登山アプリ『YAMAP』を運営する株式会社ヤマップは、指で地図上をなぞることでルートを自由に描ける新機能「フリーハンド登山計画」を、2025年6月中旬よりアプリ版で提供予定と発表しました。これにより、従来のルートに縛られず、バリエーションルートや一般道を含む、より自由度の高い登山計画が可能になります。
従来の登山計画では登録された登山道を選ぶしかなく、思いどおりのルートを組めないという声も寄せられていたそうです。今回のアップデートは、そうした声に応える機能といえるでしょう。
本記事では、正式リリースに先がけて編集部が先行体験した内容をもとに、実際の使用感や気づいた注意点をレビュー形式で紹介します。加えて、無料ユーザー向けプランの変更点や、プレミアムキャンペーンなど、2025年の『YAMAP』に関する主な動きもあわせて解説します。
おすすめの登山アプリ一覧はこちら
【体験レビュー】登山アプリ『YAMAP』の新機能「フリーハンド登山計画」を先行体験! 2025年の動向やお得なキャンペーン情報も解説
YAMAPの新機能「フリーハンド登山計画」とは?
「フリーハンド登山計画」は、スマートフォンの地図上で歩きたいルートをなぞるだけで、誰でも簡単にルートを描ける機能です。
整備された登山道はもちろん、一般道や舗装路など、既存のルートデータに縛られず、あらゆる道をフリーハンドで計画できます。また、YAMAPユーザー全体の行動履歴を地図上に表示する「みんなの軌跡」と組み合わせれば、未登録のマイナールートやバリエーションルートを見つけて登山計画に組み込むことも簡単です。
ただし、『YAMAP』の地図に登録されていないルートの中にはスキルや経験を要する難易度の高い道が含まれていることもあるため、実際に利用する際は、安全性や自身のレベルを十分に考慮した上で判断するようにしましょう。
【編集部レビュー】「フリーハンド登山計画」を先行体験してみた!
今回アプリブ編集部では、正式リリースに先駆けて『YAMAP』から特別にテスト版アプリを提供いただき、「フリーハンド登山計画」を一足早く試す機会を得ました。
レビューを担当するのは、コロナ禍をきっかけに登山を始め、現在は月1~2回ペースで山を歩いているYAMAPユーザーのK。これまでにバリエーションルートや未整備の道もいくつか歩いてきた経験があり、今回のフリーハンド機能には以前から注目していたひとりです。
▲YAMAPユーザーのK
なお、テスト版は登山計画の保存ができない仕様だったため(製品版では保存可能)、フリーハンド機能で作成したルートを参考にGPXデータを別途作成し、スマートウォッチに表示。その上で、実際の登山行程は通常の『YAMAP』アプリで記録を行いました。
「フリーハンド登山計画」の使い方
登山計画の作成方法はこれまでと大きく変わりません。これまで『YAMAP』を使ったことがある方も改めておさらいしましょう。
- アプリを開いて「のぼる」をタップ
- 「作成」をタップ
- 登りたい山の名称を検索
- 「行程を編集」をタップ
- マップが表示されたらスタート地点を設定
- 画面上の「手動入力を開始」をタップ
- 指でルートを描く
フリーハンド登山計画の感想①「操作には慣れが必要。個人的にはタブレット推奨」
実際にフリーハンド登山計画を使ってみて最初に感じたのは、「思ったよりも細かく線を引くのが難しい」という点でした。指先でルートをなぞる操作は直感的ではあるものの、曲がりくねった山道や細い里道などをなぞる際には、指の太さや画面サイズの影響で線のブレが生じてしまうことも。
複雑な地形や細かい経路を描きたいときほど、思いどおりに線を引くのは難しく、ある程度の慣れが必要だと感じました。
▲実際にフリーハンドで登山計画を作成している様子。スマホの小さな画面ではルートに沿って描くのは難しい
なお、筆者は当初スマートフォンで作業していましたが、途中でタブレットに切り替えてからは操作性が大きく改善。画面が広くなることで指先のコントロール精度が上がり、目標のルートに沿ってより自然に線を描けるようになりました。タッチペンを使えるのであれば、さらにスムーズに作業できるでしょう。
フリーハンド登山計画の感想②「ルートは描ける。しかし、信頼できる精度かは別問題」
今回の登山では、フリーハンド登山計画で作成したルートの予想距離や累積標高と、スマートウォッチで実際に記録した行程とを比較してみました。その結果、想定よりも大きくズレたことが気がかりでした。
例えば、『YAMAP』のフリーハンド登山計画では「のぼり126m/くだり325m」と表示されたのに対し、スマートウォッチには「のぼり0m/くだり183m」と記録されていました。体感的にも「ほぼ下るだけの行程」だったため、スマートウォッチの計測のほうが実情に近い印象です。
このような差異が生じた原因としては、フリーハンドで描いた線の重なりや揺れをシステムが正確に反映して予測を出している可能性や、フリーハンドで線を引く際に意図せず等高線をまたいでしまったことで、登り扱いになってしまった可能性などが考えられます。
▲フリーハンドの線が道を飛び越えてしまっている例。距離や時間、累積標高を正確に出すには、丁寧に描く必要がありそう
登山計画時に「このルートは自分にとって無理がないか」「何時までに下山できそうか」といった判断を下すうえで、標高差や距離の精度は重要な指標です。そのため、累積標高差や所要時間から体力消費を予測したい登山者にとって、こうした誤差は見過ごせません。
この点を踏まえると、現時点では“自由にルートを描ける便利なツール”としてフリーハンド登山計画を活用しつつ、標高や距離のデータは額面通りには受け取らず、やや余裕を持って判断するほうが安心です。特に標高差が大きくなる長距離縦走や、時間に余裕がない日帰り登山では、別の手段と併用して補完するのが賢明かもしれません。
フリーハンド登山計画の感想③「これまであきらめていたルートも登録できるのは、やっぱり魅力」
今回の登山では、羽黒三田神社から奥多摩駅へと至る参道を使って下山しました。この道は『YAMAP』にも他の地図アプリにも掲載されておらず、通常の登山計画ではルートに組み込むことができない、いわゆるマイナールートです。
しかし、「みんなの軌跡」機能をオンにして地図を見ていると、その場所にくっきりと黄色いラインが記録されており、調べて見たところ一般の方でも通行可能とのこと。
▲『YAMAP』に登録された登山道は赤い線、YAMAPユーザーが通行した実績がある「みんなの軌跡」は黄色い線で表示される
このように、施設内を通る裏道、車道を一時的に挟む縦走ルート、街歩きからのハイキングルートなど、これまでの『YAMAP』では登録できなかった区間を、計画に自由に組み込めるのはやはり便利です。特に寺や神社などの観光地では、境内を抜けるルートが地図に表示されないケースも多く、そうした“非公式ながら実用的な道”を事前に描けるメリットは大きいと感じました。
もちろん、自由にルートを引けるからといって、すべての道が安全とは限りません。公式ルートにない道を使う場合は、立ち入りの可否や通行の安全性、自身の登山スキルに合った難易度かをよく確認した上で、慎重に計画を立てるようにしましょう。
フリーハンド登山計画はアプリ・PCで実装予定
「フリーハンド登山計画」は、2025年6月中旬にアプリ版から正式リリースされる予定です。
その後はPC版の対応も予定されており、まずは通常の登山計画を作成する機能がリリースされる見込み。さらに将来的には、PC版でもフリーハンドでルートを描けるようになるとされています。
マウス操作や大きな画面での編集に慣れている方にとっては、PC版でのフリーハンド対応はうれしいニュース。複雑な縦走ルートや細かな経路を正確に描きたいとき、より快適に操作できるようになりそうです。
フリーハンド機能だけじゃない! 2025年、YAMAPのアップデート情報
「フリーハンド登山計画」は、2025年の『YAMAP』アップデートの目玉のひとつ。それ以外にも、いくつかの仕様変更が予定されています。ここでは、無料プランの制限変更やプレミアム会員向けキャンペーンなど、登山者に影響がありそうなポイントをまとめて紹介します。
無料プランに制限が追加 登山計画の保存件数が「2件」までに
これまで、無料ユーザーでも複数の登山計画を保存できていましたが、今後はその件数が「2件まで」に制限されます。すでに保存済みの登山計画が削除されることはないものの、新たに計画を作成・保存する場合や、既存の計画を編集して保存し直す場合には、保存件数の上限が適用されます。
活動記録自体は残るため山行の記録には支障ありませんが、筆者のように登山計画を立てるのが好きで、思いついたルートをいくつも保存しているユーザーにとっては、アイディアをストックできなくなるのは少し寂しいところ。複数の案を作成して比較検討するといった使い方も、今後は難しくなりそうです。
1ヵ月にダウンロードできる地図の枚数が2枚から1枚に
2025年4月28日から、無料ユーザーが月にダウンロードできる地図の枚数が「1枚まで」に変更されました。ただし、新規アカウント(作成から6ヵ月以内)は、引き続き月2枚まで利用できます。
この変更は、月に1回だけ登山を楽しむ程度の利用であれば、無料プランでも不便はありません。一方で、月に複数回登山に出掛ける方や、縦走・遠征登山を行うユーザーには大きな影響が出てきます。そうした登山スタイルの方は、「YAMAPプレミアム」への移行や、地図単体レンタル(1枚480円/30日)の利用を視野に入れる時期かもしれません。
年割プランで6ヵ月分お得に! プレミアムキャンペーン実施中
自由に、柔軟に。進化するYAMAPで“自分だけの登山”を楽しもう
今回レビューした「フリーハンド登山計画」は、これまでの『YAMAP』にはなかった“自由にルートを描く”という発想を形にした機能です。
登山計画の精度には確かに課題もありますが、地図にない道を自分で見つけて記録したり、ルート検索では見落とされがちな裏道や街歩きを組み込めたりと、これまであきらめていた「自分だけの登山」を実現できる可能性を感じました。
2025年は『YAMAP』にとって大きな変化の年。仕様の変更や制限に戸惑う場面があるかもしれませんが、登山を楽しむ上で何を重視したいかを考えながら、自分のスタイルに合った使い方を見つけてみてはいかがでしょうか。
(文:かがわまなみ)
こちらの記事もおすすめ
YAMAP / ヤマップ 登山地図アプリに関する記事