SNSは、ひとりの人間のつながりが記録された大切な場です。没後にアカウントが放置されたままだと、生前と変わらずフォロワーから誕生日や記念日を祝うメッセージが届き、遺された家族や知人が胸を痛めることもあるでしょう。
そうならないためにも、没後にSNSアカウントを削除するのか、それとも追悼の場として残すのか、その選択を生前のうちにしっかり考え、意向を明確にしておくことが大切です。
この記事では、主要SNSごとの設定方法や生前にできる準備について解説します。大切な方を亡くされた方も、将来に備えて終活を進めている方も、ぜひお役立てください。
今話題のSNSアプリはどれ? おすすめアプリの一覧はこちら
故人のSNSはどうしたらいい? アカウント削除や遺言の投稿、相続などデジタル終活の方法を解説
没後、SNSを放置するとどうなるの?
生前のうちにインターネット上のデータを整理し、家族や知人が困らないように準備することを「デジタル終活」といいます。SNSには、生前の思い出や交流を残す大切な場になるだけでなく、故人のプライバシーや秘密が保存されている可能性もあり、その取り扱いには注意が必要です。
中には、「自分が死んだら、SNSアカウントは放置で問題ない」と考えている方もいるでしょう。しかし、SNSアカウントを放置することで、遺された家族や知人、仕事の関係者に迷惑をかけてしまう場合があります。ここからは、SNSアカウントを放置することで引き起こされる具体的な問題を確認していきましょう。
家族や知人への精神的負担
故人のSNSアカウントが残ったままになっていると、遺された方に精神的な負担をかけることがあります。
代表的な例は、誕生日の通知メッセージです。『Facebook』や『Instagram』、『LINE』などには、つながりのあるユーザーに誕生日を通知する機能があり、故人の死を知る方は毎年つらい通知を受け取ることになります。また、故人の状況を知らない方からのお祝いメッセージは、家族や知人の悲しみを和らげるどころか、かえって心の傷を深めることになるでしょう。
乗っ取られる可能性
放置されたSNSアカウントは、悪意のある第三者に狙われやすくなります。スパムや詐欺行為に利用される可能性が高く、場合によっては故人になりすました投稿が行われることも。また、SNSアカウントに保存されていた個人情報が漏洩すれば、故人の名誉を著しく傷つけるだけでなく、つながっている知人にも被害が及ぶ恐れがあります。
さらに、乗っ取られたSNSアカウントから過去の投稿が削除・改ざんされてしまうと、家族や知人が故人との思い出を振り返る機会が失われるだけでなく、精神的なショックを与える可能性も考えられます。
顧客や取引先などビジネス面での影響
故人が仕事用のSNSアカウントを持っていた場合、放置することで取引先に迷惑をかける可能性があります。問い合わせが届いても応答がない状態が続けば、「連絡を無視されている」と誤解され、故人の評価や社会的な信頼が損なわれることにもなりかねません。
また、故人が業務を受注している最中であれば、進行中のプロジェクトが停滞することで取引先に損害を与え、損害賠償を請求される可能性もあります。ビジネスで築き上げてきた信頼や評価を守るためにも、没後のSNSアカウントは適切に管理しましょう。
【遺族向け】主要SNSはアカウントの削除や相続、追悼アカウント設定はできる? 設定の手順も解説
主要SNSが提供している没後のアカウントサービス一覧
SNS | アカウント削除 | 相続 (権限譲渡) |
追悼アカウント* |
---|---|---|---|
X (旧:Twitter) |
◯ | ✕ | ✕ |
◯ | ✕ | ◯ | |
◯ | ✕ | ◯ | |
LINE |
✕ | ✕ | ✕ |
TikTok |
◯ | ✕ | ✕ |
YouTube (Googleアカウント) |
◯ | ◯ | ✕ |
故人のSNSアカウントを没後にどう扱うかは、遺された家族にとって大きな課題です。ここでは、主要SNSが遺族向けに提供している没後のアカウントサービスと、その設定手順を解説していきます。
[生前にできる、SNSアカウントの終活が知りたい方はこちら]()
X(旧:Twitter)
『X(旧:Twitter)』では、没後に権限のある遺産管理人や故人の家族からの申請に基づき、SNSアカウントを削除できるほか、長期間アクティブではないアカウントは自動的に削除される仕組みが導入されています。
なお、故人からログイン情報を共有された第三者が投稿することを明確に禁止する記述は見当たらないため、遺言などを預かり、内容の投稿を頼まれていた場合などに、故人の意向を尊重する形で投稿を行うことは規約違反にはならないと解釈できます。
SNSアカウントの削除手順はこちら。
-
STEP1
以下の公式フォームから削除依頼を送信
-
STEP2
手順が記載されたメールが届くので、内容に従い以下の書類を提出
【必要な書類】
●故人の基本情報
●リクエストを送信された方の身分証明書のコピー
●故人の死亡証明書のコピー -
STEP3
提出書類が受理され次第、SNSアカウントが削除される
『Instagram』では、亡くなった方の近親者であれば、追悼アカウントへの変更やアカウントの削除をリクエストできます。
なお、故人からログイン情報を共有されている場合であっても、第三者がSNSアカウントにログインして投稿する行為は『Instagram』のポリシーに違反します。また、故人との関係に関わらずログイン情報を家族や知人に公開することはありません。遺言などを投稿したい場合は、他のSNSを利用するようにしましょう。
追悼アカウント設定・SNSアカウントの削除手順はこちら。
-
STEP1
追悼アカウント申請または削除の公式フォームに記入
追悼アカウント依頼フォームこちら
【必要な書類】
●故人の死亡証明書のコピー
削除依頼フォームはこちら
【必要な書類】
以下のいずれか。
●故人の出生証明書のコピー
●故人の死亡証明書のコピー
●故人またはその財産の合法的代理人であることを示す法的文書 -
STEP2
提出書類が受理され次第、SNSアカウントが追悼アカウントになるか削除される
追悼アカウントになるとアカウントの所有者の名前の横に「追悼」と表示されます。
『Facebook』では、故人のアカウントを追悼アカウントに変更したり、アカウント削除を申請したりできます。ただし、これらの手続きは故人が生前に設定を行っているか、第三者が正式な委任を受けていることを証明する書類の提出が必要です。
なお、故人からログイン情報を共有されている場合であっても、第三者がSNSアカウントにログインして投稿する行為は『Facebook』のポリシーに違反します。また、故人との関係に関わらずログイン情報を家族や知人に公開することはありません。遺言などを投稿する場合は、追悼アカウントの管理者として行いましょう。
追悼アカウント設定・SNSアカウントの削除手順はこちら。
-
STEP1
故人が生前に没後のアカウントの設定を行う
『Facebook』のTOP画面にあるプロフィール写真をタップし、以下の手順で設定できます。
①[設定とプライバシー]を選択し、[設定]をタップ
②[アカウントセンター]から、[個人の情報]をタップ
③[アカウントの所有権とコントロール]をタップ
④[追悼アカウント]を選んで、該当のアカウントをタップ
⑤[アカウントを追悼アカウントにする]もしくは[死後に削除]をタップ後、[次へ]をタップ
⑥【追悼アカウントにする場合】管理人にする友だちの名前を選択
⑦【追悼アカウントにする場合】追悼アカウント管理人に付与する権限を選択
⑧[保存]をタップ
ただし、追悼アカウントの管理人には20歳以上で故人の家族や友達である必要があります。 -
STEP2
リクエストフォームに記入
追悼アカウントのリクエストフォームこちら
削除依頼フォームはこちら
【家族や知人としてつながりがある場合】
●故人の死亡証明書のコピー
【家族や知人としてつながりはないが、正式な委任者である場合】
事前に以下の書類を用意して、申請を行いましょう。運営からメールが届いたら、以下の書類を提出して手続きができます。
①適切な証明書類(以下のいずれか)
委任状
●出生証明書のコピー(故人が18歳未満の場合)
●遺言状または遺書のコピー
●遺産に関する書類のコピー
②死亡を証明する書類(以下のいずれか1通)
●死亡記事
●葬儀のしおり -
STEP3
提出書類が受理され次第、SNSアカウントが追悼アカウントか削除アカウントになる
追悼アカウントになるとアカウントの所有者の名前の横に「追悼」と表示されます。
また、削除アカウントになると、『Facebook』上でアカウントを閲覧できなくなります。
(参考:Facebookヘルプセンター)
LINE
2025年1月現在、『LINE』では、故人のSNSアカウントに関する手続きや特別な機能は提供されていません。また、どのような事情があっても、ログイン情報が家族や知人に公開されることはなく、故人のSNSアカウントは使用していた状態のまま残ります。
なお、故人からログイン情報を共有されている場合、故人のSNSアカウントを操作することは『LINE』のポリシーに違反しません。そのため、遺言などを預かり、内容の投稿を頼まれていた場合などに、故人の意向に沿う形で投稿をしても問題ありません。
LINEアプリをアンインストールしたらどうなる? アカウント削除との違い
TikTok
『TikTok』では、没後に家族または法定代理人からの申請に基づき、SNSアカウントを削除できます。長期間アクティブではないアカウントを自動的に削除する仕組みがないため、削除申請をしない場合は故人のSNSアカウントは使用していた状態のまま残ります。
なお、故人からログイン情報を共有された第三者が投稿することを明確に禁止する記述は見当たらないため、遺言などを預かり、内容の投稿を頼まれていた場合などに、故人の意向を尊重する形で投稿を行うことは規約違反にはならないと解釈できます。
SNSアカウントの削除手順はこちら。
-
STEP1
お問い合わせフォームに必要事項を入力する
『TikTok』のお問い合わせフォームはこちら
フォームから「アカウントに関する一般的なお問い合わせ」を選択し、必要事項を入力します。
この際、死亡証明書を添付すると手続きがスムーズです。 -
STEP2
提出書類が受理され次第、SNSアカウントが削除される
(参考:TikTokヘルプセンター)
YouTube(Googleアカウント)
Googleでは、家族や法定代理人・遺言執行人からの申請に基づき、Googleアカウントを削除したり、広告収益やデータなどの財産を相続したりすることができます。また、組織の管理者がGoogleアカウントを発行している場合、その組織の管理者がアカウントの削除やデータ取得の権限を有します。
なお、故人からログイン情報を共有されている場合であっても、第三者がアカウントにログインする行為はGoogleのポリシーに違反します。没後に故人の『YouTube』アカウントで遺言などを公開する場合、事前にチャンネルの運営メンバーとして追加してもらうと良いでしょう。
アカウントの削除やデータ取得の手順はこちら。
-
STEP1
故人のアカウントに関するリクエストを送信する
申請フォームはこちら
【必要な書類】
●政府機関発行の身分証明書または運転免許証のコピー
●死亡証明書のコピー -
STEP2
提出書類が受理され次第、アカウントが削除されるかデータが取得できるようになる
(参考:Googleアカウントヘルプ)
【本人向け】主要SNSで自分が死んだ後に備えてアカウント設定できる?
SNSには、生前に没後の設定ができるものがあります。以下は、主要SNSで生前に設定できるサービスの一覧です。
SNS | 生前に設定できるサービス |
---|---|
X (旧:Twitter) |
なし |
なし | |
●追悼アカウントと削除アカウントの指定 ●追悼アカウントの管理人の指定 | |
LINE |
なし |
TikTok |
なし |
YouTube (Googleアカウント) |
●アカウント無効化管理ツール ※一定期間ログインがない場合に、自動的にアカウントを削除するように設定できます ●運営メンバーに追加 |
ご覧の通り、生前に没後の設定ができるSNSはごくわずか。また、事前に設定していたとしても死後に家族や知人の手続きが必要になるケースもあるため、SNS上の設定だけでは万全とは言えません。
ここからは、没後に家族や知人が困らないようにするための具体的な準備方法について解説します。
死後に自動投稿されるシステムを組む
SNS上で没後に自動投稿を行うシステムを構築する方法は、過去に非公式で提供されていました。例えば『X(旧:Twitter)』では、かつて「desubot」というサービスがあり、一定期間投稿がない場合に遺言メッセージを自動投稿する仕組みが利用できました(現在はサービス終了)。
APIを提供しているSNSでは、自分の投稿内容を取得し、一定期間投稿がなければ用意したメッセージを投稿する仕組みを構築できます。しかし、この方法を実現するにはプログラミングの知識が必要になるほか、APIの仕様が変更になれば正しく機能しなくなる可能性があるため、確実とは言えません。
家族にSNSのIDやパスワードを伝える
没後にSNSアカウントをどうしたいかを家族や知人に伝えておけば、故人の意志に沿って対応しやすくなります。ただし、削除すると故人を偲ぶ場所が失われてしまうので、自分の意志を通すのではなく、周囲の希望も聞いたうえで判断しましょう。
没後のSNSアカウントの扱いを伝える方法には、以下の2つがあります。
終活アプリに記録する
終活アプリを利用すれば、SNSのログイン情報や没後の処理方法を簡単に記録できます。死亡証明書を用意して運営に問い合わせる手間を省き、直接アカウントにログインして管理できるため、遺族の負担を軽減する手段として有効です。
アプリで終活するなら、三菱UFJ信託銀行が運営する『わが家ノート』
終活ノート(エンディングノート)をつける
終活ノートを活用することで、ログイン情報やアカウントの取り扱いに関する希望を明確に残せます。特に、紙媒体で記録しておくと、デジタル環境に不慣れな家族でも確認しやすくなります。
没後にSNSをどうするか、家族や知人には事前に伝えておこう
SNSアカウントは、故人の生前の思い出が詰まった場所です。遺された家族や知人のために残すのか、故人のプライバシー保護のために削除するのかを、生前にしっかり考え、その意思を家族や知人と話し合う時間を持つようにしましょう。
また、もしものときに家族や知人が困らないよう、終活ノートや終活アプリをつけておくのもおすすめです。SNSのログイン情報や、没後にアカウントをどうしたいのかなどを記録しておけば、遺された家族や知人の負担を削減できます。
現代において、SNSアカウントはひとりの人間が生きた証であり、デジタル終活とは、自分の生きた証を未来に託すのかを決める行為とも言えます。もしかしたら、未来であなたの投稿が誰かの心を動かすこともあるかもしれません。あなたの大切な思い出をどう扱うか、今一度考えてみませんか?
(文・かがわまなみ)
こちらの記事もおすすめ