マッチングアプリの市場は、ここ数年で大きな変化を遂げてきました。
2025年の現在、マッチングアプリを取り巻く環境はますます複雑になっています。詐欺被害の増加や「マッチングアプリ疲れ」による恋愛離れといった新たな課題を耳にした人も少なくはないはず。

アプリ専門メディア「アプリブ」において、マッチングアプリは注目のアプリカテゴリーです。本記事では、そんなマッチングアプリ市場の現状と今後の展望について語っていきます。

※18歳未満の方はマッチングアプリを利用できません。
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ここ数年のマッチングアプリの変貌

マッチングアプリの文化は、アメリカの『マッチ・ドットコム』から始まり、2010年代に日本で広がっていきました。
特にコロナ禍を契機に急速に普及し、外出自粛やリモート文化の定着により、出会いの場がオフラインからマッチングアプリへと大きくシフトしたことは記憶に新しいでしょう。

現在、マッチングアプリは出会いの主流となっていますが、利用者が増えたことで出会いの可能性が広がったかというと、必ずしもそうではない状況となってしまいました。

コロナ禍が生んだアプリ内格差

コロナ禍を経て、マッチングアプリは「スペック勝負」の世界へと変わりました。
かつては『オフラインでの出会いが難しい人にもチャンスを提供する場』でしたが、外での出会いが制限されたことで、多くの人がマッチングアプリを利用するようになり、その結果、見た目が良い、年収が高いといった人に「いいね」が集中し、オンラインでも「モテる人」と「モテない人」の格差が生まれたのです。

コロナが落ち着き、出会いの場はオフラインへ戻りつつあります。しかし、マッチング格差は依然として続いており、「モテる人」が有利な構造は変わっていません。
この課題は、マッチングアプリ市場全体にとって大きな問題となっています。

動き出す開発企業。マッチングは能動的から受動的へ

「モテる人」と「モテない人」の二極化が進む状況を受け、マッチングアプリ各社も課題を認識しています。多くの人に出会いの場を提供したいという思いや、利用者の減少が収益に直結するという事業課題のもと、対策を講じ始めました。

その一つが、表面的なスペックではなく、AIによる内面の価値観で相性の良い会員をおすすめする機能です。現在、各社がこのAIマッチングを重視し、単なるスペック競争を避ける動きを強めています。
この試みが成功するかどうかは未知数ですが、マッチング格差の是正につながることが期待されます。

マッチングアプリが変えた恋愛のカタチ

マッチングアプリの普及は、恋愛のあり方にも大きな変化をもたらしました。特に若い世代ではその影響が顕著です。

近場の恋愛のリスク

かつては、学生が同級生と恋愛するのが一般的でした。しかし、今の若者は「学校の人とはあまり恋愛したくない」と考える傾向が強くなっています。その理由の一つが、コミュニティを壊すリスクへの警戒心です。

友人関係の中で恋愛が生まれ、関係が破綻すると、周囲との関係もギクシャクし、元の状態に戻すのが難しくなります。「あの二人が付き合わなければ、もっと気楽だったのに」と感じたことがある人もいるのではないでしょうか。
さらに、若者はオンラインで常につながっているため、恋愛が広まるスピードも速くなりました。誰と付き合っていたかが一瞬で知れ渡り、人間関係に余計なプレッシャーがかかることを避けたいと考える人も少なくありません。

このような背景から、マッチングアプリは「リスクの少ない恋愛手段」として受け入れられました。大人世代は「昔は恋は盲目で、周囲を気にせず恋愛していた」と言うかもしれません。しかし、当時は近場での恋愛を避ける手段がなかっただけなのです。

今の若者にとって、友達関係の延長で恋愛することは、コミュニティの崩壊につながるリスクがあるため、慎重にならざるを得ません。

マッチングアプリ疲れからの恋愛離れ

「マッチングアプリ疲れ」という言葉が少し前から聞こえるようになりました。身近な恋愛が手段から消え、マッチングアプリで恋愛をしなければならないのに、疲れてしまったというのです。

その主な原因は、マッチングアプリならではの仕組みにあります。
例えば、長期間メッセージをやり取りし、ようやくデートにこぎつけたとしても、相手は他の人と並行してやり取りしており、その結果「他の人と付き合うことになったので、ごめんなさい」と突然関係が断たれることもマッチングアプリでは珍しくありません。
こうした経験を繰り返すうちに、精神的な負担が蓄積し、「もう面倒だ」と感じてしまう人が増えています。

さらに、「もっといい人がいるかもしれない」と探し続けてしまう 「青い鳥症候群」 も一因です。選択肢が多すぎることで逆に満足できず、恋愛そのものを楽しめなくなってしまうのです。

課題のあるマッチングアプリ市場、現在とそして今後は

マッチングアプリのカオスマップ

現在のマッチングアプリ市場をジャンル別に分類すると、上記のようなカオスマップを作ることができました。
この市場は、毎年かなりの数のアプリが登場しており、このマップも来年にはまったく違うものになりそうです。アプリブでもこの半年で登場したアプリをまとめています。

2024年後半~2025年に登場した注目マッチングアプリ5選

特化型の増加も目立った成長を見せてるのはマリッシュのみ

マッチングアプリ市場では、『Pairs(ペアーズ)』『with(ウィズ)』『タップル』の3強が依然として優勢です。
ユーザー数が多いほど有利な市場構造のため、新規アプリがシェアを拡大するのは容易ではありません。

そこで、特定のニーズに応える特化型マッチングアプリが増加しています。しかし、『ペアーズ』や『with』にも趣味や価値観で相手を絞る機能があるため、強力なコミュニティを築くか、大手が対応しきれない市場を狙わなければ成功は難しく、多くの特化型アプリは一定のシェアにとどまっています。

そんな中、離婚歴のある人に特化した『マリッシュ』は、大手との差別化に成功し、シェアを拡大。特化型アプリの中で唯一、目立った成長を遂げています。

頭角を現したミドル・シニア向けアプリ

そして、新たに注目されているのが、ミドル・シニア層向けのマッチングアプリです。

この層の市場規模は決して大きくありませんが、確実なニーズがあり、それに応えるアプリが不足していました。これまでミドル・シニア層も主要アプリを利用していましたが、若いユーザーが中心のため、50代・60代の利用者は馴染みにくく、マッチングもしづらかったのです。
実際、過去の調査では、20代のデート成功率が67%だったのに対し、40~60代は49%にとどまっています。
しかし、ここ最近のミドル・シニア向けアプリの登場により、この層の利用者は増加傾向にあります。

注目は無料で本気の「Koigram」

筆者の注目は株式会社タップルがリリースした「無料でも本気の恋はできる」をコンセプトにしたマッチングアプリ「Koigram(コイグラム)」です。

男性が無料で出会えるアプリといえば「Tinder」が有名でしたが、遊び目的のユーザーが多く、安全性に課題がありました。一方、コイグラムは「真面目な恋愛」をテーマにし、恋愛診断を軸としたマッチング機能を導入。徐々にユーザー数が増えており、2025年には大きく成長する可能性があります。

マッチングアプリの危険性ーーこのまま使い続けても大丈夫なのか

マッチングアプリの危険性はどうなのか

マッチングアプリの市場を語るにおいて、避けられないのが、危険性の話でしょう。2025年になってからもロマンス詐欺の報道を目にします。

今が危険というわけではない

確かに安全で大丈夫と言えるかというと、それは無責任だと思います。ただ、筆者は『今が特に危険』だということに違和感を持っています。

かつて、アプリの出会いは『出会い系アプリ』とされていた頃は、現在よりもはるかにリスクが高い状況でした。詐欺被害や金銭目的の利用が多く、運営側の対策も不十分だったため、今より危険だったと言えます。
ただし、当時は利用者が限られていたため、大きな社会問題にはなっていませんでした。一方で、現在は利用者が増えたことで、リスクがより顕在化していると考えられます。

筆者自身はリスクの高い時期からアプリを利用していますが、危険な目に遭ったことはありません。結局のところ、使い方や危機意識によってリスクは回避できるのです。

ユーザー側のリテラシー向上が鍵

もちろん、安全性を重視したアプリも増えており、各社は不審なユーザーの監視を強化し、問題のあるアカウントを即時凍結するなどの対策を講じています。

それでも、悪意を持ったユーザーが紛れ込む可能性はゼロではありません。
マッチングアプリを安全に利用するには、運営側の対策だけでなく、ユーザー自身のリテラシー向上も不可欠です。
たとえ身分証明書を提出していても、既婚者が独身と偽るケースや、悪意を持って接近する人がいないとは限りません。そのため、個人情報を安易に教えない、怪しい言動には慎重になる、最初のデートは昼間のランチにするなど、自衛策を意識することが重要です。

犯罪リスクをゼロにするのは難しいですが、利用者の意識が変われば、被害を減らすことは可能です。
アプリブでは、安全に利用するための情報も発信しています。利用前にぜひ確認してください。

【実態調査】マッチングアプリで危険に遭う確率は?対処法も解説

まだまだ伸びしろだらけのマッチングアプリ

ここまで、マッチングアプリ市場の現状と課題を見てきました。恋愛という人生の大きなイベントに変革をもたらしたマッチングアプリ。課題は多いものの、過去の出会いの形に戻るべきかといえば、そうではありません。まだまだ大きな可能性を秘めています。

恋愛離れが叫ばれていますが、決して恋愛への関心が薄れたわけではありません。これからも運営側が課題を改善し、利用者も新しい環境に適応していくことで、恋愛市場はさらに発展していくに違いありません。

(文・伊藤真二)