ユーザーがアプリと出合う入り口が、ストア検索からChatGPTなどのAIプラットフォーム上の"推薦"へと静かに移り始めています。2026年8月20日、「AI Visibility ローンチパーティー ― AI検索時代のアプリマーケティング戦略」が、AppTweak、株式会社フォーエム、AppsFlyerの3社共催で開催されました。
冒頭でAppTweakの廣瀬氏は、「これまでアプリとユーザーの接点は、ウェブ検索やアプリストア上での検索が中心でした。しかし現在は、ChatGPTなどのAIチャットを通じて、自分の目的に合った最適なアプリを探す動きが確実に広がっています」と切り出し、この日AppTweakが新機能「AI Visibility」を発表すること、そしてフォーエムとAppsFlyerがそれぞれの実績にもとづく最新の知見を共有することを予告しました。
その言葉の通り、ASO(アプリストア最適化)だけではアプリの“見つかりやすさ”を担保できなくなりつつあるという問題意識のもと、AI検索時代における具体的な打ち手として、LLMO(大規模言語モデル最適化)対策や計測設計の考え方など、実践的な知見が3社それぞれの立場から語られました。
本記事では、当日のセッションの模様をレポートでお届けします。
【イベントレポート】AppTweak×フォーエム×AppsFlyerが語る、AI検索時代のアプリマーケティング戦略(前編)
AI時代のLLMO対策とは――アプリとウェブ、両面からのアプローチ
この日最初に行われたのは、AppTweakの廣瀬氏とフォーエムの田崎氏によるダブルセッション。ASOの先にある「LLMO(大規模言語モデル最適化)」とは何か、そして企業が明日から着手できる具体策について、各社の持つ最新データと知見を元に、アプリとウェブの両面から語られました。
AppTweak廣瀬氏が語る、AIに"推薦される"ための打ち手と新機能「AI Visibility」
登壇者プロフィール
ASOツールを提供するAppTweakの廣瀬氏はまず、なぜ今AI時代への対応が必要なのかを、複数のデータで裏付けました。
国内調査では、購買検討においてAIを活用して情報収集する割合はすでに35%に達しています。世界に目を向ければ、検索行動のうちAIアシスタントが占める割合は56%まで増加。AI検索のトラフィック成長率は前年比500%以上、ChatGPT経由のコンバージョン率は通常のウェブ検索よりも31%高いというデータも紹介されました。
こうしたデータが指し示すのは、「AIとの会話の中で、自社のアプリやブランドは選ばれる存在になっているのか」という、避けて通れない問いです。
その象徴的な例が、あるAI英会話学習アプリのケースです。ストアのランキングでは上位につけているものの、ChatGPTに「AIと会話しながら語学練習ができるおすすめのアプリは?」と尋ねると、回答にはそのアプリ名が挙がりませんでした。
アプリストア上の人気やダウンロード数の多さと、AIに推薦されるかどうかは、もはや「別のゲーム(仕組み)」になっている――これが廣瀬氏の指摘する実態です。こうした課題に対応するため、AppTweakはこの日、新機能「AI Visibility」のローンチを発表しました。
▲廣瀬 亨氏(AppTweak Japan合同会社 Head of Japan)
「AI Visibility」でできることは大きく3つ。①AI可視性をスコア化し現在地を把握する、②どのニーズ・プロンプトで自社アプリが推薦されているかを把握する、③AIが回答生成に使った引用元を特定する、という機能です。
デモではまず、管理画面上の主要指標として「AI可視性スコア」(推薦の頻度と言及順位を掛け合わせたスコア)と「センチメントスコア」(言及内容のポジティブ度)が紹介されました。
2つの同ジャンルアプリを比較した実例では、6月末時点でのスコアが7月中盤には逆転。わずか3週間から1ヵ月弱という短期間でAI可視性は大きく変動するといい、施策実施前後の推移を継続的に計測することの重要性が強調されました。
▲「AI Visibility」管理画面デモ(AppTweak登壇資料より)
続いて紹介されたのは、本機能の中心となる機能「インテントパフォーマンス」。ユーザーがChatGPTなどに質問する際の検索目的(インテント)ごとに、可視性・センチメント・言及ポジションを確認できる機能で、全カテゴリーを網羅する1,000件以上のインテントがあらかじめ定義されています。
例えば天気アプリなら、「その日・その週の計画を立てたい」というインテントと「警報アラートを受け取り安全を確保したい」というインテントでは、まったく異なる評価が出るといいます。
インテントごとに実際のプロンプトや競合との言及順位の差、AIの回答が引用した情報源まで確認でき、アプリについて聞かれた際に、ChatGPTがApp Storeを引用する確率は50%以上にのぼることもわかりました。
▲「AI Visibility」管理画面デモ(AppTweak登壇資料より)
こうした知見を踏まえ、廣瀬氏が提言したのは、自社でコントロール可能な3つの接点――①アプリストア、②自社ホームページ(オウンドメディア)、③外部メディアで訴求ポイントをそろえることです。
▲自社でコントロールできる3つの領域(AppTweak登壇資料より)
アプリストアでは、「何をするアプリか」「誰のためか」「どんな課題を解決するか」「どんなときに推薦されるべきか」をAIが読み取りやすいよう説明文に明記すること。あわせて、AIが要約・活用するユーザーレビューの質を高める工夫も有効だといいます。
▲AIが読み取れるアプリストアの説明文について(AppTweak登壇資料より)
自社メディアでは、複数アプリを持つ企業ほどアプリ別のFAQ・機能紹介ページの充実が効果的、そして外部メディアでは、アプリ専門メディア「アプリブ」のようにAI回答で引用される媒体への露出や、PR TIMESなどを通じたプレスリリース配信が施策として挙げられました。
AppTweakでは、これらの最新動向をまとめた「AI可視性対策プレイブック(日本語版)」が公開されています。
フォーエム田崎氏が説く、LLMOの本質「リアルタイム検索」最適化とKPI設計
登壇者プロフィール
10代より連続起業家として活動し、2022年にはSNS事業にて株式売却を経験。その後、大手飲料・教育出版メーカーにて新規事業開発やマーケティングのコンサルタントを歴任し、大手企業の事業支援に従事。
2024年2月よりAnyMindへ参画。現在はPublisherGrowth事業部・事業開発チームの事業責任者として、経営視点とコンサル実績を武器に、パートナー企業の事業成長と収益最大化を牽引。
続いて登壇したのは、メディア・アプリ運営者向けの広告収益化やユーザー獲得支援を軸に、LLMOのコンサルティングを展開する株式会社フォーエムの田崎氏。
まず、AIの回答生成プロセスを2つの軸で整理しました。ひとつは「事前学習」で、LLM開発時にどんな情報を学習させるかという領域です。OpenAIやGoogleなどプラットフォーム側に依存するため、コントロールは困難だといいます。
もうひとつが「回答生成時のリアルタイム検索(RAGなど)」で、ユーザーの質問意図をAIが解釈し、その場で情報を検索・抽出して回答を組み立てる部分にあたります。同社では、比較的アプローチしやすいこの領域にソリューションを提供していると説明します。
▲田崎 夢満氏(株式会社フォーエム Publisher Growth Senior Manager, Business Development)
では、具体的にどう施策を進めればいいのか。田崎氏がまず挙げたのが「課題設定」です。AIは同じプロンプトでも毎回異なる回答を返す場合があるため、同社のダッシュボードでは数千件のサンプルプロンプトを定常的に実行し、「自社の言及率が低い」「情報が誤って説明されている」といった課題を可視化していきます。
業界横断で確立したKPIはまだ存在せず、投資対効果が見えにくい領域だからこそ、商材や目的に応じてKPIを柔軟に設計することが重要だといいます。
例えば言及率を課題とする場合は、「シェア・オブ・ボイス(SOV)」を指標に据えます。金融・医療のようにユーザーの重大な意思決定に関わる領域(YMYL)では、個人ブログよりドメイン権威性(Domain Authority)の高いサイトが引用されやすいため、ドメイン自体を育てる施策が必要になるとのことです。
▲業種・フェーズによるKPI設定設計の違い(フォーエム登壇資料より)
また、LLMに選ばれやすい(引用されやすい)コンテンツの条件として、田崎氏は3つの要素を挙げました。
LLMに選ばれやすいコンテンツの条件
- 検証可能性(Verifiability):複数のソースを比較検証しながら回答を生成するAIの特性上、情報源間で内容が食い違うと回答自体を避ける傾向。古い情報の更新と、正しい情報への一本化がカギ。
- 具体性(Specificity):曖昧なニュアンスを読み取りにくいAIに向けて、競合との違いや自社の強みを明確に言語化することが必須。
- 権威性(Authority):WikipediaやReddit(UGC)など、信頼性やコミュニティの熱量があるドメインが引用元として好まれる傾向。自社の領域で影響力のあるドメインからの発信との組み合わせが効果的。
自社発信に加え、権威性の高い第三者メディアとの連携やプレスリリース配信を組み合わせることで、ブランドとしての評価や引用可能性が高まるといいます。
▲権威性と関連性を意識したコンテンツ展開(フォーエム登壇資料より)
フォーエムはKPI設計から外部メディア連携、コンテンツ設計までを一気通貫で支援できる体制を持ち、1,600以上のパートナーメディアとのネットワークを強みとしています。今年6月には、中国・広州にAIエージェントの開発と事業・プロダクトへの応用を推進する「AnyAI Lab」を新設したことも明かされ、感覚論ではなく事実・ロジックにもとづく支援を提供できる点を強調しました。
その実績を示す一例が、1年前から支援している不動産買取会社のケースです。ChatGPT・Geminiにおける言及数は、支援開始前の10〜15件程度から約1年で90件ほどまで増加。AI経由での具体的なコンバージョンや買取案件の発生という成果にもつながっているといいます。田崎氏は、それぞれの領域によって追うべきKPIは異なるとした上で、セッションを締めくくりました。
AppTweak Japan合同会社 Head of Japan 廣瀬 亨氏
楽天、Magnite、Unityを経て2024年4月にAppTweakへ参画。Head of Japanとして日本事業の立ち上げ・拡大を担う。広告・SaaS業界でのキャリアは10年以上。日英バイリンガルとして、グローバルSaaS企業の日本市場参入・拡大を支援することをライフワークとしている。