もお得な購入方法を選択しています。例えば、楽天スーパーセールの期間には楽天経由で買い物をし、ニトリの公式キャンペーン中にはニトリのアプリを利用するといった使い分けがされています。
通販市場の核となっているのは越境通販アプリ
市場の動きを見ていきましょう。
ここ数年、中国の『SHEIN』『Temu』『AliExpress』、韓国の『amood』『SONA』といった日本法人を持たずに海外から直接商品を販売する「越境通販アプリ」が急成長しています(※)。
これらの越境通販アプリの強みは、日本では生み出せない価値を提供できる点にあります。例えば、中国は圧倒的な低価格、韓国は韓国ファッションや韓国コスメのトレンド性が魅力といった内容です。
例に挙げたのは中国や韓国のアプリでしたが、他にもフランスやシンガポールの通販アプリも登場しており、今後もさらなる拡大が見込まれます。
※運営会社の所在地ではなく、どこの国の通販サイトかで国名を示しています
越境通販アプリがAmazonを変えた
Amazonは依然として通販市場の中心的存在ですが、昨年11月、TemuやSHEINといった中国の越境通販アプリの台頭に対する施策として、20ドル以下の商品を中心に扱う低価格カテゴリー『Amazon Haul』を導入しました。
出典:AmazonHaul
今月、トランプ政権が中国からの小口輸入品に対する関税免除措置の停止を決定し、これにより、TemuやSHEINの商品価格が上昇する可能性が話題となっていますが、Amazonはこのまま、手を緩めることなく積極的に低価格カテゴリーのシェア獲得に動くと予想されます。
また、アメリカ市場での反応次第ではありますが、日本市場にもこの低価格カテゴリーを導入する可能性が高いです。というのも、日本のAmazonでは低品質な海外製品の流通が問題視されており、低価格カテゴリーの導入により「Amazonの品質を向上させられる機会」として期待されていると考えられるからです。
これが成功すれば、同様の課題を抱える楽天や他の国内通販アプリにも影響を与えるでしょう。
越境通販アプリの成長が生んだ、新たな越境代行サービス『SAZO』
出典:SAZO
越境通販アプリの成長に伴い、筆者が最近注目しているのが『SAZO』です。現在、アプリはまだありませんが、登場はそう遠くないと思います。
SAZOは越境通販ではなく、日本の企業が運営する海外商品の輸入代行サービスです。すでに『GRL(グレイル)』という同じような形態のサービスもありますが、SAZOは越境通販アプリよりも、以下の3つの部分で勝っています。
まず、日本企業ならではの日本人が好きそうなUI。そして、利用者は韓国の実店舗で販売されている商品をどの店舗で購入するか指定でき、それを現地スタッフが買い付けて日本へ直接発送する仕組みになっていることから、偽物を掴まされることがないこと。最後に現地価格に近い金額で購入できることです。
例えば、先日筆者の友人が購入したスニーカーは現地価格で8,000円。日本に届く最終価格が8,500円程度でした。この手数料の安さと商品の出所が明確である安心感、そして使いやすさが評価され、現在SNSでも話題になりつつあります。
2025年の通販市場の行方
消費者のニーズが多様化する中で、通販市場はどのように進化していくのか。既存の大手プラットフォームの動向に加え、新興サービスの成長が業界全体に与える影響も無視できません。
とはいえ、消費者にとってはより良い状況になる未来が見えています。消費者は「どこで買うか」よりも「安くて信頼できる商品を手に入れられるか」を重視する傾向が強まっており、これに応えるアプリが次々と登場しています。
こうした変化に対応するため、既存のサービスも価格競争だけに頼るのではなく、品質保証やブランド価値の向上に力を注ぐ必要があります。そしてこの流れが加速すれば、各通販アプリはそれぞれの強みを活かし、さらなる成長が求められるでしょう。
今後、通販アプリ市場の競争は一層激しくなり、消費者にとってより利便性の高い市場へと発展していくと考えられます。引き続き、その動向を注視していきます。
(文・伊藤真二)