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  • 【レポート】アプリは「冷蔵庫を開ける感覚」で開かれる――リーバイスが明かす、顧客体験設計の現在地(MOBILE STARS Summer)

モバイルアプリは、今や生活に欠かせないインフラとなりました。膨大なアプリの中で、ユーザーに「毎日開いてもらう」存在であり続けるには何が必要なのでしょうか。

Adjust、Braze、Moloco、Moonplateが運営するモバイルアプリマーケターのためのコミュニティイベント「MOBILE STARS SUMMER 2026」が、2026年8月26日株式会社ヤプリのオフィス(東京・六本木)にて開催されました。

イベントには、世界的ブランドであるリーバイスとDuolingoの日本担当者が登壇し、それぞれのアプリマーケティングの舞台裏を語りました。

前編となる本記事では、コミュニティ「MOBILE STARS」の紹介と、リーバイスが実践する顧客体験設計についてお届けします。

「答えは星の数ほどある」――MOBILE STARSが目指すコミュニティの価値

開会にあたり、MOBILE STARS運営代表の大西正太氏が登壇し、コミュニティに込めた思いを語りました。大西氏は、自身もかつて、本イベントの前身であるコミュニティ「モバイルヒーロー」に参加者の1人として関わっていたことを明かします。

さまざまな企業の方々と出会い、仕事の知識を教えてもらったり、悩みを相談し合ったりする中で、「自分ひとりでは思いつかなかったような考え方や、所属する会社の中だけでは得られなかったような知識」を得て、幾度となく助けられてきたといいます。

そのモバイルヒーローがひとつの節目を迎えた際、「このすばらしい場所をなくしたくない」という思いから、大西氏がAdjust、Braze、Molocoとともにコミュニティを引き継いだ形が「MOBILE STARS」です。

大西正太氏

▲大西正太氏(MOBILE STARS運営代表)

「MOBILE STARSには、さまざまな企業や異なる立場で、日々プロジェクトや業務に向き合っている方々が参加されています。会社が違えば経験も異なりますし、抱えている課題や悩みもそれぞれ異なります。だからこそ、今日のこの場でしか聞けない話や、ここでしか出会えない方がいると考えています」

そう語る大西氏が、コミュニティを運営するうえで大切にしている言葉が「答えは星の数ほどある」というフレーズです。

「会社が違えば、最適な答えも異なります。立場や経験が違えば、見えている景色も違います。だからこそ、1人で答えを探そうとするのではなく、さまざまな方からそのヒントや答えを教えてもらったり、共有し合ったりすればいいと考えています」

最後に大西氏は、「ぜひ、本日は1人でも多くの方と会話を交わしてみてください。今日この場に参加したことで、皆さんが何か1つでも新しい答えにつながるきっかけを持ち帰っていただければ、非常にうれしく思います」と参加者に呼びかけ、セッションの幕が開きました。

リーバイスが目指すプレミアムな顧客体験――「LTV48倍差」を埋めるセグメント分析

最初のセッションには、リーバイ・ストラウス ジャパン株式会社の佐竹良介氏(Eコマース マネージャー)が登壇。

リアルとデジタルの融合を推進し、データ分析や定性調査から導き出した顧客セグメントの実例と、それに基づくコミュニケーション設計が語られるとともに、同社が目指す「プレミアムな顧客体験」の現在地と、その先の未来図が示されました。

登壇者プロフィール

リーバイ・ストラウスジャパン株式会社 Eコマース マネージャー 佐竹 良介氏

2016年に入社し、E-commerce部門で運営を担当。2018年に公式アプリの導入と運用に携わり、デジタルチャネルの基盤づくりに貢献。2021年12月にマネージャーへ就任、組織改編を機にOMO戦略を推進し、ECと店舗をつなぐ顧客体験の向上をリード。2024年9月にCRMプログラムリニューアル、2025年4月にECサイトリニューアルに参画。顧客データ活用やオンライン体験の改善を進め、オムニチャネルにおける顧客価値最大化を目指す。

Levi's リーバイス®公式アプリ

LEVI STRAUSS JAPAN KABUSHIKI KAISHA

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2018年、国内でもまだ珍しかった時期に踏み切ったアプリ導入

同社が公式アプリを導入したのは2018年。当時は国内でもアプリ導入の事例がまだ多くない時期でしたが、いち早く開発に踏み切ったといいます。

EC売上はこの10年間、成長を続けてきましたが、佐竹氏はその成長を牽引した要因のひとつとして、アプリの存在を挙げました。現在ではアプリは多くのお客様にご利用いただくチャネルに成長し、最もエンゲージメントが高く、売上貢献度の高い強力なチャネルになっているといいます。

リーバイスアプリ概要

CRM刷新で突きつけられた、リピート率の伸び悩みと顧客間の大きな購入額格差

同社において長年の課題だったのが、オフライン(実店舗)とオンライン(EC)で会員基盤が分断されていたことでした。これにより顧客体験も分断され、「パーソナライズされたアプローチが十分にできていなかった」といい、新プラットフォーム導入を機に、この会員基盤がついに統合されました。

会員統合前後の変化

▲会員統合前後の変化(リーバイ・ストラウスジャパン登壇資料より抜粋)

統合後にデータを分析した佐竹氏が向き合ったのは、厳しい現実でした。過去5年間、CRM施策を継続してきたにもかかわらず、全体のリピート率は長期間にわたって伸び悩み、改善の兆しが見えない状態が続いていたのです。

さらに、顧客のLTVを段階的に分ける分析を行うと、もっとも購入頻度・購入額の高いロイヤル層と、購入が一度きりで終わっている非アクティブ層との間には、看過できないほど大きな開きがあることが判明しました。

「新規獲得だけでなく、顧客をどう育成してロイヤル層に引き上げていくか。CRMのデータ活用が不可欠だと痛感しました」と佐竹氏は振り返ります。

属性ではなく購買行動で分ける「顧客グループ」

獲得は増えても顧客の育成が回らず生じていたこの格差を埋めるべく導入したのが、年齢や性別といった属性ではなく、「購入商品のカテゴリ」や「購入頻度(LTV)」など購買・行動データと顧客の声をもとに分類する独自の顧客グループ分けです。

同社では、オフラインとオンラインの顧客を共通のグループで捉え直し、一貫したパーソナライゼーションを設計しました。

顧客グループの設計イメージ

▲顧客グループの設計イメージ(リーバイ・ストラウスジャパン登壇資料より抜粋)

分析の過程で見えてきたのは、最上位のロイヤル層とそれ以外の層の間に明確な境界線があり、両者の間の移動はほとんど起きないという事実でした。

「ロイヤル層には彼ら専用の特別なコミュニケーションが必要であり、一般層に対しては、上のステージへ引き上げるための明確な育成ルートを設計しなければならないとわかったのです」と佐竹氏はいいます。

例えば、トレンド商品を中心に購入するボリューム層は、購入単価こそ高くないものの購買規模は大きいという特徴を持ちます。この層を、コレクションラインを購入するロイヤル層へと引き上げるための導線を、過去5年分のデータから可視化した移行パイプラインをもとに設計しているといいます。

なお、これらの顧客グループ分けは購入商品を軸に行われているため、購入履歴のない新規会員には、登録直後の簡単なアンケートで仮のグループを設定する仕組みも取り入れています。

佐竹良介氏

▲佐竹良介氏(リーバイ・ストラウスジャパン株式会社 Eコマース マネージャー)

アプリを起動することは「冷蔵庫を開ける感覚」――全配信からの脱却

セグメント設計と並行して実施した定性インタビューでは、印象的な顧客の声も得られました。アプリを起動する際にどんな気持ちなのかを尋ねたところ、あるロイヤル顧客は「冷蔵庫を開けるような感覚で見に行きたい」と答えたといいます。

「ブランド側から一方的にコミュニケーションを押し付けられるのではなく、お客様自身が興味のあるタイミングで情報を探しに行きたいという主体的な姿勢を持たれています」

この気づきを受け、これまで主軸だった全員一斉配信の運用を見直し、Eメール→LINE→アプリという順に、お客様の反応を見ながらチャネルを遷移させるシナリオ配信へとシフトしました。

アプリの役割

▲定性インタビューから導き出したアプリの役割(リーバイ・ストラウスジャパン登壇資料より)

スタッフのコーディネート画像のようなライトなコンテンツはライト層のセグメントに、リッチな動画コンテンツはロイヤル層に配信するなど、コンテンツの出し分けも進めています。

各チャネルの持つ役割

▲各チャネルの持つ役割(リーバイ・ストラウスジャパン登壇資料より)

実際、ヴィンテージ商品の購入者にインタビューしたところ、その多くが同じYouTube動画を視聴しているという共通点が見つかっており、熱量の高いファン層ほど、こうした動画コンテンツへの反応が高いこともわかってきたといいます。

アプリが最もダウンロードされる場所は、「試着室の鏡」

広告費に頼らないインストール促進策として、リーバイスにおいて最も効果を上げているのが、店舗の試着室の鏡に設置したQRコードです。競合アパレルブランドの店舗を歩き回って調査した結果たどり着いた、地道な打ち手だといいます。

また、直近はオフラインイベントにも注力しており、今後予定している大型のオフラインイベントに向けて、会場のQRコードからアプリの会員登録を促し、CRMを通じて来場者と継続的な関係を築く仕組みを実装中であることも明かされました。「その場限りの関係で終わらせない」ための取り組みは、今まさに進行しています。

オフラインを起点にした接点構築

▲オフラインを起点にした接点構築(リーバイ・ストラウスジャパン登壇資料より)

「冷蔵庫を開けるような感覚で見に行きたい」というお客様の言葉どおり、リーバイスが追求する「プレミアムな顧客体験」とは、ブランドが一方的に押し付けるものではなく、お客様自身が主体的に価値を見つけに来たくなる関係性です。

属性ではなく行動データで顧客を捉え直し、一人ひとりに合った育成ルートを設計する顧客グループによる分析は、その理想に向けた現在地であり、オフラインで生まれた熱量をオンラインでの関係構築へとつなぐ挑戦は、リーバイスにとって今もなお続く未来図といえるでしょう。

イベント概要「MOBILE STARS SUMMER 2026」

日時:2026年8月26日(水) 18:00-22:00

場所:株式会社ヤプリ 〒106-6241 東京都港区六本木3-2-1 住友不動産六本木グランドタワー41階

主催:Adjust、Braze、Moloco、Moonplate

MOBILE STARSは、アプリマーケティングに携わるマーケターが集うコミュニティです。本イベントのように、第一線で活躍する登壇者によるセッションと、参加者同士のネットワーキングを通じて、明日からの実務に活かせる学びと新しいつながりを得られる場を、定期的に開催しています。

次回イベントへの参加をご希望の方は、公式サイト内のコミュニティ参加申込ページよりお手続きください。

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