株式会社メルカリは、2025年1月28日よりNFT※1の取引が可能なマーケットプレイス『メルカリNFT』の提供を開始しました。これにより、『メルカリ』を通じて海外大手NFTマーケットプレイス『OpenSea』で取り扱われている人気NFTの購入・出品※2が可能に。従来のフリマアプリとしてのモノの売買だけでなく、デジタルアイテムの取引にも対応できるようになりました。
この記事では、『メルカリNFT』の特徴を深掘りに加え、『メルカリNFT』連携を開始した海外大手NFTマーケットプレイス『OpenSea』との違いを実際のユーザー目線で比較しながら解説します。
メルカリ、NFTマーケットプレイス『メルカリNFT』の提供を開始 『OpenSea』との違いは?
※1:Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略。偽造・改ざんが困難なデジタルデータ。詳細はこちら
※2:『メルカリNFT』以外で購入したNFTを出品することはできません。詳細はこちら
『メルカリNFT』とは
『メルカリ』は、月間利用者数約2,300万人、累計出品数40億品※3を超えるフリマアプリ。そんな『メルカリ』が新たに提供を開始したのが、デジタルアイテムを取引できるマーケットプレイス『メルカリNFT』です。
NFTとは
NFT(非代替性トークン)とは、ブロックチェーン技術を活用して作られた、ほかのものと交換できない唯一の価値をもつデジタルデータのことです。例えば、100円玉はどの100円玉と交換しても同じ価値を持つため「代替性がある」と言えますが、NFTアートは同じ画像が複数あっても、それぞれが異なるIDをもっており、唯一無二のものとして扱われます。
『メルカリNFT』の最大の特徴は、暗号資産のウォレット開設や仮想通貨の購入が不要であること。『メルカリ』の売上金やメルペイ残高を使ってNFTを手軽に購入できるため、従来のNFT取引に比べてハードルが低く、メルカリユーザーが利用しやすい仕組みになっています。
現在はデジタルアートの取引に対応していますが、今後はトレーディングカード(トレカ)やエンタメ関連のNFTなど、さまざまなカテゴリーに拡大予定。国内外の事業者やIPホルダーと連携し、NFTコンテンツの発行および販売の拡充を進めていく計画があるそうです。
ここからは、『メルカリNFT』でできることを3つご紹介します。
※3:2024年時点のメルカリ公式発表によるデータ
NFTを購入する
『メルカリNFT』では、メルペイ残高やメルカードなど、『メルカリ』での通常の支払い方法をそのまま利用してNFTを購入できます。暗号資産のウォレット開設や仮想通貨の購入など専門的な知識や準備は必要ありません。
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STEP1
『メルカリNFT』でNFTを探して「購入手続きへ」をタップ
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STEP2
支払い方法を選択して「購入を確定する」
NFTをコレクションする
購入したNFTは、『メルカリNFT』の「持ち物・出品」画面で一覧表示され、簡単に管理できます。
NFTを出品する
『メルカリNFT』では、購入したNFTのみを出品できます。他のNFTマーケットプレイスで取得したNFTを出品することはできません。
売買が成立すると、販売利益は『メルカリ』の売上金として受け取ることができます。なお、出品時の手数料は無料ですが、取引が完了した際には、販売価格の10%が販売手数料として差し引かれます。
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STEP1
『メルカリNFT』で「持ち物・出品」タブをタップ
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STEP2
出品したいNFTを選択して販売価格を設定し、「出品する」をタップ
『メルカリ』からのアクセス方法
『メルカリNFT』はWebサービスとして提供されており、専用アプリはありません。『メルカリ』から以下の手順でアクセスしましょう。
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STEP1
メルカリアプリまたはWebブラウザから『メルカリ』にアクセス
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STEP2
「マイページ」>「メルカリNFT」をタップ
『メルカリNFT』で購入する前に知っておきたいこと
『メルカリNFT』は、一般的なNFTマーケットプレイスや従来の『メルカリ』とは異なる仕様があります。ここからは、初めて購入する前に押さえておきたいポイントを解説します。
ユーティリティの利用権利がない
『メルカリNFT』で購入したNFTは、メルカリの管理するウォレット内でのみ保有され、外部のウォレットに移すことはできません。そのため、以下のような用途で利用することはできない仕様になっています。
他のマーケットプレイスで再販ができない
『メルカリNFT』では、購入したNFTを他のプラットフォームへ移動して転売することができません。そのため、他のNFTマーケットプレイスで価格が高騰していても、売却できるのは『メルカリNFT』内に限られます。
メタバースなどの外部サービスで利用できない
NFTは本来、デジタルアートやアバター、ゲームアイテムなど、さまざまなサービスで活用できることが魅力のひとつですが、『メルカリNFT』で購入したNFTはメルカリ内での保有に限定されるため、メタバース空間やSNSでアバターやアイコンとして設定するといった、外部プラットフォームでの利用ができません。
購入にかかる費用が変更になることがある
NFTはデジタルデータのため、通常は送料が発生しません。また、商品の詳細画面には「商品価格」「ガス代(ブロックチェーンの取引手数料)」「消費税」「販売手数料」を含む総額が記載されており、基本的に追加料金はかかりません。
ただし、現物の商品が付随するNFTを償還(引き換え)する場合は、別途送料が発生します。2025年1月現在、『メルカリNFT』ではデジタルアートのみが取引対象ですが、今後、現物の取引が開始された際は注意しましょう。
購入手続き中のキャンセルができない
『メルカリNFT』では、購入手続き中や購入完了後のキャンセルや返金は一切できません。NFTの取引には高額な商品も含まれるため、購入前に金額や商品の詳細を十分に確認しましょう。
海外大手NFTマーケットプレイス『OpenSea』との違い
『メルカリNFT』は、『OpenSea』で取り扱われている人気プロジェクトのNFTを購入・出品できるマーケットプレイスです。しかし、ユーティリティの利用権利などを考えると、「OpenSeaを直接利用したほうがいいのでは?」と考える方もいるかもしれません。ここでは、『メルカリNFT』と『OpenSea』の違いを解説します。
他のウォレットに移転できない
『メルカリNFT』で購入したNFTは、他のウォレットに移転できません。
一方、『OpenSea』では、購入したNFTを自分のウォレットで管理でき、自由に他のウォレットに移動できます。他のNFTマーケットプレイスでの再販ブロックチェーンゲーム・メタバース空間など、外部サービスでの利用をするなら、『OpenSea』のほうが適していると言えるでしょう。
購入できるのは『OpenSea』の一部の人気プロジェクトのみ
『メルカリNFT』で購入できるのは、『OpenSea』で販売されている一部の人気プロジェクトに限られます。そのため、『OpenSea』に出品されていても、『メルカリNFT』では購入できないNFTも多く存在します。
また、『メルカリNFT』には価格・出品時間・アーティスト・ジャンルなどの詳細な検索機能がなく、『OpenSea』で興味を持ったプロジェクトを購入したくても、手作業でスクロールしながら探すしかありません。特定のNFTを見つけたい場合や、価格帯を絞って購入したい場合には、不便に感じるでしょう。
日本円での決済に対応している
『OpenSea』では、NFTの購入時に「MoonPay」経由で暗号資産を購入する必要があり、日本円で直接決済できません。そのため、仮想通貨を使った取引に慣れていないユーザーには、購入のハードルが高く感じられるでしょう。
一方、『メルカリNFT』ではメルペイ残高やメルカードなど、『メルカリ』の支払い方法をそのまま利用できます。
メルカリNFTで利用できる支払い方法
- メルカリポイント
- メルペイ残高
- メルペイのスマート払い(翌月払いのみ)
- メルカード(翌月払いのみ)
日本円でNFTを購入できる点は、メルカリユーザーにとってメリットと言えるでしょう。
『メルカリNFT』の課題と今後の展望
NFTは、好きなアートをコレクションしたり、メタバースやデジタルギャラリーで展示したり、アバターやSNSのアイコンとして利用する など、さまざまな楽しみ方があります。一方で、NFTを売買し、差額で利益を得る投資的な使い方が主流となっているのも事実です。
しかし、『メルカリNFT』では、新規のNFTを出品することができず、購入したNFTを他のウォレットに移すこともできません。そのため、NFTを資産として自由に運用したい人にとっては、取引の自由度が低く、使い勝手の悪さを感じる場面があるでしょう。
現在、メルカリはさまざまなサービス拡充を進めていますが、『メルカリNFT』に関しては、SNS上でも規約内容や使い勝手に関する指摘が多く見られます。今後、こうしたユーザーの声を受け、さらなる改善が進むことが期待されます。
(文・かがわまなみ)
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