2025年1月、中国発の動画共有アプリ『TikTok』がアメリカでサービス停止になる*という話を受け、代替アプリとして『小紅書(シャオホンシュ/レッドノート)』がアメリカのアプリストアランキングで1位を獲得。その影響力を示しています。
*2025年1月21日、トランプ大統領によりサービス禁止を75日間猶予する大統領令が発布
本記事では、アメリカにおけるTikTok規制の背景とその影響、さらに『小紅書』での日本人クリエイターの活躍や今後の展望、訪日中国人に聞いた利用状況について詳しく解説します。
アメリカで『TikTok』が禁止に!? 代わりにユーザーが殺到している『小紅書』とは
『TikTok』を取り巻く最新の状況
『TikTok』が使えなくなることを恐れたアメリカ人が他のSNSへ流出。「#tiktok refugees(TikTok難民)」というハッシュタグが話題になっています。
アメリカでの『TikTok』の危うい立ち位置
アメリカでは現在、データの取り扱いに関する懸念や情報操作・偽情報の拡散防止といった観点から、『TikTok』の利用を規制する新法を施行予定でした。実際、2025年1月18日ごろから『TikTok』のサービスがアメリカ国内で一時停止に。しかし20日にはすぐに再開されました。
20日から再び大統領に就任したトランプ氏は、1期目の政権では安全保障上の理由から『TikTok』に反対する姿勢を取っていました。しかし、最近では容認へと態度を変え、好意的な発言が相次いでおり、今回もサービス禁止を猶予する大統領令を発布いますするなど、TikTokを取り巻く環境は混迷の様相を呈しています。
このような中、多くのアメリカ人インフルエンサーが続々と『TikTok』から『小紅書(rednote)』への移行を宣言しました。
アメリカだけじゃない! 他国の規制状況
ちなみに『TikTok』は、多くの国ですでに規制の対象となっています。
〈規制の一例》
アフガニスタン:全面禁止
イギリス:政府が支給するスマホでの使用が制限
インド:全面禁止
オーストラリア:16歳未満のSNS利用禁止
ネパール:全面禁止
このように、その他の国でも規制と解除が繰り返されています。
『TikToK』に代わるアプリとして『小紅書』が台頭
規制法案の影響で、多くのアメリカ人インフルエンサーが『TikTok』から『小紅書』へと移行しています。ここで、そもそも「『小紅書』とは何か?」という疑問を持つ方に向けて、その概要をお伝えします。
『小紅書』はこんなアプリ
『小紅書』は中国発のSNSアプリで、ユーザーがライフスタイルに関する投稿を共有し合うプラットフォームです。日本では「RED(レッド)」や「rednote(レッドノート)」とも呼ばれることがあります。
画面の仕様は『TikTok』や『Instagram』と似ていますが、違いはショッピング機能の充実度です。
『Amazon』と同様に、『小紅書』ではアプリ内から商品を検索して直接ショッピングが可能です。さらに、インフルエンサーがライブショッピングを行うこともあり、商品紹介だけでなく、配信者のトークが楽しめるなど、エンターテインメント性のある点が支持されています。
アメリカで1位に!
アメリカで『TikTok』が使えなくなる「避難先」として選ばれたのが、仕様の似ている『小紅書』。2位にはTikTok社の『Lemon8』がランクインするという少し皮肉な状況が起きています。
日本人インフルエンサーも進出
『小紅書』では中国語か英語が必要だったため、まだまだ日本人の参入は多くありません(※2025年1月20日、コメント欄にに自動翻訳ボタンが追加されました)。
しかし、商品販売やアフィリエイトにつなげるのが難しい『TikTok』や『Instagram』のようなプラットフォームと異なり、『小紅書』では自分のアカウントから直接商品の販売が可能となっています。このため、ビジネスチャンスが多く秘められていると言えるでしょう。
中国でも活躍している日本人インフルエンサーを紹介します。
人気モデル藤井リナさん
モデルの藤井リナさんは、「藤井莉娜」という中国名で活躍中。23万人のフォロワーがおり、子育てやファッションなどおしゃれなライフスタイルを発信しています。
中国では誰もが知っているMARiaさん
日本人の歌手MARia(メイリア)さんは「美依礼芽」という中国名で活躍。日本人2人組ユニット・GARNiDELiA(ガルニデリア)で活動しており、中国のオーディション番組「乗風(チェンフォン)2023」(MangoTV)で7900万票を獲得し、一夜にして有名になりました。中国語の歌も配信しており、60万人近いフォロワーがいます。
ライブショッピングに力を入れている福原愛さん
中国でファンの多い元・卓球選手の福原愛さんは『小紅書』でも人気です。流暢な中国語を活かしてライブ配信も頻繁に行っています。ライブショッピングのページも持っており、おすすめ品を販売しています。
感度の高いインフルエンサーはすでに数年前から『小紅書』に進出しています。日本でのアカウント名とは別に中国での漢字の活動名を使っている方が多いのが特徴です。
『小紅書』の日本への影響は?
現在、日本では『TikTok』を規制するという話は出ていません。しかし、日本のアプリストアのSNSランキングでもすでに4位にランクインするほど注目を集めています。
中国人観光客は日本で『小紅書』を使ってお店を探している
以前、訪日外国人観光客にどのようにお店を探しているのか聞いたところ、中国人の方から「小紅書」を使っているという声がありました。
『TikTok』同様、地名で検索するとレストランを紹介している動画が多数出てきます。しかも、結果から自動で店名がまとめられており、「何割の人が言及しているか」という視点で分類されているので、情報がランダムに表示される『TikTok』より検索に優れている印象を受けます。
優れた検索機能で他のSNSを圧倒
筆者も使ってみたところ、その検索性能の良さに感動しました。多数の方が言及しているお店がランキングでリストに出てくるため、雑多に結果の並ぶ『TikTok』や『Instagram』に比べて店情報にすぐに辿り着くことができました。
『小紅書』を使って飲食店を見つける観光客は中国人にとどまらず増えていくのではないでしょうか。現在は日本語に対応していないため、日本人にとってはハードルが高いアプリですが、インフルエンサーが流入していくと日本でも一気にバズるかもしれません。
中国語学習ブームが起きるかも?
また、『TikTok』から『小紅書』に流入したアメリカ人のあいだでは「中国語を学びたい」という需要が急増。世界で数億人が利用する語学学習アプリ『Duolingo』によると、中国語を学ぶ利用者が昨年よりも3.2倍も増えています。
いずれ日本語対応される可能性も大きいですが、その前に使いこなしたい日本のユーザーのあいだでも同様の流れが起きるかもしれませんね。
日本でもブームが来るかも!
現在、日本語への翻訳機能も追加されたので「中国語が分からない」というハードルも下がりました。
アメリカではわざわざ言語を学んでまで使いたいとされている『小紅書』。日本でも今後の主流になるかもしれない新たなプラットフォームとして、注目してみてはいかがでしょうか。(文・清 仁美)
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